オキナエビスガイ科
オキナエビスガイ科 | ||||||||||||||||||
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リュウグウオキナエビスの貝殻
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地質時代 | ||||||||||||||||||
カンブリア紀 - 現代 | ||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||
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和名 | ||||||||||||||||||
〜オキナエビス(翁戎、翁恵比須) | ||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||
Slit Shell |
オキナエビスガイ科(オキナエビスガイか、Pleurotomariidae)は海洋に生息する腹足綱古腹足目の巻貝である[1]。本科の貝を総称して単にオキナエビスと呼ぶ場合もある。非常に古い系統であり、地質時代の中で非常に繁栄した時期もあった。現在では深海に多くの種が生息している。かつては化石のみが知られていたが、生きた個体が1856年にカリブ海から発見された[2]。現生種も化石に見られる原始形質を残しており、生きている化石の一つとされる。
形態
[編集]いずれの種の貝殻も円錐形で、白色と赤系色(赤、オレンジ色、ピンク)の縞模様を持つ。貝殻の螺塔はあまり尖らないが、殻が薄いため壊れやすい。各螺層はあまり膨らまず、螺塔全体が円錐形を示す。螺層は成貝では10階を越える。貝殻の内側には真珠層が発達し、独特の線模様を持つ。蓋は円形。角質であり石灰化はしない。
殻口外唇から奥へ向けて、呼吸や排泄のための深い特徴的なスリットがある。スリットは殻の成長と共に奥側からゆっくり埋まっていきながらも延伸してゆく。このスリットはアワビの殻の孔列と相同な形質である。英語圏ではオキナエビスガイ科の貝を "Slit Shell" と呼ぶ。
化石記録
[編集]化石記録はカンブリア紀後期から連続的に残っている。白亜紀末のK-T境界での大打撃の後、新生代における本科の生息域は深海に限られたとされる[3]。
分布・生態
[編集]主に水深 200-3000m[4] の深海(漸深海帯)に底生生物として生息する。餌は主に海綿で、他に深海性のウミユリや八放サンゴなども捕食する。水族館などの飼育環境下では魚や貝も食べることが知られている[3]。逆に甲殻類や魚類に捕食されるが、危険に晒されると白い液体を分泌してこれらの捕食者を追い払う。
下位分類
[編集]下位分類としては4属が展開される。なお、書籍によっては本科を全て Pleurotomaria 属として扱い、下記の属を亜属レベルに位置付けているものもある[5]。以下に属と代表種、典型的な成貝の大きさ[6]を示す。
- Entemnotrochus リュウグウオキナエビスガイ属
- 本科の中で唯一臍穴が開く、大型のオキナエビス。
- Entemnotrochus rumphii Schepman, 1879 リュウグウオキナエビスガイ Rumphius's slit shell
- Entemnotrochus adansonianus Crosse et Fischer, 1861 アダンソンオキナエビスガイ Adanson's slit shell
- 殻高17cm。バミューダ諸島、西インド諸島、ブラジル近海など大西洋南米北東岸の深海に生息。リュウグウオキナエビスガイと同様スリットが深く、真上からスリットを円弧として見た場合の中心角は150°を超える。
- Entemnotrochus adansonianus bermudensis バミューダオキナエビスガイ
- バミューダ沖に生息する、上記アダンソンオキナエビスガイの亜種。アダンソンオキナエビスガイよりもスリットの切込みが浅く(130°程度)、殻頂角が小さい(約63°)。また殻の外表面の光沢が無い[7]。
- Leptomaria † (Deslongchamps, 1864)
- 化石属。すでに絶滅して現生種はない。
- Perotrochus ヒメオキナエビス属
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- Perotrochus africama Tomlin, 1948 アフリカオキナエビスガイ African slit shell
- 殻高12cm。南アフリカ近海の砂泥の海底に生息する。
- Perotrochus africama teramachii Kuroda, 1955 テラマチオキナエビスガイ
- 日本近海に産する上記アフリカオキナエビスの亜種。
- Perotrochus pyramus F.M. Bayer, 1967 ユウバエオキナエビスガイ Pyramus slit shell
- Perotrochus diluculum Okutani, 1979 アケボノオキナエビスガイ Dawn slit shell
- Perotrochus quoyanus Fischer et Bernardi, 1856 ヒメオキナエビスガイ Quoy's slit shell
- 殻高5cm。メキシコ湾から西インド諸島近海、大西洋南米北東岸の深海に生息。
- Perotrochus quoyanus insularis Okutani et Goto, 1985 ヤサヒメオキナエビスガイ
- ヒメオキナエビスの亜種。ホンジュラス近海に生息。
- Perotrochus midas F.M. Bayer, 1965 ミダースオキナエビスガイ King Midas's slit shell
- Perotrochus lucaya F.M. Bayer, 1965 ルカイヤオキナエビスガイ Lucayan slit shell
- Perotrochus tosatoi Anseew, Goto et Abdi, 2005 マコトノオキナエビスガイ
