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アーベル圏

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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アーベル圏(アーベルけん、英語: Abelian category)とは、ホモロジー代数を展開することができる圏である。具体的には、正合(exact)かつ加法的(additive)なのことである。ソーンダース・マックレーンにより考案され[1]、Buchsbaum及びアレクサンドル・グロタンディークによってカルタン、アイレンバーグのホモロジー代数が展開可能な形に理論付けられた。

概要

アーベル圏(abelian category)はソーンダース・マックレーンDuality for groups[2]に始まる。

定義

C加法的(additive)かつ正合(exact)であるとき Cアーベル的(abelian)またはアーベル圏(abelian category)と呼ぶ。

なお、付加的に

  • 任意の単射 u: AB はある射 s: BC の ker u となる。

などの公理を追加することもある。

加法的(additive)
正合(exact)

共通定義
ゼロ対象(zero objects)
始対象かつ終対象である圏の対象をゼロ対象(zero objects)と呼ぶ。今後ゼロ対象をZで表すこととする。
ゼロ射(zero morphism)
圏の任意の対象 A から B への射でゼロ対象 Z を経由する射(同値であるが、左ゼロ射[3]かつ右ゼロ射[4]である射)をゼロ射(zero morphism)と呼ぶ[5]
ゼロ系列(zero sequence)
合成可能な射列 f : A → B 、g : B → C がゼロ系列(zero sequence)であるとは g・f = 0AC である射列を言う。

加法圏の複積(biproduct in additive category)

半順序としての部分対象の最小上界(l.u.b.)または結び(join)

圏の対象 A の部分対象からなる集団は半順序をなす[6]が、A の任意の部分対象 <A1 ; m1> , <A2 ; m2> について、その最小上界(または結び)<A1;m1> ∨ <A2;m2[7]が存在するとは限らない。しかしながら、圏がモニック和を持てば、その圏の部分対象からなる半順序は最小上界(または結び)を持つ。すなわち、結び半束を成す。

半順序としての商対象の最大下界(g.l.b.)または交わり(meet)

同様に、圏の対象 A の商対象からなる集団も半順序をなす[8]が、A の任意の商対象 <e1 | A1> , <e2 | A2> について、その最大下界(または交わり)<e1|A1>∧<e2|A2[9]が存在するとは限らない。しかしながら、圏がエピ積を持てば、その圏の商対象からなる半順序は最大下界(または交わり)を持つ。すなわち、交わり半束を成す。

さらに、有限和と有限積を持つ加法圏においては、それらを複積という形で一つの性質に結実させられる。

結び(join)とモニック和(monic sum)

A の部分対象として

<A1∐A2 ; m1∐m2> = <A1;m1> ∨ <A2;m2

を満たす圏の対象 A1∐A2 とモニック射 m1∐m2 が存在するとする。すなわち、圏の任意の対象についてその部分対象からなる半順序は結び半束になるものとする。

A の任意の部分対象 <A1 ; m1> , <A2 ; m2> の結び(最小上界)である <A1∐A2 ; m1∐m2> はその定義から次の順序関係が常に成り立つ(すなわち、順序関係に対応するモニック射 i1 : A1 → A1∐A2 , i2 : A2 → A1∐A2 が存在し)以下を満たす

i1 : <A1 ; m1> ≦ <A1∐A2 ; m1∐m2> ,
i2 : <A2 ; m2> ≦ <A1∐A2 ; m1∐m2

なお、この A1∐A2 へのモニック射 i1 , i2標準入射(canonical injection)と呼ぶこととする。

さらに、A の部分対象 <X ; ξ> 及びモニック射 γ1 : A1 → X 、γ2 : A2 → X が存在し、γ1 : <A1 ; m1> ≦ <X ; ξ> 及び γ2 : <A2 ; m2> ≦ <X ; ξ> を満たすならば、結び(最小上界)の定義からモニック射 ν : A1∐A2 → X が存在し

ν : <A1∐A2 ; m1∐m2> ≦ <X ; ξ>

を満たす。ここで、上記の標準入射のもたらす順序関係との推移律から

ν・i1 : <A1 ; m1> ≦ <X ; ξ> ,
ν・i2 : <A2 ; m2> ≦ <X ; ξ>

が成り立つが、順序関係に対して対応するモニック射は唯一つであることから

γ1 = ν・i1 ,
γ2 = ν・i2

が成り立つ。すなわち、A1∐A2 への標準入射{ iα }α ∈ {1,2} は A1 , A2 からの任意のモニック射を一意的に分解する。この対象と射の組(A1∐A2 , { iα }α ∈ {1,2} )をモニック射族 { m1 , m2 } の有限モニック和(finite monic sum)と呼ぶこととする。無限の射族に対してなりたつとき、単にモニック和(monic sum)と呼ぶこととする。

