アニマルカフェ
アニマルカフェ (英語: animal cafe)、あるいは動物カフェ、ペットカフェは人々が飲食をしながら動物に触れることができる喫茶店[1]。世界で最初の猫カフェは1998年に台湾で誕生したとされる[2][3]。日本においては2012年時点で、過去10年で主に東京にて150店舗が開店するという動きが見られた[2]。
歴史
[編集]ネコをコンセプトにした最初のアニマルカフェは台湾で生まれたとされる[注 1]。アニマルカフェは台湾が発祥だが、当初は日本で人気があった。ある日本人観光客が台湾を訪れてそのアニマルカフェの潜在性を発見し、帰国後の2004年に大阪で日本初のアニマルカフェを開業した[4]。今日では、日本は世界で最もアニマルカフェが多い国として知られている。西洋諸国ではスペイン、ドイツ、フランス、アメリカ、オーストラリア、イギリスなどにもあるが、アニマルカフェはアジア諸国での方がまだ根強い人気を誇る[4]。台湾や日本でアニマルカフェが開店した当初は、主に動物たちと過ごしたいだけの人々のためのカフェだった。しかし、最近では捨てられたり迷子になったりした動物のためのカフェも複数存在する。そのようなアニマルカフェは、家や食べ物だけでなく、カフェの利用客に受け入れられる機会を提供することで、そういった動物たちを救う方法として活用されている[5]。
種類
[編集]個人によって動物の好みは異なるため、世界には多様なアニマルカフェがある。
猫カフェ
[編集]最初の動物カフェは台湾の猫カフェだったため、猫カフェは最もありふれたアニマルカフェの一つである。猫カフェは、特に日本、台湾、韓国などのアジア諸国で簡単に開業されうる、基本的なアニマルカフェのようなものである。猫カフェではさまざまな種類の猫が見られる。通常は猫と遊べる遊び場と、猫がおらず飲食する普通の区画に分かれている[6]。
猫カフェの中には、猫と人間との良好な相互作用を生み出すところや、野良猫や捨て猫の世話や餌やりをする猫カフェもある[4]。 猫カフェはその猫たちに家や食べ物、そして愛情を提供する。また、猫カフェを定期的に訪れ、猫の飼育に関心がある利用客は、猫を飼う可能性がある。猫カフェのスタッフは、猫のための完璧な里親を見つけようと試みている[4]。
ドッグカフェ
[編集]ドッグカフェもよく見受けられる、とてもありふれたアニマルカフェであり、イヌ好きの客は、ドッグカフェで様々なイヌたちと一緒に楽しいひと時を過ごせる。ドッグカフェは猫カフェに比べて、イヌの特性上、活発で騒がしく、動きに満ちている。
ドッグカフェも猫カフェのように、飼育能力のある利用客へ提供する里親制度がある。ドッグカフェは、引き取るであろう客が捨て犬とつながる良い体験を提供する聖域と見なすことができる[7]。
ロサンゼルスには、保護犬に最適な家庭を見つけることを目的としたドッグカフェがある[8]。利用者は犬と時間を過ごし、将来的には彼らが保護犬の新たな飼い主になる可能性もある。
アライグマカフェ
[編集]アライグマカフェといった珍しいアニマルカフェもある。韓国のアライグマカフェでは、アライグマと一緒に遊んだり、飲食したりできる。このカフェは2部屋に分かれているため、アライグマと遊ぶか、飲食のみを楽しむかを選ぶことができる[9]。アライグマは鋭い爪と歯を持っているため、カフェはアライグマからのいかなる損害にも責任を負わないとの警告がある。
ハリネズミカフェ
[編集]2016年、世界初のハリネズミカフェが東京で開業した。その珍しさから、多くの外国人がそのカフェを訪れるが、同時に動物保護の観点からこのカフェを批判する者もいる[10]。
ヒツジカフェ
[編集]韓国には2011年に創業したヒツジカフェがあり、シュガーとハニーと名付けられたヒツジを飼っている世界初のヒツジカフェである。彼らにエサを与えることも認められている[11]。利用客は食事を楽しみながらヒツジを観賞できるが、ヒツジは天候の問題のため、夏の間はカフェにいられない。
ウサギカフェ
[編集]ウサギカフェは日本にある。ほとんどのウサギは、店内で他のネコやイヌのようにうろついているわけではないが、ケージの中に置かれていることが多い。しかし、このカフェはウサギと一緒に付近を散歩する機会を提供することがある[12]。
バードカフェ
[編集]日本にはフクロウ、オウム、ハヤブサ、タカなど数種類のバードカフェ (または鳥カフェとも)があるが[13]、スタッフの教育が行き届いているため危険ではなく、人を襲うこともあまりない。店員は利用客に、安全な鳥の扱い方や餌やりの仕方を実演する。また、スタッフの許可があれば、鳥と一緒に写真撮影も可能である[14]。
爬虫類カフェ
[編集]カンボジアには有名な爬虫類カフェがあり、カメやヘビ、イグアナ (、クモ)など、さまざまな種類の爬虫類が見られる。そのカフェでは、寛いだり、飲食したり、多様な種類の爬虫類について知ることができ、写真撮影も可能である。店主はカンボジア農林水産省の許可を得て2018年に開業した[15]。カフェのオーナーは、動物福祉を第一の念頭として見なしている。[要出典]
役割と課題
[編集]当初はアパートでペットを飼えない人やルームメイトが動物アレルギーなどの理由で動物と触れ合う場となっていたが、猫カフェなどは動物愛護団体と協力して猫の里親探しの場としての役割も担っている場合もある[3]。ただ、飲食店と動物の展示(飼育を含む)という衛生面では相反する業態を複合させたものであり、営業形態は動物の「展示」に当たるため、日本では動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)に基づく動物取扱業の登録が必要である。狭い店内で多数の動物が飼育されると、伝染病や多頭飼育崩壊の可能性もあるので注意を要する[16][17]。
課題
[編集]動物保護の観点からは異論も少なくない。以下のような例が挙げられる。
- 動物専門家の中には、アニマルカフェは動物に良い影響を与える可能性はあるが、それらは動物たちの福祉に注意を払うよりも人々にペットの購入を勧めがちである、とする者もいる[18]。
- 一部の動物はカフェでの生活様式に完全に適合していないため、アニマルカフェの経営手法は動物の安全性にとって非常に有害だと主張する者もいる[19]。
- 日本のアニマルカフェの訪問客の中には、鳥の安全性や福祉に対する懸念を訴える人もいる[20]。
