しぶき氷
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しぶき氷(しぶきごおり)は、海や湖、川などの波飛沫(なみしぶき)が、水辺にある樹木や岩、また灯台などの物体に付着して凍結したもの[1][2]。
概要
[編集]日本では、福島県の猪苗代湖のものが「しぶき氷」と名付けられて写真と共に紹介され、この呼び方が広まっている[3]。なお類似の言葉に飛沫着氷(しぶき着氷)があり、文献では船舶への付着を含めた物体への着氷を指す使用例がある[1]。
猪苗代湖では、ときに高さ5メートルほどのものもあって、モンスターにも例えられる形に発達するものがみられる[4]。「氷の芸術」[5]「氷の彫刻」[6]とも表現される。しぶき氷ができた幻想的な水辺の風景は同所や十和田湖などで観光資源となっている[7]。
発生する条件として、厳冬期でも水面が凍らず、絶えず波しぶきが上がり、かつ、その波しぶきがすぐに凍ることが挙げられる[6]。日本ではしぶき氷の見られる湖沼は少なく、珍しい現象とされている[5][6]。
船舶や海岸の物体への着氷はふつう粗氷の性質をもつことが知られているが[8]、湖のしぶき氷にも濡れ成長に伴うスポンジ氷様の氷が層をなす構造がみられる[7]。また、氷柱(氷柱)のような放射状結晶の構造の部分と粒状構造の部分がみられ、粒状構造の部分は雪の混ざったものと考えられている[4][9]。
主な見られる場所
[編集]- 支笏湖 - 湖岸にしぶき氷が生じる。同じように人工的に吹き付け作った氷で氷像を造り「支笏湖氷濤まつり」が開催される[10]。
- 猪苗代湖 - 2か所の発生地が知られている。
- 中禅寺湖[12]
- 琵琶湖 - 氷点下の気温と比叡山からの吹き下ろしの風が強い日などに、東側の湖岸緑地一帯で広く見られる。
脚注
[編集]- ^ a b 新版 雪氷辞典、123頁「着氷」(著者:尾関俊浩)
- ^ 「繁吹き氷」『小学館『デジタル大辞泉』』 。コトバンクより2024年3月24日閲覧。
- ^ a b 小荒井 2006.
- ^ a b 河村俊行、若林裕之、尾関俊浩、小荒井実「猪苗代湖のしぶき氷と団子氷の観測」『雪氷研究大会講演要旨集』、日本雪氷学会、日本雪工学会、2008年、doi:10.14851/jcsir.2008.0.198.0。
- ^ a b c “しぶき氷”. 福島県観光情報サイト ふくしまの旅. 福島県観光物産交流協会. 2024年3月27日閲覧。
- ^ a b c d “氷の彫刻 ~ しぶき氷(郡山市)”. まざっせプラザ. まざっせKORIYAMA (2016年2月3日). 2024年3月27日閲覧。
- ^ a b 尾関俊浩、安達聖、青木茂「飛沫着氷の酸素同位体比の測定」『雪氷研究大会講演要旨集』、日本雪氷学会、日本雪工学会、2014年、doi:10.14851/jcsir.2014.0_250。
- ^ “hard rime” (英語). Glossary of Meteorology(気象学用語集). American Meteorological Society(アメリカ気象学会) (2012年4月25日). 2024年3月24日閲覧。
- ^ 尾関俊浩、山根教平、安達聖、青木茂「酸素同位体比による飛沫着氷への雪の寄与率の推定」『雪氷研究大会講演要旨集』、日本雪氷学会、日本雪工学会、2015年、doi:10.14851/jcsir.2015.0_119。
- ^ “支笏湖が創る芸術作品「しぶき氷」”. エコナビ. 環境イノベーション情報機構 (2012年12月18日). 2024年3月27日閲覧。
- ^ 石田明夫(監修)『福島「地理・地名・地図」の謎 意外と知らない福島県の歴史を読み解く!』実業之日本社〈じっぴコンパクト新書〉、2015年。ISBN 978-4-408-11116-2。
- ^ “中禅寺湖のしぶき氷”. とちぎ旅ネット. 栃木県観光物産協会 (2023年11月25日). 2024年3月27日閲覧。
参考文献
[編集]- 日本雪氷学会 編『新版 雪氷辞典』古今書院、2014年。ISBN 978-4-7722-4173-1。
- 小荒井実『しぶき氷 : 猪苗代湖・不思議な氷の世界 : 小荒井実写真集』歴史春秋出版、2006年1月。ISBN 4-89757-550-8。