環境に優しい
環境に優しい(かんきょうにやさしい、英: Environmentally friendly または environment-friendly)とは、生態系や環境に及ぼす悪影響を最小限または全く無害に低減したという宣伝文句の商品やサービス、法律や政策ガイドラインを指して言う、環境に配慮した活動の持続可能性でありマーケティング用語である[1] 。「地球に優しい」という表現も使われる[2](英語では "earth-friendly")[3]。自然に優しい (Nature-friendly) やエコ・フレンドリーとも呼ばれ、英単語の「green(グリーン;緑)」も同じ意味合いで使われることがある[4]。企業はこれらの曖昧な用語を使って商品やサービスの販売促進をしているが、たまにエコラベル等のより明確な認証も追加される。それらの過剰な使用については、グリーンウォッシングだと言われる可能性がある[5][6][7][8][9]。加えて近年では、SDGsへの取り組みを誇大表現する「SDGsウォッシュ」への懸念もある[10]。
国際標準化機構が、認証機関とエコラベル発行機関が従うべき環境ラベルに対する原則と手順および宣言文を確立するため、ISO14020とISO14024を策定している。特にこれらの基準は、金銭的な利益相反の回避、健全な科学的検証と認められた試験手順の使用、および基準の設定における開示性と透明性に関連するものである[11]。
地域差
[編集]ヨーロッパ
[編集]欧州連合(EU)の加盟国にある製品は、EUの承認審理中にEUのエコラベルを使用することができる[12] [13] 。環境管理監査制度EMASは、製品とは対照的に組織管理が環境に優しいかどうかを示す、もう1つのEUラベルである[14][15] 。ドイツもまたドイツの基準に基づいて、ブルーエンジェル(独自のエコラベル)を使用している[16] [17]。
北米
[編集]アメリカ合衆国において、環境マーケティングの宣伝文句には注意が必要である。「環境に優しい」といった曖昧な肩書きは、具体的な定義がないと混乱を来たしかねないので、 一部の規制当局はガイダンスを提供している[18] 。アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)は、ある製品が本当に「環境に優しい」かどうかを決定するにあたって一部のエコラベルが誤解を与えるものになっている、との判断をしている[19]。
カナダでは、環境チョイスプログラムが唯一のラベルである[20] [17] 。1988年に制定され、プログラムにより承認された製品のみがラベル表示を許される[21] [22]。
オセアニア
[編集]エネルギー評価ラベルはType IIIラベルで[23][24]、「エネルギー消費単位当たりのエネルギーサービス」に関する情報を提供している[25] 。それは1986年に最初に作成されたものだが、2000年における交渉が再設計をもたらした[26]。
2001年以降は、オーストラリア環境ラベリング協会(AELA)による環境ラベル制度が実施されている[27]。
アジア
[編集]西洋文化の緑色とは違い、日本では澄んだ空気ときれいな水をイメージする青色のエコマークが用いられている(ISO規格に則った、国際エコラベル・ネットワーク(GEN)に唯一加盟している日本の環境ラベル)[28]。このほか、カーボンニュートラルラベル(オレンジ色・環境省)や統一省エネラベル(緑枠の中に黄色い星・経済産業省)など、独自の色とデザインの認証ラベルを使って「環境に優しい」活動に取り組んでいるケースも見られる[29]。
他の東アジア諸国では、韓国、台湾、香港、タイ、シンガポール、中国が、いずれも緑を基調とした環境ラベルである[30]。
国際版
[編集]エネルギースターは、エネルギー効率の向上と間接的な温室効果ガス排出量の削減を主な目的としたプログラムである[31] 。エネルギースターは、アメリカ合衆国[32] 、欧州連合[33] 、オーストラリア[34] など、国や地域によって区分が異なる。アメリカで制定されたこのプログラムは、カナダ、日本[35]、ニュージーランド、台湾にも存在する[36]。
脚注
[編集]- ^ "nature-friendly". Webster's New Millennium Dictionary of English, Preview Edition (v 0.9.7). Lexico Publishing Group, LLC.
