こうべバイオガス
こうべバイオガスは、神戸市・神鋼環境ソリューション・大阪ガスが主体となり、神戸市の下水処理場で発生する消化ガスを主原料としたバイオガスを精製して自動車用燃料や都市ガスとして利用する取り組みである。
神戸市東灘処理場
[編集]神戸市東灘区魚崎浜町にある東灘処理場は神戸市内に6か所[1]ある下水処理場の一つで、1962年に運転開始した。一日当たり229,500m3の処理能力を持ち、約39万人の住民から排出される下水を受け入れている。1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災では護岸が崩壊し、水処理施設が水没するなどの被害を受けたが、暫定復旧を経て1998年度末に完全復旧した[2]。
下水を処理した後に残る汚泥は減容化のため、同所内の卵型タンクで嫌気性発酵される。その際、メタン約60%、二酸化炭素約37%などを含む消化ガスが発生する[3]。この消化ガスを高度利用するため、2006年度から2007年度にかけて、国土交通省新世代下水道支援事業制度により消化ガス精製装置が設置された[4]。9気圧に加圧した消化ガスを吸収塔下部から吹き上げ、高圧水と対向流で接触させることにより、二酸化炭素、硫化水素、シロキサンなどを水に溶解させ除去する[5]。これにより、メタンの濃度は98.2%まで高まる[3]。シロキサンはシャンプーや化粧品などに含まれるシリコンオイルに起因するものであり、下水由来のバイオガス特有の不純物であるが、シロキサンの燃焼により生じる二酸化ケイ素がボイラーやエンジンの内部に蓄積して燃焼トラブルの原因となるため、利用に当たっては除去は必須である[6]。2013年からは「KOBEハーベストプロジェクト」として、国際的に枯渇が懸念されるリンを汚泥から回収する実証実験も開始されている[7][2]。
自動車燃料
[編集]2008年4月より、隣接する神戸市バス魚崎営業所の路線バス1台に燃料として供給を開始[8]。現在、同処理場から六甲アイランドのスラッジセンターへの脱水ケーキ運搬車[9]、佐川急便の集配車[10]などに燃料として供給している。
都市ガス
[編集]自動車に供給して余ったバイオガスは燃焼処分していたが[11]、 2009年より、プロパン添加による熱量調整や付臭の処理を施したうえで大阪ガスの導管への直接注入の実証実験を開始[12]。約1年の試験を経て、2010年からは都市ガス導管への直接注入を日本で初めて正式に開始した。当初の導入量は80万m3で、二千世帯が1年間に使用する都市ガス量に相当する[13]。(2022年3月実証実験終了)
2012年7月からは「KOBEグリーン・スイーツプロジェクト」として、東灘区に製造拠点を有するロック・フィールド・トーラク・白鶴酒造の三社から生じる食品残滓を汚泥に混ぜ、糖やデンプンの発酵により収量を増やし、最終的には五千世帯分の都市ガス生産に向けた実証実験を開始した[14][15]。このプロジェクトには触媒として、街路樹の剪定材や六甲山の間伐材も使われる[16]。(2021年実証実験終了)
脚注
[編集]- ^ “下水道施設見学のご案内”. 神戸市. 2022年12月10日閲覧。
- ^ a b “東灘処理場”. 神戸市. 2022年12月10日閲覧。
- ^ a b 取材・文 - 山岡可恵、構成 - 後藤正文. “下水道が資源の宝庫に変わる こうべバイオガス”. The Future Times 2012年6月30日閲覧。
- ^ “日本初の下水道バイオガス都市ガス導管注入実証事業について”. 国土交通省報道発表資料 (2009年10月21日). 2012年6月30日閲覧。
- ^ “再生可能エネルギー導入事例 神戸市東灘処理場の取り組み”. 資源エネルギー庁 (2011年9月8日). 2012年8月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年6月30日閲覧。
- ^ “バイオガスからメタン分離技術の開発” (PDF). 大陽日酸. 2015年6月8日閲覧。
- ^ 下水道展'12神戸(2012年7月1日閲覧) Archived 2012年7月3日, at the Wayback Machine.
- ^ 神戸市交通局. “市バス車両について”. 2012年7月1日閲覧。
- ^ “「こうべバイオガス」と天然ガス自動車の導入” (PDF). 神戸市建設局. 2015年6月8日閲覧。
- ^ 2007年7月23日付、佐川急便プレスリリース Archived 2012年7月31日, at the Wayback Machine.
- ^ “都市ガスにバイオガス注入 国内初、神戸で”. 共同通信社. (2010年10月12日) 2012年7月1日閲覧。
- ^ 『神戸市東灘の下水処理場において日本初のバイオガス都市ガス導管注入実証事業を行います』(プレスリリース)大阪ガス、2009年10月19日 。2015年6月8日閲覧。
- ^ 『日本初、神戸市東灘処理場において、下水道バイオガスである「こうべバイオガス」の都市ガス導管注入を開始します』(プレスリリース)大阪ガス、2010年10月12日 。2015年6月8日閲覧。
- ^ “食品の残りかすからバイオガス 神戸で始動”. 神戸新聞. (2012年6月26日) 2012年6月30日閲覧。
- ^ “神戸市、廃棄物使いバイオガス実証実験 7月から”. 日本経済新聞. (2012年6月26日) 2012年6月30日閲覧。
- ^ “神戸スイーツでバイオガス供給 製造過程のゴミ生かす”. 朝日新聞. (2011年5月27日) 2012年7月1日閲覧。