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インラック・シナワット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
インラック・シナワット
ยิ่งลักษณ์ ชินวัตร
2012年のアメリカ独立記念日にアメリカ大使館で
生年月日 (1967-06-21) 1967年6月21日(57歳)
出生地 タイ王国の旗 タイ サンカムペーン
出身校 チエンマイ大学
ケンタッキー州立大学
所属政党 タイ貢献党
配偶者 アヌソーン・アモーンチャット(事実婚
親族 タクシン・シナワット(兄)
ペートンターン・シナワット(姪)
スパセーク(長男)
サイン

在任期間 2011年8月8日 - 2014年5月7日
国王 ラーマ9世
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インラック・シナワット[1]タイ語: ยิ่งลักษณ์ ชินวัตร, ラテン文字転写: Yingluck Shinawatra, /ʒîŋɾɐ́k̚ ʃīnnɐʋɐ́t̚/1967年6月21日 - )は、タイ王国政治家。第36代首相。タイ史上初の女性の首相。日本ではインラック・チナワットまたはインラック・シナワトラ[2]と表記される場合もある。客家華人であり中国名は丘英楽。

経歴

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シナワット家当主で元下院議員のルート・シナワットの娘としてサンカムペーンにて1967年6月21日に出生[3]

チェンマイ大学政治学部卒業後、アメリカ合衆国に留学し教育を受け、ケンタッキー州立大学にて行政学修士を取得した。帰国後にチナワット一族同族企業のチナワット・ダイレクトリー社に入社する。その後、アドバンスト・インフォ・サービスの社長やマンチェスター・シティFCの専務取締役などを務めた。

名門のシナワット家の出身であり、経営者としての経験をかわれ、2011年7月3日に施行されたタイ王国国民議会人民代表院総選挙にて、タイ貢献党首相候補として選挙戦を戦った。タイ貢献党は選挙前より79議席も増やして500議席中265議席を獲得、過半数を制して勝利し、他の5つの党との連立で300議席という安定政権を作ることにも成功した。8月5日に下院で第36代タイ王国首相に選出され、8日に正式就任した[4][5]

ところが、政権下で行われた国家安全保障会議事務局長の人事問題についてタイ憲法裁判所が「インラックおよび関係閣僚が憲法に違反して縁者登用(不当介入)した」と2014年5月7日に認定し[6]インラック首相は失職した[7]

憲法裁判所が下院総選挙無効の判決を下して政治混乱が収束しないタイで、軍事クーデターが起きて5月22日から5月25日まで軍が身柄を拘束し「コメの買い上げ制度に関し、首相在任中に国に多額の損失を与えた」として職務怠慢容疑で暫定議会が2015年1月23日に弾劾議案が可決され、公民権を5年間停止された。判決が下される予定の2017年8月25日公判を「病気」として欠席。病気であることを証明する診断書を法廷に提出しなかったので「逃亡の恐れあり」と判断した最高裁はインラック前首相の逮捕状を発行し、判決言い渡しを9月27日に延期した[8][9]。この時点でインラックはカンボジア経由でアラブ首長国連邦ドバイに逃亡した模様である[10]。2017年9月27日、最高裁は禁固5年の実刑判決を下した[11]。また、既にドバイを離れイギリスに渡り、イギリスに亡命を求めているという報道もある。同年10月31日、タイ政府はインラック前首相が所持している公用、個人用の旅券を無効にする処分を行った[12]

兄タクシンはタイに帰国したものの、彼女は不逮捕で扱われるとの目途が立っていないためか、2024年8月現在いまだタイに帰国していない。

人物

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兄はタイ第31代首相のタクシン・シナワットで、義兄であるソムチャーイ・ウォンサワットは第34代首相という政治一家に育つ。

趣味は水泳音楽鑑賞

タイ初の女性首相として積極的に内政に携わり、国民融和や貧困対策を推進し、国家の安定に貢献した。また、2011年タイ大洪水の際には洪水対策の陣頭指揮に当たり、バンコク中心部の浸水防止を担った。

2011年の就任時は「兄の操り人形」と皮肉られ、直後の洪水危機への対応では後手に回ったとの批判も浴びた。しかし経済の好調もあり、支持率は高い水準を維持した。政権運営にも慣れ、ソフトさと安定した手腕で評価を高めつつあったが、国家安全保障会議事務局長の人事問題に不当介入したとされ、首相を解任された。 女性の社会進出が進むタイで「女性が収入を得ることは、国の経済と家計に重要な意味があり、男性にも良い影響を与える」と自負し、息子の面倒を見ながら首相の激務をこなした[13]

脚注

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  1. ^ “[https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/thailand/cv/r_yingluck.html インラック・シナワット タイ王国首相兼国防大臣略歴]”. 外務省. 2024年9月7日閲覧。
  2. ^ キーパーソン:インラック・シナワット氏=タイ初の女性首相に選ばれた 毎日jp 2011年8月6日閲覧
  3. ^ “タクシン派勝利、政権奪還へ タイ総選挙、過半数占める”. 朝日新聞. (2011年7月4日). http://www.asahi.com/international/update/0703/TKY201107030157.html?ref=reca 2011年7月4日閲覧。 
  4. ^ タクシン派が過半数 初の女性首相誕生へ 元首相復権も 産経新聞 2011年7月4日閲覧
  5. ^ タイ:インラック・シナワット氏 首相に正式就任 毎日新聞 2011年8月11日閲覧
  6. ^ The Economist 混迷深まるタイ~インラック首相が失職 2014年5月16日
  7. ^ タイ首相、職権乱用の判決で失職 人事で違憲認定、対立激化も 信濃毎日新聞 2014年5月7日閲覧(WEB魚拓保存措置)
  8. ^ “タイのインラック前首相に逮捕状、判決公判欠席で”. AFPBB News (フランス通信社). (2017年8月25日). https://www.afpbb.com/articles/-/3140411 2017年8月25日閲覧。 
  9. ^ “タイ前首相に逮捕状…判決言い渡し出廷せず”. 読売新聞. (2017年8月25日). https://web.archive.org/web/20170825102219/http://www.yomiuri.co.jp/world/20170825-OYT1T50077.html 2017年8月25日閲覧。 
  10. ^ “インラック前タイ首相、ドバイに逃亡 党幹部”. CNN.com (CNN). (2017年8月26日). https://www.cnn.co.jp/world/35106341.html 2017年8月27日閲覧。 
  11. ^ インラック前首相に禁錮5年=逃亡の本人は不在-タイ時事通信 2017年9月27日
  12. ^ タイ政府、国外逃亡したインラック前首相の旅券を無効に AFP(2017年10月31日)2017年10月31日閲覧
  13. ^ インラック首相、実業家から転身 政権運営を軌道に日本経済新聞 2013年5月3日閲覧

外部リンク

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公職
先代
アピシット・ウェーチャチーワ
タイ王国の旗 タイ王国首相
第36代:2011年 - 2014年
次代
ニワットタムロン・ブンソンパイサン
(首相代行)