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数学における エルミート多様体(英語: Hermitian manifold)とはリーマン多様体の複素微分幾何における類似である。より正確には、エルミート多様体とは、各点の正則接空間にエルミート内積を持ち、それらが滑らかに変化する複素多様体のことを指す。また、エルミート多様体を複素構造を保つリーマン計量を持つ実多様体として定義することもできる。
複素構造は、本質的には可積分条件をもつ概複素構造であり、この条件は多様体上にユニタリ構造(U(n)-構造(英語版)(U(n) structure))をもたらす。可積分条件を落とすと、概エルミート多様体を得る。
任意の概エルミート多様体上に、計量と概複素構造にのみ依存する基本2形式(fundamental 2-form)と呼ばれる微分形式を定めることができる。基本2形式は常に非退化である。これが閉形式である(すなわちシンプレクティック形式である)という追加の可積分条件を課すことにより、概ケーラー構造(almost Kähler structure)を得る。もし概複素構造と基本2形式の両方が可積分であれば、 ケーラー構造を持つ。
形式的定義[編集]
滑らかな多様体(smooth manifold)
上の複素ベクトル束
におけるエルミート計量(Hermitian metric)とは、各々のファイバー上で滑らかに変化する正定値エルミート形式である。そのような計量は滑らかな切断
![{\displaystyle h\in \Gamma (E\otimes {\bar {E}})^{*}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/5d1c7f6c33de4b9de0ec1aba35ab55d085a82996)
であって、
の任意の元
に対し
![{\displaystyle h_{p}(\eta ,{\bar {\zeta }})={\overline {h_{p}(\zeta ,{\bar {\eta }})}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/ff2486ca8d97bd1aa7ebdaa645b9c3a632774f27)
であり、
の任意の 0 でない元
に対し
![{\displaystyle h_{p}(\zeta ,{\bar {\zeta }})>0}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/af5a08bc07b51dcc1e6b019af803e02308644698)
を満たすような切断として表すことができる。
エルミート多様体(Hermitian manifold)は、その正則接空間(英語版)(holomorphic tangent space)上にエルミート計量を持つ複素多様体である。同様に、概エルミート多様体(almost Hermitian manifold)は、その正則接空間上にエルミート計量を持つ概複素多様体である。
エルミート多様体上では、計量は正則局所座標
を用いて
![{\displaystyle h=h_{\alpha {\bar {\beta }}}\,dz^{\alpha }\otimes d{\bar {z}}^{\beta }}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/6b3b3c214cde8bed681b616e79c9cbce5b16319c)
と表わされる。ここに
は正定値エルミート行列の成分である。
リーマン計量と随伴形式[編集]
(概)複素多様体
上のエルミート計量
は、基礎多様体上にリーマン計量
を定義する。計量
は
の実部
![{\displaystyle g={1 \over 2}(h+{\bar {h}})}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/fef79c393e91872038e5ed0fe8aadf0ba292a2ec)
で定義される。
形式
は複素化された(英語版)(complexified)接バンドル
上の対称双線型形式である。
は自身の共役と等しいので、
上の実形式の複素化となる。
上での
の対称性と正定値性は、対応する
の性質から従う。局所正則座標では、計量
は
![{\displaystyle g={1 \over 2}h_{\alpha {\bar {\beta }}}\,(dz^{\alpha }\otimes d{\bar {z}}^{\beta }+d{\bar {z}}^{\beta }\otimes dz^{\alpha })}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/377b73e02d46d28251e99ede33c20868beb7c418)
と表わすことができる。
には次数 (1,1) の複素微分形式
を付随させることもできる。形式
は
の虚部のマイナス1倍
![{\displaystyle \omega ={i \over 2}(h-{\bar {h}})}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/ff407cfcf810f70af2630a633ebd3de5a54a8f5d)
として定義される。再び、
はその共役と等しいので、これは
上の実形式の複素化である。形式
は、随伴 (1,1)-形式(associated (1,1) form)、基本形式(fundamental form)、あるいはエルミート形式(Hermitian form)と様々な呼ばれ方をする。局所正則座標では、
は
![{\displaystyle \omega ={i \over 2}h_{\alpha {\bar {\beta }}}\,dz^{\alpha }\wedge d{\bar {z}}^{\beta }}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/828fc2bb4d93f7cdbb6a8137c67c6bf0c25c9dcf)
と表わされる。
座標表現から明らかなように、3つの形式
、
、
のうち1つが与えられれば、他の2つも一意に定まる。リーマン計量
と付随する形式
とは概複素構造
により次のように関係している: すべての複素接ベクトル
と
に対し、
![{\displaystyle {\begin{aligned}\omega (u,v)&=g(Ju,v),\\g(u,v)&=\omega (u,Jv).\end{aligned}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/1c5ba113395fc0955e4d6abb4ff6aa68fa045622)
