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「悪は存在しない」の版間の差分

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『'''悪は存在しない'''』(あくはそんざいしない)は、[[濱口竜介]]監督による2023年製作の日本映画。同年の[[ヴェネツィア国際映画祭]]で[[ヴェネツィア国際映画祭 審査員大賞|銀獅子賞(審査員賞)]]を受賞した作品で<ref name=":0">{{Cite web |title=Biennale Cinema 2023 {{!}} Aku wa sonzai shinai (Evil Does Not Exist) |url=https://www.labiennale.org/en/cinema/2023/venezia-80-competition/aku-wa-sonzai-shinai-evil-does-not-exist |website=La Biennale di Venezia |date=2023-07-06 |access-date=2023-10-12 |language=en}}</ref>、この受賞によって濱口監督は、アメリカの[[アカデミー賞]]と[[映画祭#世界三大映画祭|世界三大映画祭]]のすべてで主要賞の受賞を果たした黒澤明以来2人目の日本人監督となった<ref name="cinemacafe 87430">{{Cite news|url=https://www.cinemacafe.net/article/2023/09/12/87430.html|title=濱口竜介監督「背中を押された」と喜びの声 最新作『悪は存在しない』でヴェネチア銀獅子賞|work=シネマカフェ|publisher=[[イード (企業)|イード]]|date=2023-09-12|accessdate=2023-11-01}}</ref>。106分。
『'''悪は存在しない'''』(あくはそんざいしない)は、[[濱口竜介]]監督による2023年製作の日本映画。同年の[[ヴェネツィア国際映画祭]]で[[ヴェネツィア国際映画祭 審査員大賞|銀獅子賞(審査員賞)]]を受賞した作品で<ref name=":0">{{Cite web |title=Biennale Cinema 2023 {{!}} Aku wa sonzai shinai (Evil Does Not Exist) |url=https://www.labiennale.org/en/cinema/2023/venezia-80-competition/aku-wa-sonzai-shinai-evil-does-not-exist |website=La Biennale di Venezia |date=2023-07-06 |access-date=2023-10-12 |language=en}}</ref>、この受賞によって濱口監督は、アメリカの[[アカデミー賞]]と[[映画祭#世界三大映画祭|世界三大映画祭]]のすべてで主要賞の受賞を果たした黒澤明以来2人目の日本人監督となった<ref name="cinemacafe 87430">{{Cite news|url=https://www.cinemacafe.net/article/2023/09/12/87430.html|title=濱口竜介監督「背中を押された」と喜びの声 最新作『悪は存在しない』でヴェネチア銀獅子賞|work=シネマカフェ|publisher=[[イード (企業)|イード]]|date=2023-09-12|accessdate=2023-11-01}}</ref>。106分。


== 概要 ==
== あらすじ ==
山奥の小さな集落「水挽町」で暮らす寡黙な男・巧と、その一人娘・玲花。集落の人々は美しい森と澄んだ雪解け水に支えられて静かな暮らしを守ってきた。ある日、そこへキャンプ場建設の話がもちこまれる。キャンプ場は東京から多くの観光客を呼び込むかもしれないが、そこに置かれる[[浄化槽]]は、集落が誇りとする自然水を汚染するだろう。そしてこれはコロナ助成金目当てのずさんな計画らしい。ざわめきはじめる集落の人々。
この作品の製作は、濱口の前作『[[ドライブ・マイ・カー (映画)|ドライブ・マイ・カー]]』で作曲をつとめた[[石橋英子]]の依頼から始まっている。石橋は『GIFT』と題する自身のライブ・パフォーマンスのための映像制作を濱口に依頼<ref>{{Cite web |title=Gift, new film by 'Drive My Car' director Ryûsuke Hamaguchi, to world premiere at FFG with Eiko Ishibashi performing a… |url=https://www.worldsoundtrackawards.com/news/gift-new-film-by-drive-my-car-director-ryusuke-hamaguchi-to-world-premiere-at-ffg-with-eiko-ishibashi-performing-a-live-score |website=World Soundtrack Awards |access-date=2023-10-12 |language=en}}</ref><ref name=":0" />。しかし濱口はそうした制作の経験がなく、石橋との協議をかさねるうち、抽象的なイメージ映像のようなものではなく、明確な物語映像を希望していることがわかり、しだいに物語が膨らみ始めたという<ref name=":1">{{Citation|title=Ryûsuke Hamaguchi on Evil Does Not Exist {{!}} NYFF61|url=https://www.youtube.com/watch?v=VCXMbhC794I|language=ja-JP|access-date=2023-10-12}}</ref>。