- Perotrochus deforgesi Metivier, 1990 サンゴカイオキナエビスガイ
- Perotrochus caledonicus Bouchet et Metivier, 1982 ニューカレドニアオキナエビスガイ
- ニューカレドニア近海に生息[10]。
- Perotrochus vicdani Kosuge, 1980 ナンバンオキナエビスガイ
- Perotrochus gotoi Anseeuw, 1990 ゴトウオキナエビスガイ
- Perotrochus africama Tomlin, 1948 アフリカオキナエビスガイ African slit shell
- Bayerotrochus Harasewych, 2002
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- Bayerotrochus westralis Whitehead, 1987 ミナミノオキナエビスガイ
- オーストラリア近海に生息。Pleurotomaria 属として扱われる場合もある[13]。
- Bayerotrochus philpoppei Anseew, Poppe et Goto, 2006 ゴコウノオキナエビスガイ
- Bayerotrochus westralis Whitehead, 1987 ミナミノオキナエビスガイ
- Mikadotrochus Lindholm, 1927 オキナエビスガイ属
- 狭義のオキナエビス。さらに狭くは Mikadotrochus beyrichii の和名として「オキナエビス」もしくは「オキナエビスガイ」の呼称を用いる。
- Mikadotrochus hirasei Pilsbry, 1903 ベニオキナエビスガイ Hirase's slit shell
- Mikadotrochus beyrichii Hilgendorff, 1877 オキナエビスガイ Berich's slit shell
- Mikadotrochus salmiana Rolle, 1899 コシダカオキナエビスガイ Salmiana slit shell
- 殻高10cm。日本近海の和歌山県沖から九州、東シナ海にかけて、水深 150-250m の岩礫底に分布。
- Mikadotrochus schmalzi Shikama, 1961
- 上記コシダカオキナエビスガイの変異型の一つで、殻頂が尖る。
- Mikadotrochus atlantica Rios et Matthews, 1968 ブラジルオキナエビスガイ Atlantic slit shell
- 殻高5cm。ブラジル沖の深海 200m に生息する。スリットは浅い。
- Mikadotrochus gemma F.M. Bayer, 1965 ホウセキオキナエビスガイ Jewel slit shell
- 殻高4cm。小アンティル諸島からバルバドス諸島近海の水深 300m 付近に生息。殻表面は荒い小顆粒が配列して螺肋を成す。スリットは浅い。
- Mikadotrochus amabilis F.M. Bayer, 1963 アカネオキナエビスガイ Lovely slit shell
- Mikadotrochus anseeui Kanazawa et Goto, 1991 アンシュウオキナエビスガイ
- フィリピン近海に生息。Pleurotomaria 属として扱われる場合もある[16]。
脚注
[編集]- ^ Bouchet P, Rocroi J-P (2005). “Classification and nomenclator of gastropod families”. Malacologia: International Journal of Malacology 47 (1-2): 1-397. ConchBooks: Hackenheim, Germany. ISBN 3-925919-72-4
- ^ 相模湾産貝類によれば1855年。
- ^ a b Harasewych MG (2002). “Pleurotomarioidean gastropods.”. Adv Mar Biol 42: 237-94. PMID 12094724
- ^ 東京海洋大学の展示解説では 100-500m
- ^ 世界海産貝類大図鑑はこちらの分類を採用している。
- ^ 世界海産貝類大図鑑に基づく。
- ^ バーミューダ産アダンソンオキナエビスガイの新亜種 A New Subspecies of Adanson's Slit Shell from Bermuda - CiNii
- ^ 貴重な貝「マコトノオキナエビス」を日本初公開! - 鳥羽水族館最新情報 NEWS! 2006年11月1日(水)
- ^ Perotrochus deforgesi サンゴカイオキナエビス - 微小貝データベース(関西学院大学)
- ^ Pleurotomaria caledonicus ニューカレドニアオキナエビス - 微小貝データベース(関西学院大学)
- ^ Perotrochus vicdani ナンバンオキナエビス(フィリピンオキナエビス) - 微小貝データベース(関西学院大学)
- ^ Perotrochus gotoi ゴトウオキナエビス 後藤翁戎 - 微小貝データベース(関西学院大学)
- ^ Pleurotomaria westralis ミナミノオキナエビス - 微小貝データベース(関西学院大学)
- ^ 日本初! ゴコウノオキナエビス(貝殻標本)を展示 - 鳥羽水族館最新情報 NEWS! 2007年9月27日(木)
- ^ 相模湾産貝類では 90-250m。
- ^ Pleurotomaria anseeuwi アンシュウオキナエビス - 微小貝データベース(関西学院大学)
参考文献
[編集]- 生物学御研究所 編『相模湾産貝類』丸善、1971年。ISBN 4-621-01217-7。
- R.T.アボット、S.P.ダンス 著、波部忠重、奥谷喬司 編『世界海産貝類大図鑑』平凡社、1985年。ISBN 978-4582518115。
関連項目
[編集]- 鳥羽水族館 - オキナエビスガイ科標本の収蔵、展示、飼育観察。