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ウィリアム・サリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウィリアム・サリ
William Sali
アメリカ合衆国下院議員
アイダホ州アイダホ州1区選出
任期
2007年1月3日 – 2009年1月3日
前任者ブッチ・オッター
後任者ウォルト・ミニック
アイダホ州下院議員
任期
1990年8月 – 2005年12月1日
選挙区14区シートB (1990–1992)
18区シートA (1992-2002)
21区シートA (2002–2006)
個人情報
生誕William Thomas Sali
(1954-02-17) 1954年2月17日(70歳)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国オハイオ州ポーツマス英語版
政党 共和党
配偶者Terry Sali
教育ボイシ州立大学 (BBA)
アイダホ大学 (JD)
専業弁護士

ウィリアム・トーマス・サリ(William Thomas Sali, 1954年2月17日 - )は、アメリカ合衆国政治家弁護士共和党に所属し、連邦下院議員(アイダホ州1区)、アイダホ州下院議員を歴任した。

共和党内でも保守的な存在として知られ、社会保守主義者英語版財政保守主義者英語版とみなされている。

経歴

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1954年2月17日、サリはアメリカ合衆国オハイオ州ポーツマス英語版で生まれた。1972年、アイダホ州ボイシにあるキャピタル高校(en)を卒業後、ボイシ州立大学に進学した。1981年に経営学学士(BBA)を取得し卒業。1984年にはアイダホ大学法務博士(専門職)を取得して卒業し、弁護士資格を得た[1]

1990年、アイダホ州下院議員に初当選。社会・経済問題に対して保守的な立場を維持し続けたため、共和党穏健派である州下院指導部の怒りを買うこともあった[2][3]。州下院保健・福祉委員会の副委員長、保健医療に関する特別委員会の委員長を務めた。また、商工観光委員会、人事委員会、司法・規則・行政委員会の委員も務めた[4]

2006年の下院議員選挙では、アイダホ州第1選挙区選出の共和党現職議員ブッチ・オッター州知事選への出馬を表明していたため[5]、党指名が空席となっていた。サリは立候補を表明し、5月の共和党予備選を得票率25.6%、約5000票差の接戦をものにした[6]。総選挙では、ディック・チェイニー副大統領デニス・ハスタート下院議長らの支援を受け[7][8]、民主党のラリー・グラント英語版を11,900票差で破って当選を果たした[9]

2008年、サリは再選を目指して立候補を表明。2008年5月の共和党予備選挙で勝利するも[10]、総選挙では民主党のウォルト・ミニックに4,200票差で敗れた[11]。アイダホ州で民主党候補が下院議員選挙で当選するのは、ラリー・ラロッコ(1991年-1995年)以来のことだった。サリの選挙陣営は選挙費として117万ドルを費やし、NRCC英語版(全国共和党下院委員会)から474,000ドル、成長クラブ英語版全米ライフル協会生まれる権利を守る全米委員会英語版などから177,000ドルの資金を調達したが、2008年選挙で落選した現職共和党下院議員14名のうち、選挙資金が200万ドルを切ったのはサリだけだった[12]

政策・主張

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サリは社会保守主義者英語版とみなされており[13]、特に中絶問題では熱心な「プロライフ(人工妊娠中絶に反対し、胎児の生命を尊重する立場)」として知られている[2][14][15]

州児童医療保険プログラム (SCHIP)

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2007年、ジョージ・W・ブッシュ政権は、「州児童医療保険プログラム(State Children's Health Insurance Program)」(SCHIP)の拡充に反発していた[16]。SCHIPは、貧困家庭かつ無保険の児童(18歳以下)を対象とする医療保険制度で「1997年均衡予算法(Balanced Budget Act of 1997)」に基づいて実施された[17]。しかし、SCHIPに関する規定は限時法であり、制定から10年後の2007年度に失効することが決まっていた[17]第110議会で多数党を占めた民主党はSCHIPの延長と拡大を行い、予算5年250億ドルから5年600億ドルへ増額するよう求めたが、ブッシュ政権は5年間300億ドルの増額に止める方針を示した[16]。2007年9月28日、SCHIPの大幅な拡充を求めるHR 976(Children’s Health Insurance Program Reauthorization Act of 2007)が民主党などの賛成により、成立した[18]。同法案は、たばこ製品にかかる連邦消費税の増税を財源にしており[18]、保険制度の対象範囲が成人に広がっている点や不法移民の受給を防ぐ手段が十分ではない点で共和党議員から批判を受けた[19]。同法案は10月3日にブッシュ大統領によって拒否権が行使された[17]