圏がモニック和を持つ[10]ならば、圏の部分対象からなる半順序は結び(最小上界)を持つ[11]

モニック和の特性
定義:A へのモニック射族 { mα : Aα → A }α ∈ {1,2,3} のモニック和を(A1∐A2∐A3 , { iα }α ∈ {1,2,3} )とする。
  • (モニック和の縮約)部分対象 <A2;m2> と <A3;m3> についてモニック射 γ : <A2;m2> ≦ <A3;m3> が存在するならば、A1∐A2∐A3 A1∐A2 が成り立つ。

交わり(meet)とエピ積(epi product)

B の商対象として

<e1Πe2 | A1ΠA2> = <e1 | A1> ∧ <e2 | A2

を満たす圏の対象 A1ΠA2 とエピ射 e1Πe2 が存在するとする。すなわち、圏の任意の対象についてその商対象からなる半順序は交わり半束になるものとする。

A の任意の商対象 <e1 | A1> , <e2 | A2> の交わり(最大下界)である <e1Πe2 | A1ΠA2> はその定義から次の順序関係が常に成り立つ(すなわち、順序関係に対応するエピ射 p1 : A1ΠA2 → A1 , p2 : A1ΠA2 → A2 が存在し)以下を満たす

p1 : <e1Πe2 | A1ΠA2> ≧ <e1 | A1> ,
p2 : <e1Πe2 | A1ΠA2> ≧ <e2 | A2

なお、この A1ΠA2 からのエピ射 p1 , p2標準射影(canonical projection)と呼ぶこととする。

さらに、A の商対象 <η | Y> 及びエピ射 δ1 : Y → A1 、δ2 : Y → A2 が存在し、δ1 : <η | Y> ≧ <e1 | A1> 及び δ2 : <η | Y> ≧ <e2 | A2> を満たすならば、交わり(最大下界)の定義からエピ射 σ : Y → A1ΠA2 が存在し

σ :<η | Y> ≧ <e1Πe2 | A1ΠA2

を満たす。ここで、上記の標準射影のもたらす順序関係との推移律から

p1・σ : <η | Y> ≧ <e1 | A1> ,
p2・σ : <η | Y> ≧ <e2 | A2

が成り立つが、順序関係に対して対応するエピ射は唯一つであることから

δ1 = p1・σ ,
δ2 = p2・σ

が成り立つ。すなわち、A1ΠA2 からの標準射影{ pα }α ∈ { 1 , 2 } は A1 , A2 への任意のエピ射を一意的に分解する。この対象と標準射影(canonical projection)の組(A1ΠA2 , { pα }α ∈ {1,2})をエピ射族 { e1 , e2 } の有限エピ積(finite epi product)と呼ぶこととする。こちらも同様に無限のエピ射族について成り立つとき、単にエピ積(epi product)と呼ぶ事とする。

やはり同様に、圏がエピ積を持つ[12]ならば、圏の商対象からなる半順序は交わり(最大下界)を持つこととなる。

エピ積の特性
定義:A からのエピ射族 { eα : A → Aα }α ∈ {1,2,3} のエピ積を(A1ΠA2ΠA3 , { pα }α ∈ {1,2,3} )とする。
  • (エピ積の縮約)商対象 <e2|A2> と <e3|A3> についてエピ射 δ : <e2|A2> ≧ <e3|A3> が存在するならば、A1ΠA2ΠA3 A1ΠA2 が成り立つ。

複積(biproduct):エピ射とモニック射の一意的合成

加法圏の複積公理 A3
  1. 圏はモニック和とエピ積を持つ。
  2. 同一の入射対象族、射影対象族を持つモニック和(∐αAα , { iα }α ∈ I )とエピ積(ΠαAα , { pα }α ∈ I)について次が成り立つ
同型射 u : ΠαAα → ∐αAα が存在し、なお u はカノニカルに定まる
さらに、{ iα }α ∈ I , { pα }α ∈ I , u について以下が成り立つ
pα・iα = 1Aα
pα・iβ = 0 (ただし、添字として α ≠ β)
Σαiα・pα = u [13]

