コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ファーストパーソン・シューティングゲーム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Jiver~jawiki (会話 | 投稿記録) による 2007年2月16日 (金) 02:11個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (主なFPS)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ファーストパーソン・シューティングゲームFirst Person Shooting Game, FPS)とは、シューティングゲームの一種。

狭義には画面に登場する主人公の視点(一人称視点 First Person view)でゲーム中の世界・空間を任意で移動でき、拳銃といった武器、もしくは素手などを用いて戦うアクションゲームを指す。作品によってはレベルが上がったりストーリーを進めるといったRPGのシステムが添加されているものもあるが、前述した条件を満たせばFPSと言える。

また、広義にはフライトシミュレータのうち、空戦主体のものや拳銃型コントローラで画面中の敵を狙い撃つガンシューティングも含むが、ここではもっぱら狭義の意味でのFPSについて解説する。

歴史と概要

1974年アメリカで発表された「Spasim」を始祖とする。id Softwareが1992年に発表した「Wolfenstein 3D」や、1993年に同社が発表した「DOOM」の世界的ヒットにより、FPSは一気にゲームジャンルとして定着した。日本では当初、これらが洋ゲーの一種として輸入され、一部のマニア層に愛好されていた。現在では、コンピュータ・ゲームの一大ジャンルとして認知されつつある。

アメリカではファーストパーソン・シューターFirst Person Shooter)と表現される。一方日本では「一人称視点シューティングゲーム」と訳される。また、「ファーストパーソン・シューティングゲーム」という呼称が定着する前は「3Dシューティングゲーム」や、「DOOM系シューティングゲーム」とも呼ばれていたこともあった。

FPSと同じようなシューティングゲームのジャンルには、TPS(サードパーソン・シューティングゲーム Third Person Shooting Game)という、俯瞰する視点(三人称の視点)から主人公を操作するタイプのゲームがある。ゲームによっては、視点を一人称と三人称の両方に切り替え可能なゲームもある。

有名なTPSにはマックスペインスプリンターセルBloodRayneGrand Theft Auto(III以降)、MafiaHitman、コンシュマー(家庭用ゲーム機)ではメタルギアソリッドシリーズやバイオハザードシリーズなどがある。

FPS のオンラインゲームにおける一ジャンルとして MMO (Massively Multiplayer Online) と呼ばれる「多人数同時参加型オンライン」の要素を取り入れた MMOFPS も登場している。これは同様にオンラインゲームの一ジャンルである MMORPG の FPS 版とも呼べる内容であり、多数のプレイヤーが恒常的に展開される仮想空間にいつでも参加してプレイできるタイプのゲームである。

スポーツ系とリアル系

現在発売されているFPSの多くは、そのゲーム性から「スポーツ系FPS」と「リアル系FPS」との2つに分けることが出来る。

「スポーツ系FPS」は派手なアクションとスピード感が特徴的なFPSで、QUAKEシリーズやUnrealシリーズに代表される。一方「リアル系FPS」は現実の銃器による戦闘を模したもので、一撃必殺の緊張感を売りにしたFPSである。Delta ForceCall of DutyカウンターストライクBattlefieldシリーズRainbow sixシリーズなどが有名。もちろん全てのFPSがこの2つに分類されるわけではなく、スポーツ系の要素とリアル系の要素を併せ持ったようなものや、全く独自のシステム・ゲーム性を持ったものもある。

日本でのFPSの普及

後述する「主なFPS」の項目の中にあるタイトルの殆どはアメリカ製で、日本製のFPSは皆無であるといってよい。銃型のコントローラーを使い、任意でプレイヤーの移動ができないもの(バーチャコップザ・ハウス・オブ・ザ・デッド等)はガンシューティングゲームであって狭義のFPSではない。またエースコンバットシリーズは俯瞰視点と主観視点の切り替え機能があるが、これはフライトシューティングであって狭義のFPSではない。なお、任天堂メトロイドシリーズの中にFPSの「メトロイドプライム」シリーズがあるが、これはアメリカにある任天堂の子会社レトロスタジオによる制作である。日本国産という事にこだわるのならば、コンシュマーで発売されたガンサバイバーシリーズや魔剣X、パソコン用ゲームとしてバトルビートなどもあるが、どちらも海外製FPSに比べると大きな販売成果を挙げたとは言いがたい。

