遷移行列
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遷移行列(T行列)は散乱理論において遷移振幅を与える行列である。
遷移行列は散乱振幅と深いつながりがある。
定義
[編集]散乱理論ではしばしば、シュレディンガー方程式を以下の積分方程式(リップマン-シュウィンガー方程式)に書き換えて問題を解く。
ここでは入射状態、は散乱状態(+は外向き、-は内向きを表す)、は散乱体との相互作用を表す演算子、は相互作用が無い状態のグリーン演算子である。
遷移演算子は、次のように入射状態と散乱状態を結びつける演算子として定義される。
よって遷移演算子を用いるとリップマン-シュウィンガー方程式は以下のように書き換えられる。
これはもはや積分方程式ではなく、右辺で未知なものは遷移演算子のみである。つまりリップマン-シュウィンガー方程式を解く代わりに遷移演算子を求めることで散乱状態が求められることになる。
遷移演算子を、相互作用領域への入射状態と散乱状態を用いて行列表示したものを遷移行列という。 よって行列要素はとなる。
性質
[編集]リップマン-シュウィンガー方程式と遷移演算子の定義より以下の関係が得られる。
これは以下のように表すこともできる。
このような遷移演算子についての級数を、途中で打ち切ることをボルン近似という。たとえば1次のボルン近似ではと近似する。
参考文献
[編集]- 小泉義晴『工学者のための量子物理学とグリーン関数 講義・演習ノート』現代工学社、1987年。ISBN 4874721303。