湯西川温泉かまくら祭
湯西川温泉かまくら祭(ゆにしがわおんせんかまくらまつり)は毎年1月下旬から約1か月間、栃木県日光市の湯西川温泉で行われる祭。
概要
[編集]1月下旬から3月上旬まで湯西川温泉街にかまくらが登場する[1]。会場にはミニかまくらが多数並び、夜になると光が灯される[2][3]。
2009年までは「光輝く氷のぼんぼりとかまくら祭」と称していた[4]が、2010年より「湯西川温泉かまくら祭」と呼んでいる[5]。開催回数は光輝く氷のぼんぼりとかまくら祭から引き継ぎ、2010年を第17回とした[5]。「光輝く氷のぼんぼり」は、人が入れる大きなかまくらに備えられ、夜間にライトアップされていた[6]。
2015年時点では、平家の里をメイン会場として、沢口会場(アウトドア会場)、沢口河川敷ミニかまくら会場、七色の光輝く山ホタル会場、雪のぼんぼりと雪だるま街道、平家慈光寺会場の6か所で開催されていた。2023年は平家の里会場と沢口河川敷ミニかまくら会場の2か所となり、沢口河川敷ミニかまくら会場のかまくら点灯は期間中の金・土・日曜日のみとなった[2][7]。祭りの参加費は無料であるが、主会場の平家の里に入るには入場料がかかる[8]。(かまくら点灯中の夜間の入場料は通常料金よりも低く設定される[2]。)
例年、開会式ではどぶろくが祭の参加者に振る舞われ[9]、各宿泊施設でも提供している[10]。どぶろくは2011年から県内の益子町にある外池酒造店に仕込んでもらっている[11][12]。そのほか、期間中はさまざまなイベントが行われ、かまくらの中での飲食(バーベキュー[13][14]、鍋料理[15]、出前[14]など)、雪遊びやそり遊びなど[16]を楽しむ事ができる。
会場から至近距離にある湯西川水の郷では、かまくら祭りとほぼ同時期に雪遊び・そり遊びなどを提供するスノーパークが開催される[2]。スノーパークの入場料には温泉入浴料金を含んでいるので、水の郷の温泉に入ることができる[2]。
祭りに合わせて独自のかまくらを作り、その中で夕食を提供する宿泊施設もある[17]。市内には、文星芸術大学の学生がデザインした、かまくら祭を描いたマンホールのふたが設置されている[18]。
開催期間中の金・土・日曜日に限り、日光交通の路線バス・湯西川線(鬼怒川温泉駅 - 湯西川温泉間)の臨時便が1往復設定される[2][3][7]。湯西川温泉を出発する臨時便に乗車すると、バスから鉄道に乗り継いで東京まで日帰りが可能である[3][7]。
運営
[編集]主催者は湯西川温泉かまくら祭実行委員会で、湯西川温泉旅館組合・日光市・平家の里・湯西川水の郷・湯西川商店会・湯西川民宿組合・湯平活性化委員会が共催する[19]。後援は観光庁ほか3団体、協賛はアサヒビール・株式会社JTB、協力は東武鉄道・湯西川小中学校ほか8団体である[19]。
歴史
[編集]閑散期である2月に観光客を呼ぼうと[15]、1994年から[8]、客足が落ちる原因であった雪を活かし、湯西川温泉の旅館組合や商店街が始めた祭りである[20]。第2回となる1995年には、6トントラック1000台分の雪を使って、直径26 m、高さ12 mのジャンボかまくらを作り、集客の目玉とした[21]。1997年の特大かまくらは直径15 m、高さ7 mで、祭りを宣伝するため、東京・上野駅前に30トンの雪を持ち込んでかまくらを作った[22]。
2001年は大きなかまくら(直径3.5 m、高さ3 m)を10個、温泉街の通り沿いにミニかまくらを100個並べた[6]。2006年は約10個のかまくらが作られ、平家集落と沢口河川敷で約1000個のミニかまくらに17時から21時までろうそくに点灯された[13]。この頃には祭りに3万人が訪れ、祭りの開始前は1.3万人程度だった栗山村(当時)の2月の宿泊者数を4.5万人に押し上げるようになった[20]。2007年は12個のかまくらが作られ、沢口河川敷で約1300個のミニかまくらに17時から21時までろうそくに点灯された[14]。2009年当時の主会場は湯西川小中学校前に設けられ、大きなかまくら10個とミニかまくら約30個が作られた[4]。大きなかまくらは1個作るのに10トンダンプカー4台分の雪を使ったという[4]。同年、日本夜景遺産に選ばれた[8]。