- 日本の動物愛護家たちはまた、バードカフェが人間を楽しませるために鳥を虐待していると主張する[21]。その結果、新たな規則を強化してアニマルカフェの営業時間を制限する形で、日本政府は動物愛護法を大幅に強化した。この規制強化は、カフェの動物たちが適切な人間の扱いと世話を確実に受けられるようにすることを目的としている[22]。
実際に、世界的にもいくつかの事例があり、タイの猫カフェでは7匹の猫が安全保護の不備で死んだことでオーナーが動物保護法違反で警察に逮捕された[23]。このような福祉と安全の問題は韓国でも見られ、例えば、カフェにいる動物は、夜遅くに閉店するまで眠ることができない[24]。このような動物の安全性の問題は、アニマルカフェが比較的最近の現象であるため、韓国にはそれに対する規制がないために生じている[25]。
さらに、カフェで動物により怪我をさせられた利用客の中には、カフェのオーナーが怪我の責任を一切負わない場合の安全ポリシーについて不満を述べる人もいる[24]。
役割
[編集]アメリカ初の猫カフェである「キャット・タウン・カフェ」やニューヨーク初の猫カフェである「リトル・ライオン」は、動物愛護団体や猫の保護施設と提携したり、里親を探すための施設を併設したりするなど、ネコの里親探しの場所としての役割も果たしている[3]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 「動物カフェ」『デジタル大辞泉』 。コトバンクより2020年10月20日閲覧。
- ^ a b c Galloway, Lindsey (2012年4月3日). “Feline fun in Japan's cat cafes” (英語). 2018年9月24日閲覧。
- ^ a b c d 猫カフェ、アメリカに上陸 動物愛護団体と協力し、里親探しもサポート NewSphere、2021年3月31日閲覧。
- ^ a b c d “The Origin of Cat Cafes and Their Benefits to Cats and Humans - Bearwallowcafe” (英語). Bearwallowcafe. (2017年9月12日) 2018年9月24日閲覧。
- ^ “What are Animal Cafés?” (英語). Canidae 2018年10月15日閲覧。
- ^ Overell, Rosemary. “Australia's first cat cafe: stroke of genius or needless fluff?” (英語). The Conversation 2018年10月15日閲覧。
- ^ “9 Cutest Animal Cafes Around the World | SmarterTravel” (英語). SmarterTravel. (2017年7月20日) 2018年9月24日閲覧。
- ^ “15 Insane Animal Cafés Around the World | Food Network Canada” (英語). foodnetwork.ca 2018年9月24日閲覧。
- ^ “Animal Cafes Around Seoul” (英語). myHUBS. (2017年4月2日)
- ^ “東京ヤバイ。世界初「ハリネズミカフェ」に海外から賛否両論” 2020年12月21日閲覧。
- ^ admin. “Thanks Nature Café - Sheep Cafe at Hongdae Seoul, For A Baa-Baa-ly Good Time - DanielFoodDiary.com” (英語). danielfooddiary.com. 2018年9月24日閲覧。
- ^ “Nine cutest animal cafes around the world” (英語). USA TODAY 2018年9月24日閲覧。
- ^ “Animal cafes” (英語). WhereInTokyo.com 2018年9月24日閲覧。
- ^ “Akiba Fukurou: Akihabara” (英語). WhereInTokyo.com. 2018年10月15日閲覧。
- ^ “Inside the Cambodia coffee shop where you can hang out with reptiles” (英語). ABC News (2018年9月8日). 2018年10月29日閲覧。
- ^ “急増する[動物ふれあいカフェ]の闇。癒やされるのは人間だけで動物には負担”. 2020年10月5日閲覧。
- ^ “女性に大人気「フクロウカフェ」のあぶない実態”. 2020年10月5日閲覧。
- ^ Kerr, Millie (2017年1月3日). “Conservationists get their talons out for Japan's owl cafes” (英語). The Guardian 2018年10月15日閲覧。
- ^ Bates, Claire (2016年9月13日). “Are cat cafes good for cats?” (英語). BBC News 2018年10月15日閲覧。
- ^ “Owl cafes in Japan draw ire of animal safety activists” (英語). Global News 2018年9月26日閲覧。
- ^ Ryall, Julian (2016年9月8日). “Outrage over Japan's 'owl cafés'” (英語). The Telegraph. ISSN 0307-1235 2018年10月15日閲覧。
- ^ “Loosening upon animal cafes | The Japan Times” (英語). The Japan Times 2018年9月26日閲覧。
- ^ “Why you should stop going to animal cafes”. NewsComAu 2018年9月26日閲覧。
- ^ a b “Wild animal cafes in Seoul operate in a risky legal blindspot” 2018年9月26日閲覧。
- ^ “Animal cafes remain outside legal boundaries” (英語). koreatimes. (2016年9月27日) 2018年10月29日閲覧。