コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

COSMETS

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ADESSから転送)

COSMETS(コスメッツ、Computer System for Meteorological Services)とは、気象庁の気象資料総合システム(気象観測データを解析し、予測するシステム)のこと。ADESS(気象資料自動編集中継装置:Automated Data Editing and Switching System の略)とNAPS(数値解析予報システム:Numerical Analysis and Prediction System の略)部分に分かれる。もともとはADESS部分と、数値演算予報部分とで個別に扱われていたが、1980年代に統合して呼ばれるようになった。

沿革

[編集]
  • 1959年6月 - 数値解析予報システム (NAPS) を運用開始[1]
  • 1967年 - 第2世代数値解析予報システム (NAPS2) を運用開始[1]
  • 1973年 - 第3世代数値解析予報システム (NAPS3) を運用開始[1]
  • 1982年 - 第4世代数値解析予報システム (NAPS4) を運用開始[1]
  • 1987年 - 第5世代数値解析予報システム (NAPS5) を運用開始[1]
  • 1996年 - 第6世代数値解析予報システム (NAPS6) を運用開始[1]
  • 2001年3月1日 - 第7世代数値解析予報システム (NAPS7) を運用開始[2]
  • 2006年3月1日 - 第8世代数値解析予報システム (NAPS8) を運用開始[3]
  • 2012年6月5日 - 第9世代数値解析予報システム (NAPS9) を運用開始[4]
  • 2018年6月5日 - 第10世代数値解析予報システム (NAPS10) を運用開始[5]
  • 2023年3月1日 - 第11世代数値解析予報システム (NAPS11) のうち、線状降水帯予測スーパーコンピュータを運用開始[6][7][8]
  • 2024年3月5日予定 - 第11世代数値解析予報システム (NAPS11) を運用開始[9][10]

経緯

[編集]

ADESSの経緯

[編集]

当初、東芝のメインフレームを利用していたが、その後、東芝のメインフレーム撤退に伴い、日本電気に移管された。日本電気移管後は、同社製のメインフレーム(ACOS-6シリーズ(C-ADESS V まで)→ACOS-4シリーズ)とミニコンピュータ(MSシリーズ)、その後はUNIXサーバ (UP4800, UX/4800) を使用し、リアルタイムクラスでのサービスデーモンの運用など、SVR4.2MPの機能を活用した機能を提供していた。 ADESSにおいて、COSMETSの一部となる部分はC-ADESSと呼ばれ、日本全国の集配信および、国際通信系(GTS)の中心となっていた。 そのほかに各管区気象台が対応する部分としてL-ADESSがあった(これはCOSMETSの一部ではない)。

2005年の更新では、C-ADESSとL-ADESSを一本化し、東西2つのシステムとし、再構成している。西日本部分については、2008年3月に稼働した。 また、提供ベンダもNECから富士通に切り替え、汎用機を廃してUNIXサーバとPCサーバによるシステムに変更された。

NAPSの経緯

[編集]

当初はM-200Hのようなメインフレームで構成されていたが、その後スーパーコンピュータに置き換えられた。1988年日立製作所のSRシリーズを使用して構築、その後SRシリーズで更新されている。1992年に更新する際、システムの電力容量が気象庁本庁舎で耐えられない電力容量を要する結果になったことから、COSMETSのコアシステムは、清瀬にある気象衛星センター内に移設、以後コアシステムは、清瀬で運用されている。 2001年にNAPS部分は、当時の最新SRシリーズ機SR8000(理論ピーク性能:768GFLOPS)が稼動し、気象予測の予測範囲時間が3時間から6時間と倍増した。

当時、数値演算部分の演算性能では世界3指に入るシステムと広報されたが、当時の他国(カナダ/アメリカなど)システムは更改期を目前としたもので、比較する意味の無い値であった。

さらに、近年の気象予測の予測精度への不満により、早々の置き換えを切望されていたが、2006年3月1日にやっと旧SR8000がSR11000と置き換えられ、理論ピーク性能21.5TFLOPSと大幅に性能向上した。さらに、2012年にはSR16000/M1に、2018年にはCray XC50を主系とするシステムに置き換えられた。

NAPS 各世代の諸元[1]
世代 運用開始 受注者 機種 理論最大性能 主記憶容量 ディスク容量 消費電力
NAPS 1959年 IBM IBM 704 12 kFLOPS
NAPS2 1967年 日立製作所 Hitachi HITAC 5020 307 kFLOPS
NAPS3 1973年 日立製作所 Hitachi HITAC 8800 4.55 MFLOPS
NAPS4 1982年 日立製作所 Hitachi HITAC M-200H 23.8 MFLOPS
NAPS5 1987年 日立製作所 Hitachi HITAC S-810 630 MFLOPS
NAPS6 1996年 日立製作所 Hitachi S-3800 32 GFLOPS
NAPS7 2001年3月 日立製作所 Hitachi SR8000/E1 (80ノード) 768 GFLOPS 640 ギガバイト 2.7 テラバイト
NAPS8 2006年3月 日立製作所 Hitachi SR11000/K1 (80ノード×2) (数値予報) 21.5 TFLOPS
(10.75 テラFLOPS×2)
10 テラバイト
(5 テラバイト×2)
18.6 テラバイト
2005年3月 Hitachi SR11000/J1 (50ノード) (衛星データ処理) 6.08 TFLOPS 3.1 テラバイト
NAPS9 2012年6月 日立製作所 Hitachi SR16000/M1 847 TFLOPS 108 テラバイト 348 テラバイト 1,969 kVA
NAPS10 2018年6月 日立製作所 Cray XC50 18 PFLOPS
(18,166 TFLOPS)
528 テラバイト 10.6 ペタバイト
(10,608 テラバイト)
4,107 kVA
NAPS11 NAPS11s 2023年3月 富士通 PRIMEHPC FX1000 (線状降水帯予測) 31.1 PFLOPS 42.3 ペタバイト
NAPS11 2024年3月 富士通 PRIMERGY CX400 M7

脚注

[編集]
  1. ^ a b c d e f g 「気象予測」を支える 日立グループのスーパーコンピュータ技術 日立評論 2009年12月号
  2. ^ 最新鋭スーパーコンピュータの導入について、気象庁
  3. ^ スーパーコンピュータの更新及び数値予報等の改善について、気象庁
  4. ^ 新しいスーパーコンピュータシステムの運用開始について、気象庁
  5. ^ 新しいスーパーコンピュータの運用を開始します、気象庁
  6. ^ "豪雨災害の要因となる線状降水帯の発生を精緻に予測する気象庁様の新スーパーコンピュータが稼動開始" (Press release). 富士通株式会社. 27 February 2023. 2024年2月21日閲覧
  7. ^ "「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」を稼動開始します" (PDF) (Press release). 気象庁情報基盤部. 24 February 2023. 2024年2月21日閲覧
  8. ^ Updates of HPC in JMA” (PDF) (英語). 豊田英司. 2024年2月21日閲覧。
  9. ^ "台風や集中豪雨の予測精度向上に貢献する気象庁様の新スーパーコンピュータが稼動開始" (Press release). 富士通株式会社. 21 February 2024. 2024年2月21日閲覧
  10. ^ "新しいスーパーコンピュータシステムを運用開始します" (PDF) (Press release). 気象庁情報基盤部. 21 February 2024. 2024年2月21日閲覧

関連項目

[編集]