2010年代には毎年約10万人が訪れるイベントとして定着し[15]、2011年から[11]観光客の要望を受けて[10]、どぶろくの提供を開始した[10][11]。湯西川温泉の宿との取引があった縁で、益子町の外池酒造店がどぶろくを醸造している[11]。2014年3月12日、とちぎ産業活力大賞の表彰式が栃木県公館で開かれ、湯西川温泉かまくら祭実行委員会が商業・サービス部門で優秀賞を受賞した[23]。雪を活用した新たな観光資源の創出が評価されたものである[23]。2017年には、鬼怒川温泉の観光事業者が集客増を図るため、鬼怒川温泉と湯西川温泉の間で無料送迎タクシーを運行した[24]。2020年は暖冬で湯西川温泉の雪だけでは足りず、奥鬼怒温泉郷からも雪を搬入した[25]。しかし新型コロナウイルス感染症の影響で、最後の3日間の開催を中止した[12]。
コロナ禍で2021年・2022年と2年連続中止となったが、2021年は上屋敷 平の高房が旅館に隣接する畑に200個のミニかまくらを作り、点灯・公開し[26]、2022年は平家の里が通路を広くすることで密を避け、ミニかまくら300個に点灯・公開した[27]。2023年は3年ぶりに正式に開催し、河川敷に約600個のミニかまくらが並んだ[28]。ただし、開会式は感染対策のために開催しなかったことから、恒例のどぶろく振る舞いはなく、各宿泊施設でどぶろくが帝京された[9]。
開催期間
[編集]- 1998年:2月1日 - 3月1日[29]
- 2001年:1月28日 - 2月28日[6]
- 2002年:1月27日 - 2月28日
- 2003年:1月26日 - 2月28日
- 2004年:1月25日 - 2月29日[30]
- 2005年:1月27日 - 2月28日[31]
- 2006年:1月26日 - 2月28日[13]
- 2007年:1月27日 - 2月28日[14]
- 2008年:1月26日 - 3月2日[32]
- 2009年:1月24日 - 3月8日
- 2010年:1月9日 - 3月22日
- 2011年:1月8日 - 3月21日 ※東日本大震災が発生したため3月11日で中止。
- 2012年:1月21日 - 3月20日
- 2013年:1月26日 - 3月17日
- 2014年:1月25日 - 3月9日
- 2015年:1月24日 - 3月8日
- 2016年:1月23日 - 3月6日
- 2017年:1月28日 - 3月5日[24]
- 2020年:1月31日 - 3月1日[33] ※新型コロナウイルス感染症が流行したため2月27日で中止[12]。
- 2023年:1月27日 - 2月26日[2][3][28]
ミニかまくら
[編集]沢口河川敷会場には多数のミニかまくらが作られ、その中に灯されたろうそくの明かりが幻想的な風景を作り出す[8]。観光客は、河川敷に下りて川沿いに歩いたり、橋の上から眺めたりして鑑賞する[1]。
ミニかまくらは、高さ40 cmほどで[8][28]、漬物桶に雪を詰めて作る[5]。大雪が降れば埋もれてしまい、気温が上がれば溶けてしまうため、ミニかまくらの個数の維持には、観光客らのボランティア協力が欠かせない[5]。ミニかまくらの点灯日は17時半から、地元住民が1つずつろうそくに点火する[8]。沢口河川敷での点灯は期間中の金・土・日曜日のみであるが、平家の里のミニかまくらは毎日点灯する[2]。
ミニかまくらは、2004年に始まった当初は200個であった。2019年には約800個作られ、実行委員ら20人で用意するのに2日かかった[8]。2023年は約600個であった[7][28]。
脚注
[編集]- ^ a b “湯西川温泉かまくら祭り”. 国際観光振興機構. 2022年3月26日閲覧。
- ^ a b c d e f g h “湯西川温泉 かまくら祭”. 日光旅ナビ. 日光市観光協会. 2023年2月25日閲覧。
- ^ a b c d “栃木 日光 湯西川温泉 かまくら祭 1/27~2/26 金 土 日曜に点灯中! 雪国のあったか絶景へ、東武鉄道 特急列車で行こう!”. エキスプレス (2023年1月28日). 2023年2月25日閲覧。
- ^ a b c "「かまくら祭」幻想の世界 湯西川温泉"朝日新聞2009年1月25日付朝刊、栃木版35ページ
- ^ a b c d 「湯西川温泉かまくら祭り 温泉街を照らすともしび」朝日新聞2010年2月16日付朝刊、栃木版マリオン、30ページ
- ^ a b c "幻想に染まる奥座敷 28日から湯西川温泉 「氷のぼんぼりとかまくら祭」"読売新聞2001年1月6日付朝刊、栃木2、33ページ
