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テニスラケット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
球拍から転送)
ガット張り
ジュ・ド・ポームにおけるラケット(木のへら状のものがトリケバトワール

テニスラケット: tennis racket, tennis racquet: 网球拍)は、球技テニスにおいて、選手ボールを打つために用いるラケット[注 1]硬式テニス用とソフトテニス用がある。

ラケットを意図的に損壊させるとペナルティを受ける[1] ほか、 ストリング(ガット)の切れたラケットは使用禁止となっているトーナメントもある[2]

歴史

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かつてジュ・ド・ポームという競技においては、素手、素手に革紐、グローブ風、木の棒(1344年という説あり)という段階を経て、バトワール(battoir)と呼ばれる1枚板を削ったラケット状のものに達した。そして1550年頃、ガット張りラケットが生まれた。従来はボール同様にラケットの製造権もギルド組織の管理下に置かれ、ほうき・ブラシなどの製造業者が兼業していたことから生産数が少量だったとされ、ラケット製造業組合が独立したのは1550年頃といわれる)[3]。その後も手作りの木製品が主流だったが、大量生産化され、炭素繊維製のものも登場した。

日本では、初期のローンテニスにおけるラケットのことを、バットとも呼んでいたといわれる[4]

1967年にスチール製、1968年にアルミ製、1974年に複合材のラケットが初登場したという説がある[5][6]

1976年プリンス社は、ストリング面が110平方インチのテニスラケット「クラシック」を発表(1960年代前半までは木製で68平方インチとルール規定されていたといわれる[5])し、パム・シュライバーなどに愛用された。日本ではデカラケと呼ばれた[7]。130平方インチや超大型サイズの137平方インチのものもあったという。

その後、1987年厚ラケ1995年長ラケ[注 2] と呼ばれるジャンルのラケットも出現した[5]

素材も進化し、Wilsonが1999年に東レから供給を受けた高価で希少な「ハイパーカーボン」などがある[8]

サイズのルール変遷

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2009年(平成21年)12月現在[9][10]

ラケットのフレーム

ハンドルを含め,全長で73.66cmを超えてはいけない。→73.7cmを超えてはいけない。

全幅で31.75cmを超えてはいけない。→31.7cmを超えてはいけない。

ストリング面

全長で39.37cmを超えてはいけない。→39.4cmを超えてはいけない。

全幅で29.21cmを超えてはいけない。→29.2cmを超えてはいけない。

ストリング

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ヘッド社のステンシル

ストリング(ストリングスとも呼ぶ)には素材で大きく分けて、ナチュラルガット[11]カットグットとも呼ぶ天然素材)、ナイロンシンセティックガット、ポリエステルガット[12] の3種類がある。

現在のように縦糸と横糸を垂直に交差させているものは、古いものでは1583年製とされるラケットに見られる。それ以前では、横糸のみ斜めに張って交差点を結んでいるもの(1552年・シャルル9世が用いたとされるもの)などが見つかっている[3]

高体連が主催・主管している大会では、ストリングにステンシルが入っているラケットは使用禁止になっている(ヨネックスのyy、プリンスのP、バボラのダブルラインなど)[2]

ラケットに張られたストリング上で、打球時にとても有効な領域をスウィートスポット[13] と呼ぶが、それは3種類(3ヶ所)あるという定義もある[14]

グリップ

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日本で発売されているラケットのグリップの規格サイズは、1(G1)・2(G2)・3(G3)・4(G4)がある。オーバーグリップテープを巻いて調節する場合もある[15]

スロート

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ヘッドとグリップの間の空間の事をスロート(喉の意味)と呼ばれる。材料の強度が上がったため、軽量化のためにスロートの開口部が広く出来るようになった。そのため、上級者の試合ではほとんどないが、初心者の試合ではボールがスロートにはまることがあるが、その場合ははまった側の失点やフォールト、ダブルフォールトなど失敗扱いになる。はまったボールは生きているわけでは無いので、そのラケットを相手コートに投げても得点やサーブ成功にはならない。[16]。 スロートにボールがはまるリスクを減らすために、シングルシャフトと呼ばれるスロートの無いラケットを選ぶ場合がある。その場合、仮にスロートに相当する部分に当たっても失点などが発生しない利点があるが、ラケットのねじれが少なくなるため、芯が狭くなる欠点がある。