圏の対象 X と Y について、対象 Y へのモニック射族(部分対象){ mα : Aα → Y }α ∈ I と対象 X からのエピ射族(商対象){ eα : X → Aα }α ∈ I が与えられたとする。加法圏はモニック和とエピ積を持つ事から、モニック和(∐αAα , { iα }α)が存在し、各 mα に対して、

mα = m・iα

を満たすモニック射 m : ∐αAα → Y が唯一つ存在する[14]

同様に、エピ積(ΠαAα , { pα }α)が存在し、各 eα に対して、

eα = pα・e

を満たすエピ射 e : X → ΠαAα が唯一つ存在する[15]

複積はその定義からエピ積とモニック和の間にカノニカルに定まる同型射 u : ΠαAα → ∐αAα が存在することから、上記のエピ積とモニック和から導かれる射 e , m は u により一意的に合成可能となる。これは射の集団 hom(X , Y) の中にそのすべての射を導出することができる特別な射

m・u・e ∈ hom(X , Y)

が一つ存在することを示唆する[16]が、正合圏のエピ-モニック分解が不可能な加法圏のままでは証明することができない[17]

正合圏のエピ-モニック分解(epi-monic factorization in exact category)

圏がゼロ対象を持ち

グロタンディークのアーベル圏第一公理

圏の任意の射について核、余核が存在する

を満たすとする。

定義:核、余核、像、余像

核(kernel)
射 f : A → B の核(kernel)とは核対象 Ker(f) と核射 ker(f) : Ker(f) → A の組 <Ker(f) ; ker(f)> のことであり、以下の条件を満たすものである。
f・ker(f) = 0
f・u = 0 ならば、u = ker(f)・β を満たす射 β が唯一つ存在する
余核(cokernel)
射 f : A → B の余核(cokernel)とは余核対象 Coker(f) と余核射 coker(f) : B → Coker(f) の組 <coker(f) | Coker(f)> のことであり、以下の条件を満たすものである。
coker(f)・f = 0
v・f = 0 ならば、v = α・coker(f) を満たす射 α が唯一つ存在する

任意の射について核と余核が存在する場合、核と余核から像と余像を定義することができる。

像(image)
射 f : A → B の像(image)とは、f の余核射 coker(f) の核のことである。像は組 <Im(f) ; im(f)> と表記し、像対象 Im(f) 、像射 im(f) : Im(f) → B は以下を満たす
Im(f) = Ker(coker(f))
im(f) = ker(coker(f)) : Im(f) → B
余像(coimage)
射 f : A → B の余像(coimage)とは、f の核射 ker(f) の余核のことである。余像は組 <coim(f) | Coim(f)> と表記し、余像対象 Coim(f) 、余像射 coim(f) : A → Coim(f) は以下を満たす
Coim(f) = Coker(ker(f))
coim(f) = coker(ker(f)) : A → Coim(f)

射の像経由分解

核、余核、像、余像の定義から、

coker(f)・im(f) = coker(f)・ker(coker(f)) = 0
coker(f)・f = 0

であり、ker 射の定義から

f = ker(coker(f))・γ = im(f)・γ を満たす射 γ が唯一つ存在する

このような、像を経由する射の一意的分解

f = im(f)・γ

を射 f の像経由分解(factors through the image of f)と呼ぶ。

射の余像経由分解

像経由分解同様に、核、余核、像、余像の定義から、

coim(f)・ker(f) = coker(ker(f))・ker(f) = 0
f・ker(f) = 0

であり、coker 射の定義から

f = δ・coker(ker(f)) = δ・coim(f) を満たす射 δ が唯一つ存在する

このような、余像を経由する射の一意的分解

f = δ・coim(f)

を射 f の余像経由分解(factors through the coimage of f)と呼ぶ。

像経由分解と余像経由分解の同一視:エピ-モニック分解

ここで、

グロタンディークのアーベル圏第二公理

余像対象 Coim(f) から像対象 Im(f) への同型射 cif : Coim(f) → Im(f) がカノニカルに定まる[18]

を仮定した場合、像経由分解と余像経由分解は同一視される[19]

エピ-モニック分解(epi-monic factorization)

