クマゼミ
クマゼミ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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金色の微毛に覆われた個体
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Cryptotympana facialis (Walker, 1858) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
クマゼミ(熊蝉) |
クマゼミ(熊蝉)Cryptotympana facialis は、カメムシ目(半翅目)・ヨコバイ亜目(同翅亜目)・セミ科に分類されるセミの一種。西日本を含む東アジア亜熱帯域に分布する大型のセミである。
特徴
成虫の体長は60-70mmほど。アブラゼミやミンミンゼミにくらべて頭部の幅が広い。翅は透明で、背中側はつやのある黒色だが、腹部の中ほどに白い横斑が2つある。また羽化から数日までの個体は、背中側が金色の微毛で覆われる。腹部は白、褐色、黒の組み合わさった体色で、オスの腹部には大きな橙色の腹弁がある。
あまり知られていないことだが、分類学的にエゾゼミやコエゾゼミとはかなりの近縁である。
分布域は関東地方南部以西の西日本から南西諸島(台湾、中国に分布するという報告もあったが、台湾の記録の多くが近縁のタカサゴクマゼミの誤同定で、中国大陸の分布も疑わしいと思われる)で、これらの地域では個体数が多く、都市域でも普通に見られるが、奄美諸島の喜界島、奄美大島、徳之島には従来分布しない。ただし日本では1990年代頃から関東地方でクマゼミ生息地の東進・北上が報告されている。これは地球温暖化の影響とも云われるが、樹木の移植の際に根の周囲に幼虫が混入しているという説や、ヒートアイランドによる都市部の気温上昇など他の原因も考えられ、単に温暖化の影響で片付けることはできない。また、従来分布しないはずの奄美大島と徳之島でも生息が確認されたが、これは人為的移入とみられている。
札幌市内でも以前にこのセミの声がごくまれに聞かれることもあったが、これも樹木の移植が原因である可能性が極めて高い。
近年の光回線の普及で、光ファイバーケーブルを枯れ枝と間違えて産卵し断線被害が多発するケースが、西日本で数多く報告されている。NTT西日本の事業エリアでは2005年、2006年共に1,000件近いクマゼミ被害が報告されたという。主に家庭への引き込み線が被害に遭うケースが多く、2006年からはケーブルの形状を改良しているという。
生態
温暖な地域の平地や低山地に生息し、都市部の公園などにも多い。
成虫が発生するのは7月上旬から9月上旬くらいだが、特に7月下旬から8月上旬、大暑から立秋にかけての最も暑い頃が発生のピークである。
オスは腹を激しく縦に振りながら大きな声で鳴く。鳴き声は「シャシャシャ…」や「センセンセン…」などと聞こえるが、その前後には「ジー…」という長い声が入る。また、オスを捕まえると「ジー!」とも「ゲー!」とも聞こえる大声を出し続けてもがく。
鳴く時間帯はおもに日の出から正午までの午前中で、日が照って温度が上がる午前7時頃から午前10時頃まで最もさかんに鳴く。生息地では朝日が昇ってから昼近くまで、鳴き声が騒がしいほどに響きわたる。雨の日や午後はあまり鳴かず、センダンやキンモクセイなどの木の幹に止まって樹液を吸う。ただし、午後でも天候が回復した時などは鳴くことがある。
抜け殻はアブラゼミと似ているが、わずかに大きくて体につやがなく、頭部や腹部に泥がつくので区別できる。幼虫の生態について「湿った所にアブラゼミ、乾いたところにクマゼミの幼虫がいる」との説があるが、京都成安高等学校生物部と高校教諭・米澤信道による10年間の調査では、「アブラゼミ、クマゼミはそれぞれ好む木、嫌いな木があり(樹種嗜好性)乾湿によってきまるものではない」との立場をとっている。なお、センダンは脱皮がらはまったくつかないと統計結果がある。
京阪神地区では近年クマゼミの生息数がやや沈静化しつつある。様々な公園で、クマゼミの減少が指摘されている。関西のクマゼミは安定期から後退期に移行した可能性がある。
近縁種
- ヤエヤマクマゼミ C. yayeyamana Kato, 1925
- 石垣島と西表島に分布する固有種。山地の森林に生息する。鳴き声はミンミンゼミに似る。
- スジアカクマゼミ C. atrata (Fabricius, 1755)
- 2001年に日本に分布することが発表された。
関連項目
参考文献
- 白水隆ほか監修 『学生版 日本昆虫図鑑』 北隆館、ISBN 4-8326-0040-0。
- 中尾舜一 『セミの自然誌 - 鳴き声に聞く種分化のドラマ』 中央公論社〈中公新書〉、1990年、ISBN 4-12-100979-7。
- 宮武頼夫・加納康嗣編著 『検索入門 セミ・バッタ』 保育社、1992年、ISBN 4-586-31038-3。
- 横塚眞己人 『西表島フィールド図鑑』 実業之日本社、2004年、ISBN 4-408-61119-0。
- 福田晴夫ほか 『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方 - 野山の宝石たち』 南方新社、2005年、ISBN 4-86124-057-3。
- 沼田英治・初宿成彦 『都会にすむセミたち - 温暖化の影響?』 海游舎、2007年、ISBN 978-4-905930-39-6。
外部リンク
- 図鑑/クマゼミ(セミの家) - クマゼミの解説、写真など。
- 大阪市立大学・都市問題研究「市民と共にさぐる大阪のセミの謎」 - 2005年のマーキング調査では、30日生きたクマゼミのメスが見つかった。
- 米蝉ナール - 1997年から現在に至るまでの、毎年のクマゼミの調査結果を公開している。