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BD +31°1048

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アンドリウス星から転送)
BD +31°1048
仮符号・別名 HR 1938
星座 ぎょしゃ座[1]
見かけの等級 (mv) 6.03[2]
変光星型 疑わしい[3]
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  05h 40m 35.9073696314s[4]
赤緯 (Dec, δ) +31° 21′ 29.526244158″[4]
視線速度 (Rv) -10.2 ± 3.4 km/s[4]
固有運動 (μ) -5.051 ミリ秒/[4]
赤緯: -8.187 ミリ秒/年[4]
年周視差 (π) 4.0335 ± 0.1112ミリ秒[4]
(誤差2.8%)
距離 810 ± 20 光年[注 1]
(248 ± 7 パーセク[注 1]
BD +31°1048の位置(丸印)
物理的性質
半径 3.0 R[5]
自転速度 225.0 ± 20.7 km/s[2]
スペクトル分類 B8 Hg[6]
表面温度 11,720 K[7]
色指数 (B-V) 0.04[6]
色指数 (U-B) -0.21[6]
年齢 3.75 ×108[8]
他のカタログでの名称
Andrews' Star[9], HD 37519, FK5 2425, HIP 26712, NSV 2537, SAO 58319[4]
Template (ノート 解説) ■Project

BD +31°1048或いはHR 1938HD 37519は、ぎょしゃ座恒星である[1]見かけの等級は6.03と、肉眼で辛うじてみえる明るさである[2]ガイア衛星が測定した年周視差を基に計算すると、太陽からの距離はおよそ810光年である[4]閃光星ではないかと疑われているが、早期型のスペクトルと整合せず、詳細不明の特異な変光星として関心を持たれている[10][11]

特徴

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BD +31°1048は、青白く輝くB型星で、スペクトル型はB8 Hgとされ、水銀による吸収が強い化学特異星ではないかとみられている[6]。自転速度は速く、225km/s以上と見積もられている[2]

閃光

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1964年3月1日アーマー天文台英語版アンドルーズ英語版が12インチシュミット望遠鏡でぎょしゃ座の領域を撮影した際に、6等星だったBD +31°1048が3等級程明るくなっていることを発見した。しかし、およそ2時間後に撮影したときには、元の明るさに戻っていた。アンドルーズは、同じ領域を撮影したアーマー天文台の写真乾板を、1955年まで遡って調べたが、変光は確認されなかった。その後、観測を繰り返し、2週間後に再び2等級近く明るくなった様子をとらえ、アンドルーズはBD +31°1048が変光星だと確信した[10][1]。BD +31°1048は、変光の発見者の名前から“Andrews' Star”とも呼ばれる[9][11]。増光幅と変化の速さから、アンドルーズはBD +31°1048の変光はフレアによるもの、つまり閃光星ではないか考えた。しかし、閃光星は赤色矮星と相場が決まっており、B型星のBD +31°1048がフレアを起こす仕組みはわからなかった。そこで、アンドルーズはみえない閃光星の伴星が存在するのではないかと予測した[10][1]

アンドルーズの発見から間もなく、エジンバラ天文台英語版と、グリニッジ天文台のハーストモンスー観測所がBD +31°1048のスペクトルを取得したが、いずれも普通のB型星のもので、フレアを起こすような天体にはみえなかった[12][1]。翌年にはメキシコ国立天文台のメンドーサ(Eugenio Mendoza)が19夜にわたり多色測光を行ったが、結果は、この間の明るさは一定というものだった[13][1]。また、スミソニアン天体物理観測所のソロモン(Leonard Solomon)は、132枚のハーヴァード大学天文台の写真乾板と、アンドルーズが増光をとらえたのと同じ日の、ベーカー=ナン衛星追跡カメラが撮影したフィルムを調べた結果、やはり明るさの変化はみられないと結論付けた[14][1]。アンドルーズらは、1993年にラ・シヤ天文台赤外線望遠鏡で再び観測を行ったが、新たな知見は得られなかった[1]