住民説明会へやってきた事業側の男女に、集落の人々は理を尽くして反論する。この集落はもともと都会からの移住者ばかりだし、ここへ新たに加わりたいときちんと考えた計画なら反対する理由はなにもない。しかしその前に、この土地の人にとって自然水がどんな意味をもつのか、そこで暮らすことがどんな責任を負うことなのか、どうか一度よく考えてほしい。集落の人々のおだやかな姿勢に、事業側の男女は「地元の人は決して愚かではない」と態度を改め、計画のいいかげんさに気づくようになる。
濱口は石橋の仕事場に近い[[八ヶ岳]]をたびたび訪れ、この映画の撮影も多くはそこで行われた。また濱口は集落の人々から森や動物たちについての実践的な知識を数多く習得し、それは劇中に盛り込まれている<ref name=":1" />。また映画に登場する開発計画も、一部は実際に八ヶ岳周辺で説明会が行われた計画からアイデアをとっている<ref name=":1" />。


しかし親会社は、コロナ助成金の申請期限が迫っているし、ガス抜きの説明会が済んだ以上、予定どおりキャンプ場設置をすすめればよいと方針を曲げない。説明会に出た男女は板ばさみとなって困惑し、集落から信頼を得ているらしい巧に協力をあおぐことを思いつく。そしてふたたび集落を訪ねるうち、森と山の自然が人間にとって善でも悪でもなく、ただ人間の世界とは別にそこに並立している存在だとかすかに気づき始める。そんな中、巧の娘・玲花の様子がしだいに変わりはじめる。
本作は2023年夏の[[ヴェネツィア国際映画祭]]を皮切りに各国の主要映画祭で上映されたのち、日本国内では同年11月に広島国際映画祭で初上映され、翌2024年4月から劇場公開<ref>{{Cite news |url=https://fansvoice.jp/2023/11/26/evil-does-not-exist-date/ |title=濱口竜介監督『悪は存在しない』2024年4月26日公開決定!広島国際映画祭にてジャパンプレミア開催! |work=Fan's Voice |date=2023-11-26 |accessdate=2023-12-22}}</ref><ref>{{Cite web|和書 |url=http://hiff.jp/archives/13099/ |title=『悪は存在しない』ジャパンプレミア 上映後には濱口竜介監督やキャストらのトークショーも |website=広島国際映画祭 |date=2023-11-26 |accessdate=2023-12-23}}</ref>。石橋のライブ・パフォーマンス版『GIFT』は、2023年10月18日にベルギーの第50回ゲント国際映画祭でワールド・プレミア上映され<ref>{{Cite interview|language=ja|subject=濱口竜介|subject2=石橋英子|subjectlink2=石橋英子|date=2023-11-10|interviewer=佐藤久理子|title=濱口竜介×石橋英子が語る、映像と音楽の幸福な関係。『GIFT』『悪は存在しない』プロジェクト|url=https://www.cinra.net/article/202311-gift_iwmkr|work=[[CINRA]]|publisher=CINRA, Inc.|access-date=2023-12-22}}</ref><ref>{{Cite web|和書 |url=https://www.be.emb-japan.go.jp/itpr_ja/news_231020.html |title=【大使】第50回ゲント国際映画祭における『GIFT』ワールドプレミア上映およびトークショー |website=在ベルギー日本国大使館 |date=2023-10-30 |accessdate=2023-12-22}}</ref>、11月23日には第24回[[東京フィルメックス]]にて国内初上映されている<ref>{{Cite web|和書 |url=https://filmex.jp/program/ss/ss7.html |title=GIFT / 特別招待作品 |website=第24回 [[東京フィルメックス]] |date=2023 |accessdate=2023-12-22}}</ref>。


== あらすじ ==
== キャスト ==
* 巧:大美賀均
山奥の小さな集落「水挽町」で暮らす寡黙な男・巧([[大美賀均]])と、その一人娘・玲花([[西川玲]])。集落の人々は美しい森と澄んだ雪解け水に支えられて静かな暮らしを守ってきた。ある日、そこへキャンプ場建設の話がもちこまれる。キャンプ場は東京から多くの観光客を呼び込むかもしれないが、そこに置かれる[[浄化槽]]は、集落が誇りとする自然水を汚染するだろう。そしてこれはコロナ助成金目当てのずさんな計画らしい。ざわめきはじめる集落の人々。
* 西川玲花:[[西川玲]]
* 高橋:小坂竜士
* 黛:渋谷采郁
* 梅村:菊池葉月


