イセシラガイ
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イセシラガイ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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大阪市自然史博物館の標本
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Pegophysema bialata Pilsbry, 1895[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
Anodontia stearnsiana Oyama, 1954[3] | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
イセシラガイ(伊勢白貝) | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
a kind of toothless lucina 中名 斯氏无齿蛤 (sī shì wú chǐ gé) |
イセシラガイ (伊勢白貝、学名 Pegophysema bialata)[2][4][5]はツキガイ科Lucinidaeに分類される二枚貝の1種である。殻頂の蝶番部に鉸歯を持たず従来Anodontia属に分類されていた[6][7][8]。
分布
[編集]形態
[編集]貝殻は殻長約6cm以下。薄くてとてもよく膨らみ球形に近く、背縁前後はやや張り出す。内外面とも白色で光沢が無い。成長輪脈が密に描かれるが、放射肋は非常に弱い。鉸歯を持たない。内面前後端に閉殻筋痕が認められ、前側の筋痕は細長くて外套線から内側へ離れる。外套線は腹縁から離れた内側をめぐり、套線の湾入は無い[10]。軟体部はあまり知られていないが、ツキガイ科の特徴として水管は持たず、軟体の後部背側に排水孔・腹側に吸水孔が並ぶ。Anodontia類の特徴として腹縁中央付近にとても細長い足を持つ[11]。
生態
[編集]潮間帯から水深20mの泥底に生息する[12][13]。ツキガイ科の特徴として、海底面からやや深く潜り、殻の前後に細長い足を使って水路を確保して、海水の吸収と排水を行い濾過摂餌する。鰓内部に硫黄酸化菌を共生させ、海水の無害化や栄養分の吸収を行う[14]。
静岡県新居町の砂浜に打上げの片貝2枚
殻内面の閉殻筋痕は鉛筆でなぞってある
類似の種
[編集]- カブラツキガイ (Anodontia edentula) 沖縄諸島以南。殻長約5cm。貝殻は成長輪脈がやや弱く表面は比較的なめらか。淡い黄色みを帯びることがある。外套線は腹縁の近くをめぐる[15][16][17]。フィリピンなどに生息し、Imbaoと呼ばれ食用とされる[18][19]。下記のショウゴインツキガイと同種の可能性がある[20]。
- ショウゴインツキガイ (Pegophysema philippina[14][21]) 沖縄諸島以南、アフリカ東部・紅海からオーストラリア北部まで分布。マングローブの木の根元の泥底約50cmの深さの嫌気的な環境に生息し、鰓内に共生する硫黄酸化細菌が合成する有機物を栄養源とする。水管ではなく細長い足を使用して水路を確保する[22]。
関連項目
[編集]出典
[編集]- ^ 佐々木 2010, p. 38-39.
- ^ a b “Pegophysema bialata”. WoRMS. 2024年9月23日閲覧。
- ^ “Anodontia stearnsiana”. GBIF. 2024年9月23日閲覧。
- ^ 早瀬 & 木村 2020, p. 67.
- ^ 木村昭一 2020, p. 540.
- ^ 波部 & 小菅 1967, p. 145.
- ^ Taylor & Glover 2005.
- ^ 佐々木 2010, p. 316-317.
- ^ Taylor & Glover 2005, p. 305.
- ^ 奥谷 & 松隈, p. 302.
- ^ Taylor & Glover 2005, p. 287.
- ^ Higo et al.
- ^ Higo, Callomon, Goto, 1999, B612
- ^ a b Taylor & Glover 2005, p. 288.
- ^ 波部 & 小菅 1966, p. 325.
- ^ アボット et al. 1985, p. 325.
- ^ Higo, Callomon, Goto, 1999, B610
- ^ Riy 2000, p. 22.
- ^ Levata & Altamirano 2002.
- ^ Taylor & Glover 2005, p. 281.
- ^ Glover & Taylor 2007, p. 112.
- ^ 池口 2018.
参考文献
[編集]- 波部忠重・小菅貞男『原色世界貝類図鑑(Ⅱ)熱帯太平洋編』保育社、1966年。 NCID BN02353787 。
- 波部忠重・小菅貞男『標準原色図鑑全集3 貝』保育社、1967年。ISBN 4586320036。 NCID BN04374609 。
- R.T.アボット、S.P.ダンス『世界海産貝類大図鑑』波部忠重、奥谷喬司 監修・訳、平凡社、1985年3月。ISBN 4582518117。 NCID BN00814197。NDLJP:12602136。
- Shunichi Higo; Paul Callomon; Yoshihiro Goto (1999). Catalogue and Bibliography of the Marine Shell-bearing Mollusca of Japan. Elle scientific. ISBN 4-901172-02-6
- Riy Adan (2000). “Imbao, the mangrove clam”. SEAFDEC Asian Aquaculture (Southeast Asian Fisheries Development Center) 22 (4): 22, 30 .
- Primavera; Lebata (2002). “Collection of the clam Anodontia edentula in mangrove habitats in Panay and Guimaras, central Philippines”. Wetlands Ecology and Management (Kluwer Academic Publishers) 10: 363-370.
- 松隈明彦ら『世界文化生物大図鑑貝類』(改訂新版)世界文化社、2004年。ISBN 9784418049042。全国書誌番号:20617488 。
- John D. Taylor (2019). “Cryptic diversity of chemosymbiotic bivalves: A systematic revision of worldwide Anodontia (Mollusca: Bivalvia: Lucinidae)”. Systematics and Biodiversity 3 (3): 281-338. doi:10.1017/S1477200005001672.
- Glover (2007). “Diversity of chemosymbiotic bivalves on coral reefs: Lucinidae (Mollusca, Bivalvia) of New Caledonia and Lifou”. Zoosystema (Publications Scientifi ques du Muséum national d’Histoire naturelle, Paris.) 29 (1): 109-181.
- 佐々木猛智『貝類学』東京大学出版会、2010年。ISBN 9784130601900。全国書誌番号:21846371 。
- 池口明子 (2018年). “化学合成生態系からみるマングローブの文化生態学―ツキガイ類を指標とした手法の提案”. 2024年9月23日閲覧。
- 早瀬善正「佐久島(三河湾)の潮間帯貝類相」『日本貝類学会研究連絡誌ちりぼたん』第50巻第1号、日本貝類学会、2020年、33-79頁。
- 木村昭一『レッドデータブックあいち2020』愛知県、2020年 。