テニスラケット開発史

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テニスラケットの技術革新は日進月歩であり、テクノロジー革命により軽く、頑丈なものに進化している。

ウッドから、スチールやグラスファイバー、チタンやカーボンなどの素材革命が進み、 レギュラーサイズから、デカラケ・厚ラケ・長ラケなどの形状革命など、 ラケットを構成するあらゆる要素に画期的な新テクノロジーを駆使した大きいのに軽量、かつ強く反発力のあるラケットが開発された。

20世紀ウッドラケットの時代は68平方インチでシングルシャフト、フレーム重量380g程とかなり重く、スウィングスピードがないのでしなりを利用してボールを飛ばしていた。 戦後まもない1949年にWilsonジャック・クレイマー・オートグラフを誕生させた。このラケットは1981年まで30年以上のロングセラーであった。

フランスのラコステによって、1967年にスチール製フレーム素材のテニスラケットがWilsonT2000として開発されました。 1968年アルミ製、1970年にウッド素材より柔らかいグラスファイバーが取り入れられたが、カーボンに比べて重かったため、フルグラスファイバーの時代は短く、 その後1974年カーボンファイバー炭素繊維フレームが登場した。

カーボン製は形状をいろいろな形に製造しやすいことから、Prince1976年世界初の大きいサイズのプリンスクラシックを開発した。 これまでの70平方インチを110平方インチフェイスに拡大し当時デカラケと呼ばれていた。考案したのは、HEAD創始者ハワード・ヘッドであった。 カーボンフレームによるLサイズラケットはテニス史上最大の革命的大転換だった。

1980年代前半ほんの数年でイノベーションが進んで、複合素材台頭し始めレギュラーからデカラケへと移行しウッド時代に終止符を打った。 1985年頃はデカラケの全盛時代であった。フェースがかなり大きいデカラケはボールも当たりやすいがスピンが掛けにくく、飛びすぎるデメリットのため、フェイス面積がデカラケより少し小さな100平方インチ前後のミッドラケットが主流になっていった。

その次にイノベーションとなったのが1987年のWilson Profileで当時厚ラケと呼ばれていた。1990年頃になりカーボン・グラファイトの特性を生かしワイドボディフレームの出現で、ラケット開発に革命を起こした。 ボールの弾きを決めるのはフレームの硬さで厚いラケットは、その分フレームが硬くしならないので、よくボールを弾く。ただ当初の厚ラケは飛び過ぎるものだったので、中厚ラケットが主流となった。

その後1995年の頃になりラケットの長さが1インチ長い28インチのロングボディラケットPrinceマイケルチャンGraphiteが登場し当時長ラケと呼ばれていた。

HEADチタンラケット製造を開始。1997年にラケットに革新をもたらした素材チタンは衝撃腐食、高温にも強い。 耐久力に優れ、このスポーツに最適な軽量で強度のある素材チタンをフレームに採用し中空構造で高い反発性を実現している。 Wilsonは1998年にチタンと比べ軽く4倍の強度と硬度を備え新素材ハイパー・カーボンを発表。 Wilsonは2000年グロメット部にローラー組み込んだローラー・テクノロジーを開発。 HEADはインテリファイバー素材を使ってインパクト時に生じる衝撃の機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換しグリップに内蔵したコンピュータマイクロチップで10倍増幅を開発。 HEADが2003年に世界最先端のニューテクノロジーチタンに比べ3倍の弾力性と強度を合わせ持つ液体金属素材LIQUIDMETALシリーズを開発。

黄金スペックの起源はBabolaTピュアドライブで基本スペックである重量=300g、フレーム厚=25㎜、フェイス面積=100平方インチと同じ組み合わせのモデルがメーカー各社から発表された。

Princeが2005年にグロメットレス新構造フレームは、フレーム上にストリングホールを巨大化させた穴を空けることでグロメットはなく、フレームにストリングを直接張ることにより ストリング可動範囲は大きく広がり、スィートスポットの拡大を実現させた。結果、振り抜くときの空気抵抗を大幅に激減させ、スイングスピードのアップした。

