アログリプチン
IUPAC命名法による物質名 | |
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臨床データ | |
販売名 |
Nesina, Vipidia Kazano, Vipidomet (with metformin) Oseni, Incresync (with pioglitazone) |
胎児危険度分類 |
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法的規制 |
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薬物動態データ | |
生物学的利用能 | 100% |
血漿タンパク結合 | 20% |
代謝 | Limited, hepatic (CYP2D6- and 3A4-mediated) |
半減期 | 12–21 hours |
排泄 | Renal (major) and fecal (minor) |
識別 | |
CAS番号 | 850649-62-6 |
ATCコード | A10BH04 (WHO) |
PubChem | CID: 11450633 |
ChemSpider | 9625485 |
UNII | JHC049LO86 |
KEGG | D06553 en:Template:keggcite |
ChEBI | CHEBI:72323en:Template:ebicite |
ChEMBL | CHEMBL376359en:Template:ebicite |
別名 | SYR-322 |
化学的データ | |
化学式 | C18H21N5O2 |
分子量 | 339.39 g/mol |
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アログリプチン(Alogliptin)は、武田薬品工業の子会社が開発したDPP-4阻害薬に属する経口血糖降下薬の一つである[1]。商品名ネシーナ。他のグリプチン系薬剤同様、体重増加をほとんど起こさず、低血糖を発現する危険が少なく、血糖低下作用は比較的弱い。
効能・効果
[編集]2型糖尿病
副作用
[編集]重大な副作用として添付文書に記載されているものは、低血糖、急性膵炎、肝機能障害、 黄疸、スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)、多形紅斑、横紋筋融解症、腸閉塞、間質性肺炎である[2]。臨床試験でも軽度の低血糖症が観察されている[3][4][5]。
アログリプチンは体重増加をきたさず、冠血管イベントや心不全を増加させない[6][7]。
禁忌
[編集]添付文書による禁忌[8]。
- 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者。
- 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者。
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
臨床試験
[編集]アログリプチンはDPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)阻害薬であり、インクレチンホルモンであるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)およびGIP(グルコース依存性インスリン分泌促進ペプチド)の不活性化を遅延させる[9]。
2011年に報告された無作為化比較臨床試験は、新たに診断された2型糖尿病患者にアログリプチン(4用量)、偽薬、ボグリボースのいずれかを割り付けて治療効果(12週後のHbA1c)を確認するものであり、日本で実施された。アログリプチンの効果は偽薬またはボグリボースの効果を上回った[3]。
2012年に報告された臨床試験は、新たに診断された2型糖尿病日本人患者における「極低脂肪・カロリーの伝統的和食」に対するアログリプチンの非劣性を示そうとするものであった。その結果は、アログリプチンと食事療法は共に、HbA1cおよび血糖値の数値を改善することが示された。アログリプチンはボディマス指数(BMI)を変化させなかったが、食事療法はBMIを有意に減少させた[4]。
2011年に報告された無作為化臨床試験は、メトホルミン+ピオグリタゾンに対するアログリプチンの上乗せ効果と、メトホルミン+ピオグリタゾンでのピオグリタゾンの増量効果とを比較するものであった。その結果、アログリプチンの上乗せ効果はピオグリタゾンの増量効果を上回っていた[5]。
2013年の報告された大規模臨床試験「EXAMINE」では、プラセボとアログリプチンでは心血管イベントの発生率に差が見られなかった[10] 。
承認取得状況
[編集]日本では2008年9月に承認申請資料がPMDAに提出され[11]、2010年4月にまず「2型糖尿病のうち、食事療法+運動療法のみまたは食事療法+運動療法+α-グルコシダーゼ阻害剤 で充分な効果が得られない場合」について承認された[12]。その後、2010年8月に「食事療法+運動療法+チアゾリジン系薬剤で充分な効果がない場合」について[13]、2011年2月に「食事療法+運動療法+スルホニルウレア系薬剤または食事療法+運動療法+ビグアナイド系薬剤で充分な効果がない場合」について[14]追加承認され、2014年5月、効能・効果が「2型糖尿病」に変更された[15]。また、ピオグリタゾンとの合剤が2011年7月[16]に、メトホルミンとの合剤が2016年9月[17]に承認された。
2007年12月、米国FDAに対してアログリプチンの承認申請(NDA)が提出された。第III相臨床試験[18]の結果を受けてのものであった。しかし最初の申請は却下され、2011年7月に再度NDA(アログリプチン単剤とアログリプチン・ピオグリタゾン合剤の2種類)が提出された[19]。2012年、FDAは再度、データ不足を理由に申請を却下した[19]。2013年1月、FDAは「食事療法・運動療法で効果不充分な成人2型糖尿病」についてアログリプチン単剤、アログリプチン・メトホルミン合剤、アログリプチン・ピオグリタゾン合剤の3種類の薬剤を販売承認した[20]。
欧州でも販売承認申請が提出されたが、2009年6月にデータ不足を理由に取下げられた[11]。2013年9月、ECは「既存薬で効果不十分な場合の成人2型糖尿病」を対象としてアログリプチン単剤、アログリプチン・メトホルミン合剤、アログリプチン・ピオグリタゾン合剤の販売を承認した[21]。
出典
[編集]- ^ Feng, Jun; Zhang, Zhiyuan; Wallace, Michael B.; Stafford, Jeffrey A.; Kaldor, Stephen W.; Kassell, Daniel B.; Navre, Marc; Shi, Lihong et al. (2007). “Discovery of alogliptin: a potent, selective, bioavailable, and efficacious inhibitor of dipeptidyl peptidase IV”. J. Med. Chem. 50 (10): 2297–2300. doi:10.1021/jm070104l. PMID 17441705.
