がん探知犬
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がん探知犬(がんたんちけん)は、悪性腫瘍の検出を目的とした使役犬。千葉県館山市にある「がん探知犬育成センター」で数十人の人の尿から、がん患者の尿を嗅ぎ分ける訓練を行っている。
日本国内のがん探知犬1号は、水難救助犬だった、ラブラドールレトリバーのマリーンで、5頭のがん探知犬は、いずれもこのマリーンの血筋を引いている[1]。
概要
[編集]犬の嗅覚は人の10万倍以上といわれ、尿や呼気や汗に含まれるアルカン、芳香族化合物、ベンゼン誘導体など特有の物質(揮発性有機化合物)をかぎ分ける事により腫瘍を検出する[2][3][4][5][6]。数週間の基本的な訓練で、特に嗅覚に優れた犬でなくても、がん患者と健康な人を区別できるようになり、肺がんについては感度、特異性とも99%、乳がんは感度88%、特異性98%に到達した[6]。
訓練方法
[編集]化学療法開始前のがん患者からポリプロピレン製の有機蒸気回収チューブに3から5回呼気を吹き込んだ呼気標本を採取して、他の正常な人から採取した呼気の標本を合わせた5標本の中より1本のみ含まれるがん患者由来の呼気を識別して犬がその前に座るか横たわれば、給餌によりほめる方式で、2週間から3週間実施した[6]。
脚注
[編集]- ^ “日本に5頭しかいない「がん探知犬」、発見率は99.7%”. NEWSポストセブン. 小学館 (2017年5月14日). 2019年1月7日閲覧。
- ^ “尿のにおいで発見「がん探知犬」の実力は?”. 日テレNEWS24. (2017年5月5日) 2019年1月6日閲覧。
- ^ “胸部X線検査より、喀痰検査より、診断感度が高い?肺がんを嗅ぎ分ける「がん探知犬」登場がん特有の匂い物質と呼気検査”. ダイヤモンド・オンライン (2011年11月28日). 2019年1月6日閲覧。
- ^ “日本に5頭しかいない「がん探知犬」、発見率は99.7%”. NEWSポストセブン. 小学館 (2017年5月14日). 2019年1月6日閲覧。
- ^ “全国初「がん探知犬」で早期発見へ 死亡率全国ワーストの山形・金山”. 産経新聞. (2017年6月22日) 2019年1月6日閲覧。
- ^ a b c “がんを呼気で嗅ぎ分ける“がん探知犬”、驚異的な高精度示す米研究が論文化”. 日経メディカル (2006年1月10日). 2019年1月6日閲覧。
参考文献
[編集]- McCulloch, Michael, et al. "Diagnostic accuracy of canine scent detection in early-and late-stage lung and breast cancers." Integrative cancer therapies 5.1 (2006): 30-39.
- 園田英人, 鴻江俊治, 前原喜彦「がんとニオイ : がん探知犬を用いた検討」『遺伝 : 生物の科学』第65巻第6号、エヌ・ティー・エス、2011年11月、92-99頁、ISSN 0387-0022、NAID 40019076957。
- 外崎肇一「がんのにおいを察知する : がん探知犬マリーンについて (特集 動物と人と自然療法 : 健康的な共生を目指して) -- (動物と人とのかかわり)」『Aromatopia : the journal of aromatherapy & natural medicine』第22巻第2号、フレグランスジャーナル社、2013年、7-10頁、ISSN 0918-4295、NAID 40019651718。
- 宮下正夫「フォーラム がん探知犬によるがん診断」『Cefiro : 最新医療情報誌』第17号、メディカジャパン・ラボラトリー、2013年、37-39頁、ISSN 1880-5167、NAID 40019668511。
- 山田真吏奈, 宮下正夫「検査 人の尿で「がん」を嗅ぎ分ける「がん探知犬」 (特集 ここまで進んだ「がんの検査と診断」)」『ライフライン21がんの先進医療 : がん患者と家族に希望の光を与える情報誌』第29巻、蕗書房 ; 2011-、2018年4月、35-37頁、NAID 40021580813。
- 岩永剛「ニオイで癌の診断ができるか」『癌と人』第34号、大阪癌研究会、2007年5月、14-19頁、NAID 120005223374。
- 宮下清子. "尿の臭いでがんを発見 注目浴びる 「がん探知犬」 に期待: 早期発見と費用軽減でがん対策の救世主となるか." 月刊 times 42.2 (2018): 26-28.
書籍
[編集]- がんは「におい」でわかる!: “がん探知犬”の力で、乳がんセンサーが誕生 光文社 ISBN 4334975062