コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

BLAKE

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
BLAKE2sから転送)
BLAKE
一般
設計者 Jean-Philippe Aumasson, Luca Henzen, Willi Meier, Raphael C.-W. Phan
後継 BLAKE2
認証 SHA-3最終候補
詳細
ダイジェスト長 224, 256, 384 or 512 bits
ラウンド数 14 or 16
速度 8.4 cpb on Core 2 for BLAKE-256; 7.8 cpb for BLAKE-512

BLAKEは、Jean-Philippe Aumasson, Luca Henzen, Willi Meier, and Raphael C.-W. Phanによってアメリカ国立標準技術研究所 (NIST)によるSHA-3の公募に提出された暗号学的ハッシュ関数である。ダニエル・バーンスタインによって設計されたストリーム暗号であるChaChaをベースとしたものであり、ChaChaのラウンドの前にラウンド定数との排他的論理和を取った入力ブロックの置換コピーが加えられている。BLAKEはSHA-3公募において5つの最終候補のうちの1つに残った。

SHA-2と同様に、BLAKEには4つのバリエーションが存在する。32ビットのワード長を持ち256ビットのハッシュを出力するBLAKE-256およびそれを切り詰め224ビットの出力としたBLAKE-224、64ビットのワード長を持ち512ビットのハッシュを出力するBLAKE-512およびそれを切り詰め384ビットの出力としたBLAKE-384の4つである。

アルゴリズム

[編集]

ChaChaでは4×4アレイのワードを操作し、BLAKEでは16のメッセージワードと8ワードのハッシュ値を連結することで、ChaChaの出力を切り詰めて次のハッシュ値の計算に用いる。

中核となる変換では入力の16ワードと16の変数を組み合わせるが、ブロック間では8ワード(256あるいは512ビット)しか保持されない。

BLAKEでは、16の固定ワード(πのフラクタル部の先頭の512あるいは1024ビット)と、16要素間での置換テーブル10個を用いる。

σ[0] =  0  1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15
σ[1] = 14 10  4  8  9 15 13  6  1 12  0  2 11  7  5  3
σ[2] = 11  8 12  0  5  2 15 13 10 14  3  6  7  1  9  4
σ[3] =  7  9  3  1 13 12 11 14  2  6  5 10  4  0 15  8
σ[4] =  9  0  5  7  2  4 10 15 14  1 11 12  6  8  3 13
σ[5] =  2 12  6 10  0 11  8  3  4 13  7  5 15 14  1  9
σ[6] = 12  5  1 15 14 13  4 10  0  7  6  3  9  2  8 11
σ[7] = 13 11  7 14 12  1  3  9  5  0 15  4  8  6  2 10
σ[8] =  6 15 14  9 11  3  0  8 12  2 13  7  1  4 10  5
σ[9] = 10  2  8  4  7  6  1  5 15 11  9 14  3 12 13  0

BLAKE-224, BLAKE-256では、固定ワードnに下記の定数を用いる。

n = 0x243f6a88  0x85a308d3  0x13198a2e  0x03707344 
    0xa4093822  0x299f31d0  0x082efa98  0xec4e6c89 
    0x452821e6  0x38d01377  0xbe5466cf  0x34e90c6c 
    0xc0ac29b7  0xc97c50dd  0x3f84d5b5  0xb5470917

BLAKE-384, BLAKE-512では、固定ワードnに下記の定数を用いる。

n = 0x243f6a8885a308d3  0x13198a2e03707344  0xa4093822299f31d0  0x082efa98ec4e6c89
    0x452821e638d01377  0xbe5466cf34e90c6c  0xc0ac29b7c97c50dd  0x3f84d5b5b5470917
    0x9216d5d98979fb1b  0xd1310ba698dfb5ac  0x2ffd72dbd01adfb7  0xb8e1afed6a267e96
    0xba7c9045f12c7f99  0x24a19947b3916cf7  0x0801f2e2858efc16  0x636920d871574e69

中核の操作はChaChaの1/4ラウンドと同等の操作であり、4ワードのカラムあるいは対角線上において2ワードのメッセージ m[] と2つの固定ワード n[] を結合する。1ラウンドごとに8回この操作が行われる。

j ← σ[r%10][2×i]            // Index computations
k ← σ[r%10][2×i+1]
a ← a + b + (m[j] ⊕ n[k])   // Step 1 (with input)
d ← (d ⊕ a) >>> 16
c ← c + d                   // Step 2 (no input)
b ← (b ⊕ c) >>> 12
a ← a + b + (m[k] ⊕ n[j])   // Step 3 (with input)
d ← (d ⊕ a) >>> 8
c ← c + d                   // Step 4 (no input)
b ← (b ⊕ c) >>> 7

