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サドル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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サドル(Saddle)とは一般に乗用自転車オートバイ等の二輪車で人のを載せる部位、または状態を言う。山岳用語では凹んだ馬の背のような山の稜線のこと。日本語では鞍(くら)の文字を当てる。

乗馬用サドル

動物の骨格は物を運ぶ目的用には進化しておらず馬の背とは形状の異なる人の尻や物を運搬する器具の畚(もっこ)等と動物の背中を拘束させるために発生した。現代の乗馬のサドル(鞍)は馬の背中中央の緩やかに凹んだ馬の背と呼ばれる部分にクッション性が良く吸水性の優れた毛布やマット等(ゼッケン)を被せた後に鞍を載せ、腹帯と呼ぶ10cm程度の幅広の帯を用いて鞍と馬の胴体を固定する。日本の近代以前では木製の鞍が存在したが、近代以降の鞍は圧倒的に皮製が多い。

乗馬用の鞍(ウェスタン)。右は腹帯
ブリティッシュの鞍

乗馬用の鞍は、まず乗馬スタイルによってウェスタン(アメリカ式)とブリティッシュ(ヨーロッパ式)に大別され、形状や機能に違いがある。 たとえばウェスタン鞍には前部中央にグリップ(ホーン)がつけられているが、ブリティッシュ鞍にはない。また、ブリティッシュ鞍では金属やプラスチック製のが主流だが、ウェスタン鞍では革製である。

乗馬目的に応じて鞍の種類は総合鞍・障害鞍・馬場鞍等があり形状・重量は異なるがいずれも腹帯を用いて馬の胴体と固定する。尻を載せる部分の両側には腿(もも)や膝(ひざ)が触れる位置にはフラップと呼ばれる垂れが取りつく。

競馬等の競争種目で用いる障害鞍では一般に「鞍上(あんじょう)の」と表現される騎乗中の騎手は両膝で馬の胴体を押え、鞍に尻を載せることは少ないため尻を載せる部分は形骸化した形状を保つのみであり、さらに馬の負担を避けることもあり一般的な乗馬に用いる総合鞍に比べて著しく軽量化が図られている。

騎馬民族は幼い頃より馬に親しみ、いわゆる人馬一体で鞍を用いずに乗馬できるが、馬の背の断面は丸く滑りやすいため、経験のない者が鞍を付けない馬に座ることまでは出来ても、馬が動き出した途端に滑り落ちることが多い。

鞍数

鞍数(くらすう)とは、乗馬・馬術の習熟度や経験度を計る目安の一つで、騎乗した回数のことを指す。 正確には45分~1時間程度の1回の騎乗を一鞍(ひとくら)と数える。

たとえば乗馬クラブにビジターで訪れた場合などに、あてがう馬や、行う運動の種類、難易度などの選択、判断のため、鞍数を尋ねられる場合が多い。

サドルステッチ

サドルステッチ(Saddle stich)とは皮革製品全般で用いられる縫製技術の一つ。接合する皮革にあらかじめ糸を通す部分の穴を空け、糸を表・裏から8の字状に縫い合わせた縫い目を指す。片側の糸が破断しても容易に解れる(ほつれる)ことがなく耐久性が非常に高い。

現代の高名な皮革製品ブランドの多くは創業時に乗馬用の皮革製品を扱っていた馬具(ばぐ)専門企業が多い。馬具が期待する耐久性や機動性を実現するために培ってきた用途に応じた材質の選別等のノウハウや馬具特有の縫製技術を受け継ぎ、親子数代にわたって使い継がれる耐久性のある高品質な製品を提供している。

サイドサドル

サイドサドルで騎乗し、腹帯を締める女性騎手。

サイドサドル(Sidesaddle)とは、女性が馬背に「またがる」のを避けるため、乗馬の際に騎乗者の胴体を進行方向に向けず、馬背の左側に横向きに坐り、頭部のみを進行方向に向ける、女性固有の騎乗姿勢およびそれに用いられる鞍を言う。現代のサイドサドルはホーンと呼ばれる二つの突起を備えており、騎手は脚でこれをはさみこむことで騎座を安定させる。

関連項目

自転車

自転車を構成する部品の一つで、人の尻を載せる。古くは金属フレームに革を被せたものであったが、近年では合成樹脂製のものが多くを占める。 シティーサイクルなどのサドルの金属フレームにはコイル・スプリングが付属し、凹凸の激しい路面の衝撃を和らげる機能を有するが、ペダリングの力をロスしてしまうためスポーツサイクルでは使用されない。 スポーツ車用のサドルは足が動かしやすく、長時間座っても尻と性器が痛まない様、デザインに様々な工夫を凝らした物が市販されている。近年のサドルの種類の多様化は、いわゆるエルゴノミックデザインの賜物といっても良いが、これだけ多種多様なサドルが市場に出回っている事を逆に言えばサドルは技術進歩の進み具合が一番遅い部品とも言える。自転車が様変わりしていく中で未だよくフィットした革サドルを愛好する者も多い。 また、軽量化を追求するロードレーサー用のサドルとして、カーボンファイバーの板一枚で形成された、重量100グラムを切る超軽量サドルも存在する。この場合、製品によっては乗車する人の体重制限を設けているものもある(極端に重い人が座ると座面が割れてしまう)。

かつてオートバイを盗むために、自転車のサドルを盗んで使う事件が多発した。サドルに附いているパイプ(シートピラー)を使ってオートバイ(特にスクーター)の鍵を破壊し盗むという手口である。この手の盗難が頻発したため、オートバイメーカーは政府に対策を求めたが、逆に盗まれにくいオートバイを作るよう指導された。この結果、スクーターではシャッターロック機構などが採り入れられ、それ以外のオートバイではイモビライザー装置の導入が進んだ。

オートバイ

オートバイを構成する部品の一つで、人の尻を載せる。一般的に車長・車幅のほぼ中央で進行方向に対して燃料タンクの直後に位置する。近年、オートバイのサドルは一般にはシートと呼ばれることが多く、クッション性のあるスポンジを芯材とし合成皮革で覆われているが、単座の場合は前記自転車と同様のコイル・スプリングが取り付いた仕組みのものがある。

関連項目

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