エルミート計量
は
と
から等式
![{\displaystyle h=g-i\omega }](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/bb72285e7828b6234d42c6f76e5487b0dcdbfa7e)
によって復元できる。3つの形式
、
、
は概複素構造
を保つ。すなわち、すべての複素接ベクトル
と
に対し、
![{\displaystyle {\begin{aligned}h(Ju,Jv)&=h(u,v)\\g(Ju,Jv)&=g(u,v)\\\omega (Ju,Jv)&=\omega (u,v)\end{aligned}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/823aa3b7c45bc89ffb037bbcc20879aa282a0bad)
である。
従って、(概)複素多様体
上のエルミート構造は、
- 上記のエルミート計量
![{\displaystyle h}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/b26be3e694314bc90c3215047e4a2010c6ee184a)
- 概複素構造
を保つリーマン計量 ![{\displaystyle g}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/d3556280e66fe2c0d0140df20935a6f057381d77)
を保つ非退化 2-形式
ですべての 0 でない実接ベクトル
に対し
の意味で正定値
のいずれかで特定することができる。
多くの著者が
自身をエルミート計量と呼んでいることに注意する。
すべての(概)複素多様体にはエルミート計量が入る。このことはリーマン計量についての同様の命題から直ちに従う。概複素多様体
上の任意のリーマン計量
が与えられると、明らかに概複素構造
と整合するような新しい計量
を、次のように構成することができる:
![{\displaystyle g'(u,v)={\frac {1}{2}}\left(g(u,v)+g(Ju,Jv)\right).}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/057c6a112443a72f16b9574131069a376d52fb36)
概複素多様体
上のエルミート計量を選ぶことは、
上のU(n)-構造(英語版)(U(n)-structure)を選ぶことと同値である。つまり、
からユニタリ群
への
の枠束(frame bundle)の構造群の縮小(reduction of the structure group)である。概エルミート多様体上のユニタリ枠(unitary frame)は、エルミート計量に関して正規直交系をなす複素線型枠である。M のユニタリ枠束(英語版)(unitary frame bundle)は、すべてのユニタリ枠の主 U(n)-バンドルである。
すべてのエルミート多様体
は、
により決定されるリーマン体積形式である標準体積形式を持つ。この形式は、随伴 (1,1)-形式
によって
![{\displaystyle \mathrm {vol} _{M}={\frac {\omega ^{n}}{n!}}\in \Omega ^{n,n}(M)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/0a231173c78a40b826d277eb5a0b5b7d5f27baf8)
として与えられる。ここに
は
と自身との
重のウェッジ積である。従って、体積形式は
上の実
-形式である。局所正則座標では、体積形式は
![{\displaystyle \mathrm {vol} _{M}=\left({\frac {i}{2}}\right)^{n}\det(h_{\alpha {\bar {\beta }}})\,dz^{1}\wedge d{\bar {z}}^{1}\wedge \cdots \wedge dz^{n}\wedge d{\bar {z}}^{n}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/c0c3319c381b9a63e5e0d3f6fb06b6b9c5062d69)
により与えられる。
エルミート計量は、正則ベクトルバンドル上でも考えることができる。
ケーラー多様体[編集]
エルミート多様体の最も重要なクラスは、ケーラー多様体である。ケーラー多様体は、エルミート形式
が閉形式
![{\displaystyle d\omega =0}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/f36675fed06f4f9cab60ae8e9479020cf17f3244)
となるエルミート多様体である。この場合、形式
をケーラー形式と呼ぶ。ケーラー形式はシンプレクティック形式なので、ケーラー多様体は自然にシンプレクティック多様体となる。
随伴する (1,1)-形式が閉である概エルミート多様体は、自然に概ケーラー多様体と呼ぶ。任意のシンプレクティック多様体には、概ケーラー多様体をなすような整合的な概複素構造が入る。
可積分性[編集]
ケーラー多様体は可積分条件を満たす概エルミート多様体である。この条件はいくつかの同値な方法で述べることができる。
を実
次元の概エルミート多様体とし、
を
のレヴィ・チヴィタ接続とすると、以下は
がケーラーとなる同値な条件である。
が閉で、
が可積分である
![{\displaystyle \nabla J=0}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/32a9d9e6a67c193964f8ae5c7d9651d74ebffd13)
![{\displaystyle \nabla \omega =0}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/31cac31223124d6d2b7e62c07ce1b861c6fbb047)
のホロノミー群(英語版)(holonomy group)が
に関するユニタリ群
に含まれる
これらの条件の同値性は、ユニタリ群の「3 から 2(2 out of 3)」の性質に対応する。
特に、
がエルミート多様体であれば、条件
が一見、非常に強く見える条件
と同値である。ケーラー多様体の理論の豊かさは、これらの性質によるところもある。
参考文献[編集]