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イソバレルアルデヒド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イソバレルアルデヒド
識別情報
CAS登録番号 590-86-3 チェック
PubChem 11552
ChemSpider 11065
UNII 69931RWI96 チェック
ChEBI
特性
化学式 C5H10O
モル質量 86.13[1]
外観 無色の液体[1]
密度 0.785 g/mL at 20 °C[1]
融点

−51 °C, 222 K, -60 °F [1]

沸点

92 °C, 365 K, 198 °F [1]

への溶解度 アルコールとエーテルに溶ける。水には僅かに溶ける。[1]
磁化率 −57.5×10−6 cm3/mol
危険性
主な危険性 可燃性[1]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

イソバレルアルデヒド英語: isovaleraldehyde)は、化学式が (CH3)2CHCH2CHO で表される有機化合物である。3-メチルブタナール英語: 3-methylbutanal)、イソ吉草酸アルデヒドとも呼ばれる。アルデヒドの1つで、標準状態 (STP) では無色の液体で[1]、多くの食品に低濃度で含まれている[2]。商業的には、医薬品、香料、殺虫剤の製造に使用されている[3]

合成

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イソバレルアルデヒドの合成経路は様々である。一つの方法はイソブテンヒドロホルミル化である。

(CH
3
)
2
C=CH
2
+ H
2
+ CO → (CH
3
)
2
CH–CH
2
CHO

少量のピバルアルデヒド (CH
3
)
3
CCHO が副産物として生成する[3]

別の合成方法では、CuO-ZnO触媒として、イソプレノール異性化する。イソプレノールとプレノールの混合物を使用することもできる。これらの出発物質は、イソブテンホルムアルデヒドの反応から得られる[3]

(CH3)2C=CH2 + HCHO → (CH3)2CHCH2CHO

ビールでは、アミノ酸ロイシン麦芽中のレダクトンとの反応によって合成される[4]

生成と用途

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ロイシンから得られるため、イソバレルアルデヒドの生成はビールに限られない。イソバレルアルデヒドは、様々な種類の食品に含まれる風味成分であることが分かっている。チーズコーヒー鶏肉チョコレートオリーブオイルなどにも含まれている[2][5]

イソバレルアルデヒドは、多くの化合物の合成に使用される。特に、テトラメチルエチレン英語版(2,3-ジメチル-2-ブテン)の合成に使われ、ピナコールピナコロンに変換される。ピナコロンは、多くの農薬の合成に使用される。さらに、イソバレルアルデヒドとそれに対応する酸からブチジド英語版ような様々な医薬品が合成される[3]。有機合成における一般的な試薬またはビルディングブロックである[6][7]

2,4,6-トリイソブチル-1,3,5-トリオキサン

イソバレルアルデヒドを酸触媒で環状三量化すると、2,4,6-トリイソブチル-1,3,5-トリオキサン[68165-40-2]が得られる。これは、菓子、タバコ、その他の食品、歯磨き粉などに使用される香料である[8]

インターナショナル・フレバー・アンド・フレグランス (IFF) によると、イソバレルアルデヒドは食品添加物として使われている[9]

出典

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  1. ^ a b c d e f g h Lewis, R. J. Sr., ed (2007). Hawley's Condensed Chemical Dictionary (15th ed.). New York, NY: John Wiley. p. 719 
  2. ^ a b Cserháti, T.; Forgács, E. (2003). "Flavor (Flavour) Compounds: Structures and Characteristics". Encyclopedia of Food Sciences and Nutrition (2nd ed.). Elsevier Science. pp. 2509–2517.
  3. ^ a b c d Kohlpaintner, C. (2005), "Aliphatic Aldehydes", Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Weinheim: Wiley-VCH, p. 9, doi:10.1002/14356007.a01_321.pub3
  4. ^ Bamforth, C. W. (2003). "Chemistry of Brewing". Encyclopedia of Food Sciences and Nutrition (2nd ed.). pp. 440–447.
  5. ^ Owuor, P. O. (2003). "Tea: Analysis and Tasting". Encyclopedia of Food Sciences and Nutrition (2nd ed.). pp. 5757–5762.
  6. ^ Boeckman, Robert; Tusch, Douglas J.; Biegasiewiczjournal=Organic Syntheses, Kyle F. (2015). Organocatalyzed Direct Asymmetric α-Hydroxymethylation of Aldehydes. 92. pp. 320–327. doi:10.15227/orgsyn.092.0320. 
  7. ^ Poulsen, Pernille; Overgaard, Mette; Jensen, Kim L.; Jørgensenjournal=Organic Syntheses, Karl Anker (2014). Enantioselective Organocatalytic α-Arylation of Aldehydes. 91. pp. 175–184. doi:10.15227/orgsyn.091.0175. 
  8. ^ Donald Arthur Withycombe, et al. アメリカ合衆国特許第 4,093,752号, アメリカ合衆国特許第 4,191,785号 (1978 to International Flavors and Fragrances Inc).
  9. ^ http://lmrnaturals.iff.com/en/site-services/flavor-online-compendium-iframe#3-methylbutyraldehyde

関連項目

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