サリは10月6日の声明で、SCHIPの拡充法案について納税者の負担をもたらすとして批判している。法案は国民皆保険の導入に向けた下準備だと述べ、高所得者の成人や不法滞在者にも対象が適用されている点を問題視した。また、そもそも現行のSCHIP制度についても、不適切な支払いの対策が不十分だとし、無駄や問題を抱えていると述べた[20]。その後、HR976に行使された拒否権のオーバーライドを求めて、下院で再び投票が行われたが、サリら共和党の大多数が反対票を投じたため、成立に必要な議席数の3分の2に届かず、HR976は不成立に終わった[21]

反多文化主義

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サリはキリスト教徒であり、アメリカ合衆国をキリスト教の原則に基づいて建てられた国と捉えている[22]。そのため、宗教的多様性や文化的多様性に非寛容な態度を取ってきた[22]

2007年8月、サリは、アメリカ政治における「キリスト教の遺産」の劣化と多文化主義の台頭に対する懸念を表明した。特に2006年の下院議員選挙で初のイスラム系議員となったキース・エリソン英語版や、ラジャン・ゼッド(Rajan Zed)が行ったヒンドゥー教の祈り[注釈 1](en)に言及し、「アメリカはキリスト教の伝統が失われている」と述べた。さらに、これらの現象は「建国の父たちが思い描いたものではない」と続けた[22]

その他の政策・主張

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選挙結果

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2006年

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連邦下院議員選挙 (アイダホ州1区):2006年[9]
政党 候補者 票数 得票率
共和党 ウィリアム・サリ 115,843 49.9%
民主党 ラリー・グラント英語版 103,935 44.8%
無所属 Dave Olson 6,857 3.0%
自然法党 Andy Hedden-Nicely 2,882 1.2%
立憲党 Paul Smith 2,457 1.1%

2008年

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連邦下院議員選挙 (アイダホ州1区):2008年[11]
政党 候補者 票数 得票率
民主党 ウォルト・ミニック 175,898 50.6%
共和党 ウィリアム・サリ 171,687 49.4%

関連項目

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脚注

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注釈

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  1. ^ ラジャン・ゼッドは、ネバダ州リノのヒンドゥー教寺院に所属する聖職者。2007年にゲスト・チャプレンとして、上院開会時にヒンドゥー式の祈祷を行なった[23]。開会前の祈祷はキリスト教に基づく祈りの言葉が行われることが一般的だったため[24] 、議会の傍聴人数名が抗議を行なったほか、キリスト教系団体から非難を受けた[23]

