プシコース
D-Psicose | |
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(3R,4R,5R)-1,3,4,5,6-pentahydroxyhexan-2-one | |
別称 D-ribo-2-Hexulose,Allulose | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 23140-52-5, 16354-64-6(L体) |
PubChem | 90008 |
日化辞番号 | J56.261K |
MeSH | psicose |
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特性 | |
化学式 | C6H12O6 |
モル質量 | 180.16 g mol−1 |
融点 |
109°C |
比旋光度 [α]D | 16.3°(c=0.94, H2O, 20°C)[1] |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
D-プシコース (D-psicose, Psi, D-allulose, D-ribo-2-hexulose) は、六炭糖およびケトースに分類される単糖の一種。D-フルクトースの3位のエピマーである。名称はプシコースの初期の名称であるpseudo-fructoseの略記法であるΨ-fructoseから来ている[2]。アルロース (allulose) とも呼ばれる[3]。
当量のスクロース(ショ糖)のわずか0.3%のカロリーしかエネルギーとして利用されないという特徴がある[4]。
生成
[編集]D-タガトース3-エピメラーゼ (DTE) によりD-フルクトースから大量に合成され、様々な希少糖生産の出発物質となっている[5][6]。また、食品加工の工程中でサトウキビ搾汁およびスクロース並びにフルクトースから加熱反応で生成される経路が存在している[7]。
水溶液中では異性化を起こし、環状構造との混合物となる(変旋光)。平衡状態に達したときに最も存在比が高いのは、α-フラノース体である。
D-Psicose | ||
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構造式 | ハース投影式 | |
α-D-Psicofuranose |
β-D-Psicofuranose | |
α-D-Psicopyranose |
β-D-Psicopyranose |
機能など
[編集]植物
[編集]この物質を含むことが知られている植物はズイナ属のみである[8]。また、多くの植物の生育を阻害することが知られている[9]。
動物
[編集]インスリン分泌作用[10]、動脈硬化を防止する作用[11]などが知られている。
砂糖の7割程度の甘味があるが、ほぼエネルギー源とならない。ラットによる動物実験で「食後の血糖値上昇を緩やかにする」[12]、「内臓脂肪の蓄積を抑える」[13]、「動脈硬化になりにくい」[14]といった研究結果が報告されている。しかし、加熱調理によりプシコースが減少することから食後の血糖値上昇抑制作用は影響を受け、非加熱状態と比較して効果が減少することが報告されている。かりんとうなどの高温での調理が行われるものでは、効果がより大きく減少する[15]。
高用量では、線虫C.elegansの成長を阻害する作用も確認されている[16]。
脚注
[編集]- ^ 東京化成工業. “D-Psicose”. 2010年8月13日閲覧。
- ^ 国際希少糖学会. “Allulose-psicose nomenclature usage”. 2015年1月30日閲覧。
- ^ 高高峰啓, 飯田哲郎, 大隈一裕, 何森健「【総説-受賞論文-】 アルカリ異性化を用いた希少糖含有シロップの製造方法および生理活性に関する検討」『応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌』第6巻第1号、日本応用糖質科学会、2016年2月、37-42頁、CRID 1390282763105195648、doi:10.5458/bag.6.1_37、ISSN 2185-6427。
- ^ Matsuo, T.; Suzuki, H.; Hashiguchi, M.; Izumori, K. (2002). “D-psicose is a rare sugar that provides no energy to growing rats”. J. Nutr. Sci. Vitaminol.(Tokyo) 48 (1): 77-80. PMID 12026195.
- ^ Izumori, K. (2002). “Bioproduction strategies for rare hexose sugars”. Naturwissenschaften 89 (3): 120-124. doi:10.1007/s00114-002-0297-z .
- ^ D10-3 生物・化学的手法によるL-ラムノースからの1-デオキシD-プシコースの生産(発酵生理学・発酵工学,一般講演) 日本生物工学会大会講演要旨集 平成19年度, 108, 2007-08-02]
- ^ 食品製造過程における希少糖プシコースの生成 香川県産業技術センター研究報告 10号, p.56-58(2010-06)
- ^ “ズイナ”. 香川大学希少糖研究センター. 2014年6月8日閲覧。
- ^ Norman K. Matheson; David K. Myers (1998). “Inhibition of germination by glucose analogues that are hexokinase substrates”. Phytochemistry 48 (2): 241-248. doi:10.1016/S0031-9422(97)01094-7. ISSN 0031-9422 .
- ^ Matsuo, T.; Izumori, K. (2006). “Effects of dietary D-psicose on diurnal variation in plasma glucose and insulin concentrations of rats”. Biosci. Biotechnol. Biochem. 70 (9): 2081-2085. doi:10.1271/bbb.60036.
- ^ Murao, K.; Yu, X.; Cao, W. M.; Imachi, H.; Chen, K.; Muraoka, T.; Kitanaka, N.; Li, J.; Ahmed, R. A.; Matsumoto, K.; Nishiuchi, T.; Tokuda, M.; Ishida, T. (2007). “D-Psicose inhibits the expression of MCP-1 induced by high-glucose stimulation in HUVECs”. Life Sci. 81 (7): 592-599. doi:10.1016/j.lfs.2007.06.019.
- ^ 松尾達博「ラットにおけるD‐プシコースの血糖値上昇抑制作用」『日本栄養・食糧学会誌』第59巻第2号、日本栄養・食糧学会、2006年、119-121頁、CRID 1390001206291974784、doi:10.4327/jsnfs.59.119、ISSN 02873516。
- ^ 山田貴子, 飯田哲郎, 林範子, 大賀浩史, 大隈一裕, 何森健「異性化糖食で飼育したラットの体脂肪蓄積に対するD‐プシコースの作用」『日本食品科学工学会誌』第57巻第6号、日本食品科学工学会、2010年、263-267頁、CRID 1390282681385664128、doi:10.3136/nskkk.57.263、ISSN 1341-027X。
- ^ 徳田雅明, 希少糖D-プシコースによる動脈硬化・肥満の防止, 香川大学 2023年11月29日閲覧。
- ^ 松尾達博, 路暢「D-プシコースの食後血糖値上昇抑制作用は加熱調理によって阻害される」『香川大学農学部学術報告』第64巻、香川大学農学部、2012年2月、31-34頁、CRID 1050282813714809600、ISSN 0368-5128、NAID 120007012823。
- ^ Sato, Masashi and Kurose, Hiroyuki and Yamasaki, Toru and Izumori, Ken (2008). “Potential anthelmintic: d-psicose inhibits motility, growth and reproductive maturity of L1 larvae of Caenorhabditis elegans”. Journal of natural medicines 62 (2): 244-246. doi:10.1007/s11418-007-0220-1.
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 香川大学希少糖研究センター
- 食品に含まれる希少糖プシコースの定量法の確立 香川県産業技術センター 研究報告 (7), 64-66, 2007-06-00