アクアドバンテージ・サーモン
アクアドバンテージ・サーモン(英語:AquAdvantage salmon)は、アクアバウンティ・テクノロジーズ (AquaBounty Technologies) 社が開発した遺伝子組み替えされたアトランティックサーモンである。オーシャンパウトからプロモーター、キングサーモンから成長ホルモンの遺伝子が、アトランティックサーモンの遺伝子に付け加えられた。これらの遺伝子によって、春と夏の間だけではなく通年での成長を可能とした。これらの組み替えの目的は、個体の差によらず成長するスピードと、成長後の大きさを最大にすることを目的としている。これまでの品種改良種では3年かかっていた成長が、より早くなり16か月から18か月で市場に出荷できるサイズとなる[1][2]。
経緯
[編集]2013年11月25日、カナダ環境省はサケ卵の商業生産を許可した。しかしこれは食用としての許可ではなく、それはまた別の許可が必要となる[3][4]。
2015年11月19日、アメリカ食品医薬品局(FDA)は遺伝子組み換え動物食品として初の食用認可を行った[5]。FDA動物用医薬品センターのバーナデット・ダナム所長は「このサケを原料とした食品も食用として安全であり、承認に必要な規制要件は満たされている」と述べている[6]。遺伝子組み換えについてのラベル表示は義務づけられなかった[7]。
2017年、カナダで遺伝子組み換えであることを表示せずに流通していることが確認され、環境保護団体が販売を中止する要請を出すなどの動きがあった[8]。2019年には輸入制限が解除されカナダから受精卵をアメリカに輸入することが可能になり、アメリカでの養殖が可能になった[9]。2021年5月、アメリカでの販売も開始された[10]。
2023年2月、アクアバウンティ社のCEOは、カナダのプリンスエドワード島での遺伝子組み換えアトランティックサーモンの生産を中止し、遺伝子組み換えではないサケ卵の生産に転換することを発表した[11]。
脚注
[編集]- ^ Blumenthal, Les (August 2, 2010). “Company says FDA is nearing decision on genetically engineered Atlantic salmon”. The Washington Post August 2010閲覧。
- ^ "Salmobreed challenges GMO Salmon" (PDF) (Press release). Salmobreed. November 2011. 2013年1月18日閲覧。
- ^ 遺伝子組換えサケが開発されていると聞いていますが、どのような状況ですか。(国立研究開発法人農業生物資源研究所 遺伝子組換え研究センター 遺伝子組換え研究推進室 )[リンク切れ]
- ^ “AQUABOUNTY CLEARED TO PRODUCE SALMON EGGS IN CANADA FOR COMMERCIAL PURPOSES”. 2014年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年11月23日閲覧。
- ^ “成長速度2倍!遺伝子組み換えサケが食卓に”. 東洋経済ONLINE (2015年12月9日). 2023年10月23日閲覧。
- ^ “米、遺伝子組み換えサケに食用認可”. AFPBB News (2015年11月20日). 2023年10月23日閲覧。
- ^ “米当局、遺伝子組み換えサケを初認可 表示義務なし”. CNN.co.jp (2015年11月20日). 2023年10月23日閲覧。
- ^ “遺伝子組み換えサケを非表示で販売、環境団体が中止要請 カナダ”. AFPBB News (2017年8月8日). 2023年10月23日閲覧。
- ^ 柳川晶子 (2019年4月6日). “アメリカで遺伝子組み換えサーモン養殖が解禁 スーパーに並ぶ日も近いが・・・”. FNNプライムオンライン. 2023年10月23日閲覧。
- ^ CASEY SMITH (2021年5月28日). “Genetically modified salmon head to US dinner plates” (英語). AP News. 2023年10月23日閲覧。
- ^ Chris Chase (2023年2月3日). “AquaBounty sees opportunity in egg sales, pulling back on China plans” (英語). SeafoodSource. 2023年10月23日閲覧。