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薄嚢シダ類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
薄嚢シダから転送)
薄嚢シダ類
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 陸上植物 Embryophyta
階級なし : 維管束植物 Tracheophyta
階級なし : 大葉植物(真葉植物) Euphyllophyta
: 大葉シダ植物 Polypodiopsida
亜綱 : 薄嚢シダ亜綱(ウラボシ亜綱) Polypodiidae
学名
Polypodiidae Cronquist, Takht. & W.Zimm.[1]
亜綱

薄嚢シダ類(はくのうシダるい、薄囊シダ類、Leptosporangiate ferns)は、大葉シダ植物に含まれるシダ植物シダ類)のうち、胞子嚢が単一の細胞から生じ、完成した胞子嚢は1層の細胞層の壁を持つものを指す[2][3]。現在では、PPG I (2016)においてウラボシ亜綱[4]薄嚢シダ亜綱[5]Polypodiidaeとして扱われる[6]。薄嚢シダ類は大葉シダ植物の中で最も種数が多い[7]。多くの化石種が知られている[7]

かつてはCopeland (1947)などでシダ目 Filicalesとして、スミスら (2006)の分類体系ではウラボシ綱 Polypodiopsidaシダ綱 Filicopsida)として扱われていた[8]群と同義である。

系統関係

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上位

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Wickett ら (2014)Puttick ら (2018)による分子系統解析に基づく[9]

陸上植物
コケ植物

ツノゴケ植物 Anthocerotophyta

苔類 Marchantiophyta

蘚類 Bryophyta

Bryomorpha
維管束植物

小葉植物 Lycophyta

大葉植物
大葉シダ植物
トクサ亜綱

トクサ目 Equisetales

Equisetidae
リュウビンタイ亜綱

リュウビンタイ目 Marattiales

Marattidae
ハナヤスリ亜綱

マツバラン目 Psilotales

ハナヤスリ目 Ophioglossales

Ophioglossidae

薄嚢シダ亜綱(ウラボシ亜綱)Polypodiidae

Moniliformopses
種子植物

裸子植物 Gymnospermae

被子植物 Angiospermae

Spermatophyta
Euphyllophyta
Tracheophyta
Embryophyta

下位

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Shen ら (2018)の分子系統解析に基づく。

薄嚢シダ亜綱

ゼンマイ目 Osmundales

ウラジロ目Gleicheniales

ウラジロ目
(側系統)

ウラジロ目Ⅱ Gleicheniales

コケシノブ目 Hymenophyllales

フサシダ目 Schizaeales

サンショウモ目 Salviniales

ヘゴ目 Cytheales

ウラボシ目

ホングウシダ類 Lindsaeineae

イノモトソウ類 Pteridineae

コバノイシカグマ類 Dennstaedtiineae

真正薄嚢シダ類Ⅰ Polypodiineae

真正薄嚢シダ類Ⅱ Aspleniineae

Polypodiales
Polypodiidae

特徴

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陸上植物で唯一、1つの始原細胞から1つの胞子嚢を形成する薄嚢胞子嚢を持つ[7]中心柱鱗片などの形態形質が多様化している[7]

薄嚢胞子嚢

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胞子嚢は薄嚢シダ類以外の陸上植物では複数の表皮細胞とその内側の細胞から形成されるのに対し、薄嚢シダ類では胞子嚢幹細胞と呼ばれる1つの始原細胞に由来する[7]

分類体系

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PPG I 分類体系

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現在、シダ学のコミュニティで広く認められている分類体系をまとめたPPG I (2016)の分類体系を以下に示す。

ウラボシ亜綱 subclass Polypodiidae Cronquist, Takht. & W.Zimm.

スミスらの分類体系

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以下、スミスら (2006)の分類体系からを示す。和名は海老原 (2016)に基づく。薄嚢シダ類はウラボシ綱またはシダ綱として扱われた。

ウラボシ綱 Polypodiopsidaシダ綱 Filicopsida

人とのかかわり

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シダ類の中で、薄嚢シダ類は食用とされるものを多く含む[7]

脚注

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  1. ^ PPG I 2016、pp.563-603
  2. ^ 伊藤 2012, pp.116-129
  3. ^ 村上 2012, pp.67-73
  4. ^ 巌佐ほか 2013, p.1642
  5. ^ 海老原 2016, pp.26-27
  6. ^ PPG I 2016, pp.563-603
  7. ^ a b c d e f 長谷部 2020, pp. 124-173
  8. ^ Smith et al. 2006, pp.705-731
  9. ^ 長谷部 2020, pp. 1-4, 68-70
  10. ^ 海老原淳. “次世代シーケンサーを用いた倍数性シダ類複合体の進化史解明”. KAKEN. 2021年3月24日閲覧。
  11. ^ Kabeya, Y. and Hasebe, M.. “真正ウラボシ類II/ヘミディクティウム科”. 陸上植物の進化. 基礎生物学研究所. 2021年3月24日閲覧。

参考文献

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  • PPG I (The Pteridophyte Phylogeny Group) (2016). “A community-derived classification for extant lycophytes and ferns”. Journal of Systematics and Evolution (Institute of Botany, Chinese Academy of Sciences) 56 (6): 563-603. 
  • Shen, Hui; Jin, Dongmei; Shu, Jiang-Ping; Zhou, Xi-Le; Lei, Ming; Wei, Ran; Shang, Hui; Wei, Hong-Jin et al. (2018). “Large-scale phylogenomic analysis resolves a backbone phylogeny in ferns”. GigaScience 7 (2). doi:10.1093/gigascience/gix116. 
  • Smith, Alan R.; Pryer, Kathleen M.; Schuettpelz, Eric; Korall, Petra; Schneider, Harald; Wolf, Paul G. (2006). “A classification for extant ferns”. TAXON 55 (3): 705-731. http://fieldmuseum.org/sites/default/files/smith-et-al-taxon-2006.original.pdf. 
  • 伊藤元己『植物の系統と進化』裳華房〈新・生命科学シリーズ〉、2012年5月25日、116-129頁。ISBN 978-4785358525 
  • 巌佐庸、倉谷滋、斎藤成也塚谷裕一『岩波生物学辞典 第5版』岩波書店、2013年2月26日、1642-1644頁。ISBN 9784000803144 
  • 海老原淳、日本シダの会 企画・協力『日本産シダ植物標準図鑑1』学研プラス、2016年7月13日、16-17頁。ISBN 978-4054053564 
  • 長谷部光泰『陸上植物の形態と進化』裳華房、2020年7月1日、1-4,68-70,124-173頁。ISBN 978-4785358716 
  • 村上哲明 (2012), シダ植物(広義) . In: 日本植物分類学会 監修戸部博田村実編著『新しい植物分類学Ⅱ』講談社、2012年8月10日、67-73頁。ISBN 978-4061534490