結局、1964年のアーマー天文台の観測以外に、BD +31°1048で明らかな変光の証拠をとらえたものはなく、BD +31°1048は確定した変光星とはみなされず、変光星総合カタログでも新しい変光星候補に止まっている[1][3]。BD +31°1048の変光はフレアとは別の、うしかい座ζ星で1905年に報告された、突如新星状のスペクトルが現れ、急速に元へ戻った例に似た、「フラッシュ」ではないかと考える者もいる[15]。また、スミソニアン天体物理観測所のジャッキア(Luigi Jacchia)は、望遠鏡スパイダーの回折光と重なったことによる人工的な増光である可能性を指摘している[14][1]

脚注

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注釈

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  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j Andrews, A. D. (1996-07), “A Re-Examination of the Suspected Early-Type Flare Star BD+31° 1048 (BS 1938) in Auriga: a Skeleton from the Cupboard”, Irish Astronomical Journal 23 (2): 189-193, Bibcode1996IrAJ...23..189A 
  2. ^ a b c d Paunzen, E.; et al. (2013-02), “A photometric study of chemically peculiar stars with the STEREO satellites - II. Non-magnetic chemically peculiar stars”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 429 (1): 119-125, Bibcode2013MNRAS.429..119P, doi:10.1093/mnras/sts318 
  3. ^ a b Samus, N. N.; et al. (2009-01), “General Catalogue of Variable Stars”, VizieR On-line Data Catalog: B/gcvs, Bibcode2009yCat....102025S 
  4. ^ a b c d e f g h HD 36780 -- Variable Star”. SIMBAD. CDS. 2021年3月24日閲覧。
  5. ^ Pasinetti Fracassini, L. E.; et al. (2001-02), “Catalogue of Apparent Diameters and Absolute Radii of Stars (CADARS) - Third edition - Comments and statistics”, Astronomy & Astrophysics 367: 521-524, Bibcode2001A&A...367..521P, doi:10.1051/0004-6361:20000451 
  6. ^ a b c d Renson, P.; Manfroid, J. (2009-05), “Catalogue of Ap, HgMn and Am stars”, Astronomy & Astrophysics 498 (3): 961-966, Bibcode2009A&A...498..961R, doi:10.1051/0004-6361/200810788 
  7. ^ Glagolevskij, Yu. V. (1994), “A new list of effective temperatures of chemically peculiar stars. II”, Bulletin of the Special Astrophysical Observatory 38: 152-168, Bibcode1994BSAO...38..152G 
  8. ^ Gontcharov, G. A. (2012-11), “Spatial distribution and kinematics of OB stars”, Astronomy Letters 38 (11): 694-706, Bibcode2012AstL...38..694G, doi:10.1134/S1063773712110035 
  9. ^ a b Schmitz, Marion; Mead, Jaylee M.; Gezari, Daniel Y. (1987), Infrared Source Cross-Index, NASA Reference Publication 1182 (1 ed.), NASA Scientific and Technical Information Branch, p. 68, https://books.google.co.jp/books?id=ioWYemJ3FO0C 
  10. ^ a b c Andrews, A. D. (1964-06), “A Suspected Flare Star in Auriga”, Irish Astronomical Journal 6 (6): 212-214, Bibcode1964IrAJ....6..212A 
  11. ^ a b R. バーナム Jr. 著、斉田博 訳『星百科大事典 改訂版』地人書館、1988年2月10日、663頁。ISBN 4-8052-0266-1 
  12. ^ Mammano, A. (1966-05), “Spectrum of the Early-Type Flare Star BD +13°1048”, Information Bulletin on Variable Stars 134: 1, Bibcode1966IBVS..134....1M 
  13. ^ Mendoza V., Eugenio E. (1965-10), “Multicolor Photometry of an Early-Type Flare Star”, Astrophysical Journal 142: 1270-1271, Bibcode1965ApJ...142.1270M, doi:10.1086/148401 
  14. ^ a b Solomon, L. H. (1966-09), “Flare Activity in a B-Star?”, Irish Astronomical Journal 7: 226-227, Bibcode1966IrAJ....7..226S 
  15. ^ Nielsen, Alex V. (1965-03), “Spectral Variation in an A2 Star”, Irish Astronomical Journal 7: 14, Bibcode1965IrAJ....7...14N 

関連項目

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外部リンク

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座標: 星図 05h 40m 35.9073696314s, +31° 21′ 29.526244158″