胴甲動物
胴甲動物門 | |||||||||
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Pliciloricus enigmatus
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分類 | |||||||||
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目 | |||||||||
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胴甲動物(どうこうどうぶつ)は動物界の門の一つで、十数の種が知られている。全種が海底堆積物の粒子の間で間隙性生物として生活している、1 mm以下のごく小型の動物である。1983年に、ラインハルト・クリステンセンによって発見された。この門に属する動物は、コウラムシと呼ばれる。日本からの正式な記載はシンカイシワコウラムシのみ[1]。
名称
[編集]学名のLoriciferaは「甲羅を持つ動物」を意味し、胴部にクチクラ板があることに由来する。日本語では、胴部にのみ甲羅を持つことから、胴甲動物と呼ばれる。
形態
[編集]胴甲動物は、頭部、口器、消化器官、移動に用いられる傘の骨のような形状の特殊化した付属肢を持つ。付属肢は対ではなく、輪に配列するものが多い。全体は壺型で、前端は尖っており、その先端に口が開く。ちなみにその先端部は内側に引っ込めることが可能である。
循環系および内分泌系はない。体腔は偽体腔で、口と肛門がある。雌雄異体であり性的二型も見られるが、繁殖様式は不明。幼生は発見者名にちなんでヒギンズ幼生と呼ばれる。化石記録は知られていない。
系統
[編集]クチクラ板の表面に花状器官と呼ばれる感覚器官があることから動吻動物と、体の前方に多数の感覚器を持つことから鰓曳動物と近縁であると考えられ、これらとともに有棘動物群に分類されている。また本門の成体は、鰓曳動物の幼生に似ている。 一方で、Yamasaki et al. (2015)[2]の18SrDNAおよび28SrDNAによる分子系統解析ではこのような系統樹が描かれている。なお、汎節足動物と胴甲動物門を含むクレードのブートストラップ値は63%と高いとは言えず、著者はこのクレードを確実とはしていない。胴甲動物門は糸形動物や汎節足動物と密接な関係があるという結論を出している。
脱皮動物 |
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分布
[編集]海底堆積物の中に生息し、浅海から深海までのさまざまな環境で確認されている。
分類
[編集]1目2科3属に分類されている。ただし多くの未記載種が採集されており、少なくとも5属以上になると予想される。
- コウラムシ目
- コウラムシ科 Nanaloricidae
- Nanaloricus属
- 模式種であるN. mysticusなど
- Nanaloricus属
- シワコウラムシ科 Pliciloricidae
- Pliciloricus属
- シンカイシワコウラムシP. hadalisなど
- Rugiloricus属
- Pliciloricus属
- コウラムシ科 Nanaloricidae
脚注
[編集]- ^ 藤田敏彦『動物の系統分類と進化』裳華房〈新・生命科学シリーズ〉、2010年4月28日。ISBN 978-4785358426。p.154.
- ^ Yamasaki, Hiroshi; Fujimoto, Shinta; Miyazaki, Katsumi (2015-06-30). “Phylogenetic position of Loricifera inferred from nearly complete 18S and 28S rRNA gene sequences”. Zoological Letters 1 (1): 18. doi:10.1186/s40851-015-0017-0. ISSN 2056-306X. PMC 4657359. PMID 26605063 .
参考文献
[編集]- 白山義久(編集)『無脊椎動物の多様性と系統(節足動物を除く)』裳華房〈バイオディバーシティ・シリーズ5〉、2000年。ISBN 4785358289。