野球王国
表示
(野球どころから転送)
野球王国(やきゅうおうこく)は、野球の盛んな都道府県を指す用語[1][2][3]。「サッカー御三家」などとともに[1]、賞賛を表す表現として古くから使われてきた言葉である[1]。自薦・他薦を問わず用いられる[2]。都道府県ごとに区切られるが、地方や都市ごとに区切られるケースは少ない。例外的に四国だけは地方全域で「野球王国」と呼ばれている[4]。
概要
[編集]具体的な内容としては以下のケース。
- 草野球・高校野球・プロ野球を問わず、常に盛んである。
- 高校野球の強豪校が存在し、プロ野球選手を輩出している。
- 地域が住民ぐるみで野球への参加が多く、理解が深い。
- 新聞・スポーツ雑誌などで頻繁に扱われ、用語として定着している[2]。
別称
[編集]- 類似用語として「野球大国」「野球どころ」が存在し、こちらも近年よく使われている[5][6][7]。
- 一つの記事に「野球王国」と「野球どころ」の二つの言葉を混在させているケースもあるが[6]、いずれも意味はほぼ同じと見られる。「野球どころ」はより小規模のケースで用いられることもある[8]。
- メディアによっては「野球王国」よりも「野球どころ」の方が多く用いられている[9][10]。
歴史
[編集]高校野球の前身である全国中等野球大会が関西で始まったのも「野球王国」が関係している[11]。日本のマスコミ各社は新聞拡販のため、学生スポーツを支援してきたが[12]、この大会を主催した朝日新聞社の本社が大阪にあったこと、当時は東京一極集中ではなく、大阪も商業都市として勢いがあったことなどの理由の他に、当時の中等野球は関東より、関西で人気があり、強い学校が西日本に多かったことが挙げられる[11]。草創期の日本野球は、西日本でも、近畿、中国、四国地方に強豪校が多く、とりわけ兵庫県、京都府、和歌山県、広島県、香川県、愛媛県、そして例外的に東海地方の愛知県が野球王国であった[13]。大阪府は、戦前に市岡中学が準優勝しているが、強豪県となるのは戦後になってからで[13]、東日本で強かったのは東京近辺のみであった[13]。北陸や東北、北海道が強くなるのは最近になってからである。冬の雪による練習不足を室内練習場でカバーしたり、野球の強い地域から野球留学生が来るようになったりしたためである[13]。
日本
[編集]北海道
[編集]- 北海道日本ハムファイターズへの熱狂ぶりも特徴的。
東北
[編集]関東
[編集]中部
[編集]- 中日ドラゴンズへの熱狂ぶりも特徴的。
近畿
[編集]- 少年野球や高校野球が盛んなことで知られている[2][3]。特に少年野球は全国屈指のレベルと称され、全国高校野球選手権大会でも勝率全国一位を誇る。PL学園や大阪桐蔭高等学校、智辯和歌山高等学校など強豪校が多い[3]。
- プロ野球に対する関心も強く、特に阪神タイガースへの熱狂振りで知られている。
中国
[編集]- 日本野球草創期からの野球王国として知られる[6][15][16]。現行プロ野球が始まった1936年に先立つ1934年にポプラ社から、最初の「スポーツ人国記」の一つと思われる『スポーツ人國記』(サンデー毎日、1931年9月〜1932年10月の連載をまとめたもの)が刊行されたが、この書の中で、「広島は兵庫、香川と相ならんで、野球県の三幅対を成している」「サッカーの一中、附中に対して広陵、広商の野球は天下に普く鳴るところ、東都の六大学リーグに人材を送っている事はむしろ兵庫、香川等を凌いでいる観がある」と、当時の六大学の中心選手が広島出身者で占められていると紹介し、広島県を「日本無敵の野球国」と評している[17]。
- また、原爆復興の象徴として1950年に、唯一の市民球団として誕生した“広島カープ”は[15][18]、苦難の歴史を乗り越え[7][15][19]、後に親会社の参画を受けたものの[20]、半世紀以上もの間、本拠地、チーム名を変更することなく広島の地に存続している[15][18]。近年では野球も含めて「スポーツ王国」と呼ばれることも多い[21]。
四国
[編集]- 全域にわたって野球熱が高く、戦前の中等学校野球創成期より活躍する四国四商をはじめとして高校野球の強豪が多い。また、正岡子規や宮武三郎など野球殿堂入り人物も多く輩出しており、現在活動している中で最古の独立リーグである四国アイランドリーグplusも存在する。
- 特に愛媛県は県内全域で野球への関心が高く、少年野球・高校野球においては、地域住民みんなでサポートする風習が残っている。野球拳の発祥地でもある。
