コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

いわき2人射殺事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

いわき2人射殺事件(いわき2にんしゃさつじけん)とは、2003年日本福島県いわき市で発生した殺人事件。上告審では量刑をめぐって裁判官の判断が分かれる異例の経過をたどった。

事件発生から起訴まで

[編集]

2003年にいわき市内の飲食店の経営権を巡って、住吉会暴力団に所属する建設業者と他組員とトラブルになったことが原因で、10月下旬に住吉会系暴力団組員Xが他組員Yととび職Zの計2人に殺害計画を持ちかけ、広野町上浅見川の山林に穴を掘るなど計画的に殺害の準備を進めた上で、11月24日に建設業者A(当時26歳)と建設業者に雇われていた従業員B(当時24歳)を射殺し、建設業者が所持していた鞄に入っていた現金30万円を奪い、2人の遺体を乗用車で運び、広野町上浅見川の山林に遺棄した[1][2][3]。主犯がX、殺害を実行したのがYである。

2003年12月5日から16日にかけて、XとYとZは死体遺棄罪で逮捕された[2][4][5]。3人は死体遺棄罪で起訴された後、2004年1月9日に強盗殺人罪で再逮捕され、同月30日に起訴された[3][6]

刑事裁判

[編集]

3被告とも被害者2人を殺害したことは認めたが、Xのみ強盗目的を否認し「強盗殺人罪は成立せず殺人罪窃盗罪が成立する」と主張した。検察は主犯Xと実行犯Yに死刑を、Zに無期懲役求刑した。2005年4月22日に福島地方裁判所は「半月以上にわたり殺害の機会をうかがうなど、極めて計画的」としてて強盗殺人罪の成立は認めたものの、「犯行の発端はXが交際相手を被害者である建設業者に奪われたことに逆上したことだった」と認定し、「無関係な第三者から金品を奪って殺害する典型的な強盗殺人と類型を異にする」「YはXに指示されて犯行を実行した」「Zの刑事責任はXやYよりは重くないが酌量の余地はない」などとして、XとYとZに無期懲役判決を言い渡した[7]

Zは無期懲役が一審で確定。検察はXとYについて死刑を求め控訴し、XとYも量刑不当を理由に控訴したが、2005年12月22日に仙台高等裁判所は「強盗殺人が成立すると言う原判決に誤りはない」「量刑が不当であるとまでは言えない」として検察とXとYの控訴を棄却して無期懲役判決を維持した[8]

検察とXは量刑不当を争って上告したが、2008年2月20日に最高裁判所第二小法廷は上告をいずれも棄却する決定をし、XとYを無期懲役とする一、二審判決が確定した[9]。ただし、Xについては無期懲役判決を維持して上告棄却とする裁判官が3人、死刑を求めて破棄差戻しとする裁判官が2人と意見が分かれる異例な結果となった[9]。XとYの両被告について無期懲役を維持して上告棄却とする多数意見の涌井紀夫横尾和子泉徳治は「犯行は一般市民を巻き込むようなものではなかった」「(X、Yとも)若年で前科はない」などとして、「(無期懲役判決について)破棄しなければ著しく正義に反するとまでは言えない」とした[9]。一方で、Yについては無期懲役を維持(検察側の上告を棄却)するがXについて死刑を求めて破棄差戻しとする(検察側の上告を認容する)少数意見として、甲斐中辰夫才口千晴は「被害者が暴力団員だからといって、これを酌量すべきではない。本件は拳銃を使用した凶悪犯罪であることを重視すべきだ」「首謀者であるXの刑事責任は共犯者のYと差があってしかるべき」とした[9]

脚注

[編集]
  1. ^ “広野の山林から2人の他殺体 暴力団内部トラブルか 関係者から事情聞く=福島”. 読売新聞. (2003年12月6日) 
  2. ^ a b “広野の山林、2遺体遺棄容疑 共犯の25歳男逮捕=福島”. 読売新聞. (2003年12月13日) 
  3. ^ a b “広野の死体遺棄 組員ら3人再逮捕 2人を射殺、現金奪った疑い=福島”. 読売新聞. (2004年1月10日) 
  4. ^ “知人2人殺害に関与 遺棄容疑の組員逮捕/福島・いわき中央署”. 読売新聞. (2003年12月5日) 
  5. ^ “広野の2射殺体 遺棄容疑で暴力団組員を逮捕=福島”. 読売新聞. (2003年12月16日) 
  6. ^ “いわき2人射殺事件 強盗殺人などで3容疑者を起訴=福島”. 読売新聞. (2004年1月31日) 
  7. ^ “いわきの強盗殺人 3被告に無期懲役 地裁判決=福島”. 読売新聞. (2005年4月23日) 
  8. ^ “いわきの強盗殺人控訴審 地裁判決を支持=福島”. 読売新聞. (2005年12月23日) 
  9. ^ a b c d “福島の組員2人射殺 最高裁、判断割れる 1、2審の無期判決確定へ”. 読売新聞. (2008年2月23日) 

関連項目

[編集]