クラスター代数
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団代数(クラスター代数)はFomin and Zelevinsky (2002, 2003, 2007)によって導入された可換環のクラスである。ランクnのクラスター代数は、整域Aであって、サイズnの複数のサブセットを持つものであり、それぞれのサブセットは団(クラスター)と呼ばれ、この複数のサブセットの和集合が代数Aを生成し、さまざまな条件を満たす。
定義
[編集]Fが整域であると仮定する。たとえば、有理数Q上のn個の変数の有理関数の可換体Q (x1,...,xn)などがその例である。
ランクnの団(クラスター)は、Fのn個の要素{x, y, ...}のセットで構成される。それらのセットは、通常、体拡大Fの代数的に独立した生成セットであるとみなされる。
シード(種)は、 Fの団(クラスター){x, y, ...}と交換行列Bとからなる。ただし、交換行列Bの要素bx,yは整数であり、団(クラスター)の要素のペアx,yによってインデックス付けされたものである。交換行列を交代行列(または歪対称行列)であると限定することもあり、その場合は、すべてのxおよびyに対してbx,y = –by,xである。より一般的には、交換行列は、歪対称化可能行列とされる。なお、歪対称化可能行列とは、そのすべての要素bx,yが、団(クラスター)の要素に関連付けられた正の整数のセット{dx,dy,...}を用いて、dxbx,y = –dyby,xと、交代行列(歪対称行列)に変換できるようなべて行列のことである。シード(種)は箙として視覚的に表現されることもよくある。箙は有向グラフであり、団(クラスター){x, y, ...}を頂点とし、交換行列のbx,yが正の場合、xからyにbx,y本の有向辺(矢印)を引いたものである。 交換行列が歪対称化可能行列である場合、箙はループまたは2サイクルを持たない。
シード(種)には変異と呼ばれる変化があり異なるシード(種)に変わる。この変異は、団(クラスター)の要素(箙で言えば頂点)の1つ選択するとそれに応じて決まる。この新たに生じるシード(種)は、傾斜の一般化によって得られるが、それは次のような規則での交換行列Bの要素の変化と団(クラスター){x, y, ...}との変化からなる。変異を定める団(クラスター)の要素(箙の頂点)をyとする。交換行列Bの変化は次の通り。団(クラスター)内のすべてのxについて、bx,yおよびby,xの値を交換する。y以外の団(クラスター)の要素x,zについて、 bx,y > 0 かつ by,z > 0である場合には、bx,z を bx,yby,z + bx,zに置き換える。bx,y < 0かつby,z < 0である場合には、bx,z を -bx,yby,z + bx,zに置き換える。それ以外の場合(bx,y by,z ≤ 0の場合)には、bx,z は変えない。最後に、団(クラスター){x, y, ...}の変化を説明する。 yを新しい生成要素wに、次のように置き換える。y以外の要素は変えない。
この式の右辺は、シード(種)の団(クラスター)の要素tをyとの関係(bt,yの正負)で2群に分け、群ごとに要素の冪の積を取り、その和となるn変数多項式となっている。なお、変異の逆も変異である。つまり、 シード(種)Aがシード(種)Bの変異である場合、 BはAの突然変異である。
団代数(クラスター代数)は、初期シードから、次のように構築される。あるシードの変異は、団(クラスター)の要素ごとに定まるから、そのすべての変異を行うこととし、それを繰り返す。シード(種)をグラフの頂点とし、1回の変異で移りあうシード(種)のペアを両端点とする辺を引くことにすると、可能なすべての変異の繰り返しにより、グラフが生成される。このグラフは有限グラフの場合と無限グラフの場合とがある。団代数(クラスター代数)の基礎となる代数は、このグラフのすべてのシード(種)に付随する団(クラスター)のすべての要素によって生成された代数である。シード(種)には、上記で述べていないその他の構造も付随しており、それに対応する団代数(クラスター代数)も存在する。
団代数(クラスター代数)は、シード(種)の数が有限である場合、有限型であると言われる。 Fomin & Zelevinsky (2003)は、有限型の団代数(クラスター代数)が、有限次元の単純リー代数のディンキン図の観点から分類できることを示した。
参考文献
[編集]- Berenstein, Arkady; Fomin, Sergey; Zelevinsky, Andrei (2005), “Cluster algebras. III. Upper bounds and double Bruhat cells”, Duke Mathematical Journal 126 (1): 1–52, arXiv:math/0305434, doi:10.1215/S0012-7094-04-12611-9, MR2110627
- Fomin, Sergey; Shapiro, Michael; Thurston, Dylan (2008), “Cluster algebras and triangulated surfaces, part I: Cluster complexes.”, Acta Mathematica 201: 83–146, arXiv:math/0608367, doi:10.1007/s11511-008-0030-7
- Fomin, Sergey; Zelevinsky, Andrei (2002), “Cluster algebras. I. Foundations”, Journal of the American Mathematical Society 15 (2): 497–529, arXiv:math/0104151, doi:10.1090/S0894-0347-01-00385-X, MR1887642
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- Fomin, Sergey; Zelevinsky, Andrei (2007), “Cluster algebras. IV. Coefficients”, Compositio Mathematica 143 (1): 112–164, arXiv:math/0602259, doi:10.1112/S0010437X06002521, MR2295199
- Fomin, Sergey; Reading, Nathan (2007), “Root systems and generalized associahedra”, in Miller, Ezra; Reiner, Victor; Sturmfels, Bernd, Geometric combinatorics, IAS/Park City Math. Ser., 13, Providence, R.I.: Amer. Math. Soc., arXiv:math/0505518, Bibcode: 2005math......5518F, ISBN 978-0-8218-3736-8, MR2383126
- Marsh, Bethany R. (2013), Lecture notes on cluster algebras., Zurich Lectures in Advanced Mathematics, Zürich: European Mathematical Society (EMS), doi:10.4171/130, ISBN 978-3-03719-130-9, MR3155783
- Reiten, Idun (2010), Tilting theory and cluster algebras, Trieste Proceedings of Workshop, arXiv:1012.6014, Bibcode: 2010arXiv1012.6014R
- Zelevinsky, Andrei (2007), “What Is . . . a Cluster Algebra?”, AMS Notices 54 (11): 1494–1495.
- FominのCluster algebra portal
- 団代数(クラスター代数)関するFominの論文
- [1]団代数(クラスター代数)に関するゼレヴィンスキーの論文
- 中西知樹:「団代数論の基礎」, 東京大学出版会, ISBN 978-4-13-061318-7 (2024年11月18日).