ユリ根
ユリ根(ユリね)は、狭義には食用とされるユリ属植物の球根である鱗茎のこと[1]。広義にはユリの鱗茎全般を指すこともある。ユリの葉が変形した鱗茎に養分が貯蔵されているため、栄養豊富である(ヨウ素、カリウムなど[1])。
ユリの鱗茎は無皮鱗茎のため乾燥、高温、過湿などに弱いが、皮がないので食用とする際はそのまま食用と出来る。調理で使うときは、形を崩さないように鱗片を1枚ずつ剥がしてから使うことが多い[2]。
利用
[編集]食用にするのはヤマユリやオニユリ、コオニユリなどの鱗茎で[2][3]、ホクホクとした食感に、ほんのりした甘さとほろ苦さがあり[4]、関西地方の正月料理や料亭などで使われる[1]。食材としての旬は秋から冬(11月 - 2月)で、貯蔵したものが正月用に多く出回る[2][3]。紫色がかった部分は苦味があり、色が白いものがよく、張りがあって、かたく締まったものが市場価値の高い良品とされる[4]。かつては野生のものが流通したが、現在ではほとんどが栽培品である[4]。日本国内生産量の99%が北海道産で、その7割程度がようてい農業協同組合(JAようてい)管内で栽培されている[1]。
栄養価は、可食部100グラム (g) あたりの熱量が125キロカロリー (kcal) とヤマイモやサツマイモ並みで[2]、野菜としては高エネルギーで炭水化物が約30%を占める[4]。微量栄養素では、タンパク質、ビタミンB群、カリウム、鉄、食物繊維が多い[3][4]。鱗茎に蓄えられているデンプンの一部が糖の形で存在するため、特有の甘味がある[4]。
昔から滋養強壮効果が知られており[2]、漢方薬としても用いられる。漢語では「玉簪花根」と称し、薬種とする。水溶性食物繊維のグルコマンナンが豊富で、便秘改善のほか、コレステロール値の上昇を抑制する効果が期待されている[2]。
調理
[編集]茶碗蒸しなどに入れて食されることが多く、和え物、含め煮などの和風の煮物、かき揚げ、かぶら蒸しの具材や、裏ごししておせち料理の金団にも使われる[2][4]。
形を生かして調理する場合もあるが、多くは鱗茎の根元のかたい部分を除いて、鱗片を1枚ずつ剥がして茹でる[4]。白く茹で上げるために、少量の酢を加えて茹でる場合もある[4]。強火で茹でると、煮崩れを起こしてしまう[4]。
鯨百合(くじらゆり)は、ユリ根を水洗いし、1片ずつ離し、ざっと蒸して裏漉しする。これを、コンブを炙って細粉にし、毛篩(けふるい)にかけたものと練り混ぜ、板に薄く伸ばす。これを蒸籠で蒸し上げ、カヤ油またはごま油で揚げる。形が皮鯨に似るため「鯨百合」の名が付いた。
保存するときは、水に濡らすと傷みが早くなるので濡らさないようにし、おがくずの中に入れて冷暗所に置く[4]。
食用とされる種
[編集]ユリの多くは灰汁(あく)が多く食用に適さないが、灰汁が少ない種を食用とする。主に利用される種はコオニユリ(小鬼百合)で、ほかにオニユリ(鬼百合)、ヤマユリ(山百合)がある。いずれも鱗茎が大型である[4]。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日。ISBN 978-4-415-30997-2。
- 講談社編『からだにやさしい旬の食材 野菜の本』講談社、2013年5月13日、165頁。ISBN 978-4-06-218342-0。
- 主婦の友社編『野菜まるごと大図鑑』主婦の友社、2011年2月20日、244頁。ISBN 978-4-07-273608-1。
外部リンク
[編集]- ユリの王国[その6] ユリ根とシンテッポウユリ 東アジア植物記 小杉波留夫 2020/08/25