日本の家庭用ゲーム機におけるFPS

プレイステーションなど3DCGを利用可能なゲーム機が登場した当時には、FPSあるいはFPSに近い主観視点の日本製ゲームソフトも少なからず制作されていた。しかしこれらは日本のプレイヤーにはあまり受け入れられなかった。単純にゲームとしてのおもしろさに問題があるものも少なくなかったが、それ以上に"ともかく難しいマニアックなゲーム"という印象が強くなりすぎたことが大きい。同時にアメリカ独特のデザインセンスが日本人に受け入れられにくく、さらにマニアック感に拍車をかけてしまう結果となった。しかしゴールデンアイ 007のように日本国内でもヒットしたFPSもあり、単にメーカー側の普及への努力不足も否めない。
しかしそれよりも根本的な理由として、FPSがマウスキーボードを併用することで、素早く、複雑かつ精確なコントロールが実現でき、実際に自分の視点であるかのようにプレイできる環境で生まれ育ったことが挙げられる。反面、日本で支配的であった家庭用ゲーム機のコントローラーでは、そもそも直感的な視点操作を得ることが難しかったのである。事実、プレイステーション時代に北米では日本以上に多くのFPSが発売されたが、同様の理由から高い評価を受けたものは極めて少なく、日本国内でもガングリフォンシリーズや機動戦士ガンダム外伝シリーズなど、ロボットを題材とすることで操作系の煩雑さを操作する楽しみへ昇華させたものもあったが、マニア受けはしたものの、一般化するには至らなかった。
FPSに類似したゲームはバイオハザードシリーズや戦国無双に代表される三人称視点シューティングがある。これらはプレイヤーの周囲がある程度見渡せ、視点の切り替えが頻繁には必要でないことからコントローラーの問題はさほど大きくなかったが、それでもたとえば『ゼルダの伝説 時のオカリナ』では「注目(ロックオン)」と「視点固定」という手法によって操作を簡素化し、問題を乗り越えていた。同様にメタルギアソリッド2も「主観視点」に切り替える事で擬似的ではあるがFPSのように自己視点になり、三人称視点時よりも縦軸、横軸に対してより正確な射撃が出来るようになるなど 従来まで三人称視点だった3DゲームのFPS化が一部で進み始めている。
一方で こういった自己視点時での操作上の問題が、(特にTPSにくらべて)「FPSは複雑で難しい物」という評価の定着につながってしまった。ニンテンドウ64やプレイステーションのデュアルショックコントローラーなど、アナログスティックが付属したコントローラーが一般化したことで、またソフト自体も家庭用ゲーム機でのプレイを考慮して開発されるようになり操作性の問題はずいぶん改善されたが、やはりマウスとキーボードの操作性には遠く及ばないのが現実である。
こうしたコンシュマーにおけるFPS系ゲームの操作の難について 敵をある程度 自動的ロックオンしたり 専用の操作用コントローラー(ジョイスティック等)に対応させるなどの模索が続いているが、どれも根本的な解決には至っていない。しかしながら海外でもコンシューマスタイルでのFPSやTPSがすでに市民権を得ており、作る側もすでにキーボード・マウスでの操作だけに依存することは出来なくなっているのが現状である。この点については、標準のコントローラーにポインティング機能を搭載したWiiが注目されている。