Wilsonは2010年にニューテクノロジー新素材BASALT Fiberバサルトファイバーを採用ラケットを開発した。

HEADはINNEGRAファイバーをカーボンファイバーと複合、インネグラ・ハイブリッド・コンポジット複合構造IGを開発した。 BabolaTがコアテックスとウーファー・システムにタングステンを織り込んだGTテクノロジーを採用し革新技術アエロモジュラーフレームテクノロジーで強烈なスピン性能を達成した。

HEADは2013年に先進ニューテクノロジー世界最強最軽量の素材Graphineを実現した。

BabolaTが2014年にグリップ部分に搭載された内蔵センサーにより通信機能搭載しワイヤレス通信で端末によるグラフや数値での分析を可能とした。 ラケット・メーカー各社が最新ハイテクノロジーを駆使し激化した開発競争が続いてきた結果 フレーム・フェイス形状の大型化と共にハイパーカーボン、アルティマムチタンなど素材における軽量化も相次ぐようになったことから反発性能の大幅な向上が続いた。 これによりスピン量が増大しボールスピードが上昇した。

ラケットブランド

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ラコステプーマヤマハのように、ラケット市場から撤退した企業もある。

なお、シャネル[17]ポルシェデザイン[18] もラケットを発売している。

日本では、明治30年代には国産品が既にあった[19]。1960年前後には木製ラケット生産業者が多数あり輸出も行われていたが、次第に台湾そして中国へ、生産基地が移っていったという[20]

主なラケットブランド(右端の#は、メーカー公式サイト)
メーカー名 備考 #
ドイツの旗 アディダス adidas 2009年、20年ぶりに新作発売[21]
日本の旗 アシックス asics 2013年、久々に発売(ASICS America)[22][23]
アメリカ合衆国の旗 エイブリィ AVERY [24] [2]
フランスの旗 バボラ Babolat 日本ではダンロップスポーツが提携[25] [3]
ドイツの旗 ボリス・ベッカー BORIS BECKER フォルクルのラケットをベースに発展 [4]
カルフレックス CALFLEX サクライ貿易(SAKURAI)が扱うブランド
アメリカ合衆国の旗 ボスワース BOSWORTH [5]
日本の旗 ブリヂストン BRIDGESTONE [26] [6]
ベルギーの旗 ドネー DONNAY [7] [8]
日本の旗 ダンロップ DUNLOP [27] [9]
アメリカ合衆国の旗 エスチューサ ESTUSA ドイツのプーマ社のラケットの生産が中止された後、ボリスベッカーが金型を購入し、アメリカで立ち上げたブランド。
オーストリアの旗 フィッシャー FISCHER ドイツの旗 パシフィック(兼松繊維)が継続[28] [10]
日本の旗 フタバヤ Futabaya 現存せず[29]
アメリカ合衆国の旗 ガンマ GAMMA 日本ではトアルソンが提携 [11] [12]
日本の旗 ゴーセン GOSEN [30] [13]
アメリカ合衆国の旗 ヘッド HEAD [31] [14]
日本の旗 イグニオ IGNIO
日本の旗 カワサキ Kawasaki ブランド名自体は現存[29][32] [15] [16]
オーストリアの旗 クナイスル KNEISSL Kneissl.UKから発売 [17]
フランスの旗 ラコステ LACOSTE かつて発売
イギリスの旗 マンティス[要曖昧さ回避] MANTIS 2009年に創業[33] [18]
日本の旗 ミズノ MIZUNO [34] [19]
アメリカ合衆国の旗 パワーアングル PowerAngle [35] [20]
アメリカ合衆国の旗 プリンス prince [36] [21]
シンガポールの旗 プロケネックス PROKENNEX [22] [23]
西ドイツの旗 プーマ PUMA かつて発売
不明の旗 レッドソン REDSON [37]
フランスの旗 ロシニョール ROSSIGNOL かつて発売
イギリスの旗 スラセンジャー Slazenger [24]
アメリカ合衆国の旗 ソリンコ SOLINCO [25]
アメリカ合衆国の旗 スポルディング SPALDING かつて発売
日本の旗 スリクソン SRIXON 日本でのダンロップスポーツ自社ブランド[38] [26]
フランスの旗 テクニファイバー Tecnifibre 日本ではブリヂストンスポーツが提携[39] [27]
日本の旗 トアルソン TOALSON [40] [28]
ドイツの旗 フォルクル Volkl [29]
アメリカ合衆国の旗 ウィード WEED [41] [30]
アメリカ合衆国の旗 ウィルソン Wilson [42] [31]
日本の旗 ウイングハート Winghart イグニオと同じくジャパーナの商品[43]
日本の旗 ウィニングショット WINNING SHOT [44]
日本の旗 ヤマハ YAMAHA かつて発売[45]
日本の旗 ヨネックス YONEX [46] [32]