九州
[編集]- かつては野球に対し、冷めた土地柄であった[22]。それは春夏の甲子園大会に象徴される戦前の中等学校野球大会、戦後の選抜、夏選手権で全国制覇を狙える強いチームが少なかっためである[22]。
- 福岡ソフトバンクホークスへの熱狂ぶりも特徴的。
沖縄
[編集]脚注
[編集]- ^ a b c 辻健治「秀吉が城を築いた琵琶湖岸、どうして「アメフトの聖地」になったのか」『朝日新聞デジタル』朝日新聞社、2023年1月12日。オリジナルの2023年1月15日時点におけるアーカイブ。2024年7月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l ソニー生命保険 (2015年12月8日). “野球王国だと思う都道府県1位は「大阪府」! - サッカー王国は?”. マイナビニュース (マイナビ). オリジナルの2021年3月3日時点におけるアーカイブ。 2021年3月4日閲覧。寝ても覚めても:野球王国の苦戦=冨重圭以子(Internet Archive)、海峡越えた「優勝旗」─駒大苫小牧の軌跡─(Internet Archive)、野球王国、群馬の歴史を振り返る展覧会-あだち充の色紙も展示、朝日新聞デジタル:「野球王国・千葉」切り開いた対談 木樽さんと石井さん、第59回 神奈川スポーツ賞受賞者プロフィール - 神奈川県ホームページ、しずおかプロ野球人物誌(静新新書004) | 静岡新聞(Internet Archive)、ぎふ2009回顧「「野球王国」復活」-岐阜新聞 Web(Internet Archive)、私学4強 野球王国・愛知の系譜(Internet Archive)、【2011夏の甲子園】龍谷大平安、きょう初戦 京都 - MSN産経ニュース、橋下知事の校庭芝生化、野球王国反発「内野は土が基本」、プロ野球ドラフト会議 見よ「野球王国」の底力 県関係選手6人指名 /兵庫、[特集] 勝利の聖地わかやま。 - 和歌山県(Internet Archive)、中国新聞(みんなのカープ)(Internet Archive)、香川)熱戦の舞台、面影遠く 「野球王国」を支えた球場 (Internet Archive)、野球王国ふたたび 21世紀の球児たち(Internet Archive)、愛媛県庁/えひめ愛・野球博(Internet Archive)、「高知商、高知、明徳義塾」 3強に歴史あり ~高知球人伝(Internet Archive)、'04/03/18 西スポ掲載. 「野球王国」復権へ、九州勢4校出場(Internet Archive)、 ドラフト4人指名 “野球王国・大分”【大分のニュース】- 大分合同新聞(Internet Archive)、野球王国・沖縄の謎…なぜこの10年でプロ選手が一気に増えたのか?昨季のパの本塁打王と最多勝投手も
- ^ a b c 広尾晃 (2017年9月1日). “酒の肴に野球の記録 BACK NUMBER 甲子園勝利数・日本地図を大公開。王国は大阪と兵庫、豪雪地帯は……。”. Sports Graphic Number Web. 文藝春秋社. p. 1. 2017年9月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月12日閲覧。
- ^ 「野球王国」四国の残念な実態。~四国から消えた「全力疾走」~、二宮清純「唯我独論」第704回 野球王国・四国と言われた強さはどこへ……
- ^ 猛虎人国記(68)~総括 - スポニチ Sponichi Annex、「そんなにたくさん!」「一度もないの?」高校野球の記録あれこれ〈dot.〉、スコアブック:第96回全国高校野球 大阪勢また勲章- 毎日新聞(Internet Archive)、高校野球 47都道府県別歴代ベストナイン 中国編 | 週刊ベースボール、野球どころ復活を-中西太氏が香川県知事表敬 - 四国新聞社(Internet Archive)、あきたスポーツネットワーク(前半) - CANPAN News カンパン (Internet Archive)、BBMベースボールカード2013 OSAKA LIMITED ナニワ魂! (Internet Archive)、取材ノート > 全国高校サッカーV皆実に野球部が無い理由とは - スポニチ Sponichi Annex(Internet Archive)
