鯛の浦
鯛の浦(たいのうら)は、千葉県鴨川市の内浦湾から入道が崎にかけての沿岸部の一部海域。タイの群生地として知られる[1]。地名は妙の浦[2]。
概要
[編集]「鯛の浦」は、マダイが群泳することで知られ、鯛の浦タイ生息地の名称で、国の特別天然記念物に指定されている。天然記念物指定地域は、 200ヘクタールの海域と陸地で[2]、海域内では釣り等の遊漁が禁止されている。
本来、マダイは比較的深い層を回遊する魚であり、鯛の浦のような水深の浅い海域(水深10-20 m)に「根つき」になることはない。古来より名物とされ、手漕ぎの和船でタイ見物をさせていた。この現象は昭和に入ってから広く知られるようになり[3]、タイの群れる様子を見せる動力式の観光遊覧船の運航が1952年より行われる[3][4]。船べりを叩く音に反応して鯛の群れが海面に来て、与えられた餌をとらえる様子が、21世紀の現代でも見られる[5]。群れの大部分がマダイで、他にクロダイ、イスズミ、メジナなどが混ざる[5]。鯛の浦でマダイが群れる原因は2012年現在、科学的に完全には解明されていない[6]。
歴史
[編集]- 1922年(大正11年)3月8日 - 天然記念物指定[7]
- 1967年(昭和42年)12月27日 - 特別天然記念物指定[7]
- 1989年(平成元年)11月2日 - 鯛の浦を裏面デザインとした、寄附金付お年玉付郵便はがき地方版(千葉版)が発売される[8]
- 2008年(平成20年)-2010年(平成22年) - 遊歩道整備工事
※日蓮宗による歴史年表も存在する[4]。
伝説
[編集]小湊は日蓮宗の開祖日蓮の生誕地であり、日蓮が誕生した際、この場所には鯛が飛び跳ね、ハスの花が咲き乱れた言い伝えから地元民はこの海域を「鯛の浦」と名付けて漁を禁じたことに由来するとされる[9]。また、日蓮が両親の供養に小舟で訪れた際、海に題目を唱えると、海面に題目の文字が現れ、次いで現れた鯛の群れが題目を食べつくしたと伝承される[4]。
地名と地震
[編集]元禄地震(1703年)の際に、小湊海岸は陥没して当時の誕生寺前庭は海中に入り、現在の鯛の浦が現出したとある[10]。この地は、明応地震や元禄地震の地震と津波によって激しく変化をとげたため、日蓮宗門の僧が、妙法蓮華経の五字を使い、「妙の浦」、「法が台」、「蓮華が淵」、「経巻掘」と名付けたと伝わる[11]。
鯛供養
[編集]地元では、毎年1月に『鯛供養』が行われる。「鯛供養」とは網にかかったタイを供養するもの[12]。両親閣妙蓮寺の「小湊妙の浦弁天祭」ともいわれるもので、タイのいる洋上に舟で出て、「南無妙法蓮華経」の題目(日蓮宗の読経)をささげるというもの[3][12][13][14][15][16]。
また、ここの鯛は日蓮の化身とされ[12]、地元では同海域の鯛を食せず、タイがエビ網などの網にかかっても生きていれば放流し[3]、死んだ場合は漁協の冷凍庫で保存し、一定数になると誕生寺境内のタイ塚に埋葬する[13]。昭和時代には「鯛のお葬式」も行われた[17]。
文化財
[編集]周辺情報
[編集]脚注
[編集]- ^ 「鴨川市 鯛の浦タイ生息地」、「第2弾 貴重な動物に会いに行こう! リーフレット(PDF:275KB) 千葉県 (PDF) 」 どちらも2013年1月14日閲覧。
- ^ a b 鯛の浦タイ生息地/日本の特別天然記念物【動物と植物】 社団法人農林水産・食品産業技術振興協会 2013年1月14日閲覧。
- ^ a b c d 地域支えるマダイに感謝 鴨川 住民ら100人参列し鯛供養2010年1月18日、タイ供養し海上安全祈願 鴨川 120人参列し「妙の浦弁天祭」2012年1月18日、どちらも 南房総安房地域の日刊紙 房日新聞ニュース 2013年1月22日閲覧。
- ^ a b c 鯛の浦の歴史 鯛の浦遊覧船(南房総・鴨川小湊) 2013年1月22日閲覧。
- ^ a b 鯛の浦の歴史 特別天然記念物に指定された理由 2013年1月22日閲覧。
- ^ 【羽成哲郎のぴーなっつ通信】千葉・鴨川 タイが群れる不思議 MSN産経ニュース産経新聞 2012.8.18 07:00 2013年1月14日閲覧。
- ^ a b c 1967年(昭和42年)12月27日文化財保護委員会告示第75号「天然記念物鯛の浦タイ生息地を追加指定する等の件」
- ^ 1989年(平成元年)9月8日郵政省告示第569号「平成元年度お年玉付郵便葉書を発行する件」
- ^ 日本おさかな雑学研究会 『頭がよくなる おさかな雑学大事典』 p.46 幻冬舎文庫 2002年
- ^ 企画展示 大地震と県民の安全を考える (PDF) 4頁 2009年3月 千葉県立図書館 2013年1月22日閲覧。
- ^ 鯛ノ浦の歴史|「鯛の浦」と「妙の浦」2つの名前小湊妙の浦遊覧船協業組合 2013年1月22日閲覧。
- ^ a b c 千葉・鴨川で「たい」供養の祭り2013年1月19日0時29分 NHKニュース 2013年1月22日閲覧。
- ^ a b 東京新聞:タイ供養し安全祈願 鴨川で恒例「弁天祭」:千葉(TOKYO Web)2013年1月19日東京新聞 2013年1月22日閲覧。
- ^ 船上で題目唱え鯛供養 小湊妙の浦弁天祭 鴨川2013年01月19日11:44 ちばとぴ ちばの耳より情報満載 千葉日報ウェブ 2013年1月22日閲覧。
- ^ 鯛供養:僧侶が遊覧船の甲板から読経−鴨川・妙の浦/千葉 毎日jp(毎日新聞)毎日新聞2013年01月19日地方版 2013年1月22日閲覧。
- ^ 日蓮ゆかり 海上の鯛供養 千葉2013年1月20日 YOMIURI ONLINE(読売新聞) 2013年1月22日閲覧。
- ^ 鯛のお葬式|鯛の浦遊覧船(南房総・鴨川小湊)2013年1月22日閲覧。
- ^ 鯛の浦タイ生息地(1922年〈大正11年〉3月8日指定、1967年〈昭和42年〉12月27日追加指定、特別天然記念物)、国指定文化財等データベース(文化庁) 2015年10月11日閲覧。