参考文献

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  1. ^ SALI, William: 1954 –”. Bioguide Search. 2022年1月9日閲覧。
  2. ^ a b 2006 NEW MEMBER PROFILES: Bill Sali”. 2007年9月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月16日閲覧。
  3. ^ Dan Popkey (2006年10月13日). “Sali talks about GOP unity but ignores his own advice”. 2007年7月16日閲覧。
  4. ^ Bill Sali”. Government Is Not God. July 2, 2007時点のオリジナルよりアーカイブ。August 11, 2007閲覧。
  5. ^ Rothstein, Betsy (2005年4月6日). “From 'Mr. Tight Jeans' to gubernatorial hopeful” (英語). TheHill. 2022年1月9日閲覧。
  6. ^ Ben Ysursa, Secretary of State (2006年5月23日). “Idaho Secretary of State – Elections, Campaign Disclosure and Lobbyists”. 2007年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月16日閲覧。
  7. ^ JESSE HARLAN ALDERMAN. “Cheney draws Idaho protests” (英語). Casper Star-Tribune Online. 2022年1月9日閲覧。
  8. ^ Cheney: 'You all know Bill'”. The Spokesman-Review. 2022年1月9日閲覧。
  9. ^ a b ID - District 01 Race - Nov 07, 2006”. Our Campaigns. 2022年1月9日閲覧。
  10. ^ 2008 primary results statewide Archived 2009-04-16 at the Wayback Machine.
  11. ^ a b ID - District 01 Race - Nov 04, 2008”. Our Campaigns. 2022年1月9日閲覧。
  12. ^ Gary C. Jacobson (2010). “A collective dilemma solved: the distribution of party campaign resources in the 2006 and 2008 congressional elections”. Election Law Journal (Mary Ann Liebert, Inc) 9 (4). https://link.gale.com/apps/doc/A245661200/AONE?u=unitokyo&sid=bookmark-AONE&xid=37495279. 
  13. ^ Sarah Pulliam (2008). “Election honeymoon: will evangelicals learn to work with an Obama administration?”. Christianity Today 52 (12): 15. https://link.gale.com/apps/doc/A190243455/AONE?u=unitokyo&sid=bookmark-AONE&xid=0cb18001. 
  14. ^ “EMILY's List-Don't Be Fooled”. National Right to Life News (National Right to Life Committee, Inc.) 33 (6): 1. (2006). https://link.gale.com/apps/doc/A146852584/AONE?u=unitokyo&sid=bookmark-AONE&xid=6c40ef71. 
  15. ^ “Unbowed Pro-Lifers Look to the Future”. National Right to Life News (National Right to Life Committee, Inc.) 33 (11): 10. (2006). https://link.gale.com/apps/doc/A155057754/AONE?u=unitokyo&sid=bookmark-AONE&xid=45282242. 
  16. ^ a b 安井明彦 (2008年). “W・ブッシュ政権のレイムダック化と民主多数党議会 党派対立の現状と展望”. 国際問題 568: 12-23. https://www2.jiia.or.jp/kokusaimondai_archive/2000/2008-01_002.pdf?noprint. 
  17. ^ a b c 中浜隆 (2008). “アメリカの医療扶助改革と民間医療保険”. 社会科学研究 (東京大学社会科学研究所) 59 (5-6): 7-42. https://www2.jiia.or.jp/kokusaimondai_archive/2000/2008-01_002.pdf?noprint. 
  18. ^ a b Text of H.R. 976 (110th): Children’s Health Insurance Program Reauthorization Act of 2007 (Passed Congress version)” (英語). GovTrack.us. 2022年1月9日閲覧。
  19. ^ Virginia Foxx (October 17, 2007). “Insuring health care for poor children should be highest priority as Congress votes By Rep”. Political posturing obscures the issue. 2022年1月9日閲覧。
  20. ^ The Voter's Self Defense System”. Vote Smart. 2022年1月9日閲覧。
  21. ^ FINAL VOTE RESULTS FOR ROLL CALL 982”. 2022年1月9日閲覧。
  22. ^ a b c Idaho Congressman Disturbed by Hindu Prayer in Senate, Election of Muslim to House”. American Family News Network (2007年8月8日). 2007年8月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年1月9日閲覧。
  23. ^ a b Hindu prayer in Senate disrupted” (英語). NBC News. 2022年1月9日閲覧。
  24. ^ 佐伯真光 (1986年). “米国における議会専属牧師裁判”. 宗教法 4: 3-22. 
  25. ^ “Key votes by Sali in US Congress 2007”. The Washington Post. オリジナルの2011年5月20日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110520081247/http://projects.washingtonpost.com/congress/members/s001167/key-votes/ 2010年4月26日閲覧。 
  26. ^ “大統領が新移民労働政策案を発表”. 独立行政法人 労働政策研究・研修機構 国別労働トピック. (2004年3月) 
  27. ^ Sali hailed as key voice against amnesty”. 2007年7月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月9日閲覧。
  28. ^ “Nation In Brief”. The Washington Post. (2007年8月19日). https://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/08/18/AR2007081800936.html 2010年4月26日閲覧。 
  29. ^ KTVB.COM | Boise, Idaho News, Weather, Sports, Video, Traffic & Events | IDAHO NEWS Archived September 27, 2007, at the Wayback Machine.

外部リンク

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アメリカ合衆国下院
先代
ブッチ・オッター
アイダホ州選出下院議員
アイダホ州1区

第14代: 2007年1月3日- 2009年1月3日
次代
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