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ウェスト・ミッドランズ・メトロの車両

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
T-69 (路面電車車両)から転送)
左:T-69 右:ウルボス3
2014年撮影)

この項目では、イギリスイングランド中西部のバーミンガムを始めとした都市を走るライトレールであるウェスト・ミッドランズ・メトロ(旧:ミッドランド・メトロ)の車両について解説する。開業時はイタリアアンサルド製の電車であるT-69が導入されたが、メンテナンス面の課題や延伸区間の線形など様々な要因で2014年以降はスペインCAF製のウルボスへの置き換えが実施され、2020年現在は同形式が使用されている[1][2][3][4][5][6]

T-69

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T-69
T-69(5、2005年撮影)
基本情報
製造所 アンサルドブレーダ
製造年 1998年 - 1999年
製造数 16両(01 - 16)
運用開始 1999年5月31日
運用終了 2015年
投入先 ミッドランド・メトロ
主要諸元
編成 3車体連接車
軸配置 B′+2′+B′
軌間 1,435 mm
電気方式 直流750 V
架空電車線方式
最高速度 70 km/h
車両定員 151人(着席56人)
(乗客密度4人/m2時)
車両重量 38.9 t
全長 24,360 mm
全幅 2,600 mm
床面高さ 850 mm(高床部分)
350 mm(低床部分)
(低床率60 %)
車輪径 680 mm
主電動機出力 210 kW
出力 420 kW
備考 主要数値は[1][2][3][7][8][6][9]を参照。
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ウェスト・ミッドランズ・メトロ(旧:ミッドランド・メトロ)の開業時に導入されたのは、同線向けのオーダーメイド車両としてイタリアアンサルドブレーダによって製造されたT-69であった。前後車体の運転台側に主電動機を搭載したボギー台車が、中央部に付随台車が設置された3車体連接車で、動力台車が設置されている箇所を除いた車内全体の60 %が床上高さ350 mmの低床構造となっていた。全長は24,360 mm(79 ft 11 in)で、イギリスのライトレール向け車両の中で最も小型であった。塗装は赤や青、黄色(乗降扉部分)など多数の配色を用いたものが基本であったが、銀色を主体に車体上下をピンク色で塗った07や10、かつてバーミンガムに存在した路面電車バーミンガム・コーポレーション・トラムウェイ英語版)の復刻塗装を纏った11など例外も幾つか存在した[2][3][8][7]

1999年5月31日からの営業運転の開始に備え、1998年から1999年にかけて16両が導入され、1時間に最大10本の列車が運用可能な車両数を確保した。だが、運用開始後は電気配線を始めとしたメンテナンス費用が想定以上に嵩む事が明らかとなり、運用の面でも課題が多数挙がる事態となった。それでも2010年代まで主力車両として運用されていたが、2000年代後半になると耐用年数が近づく中で大規模な改修が必要となり、その中で製造が既に終了した事でアンサルドブレーダ側から予備部品の供給が不可能となっていた。更に、2009年時点で予定されていた延伸区間にある急勾配はT69の性能、特に制動装置の構造では不十分であった。これらの事情を踏まえ、新型車両として次項で解説するウルボス3を導入し、T69を全面的に置き換える事が決定された[4][2]

2014年からウルボス3の営業運転が開始された事に伴いT-69の運用離脱車両が発生し、以降はウルボス3の増備に合わせて営業運転からの離脱が続き、翌2015年4月をもって定期運用が終了した。それ以降も多客時の予備車として全車とも車両基地に残存していたが、2018年に1両を除いてウエスト・ミッドランズ合同行政機構英語版の一部門であるウエスト・ミッドランズ交通局英語版が主催したネットオークションに出品され、1両(07)がイギリスの路面電車業界団体であるUKトラムに、もう1両(11)がバーミンガム博物館へ売却された。また、オークション以降も2両(10、16)が車両基地に残存しており、そのうち16は事業用車両への改造が計画されているが、売却先が見つからなかった12両(01 - 06、08、09、12 - 14)についてはスクラップとして解体され2020年の時点で現存しない[2][3][8]

ウルボス3

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ウルボス3
(ウェスト・ミッドランズ・メトロ)
車庫に並ぶウルボス3(2014年撮影)
基本情報
製造所 CAF
製造年 2013年 - 2015年
製造数 21両(17 - 37)
運用開始 2014年9月5日
投入先 ミッドランド・メトロ→ウェスト・ミッドランズ・メトロ
主要諸元
編成 5車体連接車、両運転台
(C1 - S1 - R - S2 - C2)
軌間 1,435 mm
電気方式 直流750 V
架空電車線方式
最高速度 70 km/h
減速度(常用) 1.2 m/s2
減速度(非常) 2.8 m/s2
車両定員 210人(着席54人)
車両重量 56.0 t
全長 32,966 mm
全幅 2,650 mm
床面高さ 350 mm
(低床率100 %)
制動装置 回生ブレーキ油圧式ディスクブレーキ電磁吸着ブレーキ
備考 主要数値は[2][10][11][12][5][6]を参照。
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T-69に代わる形で導入が実施されたのは、スペインCAFが展開する超低床電車ブランドのウルボス(Urbos)である。両運転台の5車体連接車で、車体はモジュール構造を活用する形で設計が行われ、押出成形による加工を施した軽量アルミニウム合金が使われている。台車は車軸がない独立車輪式で、先頭車体(C1、C2)の各車輪の外側には主電動機が設置されている(ハブモーター方式)。これにより、車内全体が床上高さ350 mmの低床構造となっている一方、抵抗器制御装置などの主要機器は屋根上に設置されている[2][10][11]