欧米との普及率の差

上記の問題も含め、学問的研究は始まったばかりであるが、欧米と日本を比較して主観視点のゲームの成功の差を 日本人の嗜好によるものであるとする説もある。自ら主人公を演じるよりも、活躍する主人公を見る方を好むといったものだが 今のところ根拠が薄い説である。さらに、FPSは登場初期がインターネット黎明期にあたり、ネットを介してコミュニティが形成され、オンライン対戦や情報交換が盛り上がったり、ユーザーの手によって多数のModが公開されたことが爆発的人気の後押しをしたが、一般的な家庭用ゲーム機ではゲームのデータを任意に改造させるという事は仕様上難しく、そういった別角度からのアプローチをする事が難しかった事も挙げられる。また、FPSの本場アメリカではアタリショックなどの理由から家庭用ゲームの普及率が芳しくなく、もっぱらゲームというのはボードゲームゲームセンター、そしてパソコンでやる物だという風潮が強かった。FPSが日本よりも普及したのは そういった国柄の影響も大きい。
近年、国内メーカーの中には日本国内のゲーム市場縮小の影響と北米、欧州での販売拡大に向けて、FPSタイトルを製作する動きがある。またコナミやカプコンといった大手メーカーが海外製FPSの日本語化を手がけたり、日本国内向けに対戦用サーバーを用意するなど、国内でも確実にプレイヤー層が広がり始め、ファミ通といったコンシュマーゲーム用の雑誌でPCのFPSが紹介されるなど、知名度も上がりつつある。

FPSの評価基準

FPSは自分の視点でゲームが進むという性質上、よりリアルなプレー画面であればあるほど高い評価を受ける傾向にあり、そうした理由から大半の新作FPSはあらゆるジャンルの中でも特別に高度な映像表現を用いて製作される場合が大半である。

また、一回のゲームプレイ時間が他のゲームジャンルと比べて数分~長くても30分程度(ゲームのルールによって異なる)と比較的短く、ネットワークRPGと違ってレベルを上げたりアイテムを集めるといった無駄な労力を負わされる事が無いのと言う点で他のジャンルよりも手軽にプレイでき、2007年現在、インターネットによる対戦人口が最も多いジャンルとされている。ボードゲームやカードゲームとは違い、ランダム性が比較的低く、基本的にプレイヤーの腕前が顕著にでるため競技性が強く、欧米では最も人気のあるゲームジャンルの一つである。

しかしFPS最大の特徴であり、最大の制約である「自分の視点」に画面が固定されていると言う点で、同ジャンルの作品はどうしてもインターフェイスやゲームシステムなどが似通った印象になってしまうのが実情である。事実 最近では大半のFPSの操作方法がたとえ別作品であっても ほぼ同じ物になっており、一度なにかしらのタイトルをプレーしていれば直感で操作出来るのも魅力的だが、それゆえに「目を引く」項目の方向性が"斬新なゲームシステム"ではなく"より美しいグラフィック"や"独特な映像表現"に偏ってしまっている原因になっており、また、それ以外にアピールのしようが無いというのもまた事実となっている。

これはFPSが「自己の視点で進むゲーム」という最大の特徴かつ最大の制約を抜け出すことができない以上、今後も永久に付きまとうジレンマである。

コンピュータ関連企業との結びつき

近年のファーストパーソン・シューティングゲームにはプレイヤーのPCにかなりのスペックを要求するものが多く、FPSで新作が出るたびに新型のパソコンパーツやパソコン本体の需要が高まるため、nVIDIA等、多くのコンピュータ関連企業がファーストパーソン・シューティングを広めるべく、ゲームの大会にスポンサーとして参加している。有名な大会ではCyberathlete Professional League(CPL)、World Cyber Games(WCG)などがあり、日本からも毎年代表選手が参戦している。