脚注

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  1. ^ ウィリアムズ、全米OP決勝戦の暴言で罰金 - BBC
  2. ^ a b 長野県高体連テニスハンドブック
  3. ^ a b 最新スポーツ大事典(大修館書店、1987年、p.1318)
  4. ^ 日本テニス協会公式サイト - ミュージアム明治のテニス・ラケット物語 2 和製ラケットの製造と「庭球」の成長
  5. ^ a b c テニスのデカラケ,厚ラケでコントロールとスピードがよくなるのはなぜ 川副嘉彦
  6. ^ 「最新スポーツ大事典」(大修館書店、1987年、p.1318)には、1965年ラコステが金属製ラケットを完成したと書かれている。
  7. ^ 40年のステイタス!
  8. ^ 2-2 フェデラーが使用するラケットの進化 [テニス] All About
  9. ^ おもなルール変更点
  10. ^ 最新スポーツルール百科〈2011〉: 大修館書店 p.196-197
  11. ^ TENNIS-ONE:ナチュラルガットのススメ
  12. ^ テニスガットの選び方 トークス
  13. ^ 「テニスラケットの振動解析」
  14. ^ ラケットのスイートスポットは実は3種類ある(テニスの物理4)
  15. ^ グリップサイズ・テニスラケットの選び方 てにらけ 初心者でも分かる!テニスラケット(硬式)用語解説
  16. ^ [1]
  17. ^ Sport – Accessories CHANEL 2013 Collection - シャネル
  18. ^ P´5370 テニスラケット - Porsche Design
  19. ^ 日本テニス協会公式サイト - ミュージアム明治のテニス・ラケット物語 3 軟球の庭球、硬球の庭球
  20. ^ THANKS 50th - 東亜ストリング
  21. ^ アディダス 20年ぶりの新作ラケット - Tennis Navi
  22. ^ ASICS introduces line of tennis racquets - Racquet Sports Industry News
  23. ^ アシックス/ASICS - TENNIS DAILY
  24. ^ History of Avery Racquets - AveryRacquets.com
  25. ^ バボラ/BABOLAT - TENNIS DAILY
  26. ^ ブリヂストン/BRIDGESTONE - TENNIS DAILY
  27. ^ ダンロップ/DUNLOP - TENNIS DAILY
  28. ^ パシフィック/PACIFIC - TENNIS DAILY
  29. ^ a b 会社情報 - 東洋造機株式会社
  30. ^ ゴーセン/GOSEN - TENNIS DAILY
  31. ^ ヘッド/HEAD - TENNIS DAILY
  32. ^ 追悼
  33. ^ ABOUT MANTIS SPORT INTERNATIONAL- MANTIS
  34. ^ ミズノ/MIZUNO - TENNIS DAILY
  35. ^ History - PowerAngle.net
  36. ^ プリンス/prince - TENNIS DAILY
  37. ^ 公認メーカー -日本ソフトテニス連盟
  38. ^ スリクソン/SRIXON - TENNIS DAILY
  39. ^ テクニファイバー/TECNIFIBRE - TENNIS DAILY
  40. ^ トアルソン/TOALSON - TENNIS DAILY
  41. ^ The WEED Story - WEED USA
  42. ^ ウイルソン/Wilson - TENNIS DAILY
  43. ^ テニスラケット ウイングハート レスペクト - Good Design Award
  44. ^ ウィニングショット インタビュー - テニス市場
  45. ^ ヤマハテニスラケットα(アルファ)シリーズ α-97 - Good Design Award
  46. ^ ヨネックス/YONEX - TENNIS DAILY
  1. ^ ラケットを同時に2本以上持ってプレーすることは禁止されている。
  2. ^ しかし、全長29インチ以上のラケットは、プロでは1997年1月から、一般でも2001年1月から、試合では使用禁止となった。

参考資料

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関連項目

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外部リンク

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