ウェクスラー成人知能検査
ウェクスラー成人知能検査(ウェクスラーせいじんちのうけんさ、Wechsler Adult Intelligence Scale、略称WAIS、ウェイス)は、16歳以上の成人用に標準化された、ウェクスラー・ベルビュー知能検査(1939年)の改訂版として、1955年2月に出版された、知能(IQ)を測るための一般的な検査である。
知能は、目的を持って行動し、合理的に考え、効率的に環境と接する個人の総体的能力として定義されている。
概要
[編集]全検査IQは、言語性検査と動作性検査から構成されている。なかでもWAIS-IIIは、7言語性検査と7動作性検査の、計14下位検査から成っている。2018年には最新のWAIS-IVが出版された。
ウェクスラー式知能検査では、次の3つのIQを得ることができる。
- 言語性IQ
- 動作性IQ
- 合成得点による全検査IQ
項目(言語検査) | 評価点 | 項目(動作検査) | 評価点 | 全検査IQ= |
---|---|---|---|---|
1.一般的知識 | 7.符号問題 | 職業別IQ | ||
2.一般的理解 | 8.絵画完成 | 言語検査IQ | ||
3.算数問題 | 9.積み木問題 | 職業別IQ | ||
4.類似問題 | 10.絵画配列 | 動作検査IQ | ||
5.数唱問題 | 11.組合せ問題 | 職業別IQ | ||
6.単語問題 | 12.迷路 |
1981年には、16歳から74歳の9年齢群による1,880名のアメリカ人サンプルで、WAIS-Rが標準化された。この検査は高い信頼性を有しているとみなされている。
知能指数の平均は100、標準偏差は15である。約3分の2程度の成人の知能指数は85~115に含まれる。
検査の変遷
[編集]WAIS-IIIの適用年齢は16歳から89歳である。16歳以下の受検者にはWechsler Intelligence Scale for Children (WISC, 7-16歳)や、Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence(WPPSI, 2 1/2-7歳)を使用する。 近年になって4下位検査による短縮版が発行され、短縮版では、より短い時間で効果的に、言語性IQ、動作性IQ、全検査IQを推定することができる。Wechsler Abbreviated Scale of Intelligence (WASI)(日本未刊行)では、推定IQを求めるために、WAISの「単語」「類似」「積木模様」「行列推理」を使用している。
WAIS-IIIの14下位検査
[編集]言語性検査
[編集]- 知識
- 文化によって獲得した一般知識の程度。(例「ビクトリアの長は誰ですか?」)
- 理解
- 抽象的な社会慣習、規則、経験を扱う能力。(例「一石二鳥という諺はどのような意味ですか?」)
- 算数
- 数学問題を暗算する集中力。(例「1ドルで45セント切手を何枚買えますか?」)
- 類似
- 抽象言語理解。(例「りんごと梨はどのようなところが似ていますか?」)
- 単語
- 学習や理解の程度、および語彙の言語表現力。(例「ギターとは何ですか?」)
- 数唱
- 注意・集中。(順唱例「1-2-3」、逆唱例「3-2-1」)
- 語音整列
- 注意と作動記憶。(例「き・4・け・3・か」を、昇順に数字を言い、その次に昇順に発音して下さい→「3・4・か・き・け」)
動作性検査
[編集]- 絵画完成
- 視覚的細部を素早く感知する能力。
- 符号
- 視覚的-運動協応、運動と心のスピード。
- 積木模様
- 空間認知、視覚的抽象処理、問題解決力。
- 行列推理
- 非言語的抽象課題解決力、帰納的推理、空間推理。
- 絵画配列
- 論理/逐次的推理、社会見識。
- 記号探し
- 視覚認知、スピード。
- 組合せ
- 視覚分析、統合、組み立て。
補助問題として「符号補助問題1(対再生)(自由再生)」と「符号補助問題2(視写)」がある。
因子による群指数
[編集]WAIS-IIIでは、言語性や動作性といったIQの他に、次の4つの群指数が得られる。
言語理解 (VC)
[編集]- 単語
- 類似
- 知識
知覚統合(PO)
[編集]- 絵画完成
- 積木模様
- 行列推理
作動記憶(WM)
[編集]- 算数
- 数唱
- 語音整列
処理速度(PS)
[編集]- 符号
- 記号探し
Note: 絵画配列、理解、組合せは、群指数には使用されない。
関連項目
[編集]- 児童向けウェクスラー式知能検査(WISC)
- ウェクスラー就学前幼児用知能検査(英語: Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence)(WPPSI)