- ^ a b c 広尾晃 (2017年9月1日). “甲子園勝利数・日本地図を大公開。王国は大阪と兵庫、豪雪地帯は……。”. Sports Graphic Number Web. 文藝春秋社. p. 2. 2017年9月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月12日閲覧。
- ^ a b SEIKYO online (聖教新聞社):名字の言 2014年8月26日(Internet Archive)
- ^ 京都新聞スポーツ(Internet Archive)、After 3.11『高田高校野球物語〜前編〜』 - 岩手スポーツ(Internet Archive)、中村愛媛県知事からの応援メッセージ - 上島町、NHK徳島放送局 | 「かめっ太だより」2011年2月号(Internet Archive)
- ^ 時事ドットコム:「全国」 夢のベストナイン - 時事通信社
- ^ 時事ドットコム:「全国」 夢のベストナイン - 時事通信社 滋賀県、時事ドットコム:「全国」 夢のベストナイン - 時事通信社 京都府、時事ドットコム:「全国」 夢のベストナイン - 時事通信社 広島県、時事ドットコム:「全国」 夢のベストナイン - 時事通信社 愛媛県
- ^ a b #学歴社会103-104頁
- ^ 東京・大阪両都市の新聞社による野球(スポーツ)イベントの展開過程、わが国のプロ野球におけるマネジメントの特徴とその成立要因の研究
- ^ a b c d #学歴社会110頁
- ^ 菊池雄星から始まり大谷、佐々木朗が紡いだ「岩手伝説」 次なるモンスターにメジャー熱視線
- ^ a b c d “広島カープ、濃密な伝統”. 週刊ベースボールONLINE. ベースボール・マガジン社 (2018年6月25日). 2018年6月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月12日閲覧。
- ^ “バーチャル高校野球 ひろしまの50回大会史 広島の早慶戦こと広商―広陵 町を真っ二つ”. バーチャル高校野球. 朝日新聞社 (2017年8月28日). 2017年8月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月12日閲覧。(オリジナルは1968年5月22・23日掲載)、玉木研二「オバマ大統領に伝えたい 広島、71年の営み」『毎日新聞』毎日新聞社、2016年5月27日。2016年5月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月27日閲覧。はだしのゲン作者が描いた熱すぎるカープファン狂騒史 「それー審判をみな殺しじゃ」(Internet Archive)新本恭子 (2012年7月23日). “復興の風 1951年 東千田町 スポーツ王国復権の礎”. 中国新聞 (ヒロシマ平和メディアセンター). オリジナルの2022年2月4日時点におけるアーカイブ。 2024年3月12日閲覧。“ちゅーピー子どもウェブ子どもぶんタッチ 【ニュース・話題】 全国に知られる強い県 高校野球〈知りたい広島50_サミットを前に〉”. ちゅーピー子ども新聞 (中国新聞社). (2023年4月26日). オリジナルの2023年4月26日時点におけるアーカイブ。 2024年7月27日閲覧。
- ^ 『スポーツ人國記』、ポプラ社、1934年、p.29、57、68-71、123
- ^ a b “平和記念都市建設法と復興事業の進展 市民球団広島カープの誕生”. 広島平和記念資料館. 2024年3月12日閲覧。“共に歩んだカープと広島”. 国際平和拠点ひろしま. 広島県庁. 2020年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月12日閲覧。Androniki Christodoulou (2023年5月18日). “マツダ・お好み焼き・カープ、広島企業が復興への希望訴える展示会”. ロイター. 2023年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月12日閲覧。「戦後復興【前編】 原爆の地に勇気と希望を!広島カープの奇跡」『先人たちの底力 知恵泉』NHK教育テレビジョン、2019年8月6日。2020年8月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月12日閲覧。NHK広島開局80周年セレクション ありがとう広島市民球場 プロジェクトX~挑戦者たち「史上最大の集金作戦 広島カープ」、プロジェクトX~挑戦者たち「史上最大の集金作戦 広島カープ」 (Internet Archive)、なぜ首都圏で急増? カープファン - NHK 特集まるごと(Internet Archive)、御苦労様、広島市民球場(第428回) - ブログ報知トップ(Internet Archive)
