コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

フィンゴリモド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
FTY720から転送)
フィンゴリモド
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名 Gilenya
Drugs.com monograph
ライセンス EMA:リンクUS FDA:リンク
胎児危険度分類
  • AU: D
  • US: C
法的規制
データベースID
CAS番号
162359-55-9 ×
ATCコード L04AA27 (WHO)
PubChem CID: 107970
IUPHAR/BPS英語版 2407
ChemSpider 97087 チェック
UNII 3QN8BYN5QF チェック
KEGG D10001
ChEBI CHEBI:63115 ×
ChEMBL CHEMBL314854 チェック
化学的データ
化学式C19H33NO2
分子量307.471 g/mol
テンプレートを表示

フィンゴリモド(Fingolimod、開発コードFTY720)は免疫抑制剤で、リンパ球リンパ節から体液中に出るのを妨げて免疫を抑制する。多発性硬化症治療薬として発売されている。アメリカ合衆国では2010年9月、日本では2011年11月28日に発売された[1]。商品名はイムセラ(田辺三菱製薬)、ジレニアノバルティスファーマ)。

京都大学藤多哲朗教授と台糖吉富製薬(FTYの名称は三者にちなむ)の共同研究でIsaria sinclairii冬虫夏草菌の一種)に含まれる成分ミリオシン(Myriocin、ISP-1)に免疫抑制効果が見出されたことから、この化合物の構造に基づいて新たに合成され、その後三菱ウェルファーマ(現・田辺三菱製薬)等で開発が行われた。腎移植および多発性硬化症に対する治験が行われ、発売に至る。

従来の多発性硬化症治療薬のインターフェロンβ-1a筋肉内注射)とは異なり、1日1回、1カプセルを経口投与する。

効能・効果

[編集]

「多発性硬化症の再発予防および身体的障害の進行抑制」について認可されているが、偽薬対照第III相比較臨床試験の結果、身体的障害の進行抑制については効果が認められなかった[2]

作用機序

[編集]

スフィンゴシンアナログであり、スフィンゴシンキナーゼによりリン酸化され[3][4]スフィンゴシン-1-リン酸受容体の1つであるS1PR1に結合してアゴニストとして働くと考えられている[5]。またそれとは別に、カンナビノイド受容体アンタゴニスト[6]ホスホリパーゼA2(cPLA2)阻害剤[7]、またはセラミド合成酵素阻害剤[8]であるとの報告もある。

その他の自己免疫疾患への適用も考えられている[9]

警告

[編集]

投与開始後数日間、心拍数が大きく低下することがある[10][11]

禁忌

[編集]

クラスIa(キニジン、プロカインアミド等)またはクラスIII(アミオダロン、ソタロール等)の抗不整脈剤を投与中の患者には禁忌である[10][11]。また、重篤な感染症のある患者に用いてはならない。

副作用

[編集]

心拍数の低下(徐脈もしくは徐脈性不整脈)、感染症、黄斑浮腫、呼吸障害、肝機能障害など[12]

重大な副作用は、感染症(細菌、真菌、ウイルス等 45.3%)、徐脈性不整脈(徐脈:11.2%、房室ブロック(第I度から第II度:5.0%、第III度:0.04%)等)、黄斑浮腫(0.6%)、悪性リンパ腫、可逆性後白質脳症症候群、進行性多巣性白質脳症(PML)、虚血性および出血性脳卒中、末梢動脈閉塞性疾患(0.04%)[10][11]。(頻度未記載は頻度不明)

出典

[編集]
  1. ^ 田辺三菱製薬とノバルティスファーマ、多発性硬化症における経口治療薬「フィンゴリモド」を発売、患者の負担軽減に期待、マイライフ手帳@ニュース、2011年12月28日(2012年4月8日閲覧)
  2. ^ Lublin F, Miller DH, Freedman MS, Cree BA, Wolinsky JS, Weiner H et al. (2016). “Oral fingolimod in primary progressive multiple sclerosis (INFORMS): a phase 3, randomised, double-blind, placebo-controlled trial.”. Lancet 387 (10023): 1075-84. doi:10.1016/S0140-6736(15)01314-8. PMID 26827074. http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(15)01314-8/abstract. 
  3. ^ Paugh SW, Payne SG, Barbour SE, Milstien S, Spiegel S (2003). “The immunosuppressant FTY720 is phosphorylated by sphingosine kinase type 2”. FEBS Lett 554 (1-2): 189-93. doi:10.1016/S0014-5793(03)01168-2. PMID 14596938. 
  4. ^ Billich A, Bornancin F, Dévay P, Mechtcheriakova D, Urtz N, Baumruker T (2003). “Phosphorylation of the immunomodulatory drug FTY720 by sphingosine kinases”. J Biol Chem 278 (48): 47408-15. doi:10.1074/jbc.M307687200. PMID 13129923.  [1]
  5. ^ Hla T, Lee MJ, Ancellin N, Paik JH, Kluk MJ (2001). “Lysophospholipids--receptor revelations”. Science 294 (5548): 1875-8. doi:10.1126/science.1065323. PMID 11729304. 
  6. ^ Paugh SW, Cassidy MP, He H, Milstien S, Sim-Selley LJ, Spiegel S, Selley DE (2006). “Sphingosine and its analog, the immunosuppressant 2-amino-2-(2-[4-octylphenyl]ethyl)-1,3-propanediol, interact with the CB1 cannabinoid receptor.”. Mol Pharmacol. 70: 41-50. PMID 16571654. 
  7. ^ Payne SG, Oskeritzian CA, Griffiths R, Subramanian P, Barbour SE, Chalfant CE, Milstien S, Spiegel S. (2007). “The immunosuppressant drug FTY720 inhibits cytosolic phospholipase A2 independently of sphingosine-1-phosphate receptors.”. Blood 109: 1077-85. doi:10.1182/blood-2006-03-011437. PMID 17008548. 
  8. ^ Berdyshev EV, Gorshkova I, Skobeleva A, Bittman R, Lu X, Dudek SM, Mirzapoiazova T, Garcia JG, Natarajan V. (2009). “FTY720 inhibits ceramide synthases and up-regulates dihydrosphingosine 1-phosphate formation in human lung endothelial cells.”. Journal of Biological Chemistry 284 (9): 5467-77. doi:10.1074/jbc.M805186200. PMID 19119142. 
  9. ^ 千葉健治 (2009). “スフィンゴシン1-リン酸受容体調節薬,フィンゴリモド(FTY720)の自己免疫疾患治療への応用”. 薬学雑誌 129 (6): 655-65. [2]
  10. ^ a b c イムセラ カプセル 0.5mg 添付文書” (2016年7月). 2016年7月6日閲覧。
  11. ^ a b c ジレニアカプセル0.5mg 添付文書” (2016年7月). 2016年7月6日閲覧。
  12. ^ ノバルティスのフィンゴリモドをFDAが承認〜多発性硬化症の再発を有意に抑制し、身体障害の進行を遅らせる新しい第一選択薬〜、ノバルティスファーマ、2010年9月28日(2012年4月8日閲覧)

外部リンク

[編集]