はんごろし
はんごろしとは、米を米粒が残る程度に半分だけすりつぶした状態のもの[2][3]。また、はんごろしの状態の米を用いたおはぎやぼたもちのことを「はんごろし」と呼ぶこともある[2][4][5]。きりたんぽの製造工程としても知られる[6][7]。米を全て潰した状態のものはみなごろしと呼ばれる[8]。
同様に、粒あんのことをはんごろし、こしあんのことをみなごろしと呼ぶこともある[9]。
地域ごとの違い
[編集]「はんごろし」という言い方は日本全国で用いられている[10]。
長野県では、「みなごろし」で作られるおはぎやぼたもちはハレの食だが「はんごろし」はハレの中でもケ(普通の日常的な生活)に近いお祝いの食として食べられている[4]。
徳島県那賀町でつくられるおはぎのような郷土菓子が「はんごろし」と呼ばれている[2][11]。もち米にうるち米を混ぜたごはんで餡を包み、周りにきな粉がまぶされている[11]。おはぎを「はんごろし」と呼んでいるのは旧相生町の一部である[12]。那賀町と徳島大学が連携して開いている地域再生塾の特産品事業化の第一弾として相生地域の名物おはぎが選ばれ[13][12]、「草もち」として販売されていたものが学生の提案で再び本来の名称である「はんごろし」と呼ばれるようになった[2][14]。
昔ばなし
[編集]はんごろしという言葉が生み出す勘違いは落語や昔ばなしにもなっている[8]。
『おばんつぁんの炉ばたばなし 東北の昔話』[15]に掲載された逸話「半ごろし」によると、若者が旅の道中で日が暮れて年寄り夫婦の家に宿を求めるが、「あの若者、半殺しか手打ちかどちらがいいかね」「まだ若いから半殺しで良いじゃろう」と言うのを聞いて慌てて逃げ出す、という話がある。実は年寄り夫婦は若者に翌朝振舞う食事の話をしていたのであり、手打ち(斬殺の意味にも取れる)とは手打ち蕎麦のことである。岡山県にも同様の昔話があり、こちらは手打ちうどんが出てくる[16]
脚注
[編集]- ^ 大辞林 第3版 「はんごろし」の項。
- ^ a b c d “半ごろし 徳島県 | うちの郷土料理:農林水産省”. 農林水産省. 2024年7月28日閲覧。
- ^ “きりたんぽの手技”. 手づくりの老舗・佐田商店のきりたんぽ (2019年12月18日). 2024年7月28日閲覧。
- ^ a b “半ごろし 長野県 | うちの郷土料理:農林水産省”. 農林水産省. 2024年7月28日閲覧。
- ^ “お彼岸:おはぎは半殺し?皆殺し?”. 一般社団法人 日本和食卓文化協会. 2024年7月28日閲覧。
- ^ “きりたんぽの手技”. 手づくりの老舗・佐田商店のきりたんぽ (2019年12月18日). 2024年7月28日閲覧。
- ^ “「半殺し」につぶし木串に巻き付け、新米きりたんぽ”. 読売新聞オンライン (2021年9月18日). 2024年7月28日閲覧。
- ^ a b “お彼岸のおはぎ 「半ごろし」か「みなごろし」か?”. 日本経済新聞 (2017年9月13日). 2024年7月28日閲覧。
- ^ “半殺し おはぎ”. スイーツモール. 2024年7月28日閲覧。
- ^ “県立図書館に寄せられたレファレンスの事例を紹介します。”. 岩手県立図書館. 2024年6月28日閲覧。
- ^ a b “那賀町名物「はんごろし」おばあちゃん手づくりのおいしさ”. colocal マガジンハウス (2014年3月31日). 2015年1月21日閲覧。
- ^ a b “PRばっちり、売れ行き好調 那賀のおはぎ「はんごろし」 - 徳島新聞社”. 47NEWS (2007年8月30日). 2015年1月21日閲覧。
- ^ 広報 なか - 2007.12[リンク切れ]
- ^ “【はんごろし】思わずその名を聞き返す郷土菓子 とくしま雑学事典「は」|文化・芸能|徳島ニュース|徳島新聞デジタル”. 徳島新聞デジタル (2024年7月28日). 2024年7月28日閲覧。
- ^ 『おばんつぁんの炉ばたばなし 東北の昔話』 中山雅代 著、東北カード社 1986年、P7
- ^ 半殺しと手打ち - 岡山の民話 2016年8月10日閲覧。