- ^ 【1月15日】1950年(昭25)金ナシ、寮ナシの広島カープ、原っぱでお披露目式 日めくりプロ野球1月(Internet Archive)【3月29日】1951年(昭26)開幕なのに試合が棚上げされたカープへの“嫌がらせ” 日めくりプロ野球3月(Internet Archive)、“ボクの思い出STADIUM:広島総合&広島市民球場”. 中日スポーツ (中日新聞社). (2016年7月12日). オリジナルの2016年8月1日時点におけるアーカイブ。 2024年3月12日閲覧。玉木研二「オバマ大統領に伝えたい 広島、71年の営み」『毎日新聞』毎日新聞社、2016年5月27日。2016年5月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月12日閲覧。
- ^ 優勝が遠い「赤ヘル軍団」 孤軍奮闘する老舗地方球団広島 (Internet Archive)
- ^ “スポーツが地域を救う?!スポーツ王国広島が取り組む地域活性化とは”. ひろしまラボ. 広島県庁 (2022年5月22日). 2025年5月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月27日閲覧。“「スポーツ王国」広島、観戦率は全国1位だが…【わがまちランキング】”. 中国新聞デジタル (中国新聞社). (2022年2月15日). オリジナルの2022年5月9日時点におけるアーカイブ。 2024年7月27日閲覧。「TJHiroshima2023年4月号(No.No.552) シン・広島スポーツ王国」『TJ Hiroshima』アドプレックス。2024年7月27日閲覧。“これぞスポーツ王国広島のゲートウェイ!JR広島駅前でカープ山本浩二さん、織田幹雄さんらレジェンドやスポーツ少年団のみんなが待っている…広島ステーションスタジアム誕生!”. ひろスポ!広島スポーツニュースメディア (2022年1月31日). 2024年7月27日閲覧。「スポーツ王国広島のプロバスケットボールクラブ「広島ドラゴンフライズ」とのスポンサー契約締結のお知らせ」『共同通信』共同通信社、2023年8月23日。2023年8月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月27日閲覧。「「スポーツ王国・広島の大きな発信拠点に」 サンフレッチェ広島と広島市が広島広域公園第一球技場の命名権契約締結式」『日テレNEWS』日本テレビ放送網、2024年3月28日。2024年4月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月27日閲覧。「スポーツ王国広島のプライドを胸に 必ずB.LEAGUE PREMIERへ」広島ドラゴンフライズ。2024年7月27日閲覧。荻島弘一 (2024年5月29日). “スポーツ王国が支えたBリーグ広島の下剋上 資金難克服した広島ならではの「組織力」と「営業力」”. THE ANSWER. Creative2. 2024年7月27日閲覧。小宮山道夫「五十年史編集室だより(22) スポーツ王国広島と広島大学」『広大フォーラム』2003年4月号、広島大学、2024年6月15日閲覧。「HIROSHIMA SOCCER MUSEUM」ソニーマーケティング。2024年7月27日閲覧。「野球、サッカー、バスケ…愛される理由とは 被爆地・広島「心の復興」スポーツが支えに」『Web東奥』東奥日報社、2024年7月26日。2024年7月27日閲覧。
- ^ a b #立石159-163、196、197頁
参考文献
[編集]- 橘木俊詔、齋藤隆志『スポーツの世界は学歴社会』PHP研究所、2012年11月。ISBN 9784569808680。
- 立石泰則『魔術師 三原脩と西鉄ライオンズ』文藝春秋、1999年4月。ISBN 9784163551005。