出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
物理学や化学における選択律(せんたくりつ、または選択則、選択規則)とは、2つの量子状態間の遷移が許される(許容である)か禁じられているか(禁制であるか)を簡潔に示した規則のことである。
ある量子状態i に相互作用が働くと、別の量子状態f への遷移が可能となる。相互作用が小さい場合は、その遷移確率Wi→f がフェルミの黄金率で表される。
よって行列要素が値をもつかどうかで、その遷移が可能であるかどうかが決まる。
電子の光吸収や発光は、電子光子相互作用によって起こる1光子過程である。この1光子過程の相互作用は、電気双極子遷移 (E1) の項、磁気双極子遷移 (M1) の項、電気四極子遷移 (E2) の項などの和として表すことができる。
ウィグナー=エッカルトの定理を使って次のような選択律が得られる。
しかし次のような場合は例外的に禁制である。
さらにLS結合を仮定すると、次のような選択律になる。
しかし次のような場合は例外的に禁制である。
これをそれぞれラポルテ選択律、スピン選択律と呼ぶ。
- ラポルテ選択則
- 電気双極子遷移は、量子状態のパリティ(偶奇性)が遷移前後で変化しなければならない。
- スピン選択則
- 遷移の前後で、スピン多重度が同じでなければならない。
電気双極子遷移のときと同様に、ウィグナーエッカルトの定理を使って次のような選択律が得られる。
しかし次のような場合は例外的に禁制である。
さらにLS結合を仮定すると、次のような選択律になる。
電気双極子遷移のときと同様に、ウィグナーエッカルトの定理を使って次のような選択律が得られる。
しかし次のような場合は例外的に禁制である。
さらにLS結合を仮定すると、次のような選択律になる。
赤外分光法では、振動によって電気双極子モーメントが変化することが許容条件である。
ラマン分光法では、振動によって分極率が変化することが許容条件である。