組織球性壊死性リンパ節炎
表示
(菊池病から転送)
組織球性壊死性リンパ節炎 | |
---|---|
菊池病のリンパ節顕微鏡像。多くの組織球と、好中球を伴わない壊死がみられる。HE染色。 | |
概要 | |
診療科 | 脈管学 |
分類および外部参照情報 | |
eMedicine | med/3663 |
MeSH | D020042 |
組織球性壊死性リンパ節炎(そしききゅうせい・えしせい・リンパせつえん)とは、リンパ節の腫脹・疼痛を伴う良性疾患。亜急性壊死性リンパ節炎、また報告者の菊池昌弘にちなみ菊池病とも呼ばれる[1][2][3]。
原因
[編集]原因は未だ不明である。エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、human herpes virus 6(HHV-6)、human herpes virus 8(HHV-8)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、parvovirus B19、Yersinia enterocolitica、toxoplasmaなどが関連するとする報告がある[4]、一方で否定的な報告もある[5]。菊池病で特異的な病原体が検出されるわけではない。
疫学
[編集]東洋人に多く、白人や黒人には極めてまれ[4]。40歳未満に多く発症し、やや女性に多くみられる[4][6]。
症状
[編集]扁桃腫大を伴う風邪症候群の様な症状で始まり、38℃程度の発熱(40%)、自発痛または圧痛を伴うリンパ節腫脹、白血球数減少を主要徴候とする[4]。リンパ節腫脹は後頸部に多いが、まれに腹腔内などの部位もみられる[7]。倦怠感(7%)、関節痛(7%)、皮疹(10%)[8]などを呈する。
検査
[編集]- 血液検査では、白血球数減少(20-32%)、貧血(23%)、赤沈亢進(70%)、異型リンパ球(25%)がみられる。血小板数減少、肝機能障害、LDHやCRPの上昇がみられることもある。
- 造影CTにおいて、リンパ節周囲の脂肪織混濁(perinodal infiltration)が高率に見られる。また、16%程度と必ずしも頻度は高くないが、リンパ節内部の壊死を示唆する内部の増強不良域が見られた場合は、特徴的な所見と考えられる[9]。
- リンパ節生検がおこなわれることもある[10]。
鑑別診断
[編集]伝染性単核球症、全身性エリテマトーデス、結核性リンパ節炎、悪性リンパ腫が鑑別診断にあげられる[4]。
治療
[編集]重症例ではステロイド剤の投与[10]。
- 本疾患は自然治癒する疾患であるが、場合によっては治癒までに数か月かかることもある。根本的な治療法は乏しく、基本的に対症療法しかないが、症状が重篤な場合は副腎皮質ステロイドが有効である。再発を数%に認める[11]。
脚注
[編集]- ^ 菊池昌弘「7.菊池病」『日本内科学会雑誌』第91巻第7号、日本内科学会、2002年、2057-2058頁、doi:10.2169/naika.91.2057、ISSN 0021-5384。
- ^ 菊池昌弘「特異な組織像を呈するリンパ節炎について」『日血会誌』第35巻、1972年、379-380頁、NAID 10004887229。
- ^ 山口和克、島峰徹郎「頸部の亜急性壊死性リンパ節炎」『日本網内系学会会誌』第20巻Supplement、日本リンパ網内系学会、1980年、1-9頁、doi:10.3960/jslrt1961.20.supplement_1、ISSN 0386-9725、NAID 130003641875。
- ^ a b c d e “壊死性リンパ節炎について”. 松山赤十字病院 (2014年11月). 2018年10月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年4月17日閲覧。
- ^ 稲毛康司「組織球性壊死性リンパ節炎」『ドクターサロン』第65巻、キョーリン製薬、2021年11月、20-24頁、 オリジナルの2021年12月2日時点におけるアーカイブ。
- ^ J Richards MJ: Kikuchi's disease. UpToDate ver.18.2.
- ^ 矢部博樹、新里偉咲、橋本公夫「腸間膜リンパ節に発症した壊死性リンパ節炎」『臨床血液』第40巻第8号、日本血液学会、1999年、658-662頁、doi:10.11406/rinketsu.40.658、ISSN 04851439、NAID 10006175086、PMID 10496041。
- ^ 山口隆広、大島孝一、菊池昌弘、吉田雄一、古賀哲也「多発性リンパ節腫脹皮疹を呈した組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)の1例」『Skin Cancer』第18巻第1号、日本皮膚悪性腫瘍学会、2003年、13-16頁、doi:10.5227/skincancer.18.13、ISSN 09153535、NAID 10025717132。
- ^ Kwon, SY; Kim, TK; Kim, YS; Lee, KY; Lee, NJ; Seol, HY (2004). “CT findings in Kikuchi disease: analysis of 96 cases”. AJNR Am J Neuroradiol 25 (6): 1099-1102. PMC 7975664. PMID 15205157 .
- ^ a b 臼井ほか 2005.
- ^ Bosch, X; Guilabert, A (2006). “Kikuchi-Fujimoto disease”. Orphanet J Rare Dis 1 (18). doi:10.1186/1750-1172-1-18.
参考文献
[編集]- 臼井真理子、知念多恵子、大橋則夫「特異な臨床像を呈する組織球性壊死性リンパ節炎の1例」『皮膚の科学』第4巻第3号、日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会、2005年、254-258頁、doi:10.11340/skinresearch.4.3_254、ISSN 1347-1813、NAID 130005404837。
外部リンク
[編集]- 菊池昌弘、岩崎宏、三井徹次「組織球性壊死性リンパ節炎(いわゆる壊死性リンパ節炎)の臨床病理学的研究」『日本網内系学会会誌』第20巻Supplement、1980年、11-22頁、doi:10.3960/jslrt1961.20.Supplement_11。
- 大島孝一「組織球性壊死性リンパ節炎の病理と臨床 病理学的観点から」『小児感染免疫』第25巻第2号、2013年、175-179頁、CRID 1570854176165449344。