長谷川式認知症スケール
長谷川式認知症スケール(はせがわしきにんちしょうスケール)とは、長谷川和夫によって作成された簡易的な知能検査であり、主に認知症患者のスクリーニングのために用いられる。言語性知能検査であるため、失語症・難聴などがある場合は検査が困難となる。日本においては、MMSEと並んでよく用いられる。かつては長谷川式簡易知能評価スケール(はせがわしきかんいちのうひょうかスケール、HDS-R)と呼ばれていたものの、2004年4月に痴呆症から認知症へ改称されたことに伴い、現在の名称に変更されている。認知症のスクリーニングとして用いられる場合は、およそ10~15分を要する。1974年に公表され、1991年に改訂版が公表された[1]。
評価
[編集]総合点における評価がよく知られている。HDS-R20点以下で、認知症の可能性が高まるとされている。また認知症であることが確定している場合は、HDS-R20点以上で軽度・11~19点の場合は中等度・10点以下で高度と判定する。また、どのような認知機能の障害かを判定するために、どの項目で失点したかの記載も必要となる。
注意点
[編集]これは長谷川式認知症スケールで認知症の状態を調べる時だけに限る話ではないものの、このようなテストは「受ける人がやる気を出して、自分の能力の最大限を発揮するということがないと、正確に評価できません」と開発者の長谷川自身が述べており、またそのように仕向けるためには、診療する側の技術が必要だとも述べている[2]。この他、テストを受ける人が傷つかないように実施しなければならない、という趣旨のことも長谷川は述べている[3]。
開発経緯
[編集]考案者の長谷川は、開発当時「痴呆症」と呼ばれていた認知症を、誰が診断しても同じ結果になるような尺度を作るべく、診断のために必要な項目を作成し、その結果が数値化できるように作成したと語っている[4]。 そのようにして作成されていった尺度は、1974年に「長谷川式簡易知能評価スケール」として発表された。その後も日本では長らく、そのままの名称で呼ばれていたが、2004年4月に痴呆症が認知症と改称されたことを契機に、長谷川式認知症スケールと改称された。なお、長谷川は自身が認知症を自覚した時には、内容を全て覚えている「長谷川式認知症スケール」の検査は意味がないとして、他の検査を受けさせてもらったという[5]。
脚注
[編集]- ^ 読売新聞 2019年8月18日 7面掲載
- ^ 長谷川 和夫、今井 幸充 『老年痴呆とは何か (看護セミナー・ブックレット9)』 p.31 日本看護協会出版会 1990年10月10日発行 ISBN 4-8180-0206-2
- ^ 長谷川 和夫、今井 幸充 『老年痴呆とは何か (看護セミナー・ブックレット9)』 p.30 日本看護協会出版会 1990年10月10日発行 ISBN 4-8180-0206-2
- ^ 『認知症医療の第一人者が語る「みずから認知症になってわかったこと」〜ありのままを受け入れるしか仕方がない』(長谷川和夫)、文春オンライン、2018年5月6日。(『文藝春秋』2018年4月号)
- ^ 『認知症医療の第一人者が語る「みずから認知症になってわかったこと」〜ありのままを受け入れるしか仕方がない』(長谷川和夫)、文春オンライン、2018年5月6日。(『文藝春秋』2018年4月号)
参考文献
[編集]- 症例から学ぶ戦略的認知症診断 ISBN 9784525241223