紡績
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紡績(ぼうせき)は、繊維・織物産業において、原料の繊維から糸の状態にするまでの工程をいう。「紡」はよりあわせることを意味し、「績」は引き伸ばすことを意味する漢字で、おもに綿や羊毛、麻などの短繊維(最長1.5m程度のもの)の繊維を非常に長い糸にする工程をいう。紡績によって作られた綿糸などが紡績糸(スパンヤーン、ステープルヤーン)と呼ばれる。
- これに対し、長繊維の絹を蚕のまゆから繰り出し、ばらばらにならないよう数本まとめて撚る工程は製糸と呼ばれる。同様の長繊維でもナイロンなど合成繊維から糸をつくることは紡糸という。こうしてできた糸はフィラメントヤーンと呼ばれる。
スパンヤーンとフィラメントヤーンのどちらが織物に向いているかは、見た目と肌触りによる。肌触りでは、紡績で作ったスパンヤーンは短繊維を撚り合わせているので繊維の端(毛羽)があちこちにあるため、肌への接触部分は点状になりやわらかい。一方、絹糸など繊維側面全体が肌に当たるフィラメントヤーンは、見た目はよいが肌触りは冷たくて硬いことになる。ただし撚りが多いスパンヤーンは、硬くなり光沢もなくなっているため、手触りも痛く見た目も劣ることになる。これらをどう織るかで、さらに見た目や肌触りは変化する。
手作業の時代、紡績は紡錘(つむ)や、糸車(紡ぎ車、手紡ぎ機)で行われた仕事であった。イギリスにおける綿織物の人気と自動織機の発達は綿糸の需要を大きくし、綿糸の生産性をあげる発明が相次いだ。紡績はイギリスの産業革命を飛躍させた重要な分野であった。1764年、ジェームズ・ハーグリーブスによって、複数の糸を紡ぐジェニー紡績機が発明され、1769年、リチャード・アークライトによって水力紡績機が発明されている。
参考文献
- 『染織の文化史』 藤井守一、理工学社、ISBN 4-8445-6302-5