- ^ 蘇 紅 「優しい」を中国語にどう訳すか 愛知大学中日大辞典編纂所『日中語彙研究』第2号(2012)65‒74
- ^ 小学館プログレッシブビジネス英語辞典「earth-friendly」の項目
- ^ Daniel Holzer,"What Does Eco-Friendly Mean?",sfgate.com,December 10, 2018. In recent years, terms like "going green" and "eco-friendly" have become buzz words on talk shows, commercials and product packaging...This term most commonly refers to products that contribute to green living or practices that help conserve resources like water and energy.
- ^ “Grønvaskere invaderer børsen” [Greenwashers invade the market] (Danish). EPN.dk. Jyllands-Posten (2008年6月21日). 2008年7月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年12月22日閲覧。
- ^ Greenwashing Fact Sheet. March 22, 2001. Retrieved November 14, 2009. from corpwatch.org
- ^ “グリーンウォッシュ”. 「京都鳥日和」. 2019年11月14日閲覧。
- ^ “業界ニュース:「グリーンウオッシュ」を知っていますか? エコロジー宣伝へのきびしい目はやがて繊維業界にも - Apparel Business Magazine”. legacy.apparel-mag.com. 2019年11月14日閲覧。
- ^ “絶滅危惧種「ウナギ」は食べないほうがいいのか 持続可能なウナギはどこで買える?”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) (2019年10月1日). 2019年11月14日閲覧。
- ^ “SDGsの広報ガイド発行 「SDGsウォッシュ」に警鐘も”. SUSTAINABLE BRANDS JAPAN. 2019年11月14日閲覧。
- ^ “international standards for eco-labeling”. Green Seal. 9 December 2012閲覧。
- ^ “Welcome to the European Union Eco-label Homepage”. EUROPA. 2007年7月10日閲覧。
- ^ 「世界の主要な環境ラベル(EU15か国+EEA合意署名国)」環境庁
- ^ “EMAS”. EUROPA. 2007年7月10日閲覧。
- ^ “Minutes” (PDF). EUEB Coordination and Cooperation Management Group. 2007年2月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月10日閲覧。
- ^ 「世界の主要な環境ラベル(ドイツ)」環境庁
- ^ a b “Environmental Labels Type I”. Ricoh. 2007年7月10日閲覧。
- ^ “Environmental Claims”. Federal Trade Commission (2008年11月17日). 17 November 2008閲覧。
- ^ “Labels -environmentally friendly”. ecolabels. 2007年7月9日閲覧。
- ^ 「世界の主要な環境ラベル(カナダ)」環境庁
- ^ “About the Program”. EcoLogo. 2006年5月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月10日閲覧。
- ^ “Environmental Choice (Canada)”. Environment Canada. 2007年11月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月10日閲覧。
- ^ “Overview of Regulatory Requirements - Labelling and MEPS”. Energy Rating Label. 2007年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月10日閲覧。
- ^ Arnaud Bizard; Brett Lee; Karen Puterrman (PDF). AWARE and Environmental Labeling Programs: One Step Closer to a Sustainable Economy. ME 589 2007年7月10日閲覧。.
- ^ “Overview of how are star ratings calculated?”. Energy Rating Label. 2007年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月10日閲覧。
- ^ “The Energy Label”. Energy Rating Label. 2007年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月10日閲覧。
- ^ 「世界の主要な環境ラベル(オーストラリア)」環境庁
- ^ 「エコマーク」環境庁
- ^ 「国及び第三者機関による取組」環境庁
- ^ 「世界の主要な環境ラベル(GENに加盟しているもの)」環境庁
- ^ “About Energy Star”. Energy Star. 2007年7月10日閲覧。
- ^ “United States Energy Star Home Page”. Energy Star. 2007年7月10日閲覧。
- ^ “EU Energy Star Home Page”. Energy Star. 2007年7月10日閲覧。
- ^ “Australia Energy Star Home Page”. Energy Star. 2007年7月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月10日閲覧。
- ^ 「国際エネルギースタープログラム」公式サイトより。日本における国際エネルギースタープログラムは、日米両政府合意のもと1995年10月から実施されている。
- ^ “Who’s Working With ENERGY STAR? International Partners”. Energy Star. 2009年2月3日閲覧。