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プロジェクト:数学/函数と関数

残念なことに、ウィキペディアではしばしば「函数」と「関数」を互いに書き換える編集合戦が発生しています。そのような争いをなるべく抑えることが、このページの目的です。複数の立場があることを御理解頂き、表記を変えることには慎重になってください。

解説

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「函数」が主に用いられていたのは、それほど古い話ではありません。解析学のバイブルともいわれる高木貞治の『解析概論』では「函数」表記です。この本は、1938年に初版が出版され、著者の逝去した翌年の1961年に現行第3版が出版されました。その序文によれば、著者の指示により数学用語を現行のものに改めた、とあります。それでもなお「函数」表記であり、当時は「函数」が主に用いられたと考えられます。

一方、1958年、当時の文部省の指導により、学術用語の統一をはかるため、学術用語集が編纂されました。なるべく当用漢字内におさめるように、との指導の下、例えば「収斂」は「収束」に、「抛物線」は「放物線」に言い換えが進められました。しかし、「函数」を「関数」に言い換えることは、当時の数学者にはあまり受け入れられなかったようです。その結果、学術用語集数学編では「関数」と「函数」が併記され、数学編主査の彌永昌吉は、序文で「函数が用いられることを強く望む」と述べています。他方、例えば物理学編では「関数」のみ記されており、中等教育では「関数」で教えるようになった[1]ため、「関数」表記は徐々に世の中に浸透しました。しかし、以上の経緯から、「函数」表記を好む者も少なくはありません。

誤解なさらないで頂きたいのですが、現実の数学界では、それほど深刻な論争にはなっていません。多数の数学者が編集者に名を連ねる『岩波数学辞典第4版』では「関数」表記です。一方、個々の数学者が「函数」表記を用いるのも自由な雰囲気であり、学部向けのテキストや日本数学会の公式文書などで「函数」表記が用いられていることがあります。

過去の論争

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「函数」よりも「関数」が好みであったり、表記を統一したいという考えにより、「関数」に統一しようとの意見があります。そのような人たちの主な意見とそれに対する反論を以下に列挙します。

  • 「関数」の方が一般的。→ 何をもって一般的と判断するのか。「函数」も用いられることを知らないだけではないのか。
  • 「関数」は常用漢字で、「函数」は常用漢字でない。→ 常用漢字を優先すべき、という規定は、意味も読みも同じ漢字の、違う字体に関する話である(例えば、國ではなく国を用いる)。「関」と「函」は、読みこそ同じであるが、字体だけの違いではなく、意味も違う。この理由で「関数」が優先されるならば、「楕円」は「長円」でなければならない。
  • Google 検索などで、「関数」の方が多く用いられていることが確認できる。→ 検索が全てではない。「坐剤」より「座剤」の方がヒット数が多いが、前者がより正しい意味として採用されている(なお、坐は常用漢字外で、座は常用漢字)。
  • 学術用語集では「関数」が正式。→ 学術用語集に規定された用語が主に用いられているとは限らない。例えば「同形」はほとんど用いられず、「同型」が用いられている。
  • 中学・高校の教科書では「関数」である。→ 教科書に揃える必要はない、という意見がある。例えば「大坂城」。

現行方針

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以上に挙げた、「関数」を支持する理由はどれも決定的なものではなく、「関数」でなければならない強い理由はありません。しかしながら、「関数」の方がより広く使用される傾向にあり、初学者や他分野の専門家には「関数」の方がより分かりやすいとは言えるかも知れません。反面、好んで使用する者も少なくない「函数」を禁止する必要もないでしょう。そこで、当面は以下の方針を採ることにしましょう。

  • 項目名やカテゴリ名は、原則として「関数」を用いる(固有名詞である場合などを例外とする)。ただし、項目内では必ずしも関数に統一する必要はないし、関数と函数が混在していても構わない。
  • 「函数」を「関数」に、「関数」を「函数」に変更する編集は推奨されないが、以下の条件(WP:RFA の基準に準ずる)を満たすログインユーザは、何らかの合理的な理由がある場合にはその理由を明記した上で表記の変更をすることができる。理由を記す場所としては当該項目のノートが推奨されるが、ごく短い説明が可能な場合は要約欄でも可とする。ただしこの規定の濫用は厳に慎み、これに基づく表記の変更は原則として月1回程度にとどめるものとする。
    • 初めて編集した時から1か月以上を経過していること。
    • その間、標準名前空間(記事名前空間)を50回以上編集し、直近1か月間の標準名前空間の編集回数が5回以上あること。
  • 変更が意に染まない場合でも、24時間以内に差し戻すことはしない。
  • 以上の条件を満たさない表記の変更は差し戻される。会話ページへの注意の後も、同様の行為を繰り返す場合は、荒らしとして対処される。
  • 明らかに間違った編集(正式名称が「函数」であるものを「関数」に変更するなど)を差し戻すことは差し支えない。
  • 項目名に揃えるとか、同一項目内での表記を揃えるという理由は、以上のルールを超えて表記を変更する妥当な理由とは見なされない。
  • 加筆の際や、明らかに記事の質を上げる改稿の際には、どちらの表記を用いても構わない。

人的リソースの問題により、ルールが正確に適用されるかどうかは保証されませんが、この方針により編集合戦が抑制され、長期的にはコミュニティの意見が反映されることになるでしょう。なお、表記を変更する項目は、自分が内容をよく理解しているものに限ってください。内容がよく分からない項目について表記を変更しようとするのは、おせっかいというものです。

リンク

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脚注

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  1. ^ 学習指導要領に「関数」が登場するのは中学校が1958年、高校が1960年。但し1958年の中学校学習指導要領で教えるべき用語としては「一次関数(一次函(かん)数)」と併記されており、中学校学習指導要領が「関数」に一本化されるのは1969年から。