上の計算は32ビットバージョンであるBLAKE-256, -224のものである。r はラウンド数(0から13)、i は繰り返し回数(0から7)である。

ChaChaの1/4ラウンドの関数とは以下の違いがある。

  • メッセージワードの和が追加された。
  • ローテートの方向が逆となった。

64ビットバージョン(ChaChaには存在しない)であるBLAKE-512, -384も32ビットバージョンであるBLAKE-256, -224と本質的には同じであるが、ローテートの量が32, 25, 16, 11に変更され、ラウンド数が14から16に増やされている。

修正

[編集]

NISTによる公募の期間中、発見された問題への対処として応募者がアルゴリズムを修正することが許されていた。BLAKEに加えられた修正は以下の通りである

  • ラウンド数がBLAKE-256, -224では10から14に、BLAKE-512, -384では14から16に増やされた。速度を維持したままセキュリティマージンを大きくするためである。

ハッシュ値の例

[編集]
BLAKE-512("")
 = A8CFBBD73726062DF0C6864DDA65DEFE58EF0CC52A5625090FA17601E1EECD1B628E94F396AE402A00ACC9EAB77B4D4C2E852AAAA25A636D80AF3FC7913EF5B8

BLAKE-512("The quick brown fox jumps over the lazy dog")
 = 1F7E26F63B6AD25A0896FD978FD050A1766391D2FD0471A77AFB975E5034B7AD2D9CCF8DFB47ABBBE656E1B82FBC634BA42CE186E8DC5E1CE09A885D41F43451

BLAKE2

[編集]
BLAKE2
一般
設計者 Jean-Philippe Aumasson, Samuel Neves, Zooko Wilcox-O'Hearn, Christian Winnerlein
派生元 BLAKE
詳細
ダイジェスト長 可変長
ラウンド数 10 or 12

2012年12月21日、BLAKEの改良版としてBLAKE2が発表された。これはJean-Philippe Aumasson、Samuel Neves、Zooko Wilcox-O'Hearn、Christian Winnerleinにより設計されたものであり、実際に破られた、あるいは理論的に破られたハッシュ関数であるMD5SHA-1の置き換えを目指したものである[1]。512ビットのハッシュを出力する64ビットバージョンであるBLAKE2b、256ビットのハッシュを出力する32ビットバージョンであるBLAKE2sの2つのバリエーションが存在する。BLAKE2bでは1から64バイト(512ビット)、BLAKE2sでは1から32バイト(256ビット)の間で任意の長さのハッシュを出力可能である。

マルチコアプロセッサでの並列処理による高速化を図った BLAKE2bp および BLAKE2sp と呼ばれるバージョンも存在する。

BLAKE2では、BLAKEから以下の修正がなされている。

  • BLAKEのラウンド関数にあった固定ワードのメッセージワードへの追加が除去された。
  • 2つのローテート量が変更された。
  • パディングが簡素化された。
  • 初期化ベクトルとの排他的論理和を取ったパラメータブロックが追加された。
  • ラウンド数が14 (BLAKE-256)あるいは16 (BLAKE-512)から、10 (BLAKE2s)あるいは12 (BLAKE2b)に削減された。

BLAKE2 のハッシュ値の例

[編集]
BLAKE2b-512("")
 = 786A02F742015903C6C6FD852552D272912F4740E15847618A86E217F71F5419D25E1031AFEE585313896444934EB04B903A685B1448B755D56F701AFE9BE2CE

BLAKE2b-512("The quick brown fox jumps over the lazy dog")
 = A8ADD4BDDDFD93E4877D2746E62817B116364A1FA7BC148D95090BC7333B3673F82401CF7AA2E4CB1ECD90296E3F14CB5413F8ED77BE73045B13914CDCD6A918

BLAKE3

[編集]

2021年7月25日、BLAKE3が発表された[2]

  • MD5、SHA-1、SHA-2、SHA-3、そしてBLAKE2よりも高速である。
  • MD5及びSHA-1よりも堅牢で、さらに長さ拡張攻撃に対してSHA-2よりも堅牢である。
  • マークル木を利用しているため、並列化やストリーミングデータ・差分更新されるデータのハッシュ計算が可能である。
  • 通常のハッシュ以外にも、 疑似乱数生成関数(PRF: PseudoRandom Function )、メッセージ認証コード(MAC: Message Authentication Code)、鍵導出関数(KDF: Key Derivation Function)、可変長出力関数 (XOF: eXtendable-Output Function)を利用可能である。
  • 変種のない一種類のアルゴリズムを提供しており、x86-64や他のマイクロアーキテクチャにおいて高速である。

実装ライブラリ

[編集]

BLAKEをサポートしているライブラリは以下の通り。

脚注

[編集]

外部リンク

[編集]