射 f : A → B に対して
f = im(f)・cif・coim(f)[20]
というエピ射 coim(f) とモニック射 im(f)[21] への一意的分解[22]が常に可能である。
なお、エピ射 e : A → X とモニック射 m : X → B について同様に f = m・e と分解可能であれば、X Coim(f) Im(f) と射の経由分解の経由対象はすべて同型となる。この任意の射のエピ射とモニック射による一意的分解をエピ-モニック分解(epi-monic factorization)と呼ぶ[23]

射に対して一意的なエピ-モニック分解が可能であることから、射の列 f, g が正合(exact)であればそれは一意的であることが保証される。

アーベル圏の標準分解と正合系列

加法的かつ正合な圏、すなわちアーベル圏を A とする。なお、アーベル圏 A は局所的に小さい(locall small)とする。

射の標準分解(canonical decomposition/factorization)

A は局所的に小さいことから、その任意の対象 X , Y について hom(X , Y) は集合である。

X から Y への任意の射 f ∈ hom(X , Y) についてエピ-モニック分解が可能であることから、f に対して対象 Coim(f) Im(f) が同型を除いて一意的に定まる。さらに im(f) は Im(f) から Y へのモニック射、coim(f) は X から Coim(f) へのエピ射であることから以下が成り立つ

hom(X , Y) を添字とする Y の部分対象のモニック和
hom(X , Y) の元を添字とする Y へのモニック射族(Y の部分対象){ im(f) : Im(f) → Y }f ∈ hom(X , Y)(<Im(f);im(f)>)について、そのモニック和を(∐fIm(f) , { if }f ∈ hom(X , Y) )とする。
このとき任意の im(f) について
im(f) = m・if
に一意的に分解するモニック射 m : ∐fIm(f) → Y が存在する。
hom(X , Y) を添字とする X の商対象のエピ積
hom(X , Y) の元を添字とする X からのエピ射族(X の商対象){ coim(f) : X → Coim(f) }f ∈ hom(X , Y)(<coim(f)|Coim(f)>)について、そのエピ積を(ΠfCoim(f) , { pf }f ∈ hom(X , Y))とする。
このとき、任意の coim(f) について
coim(f) = pf・e
に一意的に分解するエピ射 e : X → ΠfCoim(f) が存在する。

ここで、カノニカルに定まる複積の同型射 u : ΠfCoim(f) → ∐fIm(f) とする。このとき、

m・u・e = m・(Σf if・pf)・e = Σf m・(if・pf)・e ∈ hom(X , Y)

であり、任意の f ∈ hom(X , Y) について

f = (m・if)・(pf・e) : X → Coim(f) → Im(f) → Y

と一意的にエピ射とモニック射に分解した表現ができる。

hom 集合の固有対象(eigen objects)

hom(X , Y) を添字とする Y の部分対象のモニック和(∐fIm(f) , { if }f ∈ hom(X , Y) )の対象 ∐fIm(f) を可能な限りモニック和の縮約をしたもの A∐B∐… の各対象 A , B ,... を hom(X , Y) の固有対象(eigen objects)、A∐B∐… を固有対象からのモニック射族のモニック和と呼ぶこととする。

同様に hom(X , Y) を添字とする X の商対象のエピ積(ΠfCom(f) , { pf }f ∈ hom(X , Y))の対象ΠfCom(f) を可能な限りエピ積の縮約をしたもの AΠBΠ… を固有対象へのエピ射族のエピ積と呼ぶこととする。

