エリアイ (レーダー)
スウェーデン空軍のサーブS100B | |
種別 | 3次元レーダー (フェーズドアレイレーダー) |
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目的 | 対空捜索用 |
開発・運用史 | |
開発国 | スウェーデン |
就役年 | 1996年 |
送信機 | |
周波数 | Sバンド |
アンテナ | |
形式 | アクティブ・フェーズドアレイ (AESA) |
直径・寸法 | 全長8 m×幅0.6 m |
アンテナ利得 | 36.5 dBi |
ビーム幅 | 幅0.7度×高さ9度 |
方位角 |
全周走査可能 (性能発揮は両脇150度ずつ) |
探知性能 | |
探知距離 |
240 nmi (440 km) (最大) 180 nmi (330 km) (戦闘機) 80 nmi (150 km) (巡航ミサイル) |
探知高度 | 20,000 m (66,000 ft) |
その他諸元 | |
重量 | 900 kg |
エリアイ(英語: Erieye)は、エリクソン・マイクロウェーブ・システムズ社(現在のサーブ・マイクロウェーブ・システムズ社)が開発した3次元レーダー(フェーズドアレイレーダー)。航空機搭載用の早期警戒レーダーとして用いられ、形式名は当初はPS-890、後にはFSR-890[1]、現在ではASC-890となっている[2]。スウェーデン空軍のS100B「アーガス」早期警戒機の場合、機体を含めて単価は約34億円程度とされる[3]。
来歴
[編集]スウェーデン軍では1970年代より早期警戒機について検討していたが、当初は戦闘機に捜索ポッドを搭載する方式が検討されていた[2]。その後、1982年にマルガレータ・アフ・ウグラス議員が議会に提出した案に基づき、ターボプロップ輸送機に背負式にレーダーを搭載する方針に転換した[2]。1985年、エリクソン社は、スウェーデン国防省防衛資材局(FMV)より早期警戒機用のレーダーの開発を受注した[2]。この注文ではアクティブ・フェーズドアレイ・アンテナ(AESAアンテナ)を用いることを求めており、先見の明があった[2]。
試験の段階ではフェアチャイルド メトロIII(Tp.88)が搭載母機として選定され、早くも1982年にはFMVからメトロIIIの早期警戒機版の開発が発注されており、1983年にはダラスのリング・テムコ・ボート社の施設を用いて風洞試験も行っていた[1]。1986年にFMVが試験の発注を行い、同年10月よりエリアイのモックアップを搭載して試験を行った後、1987年10月にはスウェーデンに回航され、1991年5月よりレーダーの実機を搭載しての試験が開始された[1]。この時点では機上信号処理は行われていなかったが、1992年からは機上信号処理も行われるようになった[2]。
1992年12月、FMVはエリクソン社に対し、12億クローナで6セットを発注した[4]。実用機では、搭載母機としてはサーブ 340が選定され、1993年より生産が開始されて、1996年から1999年にかけて引き渡された[4]。
設計
[編集]本機は、航空機の上方に棒状のアンテナを搭載する、いわゆる「バランスビーム」型の捜索レーダーの代表格とされている[3][5]。アンテナを収容した全長 約9メートルのポッドは4本の支柱によって支えられており、内部にはアクティブ・フェイズドアレイ(AESA)型アンテナとともに、レーダー機器や補助動力装置(APU)を収容している[3][5]。またポッドの前後には、これらの機器を冷却するための吸排気口が設けられている[3][6]。
このような設計から、基本的には側面監視機上レーダー(SLAR)であり、当初はポッドの両側面に設けられたアンテナ1面ごとに、方位角にして120度ずつ(合計で240度)しか監視できなかった[3]。後には全周走査可能となったものの、やはり前後方に死角ができやすく、理想的な探知性能を発揮できるのは両脇150度ずつとされている[6][7]。
レーダー関連の機材のほとんどがポッド内に収容されていることから、航空機のキャビンには、コンソールとパワーユニットなどが配置される程度であり、30席級のリージョナルライナーであれば十分に搭載可能なコンパクトなシステムとなっている[3]。オペレータは、搭載母機が小型のサーブ 340であれば3名、比較的余裕があるサーブ 2000やエンブラエル ERJ 145であれば5名が配置される[6]。またリンク 11やリンク 16による戦術データ・リンクにも対応している[8]。
なおエリアイの発展型として開発されたエリアイERでは、搭載母機としてはグローバル 6000が選ばれており、機体を含めたAEW&C機全体としてはグローバルアイと称される[2][5]。スウェーデン空軍も、S100Dの後継として導入予定であり、S106の形式名が与えられる[5]。
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Tp.88への搭載状態
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ERJ 145への搭載状態
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グローバルアイ
搭載機と採用国
[編集]- フェアチャイルドTp.88(実用試験の際に搭載)
- サーブ 340 - サーブ 340 AEW&C
- スウェーデン空軍(S100B「アーガス」) - 2機
- ギリシャ空軍 ※EMB 145 AEW&Cの引渡しまで一時的にリース
- タイ空軍 - 2機
- アラブ首長国連邦空軍 - 2機
- サーブ 2000
- パキスタン空軍 - 4機
- エンブラエル ERJ 145 - エンブラエル R-99
- グローバル 6000
- スウェーデン空軍 - 4機(予定)
- アラブ首長国連邦空軍 - 3+2機
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c Lambert 1991, p. 400.
- ^ a b c d e f g The First Airborne Radar in Sweden Underwent Final Testing 20 Years Ago, SAAB, (2016-08-25) 2024年2月25日閲覧。
- ^ a b c d e f 石川 1998.
- ^ a b Streetly 2005, pp. 197–198.
- ^ a b c d 石川 2023.
- ^ a b c 石川 2014.
- ^ Sten Ahlbom,Paul Andersson, Rolf Lagerlof (1995). “A Swedish Airborne Early Warning System Based on the Ericsson ERIEYE Radar”. Ericsson Review (Ericsson): 54-63 .
- ^ SAAB. “ERIEYE AEW&C Mission System” (PDF) (英語). 2014年9月27日閲覧。
参考文献
[編集]- 石川潤一「世界の早期警戒機」『航空ファン』第47巻、第6号、文林堂、44-49頁、1998年6月。NDLJP:3289951。
- 石川潤一「世界の空中早期警戒(管制)機」『航空ファン』第63巻、第7号、文林堂、60-63頁、2014年7月。 NAID 40020090574。
- 石川潤一「空中早期警戒管制機のいま」『航空ファン』第72巻、第7号、文林堂、50-57頁、2023年7月。CRID 1520296666078947840。
- Lambert, Mark (1991), Jane's All the World's Aircraft 1991-92, Jane's Information Group, ISBN 978-0710609656
- Streetly, Martin (2005), Jane's Radar and Electronic Warfare Systems (17th ed.), Jane's Information Group, ISBN 978-0710627049