- ^ “ネシーナ錠25mg/ネシーナ錠12.5mg/ネシーナ錠6.25mg 添付文書” (2016年10月). 2016年11月4日閲覧。
- ^ a b Seino, Yutaka; Fujita, Tetsuya; Hiroi, Shinzo; Hirayama, Masashi; Kaku, Kohei (September 2011), “Efficacy and safety of alogliptin in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus: a randomized, double-blind, dose-ranging comparison with placebo, followed by a long-term extension study (abstract only)”, Current Medical Research and Opinion 27 (9): 1781–1792, doi:10.1185/03007995.2011.599371, PMID 21806314 April 26, 2012閲覧。
- ^ a b Kutoh, Eiji; Ukai, Yasuhiro (2012), “Alogliptin as an initial therapy in patients with newly diagnosed, drug naïve type 2 diabetes: a randomized, control trial (abstract only)”, Endocrine, January 17, 2012, doi:10.1007/s12020-012-9596-0, PMID 22249941 April 26, 2012閲覧。
- ^ a b Bosi, Emanuele; Ellis, G.C.; Wilson, C.A.; Fleck, P.R. (October 2011), “Alogliptin as a third oral antidiabetic drug in patients with type 2 diabetes and inadequate glycaemic control on metformin and pioglitazone: a 52-week, randomized, double-blind, active-controlled, parallel-group study”, Diabetes, Obesity and Metabolism 13 (12): 1088–1096, October 27, 2011, doi:10.1111/j.1463-1326.2011.01463.x April 26, 2012閲覧。
- ^ White WB, Cannon CP, Heller SR, et al. (October 2013). “Alogliptin after acute coronary syndrome in patients with type 2 diabetes”. N. Engl. J. Med. 369 (14): 1327–35. doi:10.1056/NEJMoa1305889. PMID 23992602.
- ^ White WB, Zannad F (January 2014). “Saxagliptin, alogliptin, and cardiovascular outcomes”. N. Engl. J. Med. 370 (5): 484. doi:10.1056/NEJMc1313880. PMID 24482824.
- ^ 武田薬品工業株式会社: “ネシーナ錠25mg/ネシーナ錠12.5mg/ネシーナ錠6.25mg 添付文書” (PDF) (2018年7月). 2019年4月16日閲覧。
- ^ Takeda Type 2 Diabetes Therapies, NESINA (alogliptin) and Fixed-Dose Combinations KAZANO (alogliptin and metformin HCl) and OSENI (alogliptin and pioglitazone), Are Now Available in Pharmacies in the United States
- ^ White WB, et al. Alogliptin after Acute Coronary Syndrome in Patients with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2013; 369: 1327-1335.
- ^ a b “GEN News Highlights: Takeda Pulls MAA for Type 2 Diabetes Therapy”. Genetic Engineering & Biotechnology News. (June 4, 2009)
- ^ “日本における新製品5品目の製造販売承認取得について”. 武田薬品工業 (2010年4月16日). 2015年3月26日閲覧。
- ^ “日本における2型糖尿病治療剤「ネシーナ錠」のチアゾリジン系薬剤との併用効能追加の承認取得について”. 武田薬品工業 (2010年8月20日). 2015年3月26日閲覧。
- ^ “日本における2型糖尿病治療剤「ネシーナ」のスルホニルウレア系薬剤との併用効能追加およびビグアナイド系薬剤との併用効能追加の承認取得について”. 武田薬品工業 (2011年2月23日). 2015年3月26日閲覧。
- ^ “2型糖尿病治療剤「ネシーナ」の日本における効能・効果の「2型糖尿病」への変更に関する承認取得について”. 武田薬品工業 (2014年5月23日). 2015年3月26日閲覧。
- ^ “日本における2型糖尿病治療剤「リオベル配合錠LD」および「リオベル配合錠HD」(ネシーナとアクトスの合剤)の製造販売承認取得について”. 武田薬品工業 (2011年7月1日). 2015年3月26日閲覧。
- ^ “2型糖尿病治療剤「イニシンク配合錠」の日本における製造販売承認取得について”. 武田薬品工業 (2016年9月28日). 2016年11月4日閲覧。
- ^ "Takeda Submits New Drug Application for Alogliptin (SYR-322) in the U.S." (Press release). Takeda Pharmaceutical Company. 4 January 2008. 2008年1月9日閲覧。
- ^ a b Grogan, Kevin (April 26, 2012), “FDA wants yet more data on Takeda diabetes drug alogliptin”, PharmaTimes (PharmaTimes): PharmaTimes online April 26, 2012閲覧。
- ^ “2型糖尿病治療剤NESINA(アログリプチン)、OSENI(アログリプチンとピオグリタゾン塩酸塩の合剤)、 およびKAZANO(アログリプチンとメトホルミン塩酸塩の合剤)の米国における販売許可取得について”. 武田薬品工業 (2013年1月26日). 2015年3月26日閲覧。
- ^ “欧州における2型糖尿病治療剤VipidiaTM(アログリプチン)、VipdometTM(アログリプチンと メトホルミン塩酸塩の合剤)、 およびIncresyncTM(アログリプチンとピオグリタゾン塩酸塩の合剤)の 販売承認取得について”. 武田薬品工業 (2013年9月24日). 2015年3月26日閲覧。