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飼料

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
飼い葉から転送)

飼料(しりょう)とは、家畜家禽養魚などの飼育動物に与えられるをいう。主に、養鶏畜産など事業として飼育される家畜に与える餌を指すことが多く、養魚用は「餌料(じりょう)」と呼び区別することがある。愛玩動物にはペットフードなどが与えられる。

飼料に使う目的で栽培する飼料作物には、ヒトの食用にもなる[1]トウモロコシなども含まれるが、牧草などはもっぱら飼料に使われる。ヒトは直接摂取する事が困難な飼料を家畜に消化させて育て、労働力や栄養源として利用してきた。

歴史

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古くには、ウシウマヒツジの飼料としてイネ科およびマメ科の植物体および種子が、森林地帯においてはブタの飼料としてブナ科植物の種子が主要な飼料として用いられていた。初期には遊牧的な利用がほとんどで、餌となる飼料が尽きれば家畜もヒトとともに移動していたと考えられる。

ヨーロッパナラの葉と実

ゲルマン人諸族やスラブ人諸族で大々的に利用されていたブナ科種子(ドングリ)を飼料とするブタ放牧は、定住による農耕の開始と森林の衰退によってほとんど消滅した。現在でもイベリア半島スペイン)においてはブナ科コナラ属ヨーロッパナラEuropean Oak)の種子で飼育したブタが生産され、イベリコ豚として輸出されている。

定住農耕社会が成立すると、飼料を安定的に得る事が家畜の維持のために必須となり、飼料作物の利用と、保存性向上の技術が発達する。保存技術とは、具体的にはライ麦等の保存性のよい穀物の利用、牧草の乾燥保存とサイレージ(牧草を発酵させること)などが挙げられる。

これとは別に、東アジアから南アジアにかけては、ブタあるいは養魚場のコイに有機性の廃棄物、すなわちヒトの排泄物や残飯などを摂取させ、食料と肥料を得ている循環的な例もある。1960年代までは、日本でもブタの餌として残飯が多く与えられていた。

現代の先進国においても、食品ロス削減や循環型社会づくり、持続可能な開発目標(SDGs)といった観点から、衛生・栄養を管理した食品残渣飼料が利用されており、日本農林水産省は「エコフィード」とも呼んでいる[2]

現況

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今日多く利用される飼料は穀物(トウモロコシ、類、ミレットなど)、イネ科牧草、マメ科牧草(アルファルファクローバー等)などで、日本国内では穀物を栄養成分の中心とし、対象の動物によって適正な割合に配合した配合飼料が主流である。

飼料の確保は、食糧政策上、非常に重要なテーマである。牛乳食肉の生産では、飼料の調整によって食味に多大な影響があり、先進国における食肉及び乳製品への強い嗜好の結果として、発展途上国では通常ヒトが口にする穀物が先進国向け食肉生産の飼料に利用される傾向がある。しかし、これは換言すればヒトの食料たる穀類を食肉に変換する「非効率な作業」に他ならず、世界の食糧需給を不安定にし、飢餓に拍車をかけている。また、一国の内部でも、ソビエト連邦体制の弱体化に関連して、連邦内の食肉生産量の拡大を目的として穀類を飼料に使用し食糧供給に不安を生じるとともに、不作年に大量の穀物輸入を要したため外貨が流出して経済不安を招いたという事例がある。

製造

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日本では独立行政法人農林水産消費安全技術センターが定める飼料製造管理者が行う。その他ガイドラインは農林水産省による飼料安全法で安全基準を含めた適性製造規範に基づく[3]。 配合飼料の場合、原料受け入れ、一次加工(粉砕・圧縮)、配合、二次加工(ペレット状など)、製品出荷の工程を経て[4]、生産者や畜産農家に届けられる。

補足

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フェッドによっての食肉の好みは先進・途上関係なく、調理法・境遇により好みが分かれる。日本国内では穀物(グレイン)を中心としたグレインフェッドが好まれ、食肉輸入ではグレインを与えられた肉が多い。

日本国内の現状と課題

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日本では近年まで国内畜産農家に対する手厚い保護政策もあり、一見すると高い畜産自給率を維持してきたかのように見える。しかし実際には飼料用穀物の国内需要はほとんど全てを海外からの輸入に依存しており、以下のような所謂「食糧安全保障」上の問題があり、構造的に見て非常に脆弱な生産基盤を抱えている。

  1. ポストハーベストを含む農薬や、遺伝子組み換え作物の混入といった品質・安全性の不安。
  2. 米国シカゴ商品取引所などの不安定な相場に翻弄される供給価格や諸外国の不作で需給が逼迫した場合にも安定した供給が受けられるか。

また、海外から飼料を輸入し、米国やオーストラリアなどに比べ事業規模が零細な日本の畜産農家は、価格競争において常に劣勢に立たされることになる。極端に言えば松阪牛も輸入牛肉も、牛の系統や生産地が違っていても、輸入飼料で肥育されていることには変わりがないということになりかねない。

このように、食料の生産に配合飼料は重要な影響を与えることなどから、配合飼料の価格を安定させるために、国などにより基金の設立などの各種施策が行われているが、飼料の自給力が皆無な点は、今なお国内農業のアキレス腱の一つであり続けている。

2021年の統計では日本の飼料自給率は25%で食料自給率(38%)よりさらに低く、農林水産省は飼料自給率を2030年に34%に高める目標を掲げている[5]。米余り下で水田を有効活用できる飼料米、人が食べるスイートコーンより糖度が低く飼料向きの子実(しじつ)用トウモロコシの作付け拡大が進み、日本の飼料作物栽培面積は2021年に1000ヘクタールを超えた[5]

関連項目

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外部リンク

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出典・脚注

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  1. ^ 飼料用米の利用に関するQ&A 農林水産省(2022年9月24日閲覧)
  2. ^ エコフィードについて 農林水産省(2022年10月14日閲覧)
  3. ^ 飼料及び飼料添加物の製造、輸入、販売を行う事業者のみなさまへ”. www.maff.go.jp. 農林水産省. 2016年10月31日閲覧。
  4. ^ 配合飼料の製造工程”. www.jahnk.jp. JA東日本くみあい飼料株式会社. 2016年10月31日閲覧。
  5. ^ a b 「家畜のエサ 国産増やせ:自給25% 食料安保懸念:コメで飼育/飼料トウモロコシ全国組織」『読売新聞』朝刊2022年9月9日(社会面)