車内の着席定員はT-69から減少したが、総定員数はT-69から増加した210人となっており、車内には車椅子ベビーカーが設置可能なフリースペースが2箇所存在する[2][10][11]

CAFへの発注は2012年に実施され、2014年9月5日から営業運転を開始した。同日時点で4両が定期運用に投入されており、整備中だった5両や残りの12両についても翌2015年までに導入が完了し、T-69を完全に置き換えた他、バーミンガム市内を経由しニューストリート駅へ向かう区間の延伸に対応した。ただし導入当初はイギリスの気温に対応したプログラムが設定されていなかった事が要因となって空調装置に不具合が発生した他、乗降扉の開閉機能にも故障が生じ、CAFのスタッフが現地に赴き修理する事となった。また、T-69よりも全幅(2,650 mm)が広い事から、導入に先立ち全区間を運休したうえで2014年時点の各電停のプラットホームの幅を削る工事が行われた[注釈 1][2][10][13][14]

これらの車両は製造当初から架線が存在しない区間(架線レス区間)での走行を可能とするため充電池の搭載が可能な設計となっており、2017年以降全車を対象に屋根上へのリチウムイオン充電池の設置工事が実施されている。また、2018年に運営組織が変更された影響で路線名がそれまでのミッドランド・メトロ(Midland Metro)からウェスト・ミッドランズ・メトロ(West Midlands Metro)に変わった事に伴い、車両の塗装もマゼンタ灰色を用いた従来のデザインから青を基調とした新たなものへと変更されている[11][12][5][6][15]

2020年現在は21両が在籍しており、加えて2021年以降21両の増備が予定されている。これらはバーミンガム市内における路線延伸に伴うもので、この区間は景観保護のため全区間とも架線レスとなるため、増備車は製造当初からリチウムイオン充電池を搭載する事になっている。車体デザインについては既存の車両と同一のものを採用する予定だが、構体の強化による安全対策が図られる[12]

脚注

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注釈

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  1. ^ T-69については工事以降プラットホームと車両との空間を埋める幅広のステップが設置された。

出典

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  1. ^ a b The West Midlands Metro – Part 1: Construction and future extensions”. Urban Transport Magazine (2020年8月18日). 2020年10月14日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i New trams introduced onto the Midland Metro network”. rail.co.uk (2014年9月17日). 2020年10月14日閲覧。
  3. ^ a b c d Former Midland Metro trams to make final journey following auction sale”. Transport for West Midlands (2018年2月21日). 2020年10月14日閲覧。
  4. ^ a b Midland Metro – City Centre Extension & Fleet Replacement (PDF) (Report). Midland Metro. October 2009. pp. 37–38. 2020年10月14日閲覧
  5. ^ a b c Gareth Prior (2018年7月16日). “In Pictures: Blue is the colour as West Midlands Metro new livery unveiled”. British Trams Online. 2020年10月14日閲覧。
  6. ^ a b c d TfWM to take over running of Midland Metro next year”. Railway Technology Magazine (2017年3月22日). 2020年10月14日閲覧。
  7. ^ a b John Boynton (2001-5-1). Main Line to Metro: Train and tram on the Great Western route: Birmingham Snow Hill – Wolverhampton. Mid England Books. pp. 80. ISBN 978-0952224891 
  8. ^ a b c Gareth Prior (2019年6月30日). “In Pictures: Midland Metro 10 still at Long Marston”. British Trams Online. 2020年10月14日閲覧。
  9. ^ Harry Hondius (2002-7/8). “Rozwój tramwajów i kolejek miejskich (2)”. TTS Technika Transportu Szynowego (Instytut Naukowo-Wydawniczy „SPATIUM” sp. z o.o): 35. http://yadda.icm.edu.pl/yadda/element/bwmeta1.element.baztech-article-BGPK-0379-2650/c/Hondius.pdf 2020年10月14日閲覧。. 
  10. ^ a b c d End of the line for original Metro trams”. Express & Star (2015年8月12日). 2020年10月14日閲覧。
  11. ^ a b c d CAF trams for Midland Metro Expansion Project”. The Rail Engineer (2013年3月3日). 2013年11月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月14日閲覧。
  12. ^ a b c CAF wins West Midlands Metro battery tram order”. Metro Report International (2019年10月7日). 2020年10月14日閲覧。
  13. ^ CAF named preferred bidder to supply new Midland Metro trams”. Railway Gazette International (2012年2月3日). 2020年10月14日閲覧。
  14. ^ What's been going on?”. Network West Midlands. 2013年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月14日閲覧。
  15. ^ Gareth Prior (2017年9月26日). “In Pictures: Urbos 3 18 returns – with batteries now included!”. British Trams Online. 2020年10月14日閲覧。

外部リンク

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