脚注

  1. ^ MacLane(1950)
  2. ^ MacLane(1950)
  3. ^ A から Z への射を 0A : A → Z とする。このとき、A への任意の射 f , g : X → A について
    0A・f = 0A・g
    が成り立つとき射 0A を左ゼロ射(left zero morphism)と呼ぶ。Pareigis(1970) p.22 定義より終対象への射は左ゼロ射である。
  4. ^ Z から B への射を 0B : Z → B とする。このとき、B からの任意の射 h , k : B → Y について
    h・0B = k・0B
    が成り立つとき射 0B を右ゼロ射(right zero morphism)と呼ぶ。Pareigis(1970) p.22 定義より始対象からの射は右ゼロ射である。
  5. ^ ゼロ射は加法圏において以下に示す性質を持つ
    (加法圏における特徴)
    加法圏においては射の合成演算 + が定義されるが、ゼロ射はこの + 演算について単位元の役割を果たす。すなわち、任意の f ∈ hom(A,B) について
    f + 0BA = f
    が成り立つ。
  6. ^ 部分対象については以下
  7. ^ A の任意の部分対象 <A1 ; m1> , <A2 ; m2> の最小上界(または結び)<A1;m1> ∨ <A2;m2> とは以下を満たすものをいう
    1. <A1 ; m1> ≦ (<A1;m1> ∨ <A2;m2>) かつ
    <A2 ; m2> ≦ (<A1;m1> ∨ <A2;m2>) ,
    2. <A1 ; m1> ≦ x かつ <A2 ; m2> ≦ x を満たす任意の A の部分対象 x について、
    (<A1;m1> ∨ <A2;m2>) ≦ x が成り立つ。
  8. ^ 商対象については以下
  9. ^ A の任意の商対象 <e1 | A1> , <e2 | A2> の最大下界(または交わり)<e1|A1>∧<e2|A2> とは以下を満たすものをいう
    1.(<e1|A1> ∧ <e2|A2>)≦ <e1 | A1> かつ
    (<e1|A1> ∧ <e2|A2>)≦ <e2 | A2>,
    2. x ≦ <e1 | A1> かつ x ≦ <e2 | A2> を満たす任意の A の商対象 x について、
    x ≦ (<e1|A1> ∧ <e2|A2>) が成り立つ。
  10. ^ 圏の任意の対象への任意のモニック射族に対してモニック和が存在するとき、圏はモニック和を持つと呼ぶ。
  11. ^ つまりモニック和を持てば、圏は結び半束(join-semilattice)構造を内在することになる。同様の考えを押し進め、完備束を内在させたものや、ブール束(可補分配束)を内在させ古典論理を展開する事も考えられる。
  12. ^ 圏の任意の対象からの任意のエピ射族に対してエピ積が存在するとき、圏はエピ積を持つと呼ぶ。
  13. ^ 圏の骨格(skeletal)は取っていないため恒等射ではなく同型射である。圏の骨格を取っているのであればここは恒等射となる。
  14. ^ m は ∐αmα のことだが表記が複雑になるため便宜として m で表す事とする。
  15. ^ モニック和と同様に e は Παeα のことだが表記が複雑になるため便宜として e で表す事とする。
  16. ^ 複積の定義から
    Σαiα・pα = u
    が成り立つ。これは、
    m・u・e
    = m・(Σαiα・pα)・e
    αm・(iα・pα)・e
    と変形可能である。各 α ∈ I について、m・(iα・pα)・e : X → Y であることから、
    m・(iα・pα)・e ∈ hom(X ,Y)
    が成り立つ。なお、エピ-モニック分解が保証されていない加法圏では任意の α ∈ hom(X , Y) が上記のように一意的に分解可能であるとは証明することができない。同様に、添数集合 I と hom(X , Y) の間に一対一対応が存在することも証明できない。
  17. ^ また、エピ-モニック分解が不可能な加法圏では任意の hom(X , Y) についてその任意の射を一意的に経由分解する経由対象である複積
    ΠαAα αAα
    が具体的にどのようなものであるかも分析する事ができない。
  18. ^ 体 F を係数とする線型代数の圏 VectF においては、cif は体 F の元の係数を掛け合わせる操作(係数倍の操作)に当たる。
  19. ^ この第二公理がなければ同一視はできない。なぜならば、f の分解として
    f = m1・e1 = m2・e2
    であり、m1 ≠ m2 であるモニック射、e1 ≠ e2 であるエピ射であるとする。このとき明らかに像経由分解と余像経由分解は同一視できない。すなわち、e1 が coim(f) であるかどうかなどが一意的に定まらない。
  20. ^ 以降、簡単のため同型射 cif を省略して f = im(f)・coim(f) と表すこととする。
  21. ^ 一般に核射はモニック射、余核射はエピ射となるため。
  22. ^ ただし、経由する対象は同型を除いて一意的にしか定まらない。
  23. ^ なお、アーベル圏第二公理によるエピーモニック分解が可能であれば、圏は均整(balanced)となる。なぜならば、圏の射 f : A → B が全単射(bijection、双射)であるとき、Ker(f) と Coker(f) はゼロ対象と同型となることから coim(f) = 1A、im(f) = 1B となり、
    f = im(f)・cif・coim(f) = 1B・cif・1A = cif
    すなわち f は同型射となる。

関連項目

参考文献