超ウラン元素
原子核物理学または化学において、超ウラン元素(ちょうウランげんそ、英: TRans-Uranium, TRU)とは、原子番号92のウランよりも重い元素を指す。
概要
[編集]原子番号が1〜92の元素は、6つの元素(43-テクネチウム、61-プロメチウム、85-アスタチン、87-フランシウム、89-アクチニウム、91-プロトアクチニウム)を除いて、自然界には比較的豊富に存在する。
しかし、原子番号93以降の元素(超ウラン元素)は、基本的に全て人工的に作り出さねばならない。また全て放射性で、半減期は地球の年齢よりかなり短い。よって、これらの元素が地球誕生の頃に存在していたとしても、はるか以前に消滅してしまっている。
現在地球上で発見される超ウラン元素は、基本的に原子炉や粒子加速器で人工的に作られたものである。但し、極微量の239Npと239Puは自然に生成され続けている。具体的には、ウラン鉱石が自発核分裂による中性子を捕獲した後、更に二段階のベータ崩壊を起こし、239Puとなる(238U > 239U > 239Np > 239Pu)。
発見されていない超ウラン元素や、発見されていてもまだ公式に名前がつけられていない元素には、IUPACの定めた元素の系統名を用いる。超ウラン元素の命名は、冷戦時には議論の原因となっていた。
発見したグループ
[編集]2016年現在、超ウラン元素の発見が認められた国はアメリカ、ロシア(旧ソビエト連邦)、ドイツ、日本の4カ国だけである(スウェーデンは後述の通り認められていない)。
冷戦期
[編集]カリフォルニア大学バークレー校
[編集]現在のローレンス・バークレー国立研究所、アメリカ合衆国
- エドウィン・マクミラン - 超ウラン元素の最初の生成者。
- 93-ネプツニウム(Np)
- グレン・シーボーグ - 後任者。
- アルバート・ギオルソ - キュリウム、バークリウム、カリホルニウムの発見時、シーボーグのチームに属しており、後任となった。
重イオン研究所(GSI、ドイツ)
[編集]ノーベル物理学研究所(スウェーデン)
[編集]このグループは冷戦期に新元素発見の報告をしたが、現在では当初の報告の正当性が疑われている。
- 102-ノーベリウム(No)の発見を主張した。発見は否定されたが、「ノーベリウム」という名称は最終的に認められた。
ドブナ原子核共同研究所(ソビエト連邦)
[編集]このグループは冷戦期に新元素発見の報告をしたが、現在では当初の報告の正当性が疑われている。
- ソビエト連邦時代
冷戦後
[編集]ローレンス・バークレー国立研究所(アメリカ合衆国)
[編集]重イオン研究所(GSI、ドイツ)
[編集]ドブナ原子核共同研究所(ロシア)
[編集]- 114-フレロビウム(Fl)[1]
- 同研究所とローレンスリバモア国立研究所(アメリカ)との合同研究チームによる発見。
理化学研究所(理研、日本)
[編集]- 113-ニホニウム(Nh)を発見し命名権を取得。
超ウラン元素の一覧
[編集]これらはネプツニウム、プルトニウムを除き自然界には存在しない。
- 93-ネプツニウム(Np)
- 94-プルトニウム(Pu)
- 95-アメリシウム(Am)
- 96-キュリウム(Cm)
- 97-バークリウム(Bk)
- 98-カリホルニウム(Cf)
- 99-アインスタイニウム(Es)
- 100-フェルミウム(Fm)
- 101-メンデレビウム(Md)
- 102-ノーベリウム(No)
- 103-ローレンシウム(Lr)
- 104-ラザホージウム(Rf)
- 105-ドブニウム(Db)
- 106-シーボーギウム(Sg)
- 107-ボーリウム(Bh)
- 108-ハッシウム(Hs)
- 109-マイトネリウム(Mt)
- 110-ダームスタチウム(Ds)
- 111-レントゲニウム(Rg)
- 112-コペルニシウム(Cn)
- 113-ニホニウム(Nh)
- 114-フレロビウム(Fl)
- 115-モスコビウム(Mc)
- 116-リバモリウム(Lv)
- 117-テネシン(Ts)
- 118-オガネソン(Og)
(第8周期以降の未発見元素は拡張周期表を参照)
脚注
[編集]- ^ “News: Start of the Name Approval Process for the Elements of Atomic Number 114 and 11” (英語). IUPAC. 2011年12月4日閲覧。
- ^ “News: Start of the Name Approval Process for the Elements of Atomic Number 114 and 116” (英語). IUPAC. 2011年12月4日閲覧。
- ^ Yu. Ts. Oganessian et al. Phys. Rev. C 2006, 74, 044602. DOI: 10.1103/PhysRevC.74.044602