また、カリスマ性を持つプレイヤーやチームに対して海外大会への遠征費やパーツ等を提供する企業も増加しており、多くのプロのゲーマーが誕生している。日本では、2005年1月10日にPSYMIN(才民)という企業がカウンターストライクを主な活動ゲームとしているチーム、「4dimensioN」をサポートすると発表し、日本初の「ゲームをプレイする事を職業にする」プロ・ゲーマーが誕生した。同時期2005年4月18日に「AggressiveGene」(AXG-GAMING)というチームも大阪にあるネットカフェを拠点とし、8月1日にSoftTradingがスポンサーとなって「カウンターストライク」のチームでは2つ目のプロチームとなった。また、現在でも「カウンターストライク」シリーズに関わらず、ゲームプレイを職業とする「プロゲーマー」や「プロチーム」が増え続けている。

ゲームエンジンの利用

FPSを製作する際には最初にベースとなるゲームエンジンを構築してから製作される場合が多い。この際、リリースするOSの開発元や、グラフィックボードの開発会社と技術提携して開発を進める場合が殆どである。

ゲームエンジンは「DOOMエンジン」「Quakeエンジン」「Unrealエンジン」「HalfLifeエンジン」など、そのゲーム後とのエンジン名が名づけられ、新作が公開されてエンジンそのものがバージョンアップすると「Quake3エンジン」などナンバリングが変更される場合がある。

ゲームエンジンには「映像処理」「音声処理」「データ管理」「入力・出力方法」「物理処理」「ネットワーク処理」といったゲーム製作に必要な骨組みが整備され、当然ながらエンジンの種類によって映像処理法方やデータの管理方法などに違いがある。例えば同じグラフィックデータや音声データを用いてゲームを製作しても エンジンによって見栄えが大きく変わるし、物理処理によってはマップ中においてあるものを破壊できるようになったり、ゲーム中に大きな爆発を引き起こさせれば人間の四肢を吹き飛ばすような表現ができるようになるものもある。このゲームエンジンの上に構成されたイベントやステージのデータを読み込み、ゲームとして動作させる。

こうしたゲームの骨組みとなる「エンジン」があれば その開発費や時間、労力をエンジンにかける必要性はほとんど無いため 発売まもなくに新作や拡張パックを作る場合や、まったく関係の無い他社がエンジン利用のライセンスを取得して製品用ゲームを開発・販売する事がある。極論すれば エンジンさえちゃんと整っていれば、あとは表面上のグラフィックや音声、エフェクト、キャラクターなどを挿げ替えるだけで済む。場合によってはエンジンの内容を一部書き換えてバージョンアップしたり、オリジナルのコードを書き加えて改造する事もある。

ライセンスの取得に初期投資は若干かかるが、中堅のゲームソフト会社にしてみれば最初からゲームエンジンを作るよりか数倍安いコストで製作を始める事ができる。また エンジンの一部、もしくはそのすべてが一般に公開されている場合はそれを利用してModを製作する事ができ、一般的なゲームユーザーがマップを追加したり、ゲームの内容そのものをまるっきり変更してしまうこともできる。有名なものではHalfLifeのエンジンを使って作られたCounterStrikeなどがある。

エンジンによってはパソコンゲーム以外にもコンシュマー向けに移植しやすい形で公開されているものもあり、近年ではパソコン版として発売されたタイトルが家庭用ゲーム機に移植されたり、その逆のパターンも多くなってきている。

また、こうしたエンジンは本来FPS用に製作されたものだが 改造すればTPSをはじめ、あらゆる3Dを使ったゲーム、例えばパズルゲームやフライトシュミレーター、ロールプレイング、リアルタイムストラテジー、レースゲームなど 専門知識と応用しだいでジャンルに分け隔てなく様々なゲームを製作することもできる。

こうしたファーストパーソン・シューティングゲームのゲームエンジンを利用すれば、あまり3DCGに関する知識を有していなくても比較的簡単に3DCGを使ったコンテンツを製作することが出来る。具体例としては、ゲームソフトの映像を取り込んで映画を作るマシニマ(Machinima)などが挙げられ、海外では大学の卒業研究の題材としてFPSのエンジンを用いた映像製作に取り組んだ例もある。

主なFPS

(ABC順)

関連項目

');