- ^ a b c d “日光 【湯西川温泉かまくら祭り】が絶景すぎた!2023年最新版 日本夜景遺産認定の雪まつりイベント!”. Movemate. 下野新聞 (2023年2月10日). 2023年2月25日閲覧。
- ^ a b c d e f g 松本萌「平家の里 かまくらの灯 湯西川温泉(栃木県日光市)」日本経済新聞2019年2月8日付朝刊、地方経済面 東京15ページ
- ^ a b “栃木 日光 湯西川温泉 「かまくら祭」へどぶろくの仕込み”. 首都圏NEWS WEB. 日本放送協会 (2023年1月18日). 2023年2月25日閲覧。
- ^ a b c “かまくら祭で飲めます!湯西川温泉の女将が仕込んだスペシャルどぶろく”. 5秒でくりやま. 5くり (2018年7月6日). 2023年2月25日閲覧。
- ^ a b c d “どぶろく女将仕込み・酒造×温泉宿・日光湯西川「かまくら祭」で販売”. 読売新聞 (2023年1月19日). 2023年2月25日閲覧。
- ^ a b c 中村尚徳 (2023年1月19日). “3年ぶりに湯西川かまくら祭 温泉旅館女将がどぶろく仕込む”. 朝日新聞. 2023年2月25日閲覧。
- ^ a b c 「旅情報」朝日新聞2005年12月28日付夕刊、マリオン、5ページ
- ^ a b c d 「かまくら祭へ 会場準備着々 湯西川温泉」朝日新聞2007年1月25日付朝刊、栃木版28ページ
- ^ a b c 吉田貴司「寒さ忘れる景色にホッ かまくら祭 湯西川温泉」朝日新聞2018年2月2日付朝刊、栃木版24ページ
- ^ "心ほっこり 日光で「かまくら祭」"朝日新聞2013年1月28日付朝刊、栃木版29ページ
- ^ 高橋健伸"心はとってもあったか〜い 湯西川温泉の「かまくら祭」 28日まで"毎日新聞1999年2月5日付朝刊、栃木版
- ^ 花野井誠「デザインマンホール 日光の魅力描く 文星芸大生が担当」毎日新聞2018年2月27日付朝刊、栃木25ページ
- ^ a b 日光市観光協会. “湯西川温泉かまくら祭 2023 雪国時間”. 日光市平家の里. 2023年2月25日閲覧。
- ^ a b 安川壮一"栃木の2市2町1村、合併で「新・日光市」に 観光地多彩、連携に課題 山間部に誘客格差懸念"日本経済新聞2006年2月4日付朝刊、地方経済面 栃木42ページ
- ^ 「トラック千台分の雪使う 湯西川温泉郷にジャンボかまくら」毎日新聞1995年2月7日付朝刊、栃木版
- ^ 「“かまくら”にこもり あったかバーベキュー 湯西川温泉で来月2日まで」毎日新聞1997年2月6日付朝刊、栃木版
- ^ a b "ペットボトル資源 循環に貢献 とちぎ産業活力大賞 「協栄産業」に最優秀"毎日新聞2014年3月19日付朝刊、栃木2、34ページ
- ^ a b "鬼怒川〜湯西川、無料で送迎 「かまくら祭」来て 近隣の温泉地からも集客"日本経済新聞2017年1月25日付朝刊、地方経済面 北関東41ページ
- ^ 「北関東観光 暖冬に悲鳴 かまくら祭 外部から雪搬入 袋田の滝 凍結せず客足減」日本経済新聞2020年1月25日付朝刊、地方経済面 北関東41ページ
- ^ 梶山天"「祭」中止で旅館従業員のおもてなし"朝日新聞2021年1月30日付朝刊、栃木版29ページ
- ^ “かまくらに願い込め 道幅広げて感染対策 日光・湯西川温泉”. 下野新聞 (2022年2月9日). 2022年3月13日閲覧。
- ^ a b c d “日光 湯西川温泉 3年ぶりに「かまくら祭」始まる”. 栃木 NEWS WEB. NHK宇都宮放送局 (2023年1月27日). 2023年2月25日閲覧。
- ^ 「レジャーガイド」朝日新聞1998年1月31日付朝刊、栃木版
- ^ 仙石恭「氷のぼんぼりとかまくら祭り 栗山村・湯西川温泉で25日から」毎日新聞2004年1月20日付朝刊、栃木版27ページ
- ^ 田後真里「大寒 県内全域、平年を上回る陽気 栗山村でかまくら作り」毎日新聞2005年1月21日付朝刊、栃木版23ページ
- ^ 「インフォメーション」日本経済新聞2008年1月8日付朝刊、地方経済面 栃木42ページ
- ^ 李舜「暖冬、観光業者ら悲鳴」毎日新聞2020年1月27日付朝刊、栃木版23ページ
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 湯西川温泉かまくら祭 - 日光旅ナビ(日光市観光協会)