== 製作の背景 ==
住民説明会へやってきた事業側の男女([[小坂竜士]]・[[渋谷采郁]])に、集落の人々は理を尽くして反論する。この集落はもともと都会からの移住者ばかりだし、ここへ新たに加わりたいときちんと考えた計画なら反対する理由はなにもない。しかしその前に、この土地の人にとって自然水がどんな意味をもつのか、そこで暮らすことがどんな責任を負うことなのか、どうか一度よく考えてほしい。集落の人々のおだやかな姿勢に、事業側の男女は「地元の人は決して愚かではない」と態度を改め、計画のいいかげんさに気づくようになる。
この作品の製作は、濱口の前作『[[ドライブ・マイ・カー (映画)|ドライブ・マイ・カー]]』で作曲をつとめた[[石橋英子]]の依頼から始まっている。石橋は『GIFT』と題する自身のライブ・パフォーマンスのための映像制作を濱口に依頼<ref>{{Cite web |title=Gift, new film by 'Drive My Car' director Ryûsuke Hamaguchi, to world premiere at FFG with Eiko Ishibashi performing a… |url=https://www.worldsoundtrackawards.com/news/gift-new-film-by-drive-my-car-director-ryusuke-hamaguchi-to-world-premiere-at-ffg-with-eiko-ishibashi-performing-a-live-score |website=World Soundtrack Awards |access-date=2023-10-12 |language=en}}</ref><ref name=":0" />。しかし濱口はそうした制作の経験がなく、石橋との協議をかさねるうち、抽象的なイメージ映像のようなものではなく、明確な物語映像を希望していることがわかり、しだいに物語が膨らみ始めたという<ref name=":1">{{Citation|title=Ryûsuke Hamaguchi on Evil Does Not Exist {{!}} NYFF61|url=https://www.youtube.com/watch?v=VCXMbhC794I|language=ja-JP|access-date=2023-10-12}}</ref>。


濱口は石橋の仕事場に近い[[八ヶ岳]]をたびたび訪れ、この映画の撮影も多くはそこで行われた。また濱口は集落の人々から森や動物たちについての実践的な知識を数多く習得し、それは劇中に盛り込まれている<ref name=":1" />。また映画に登場する開発計画も、一部は実際に八ヶ岳周辺で説明会が行われた計画からアイデアをとっている<ref name=":1" />。
しかし親会社は、コロナ助成金の申請期限が迫っているし、ガス抜きの説明会が済んだ以上、予定どおりキャンプ場設置をすすめればよいと方針を曲げない。説明会に出た男女は板ばさみとなって困惑し、集落から信頼を得ているらしい巧に協力をあおぐことを思いつく。そしてふたたび集落を訪ねるうち、森と山の自然が人間にとって善でも悪でもなく、ただ人間の世界とは別にそこに並立している存在だとかすかに気づき始める。そんな中、巧の娘・玲花の様子がしだいに変わりはじめる。

=== スタッフ ===
* プロデューサー:高田聡
* 脚本:濱口竜介
* 撮影:北川喜雄
* 編集:濱口竜介・山崎梓
* 録音:松野泉
* 音楽:[[石橋英子]]

== 封切り ==
本作は2023年夏の[[ヴェネツィア国際映画祭]]を皮切りに各国の主要映画祭で上映されたのち、日本国内では同年11月に広島国際映画祭で初上映され、翌2024年4月から劇場公開<ref>{{Cite news |url=https://fansvoice.jp/2023/11/26/evil-does-not-exist-date/ |title=濱口竜介監督『悪は存在しない』2024年4月26日公開決定!広島国際映画祭にてジャパンプレミア開催! |work=Fan's Voice |date=2023-11-26 |accessdate=2023-12-22}}</ref><ref>{{Cite web|和書 |url=http://hiff.jp/archives/13099/ |title=『悪は存在しない』ジャパンプレミア 上映後には濱口竜介監督やキャストらのトークショーも |website=広島国際映画祭 |date=2023-11-26 |accessdate=2023-12-23}}</ref>。石橋のライブ・パフォーマンス版『GIFT』は、2023年10月18日にベルギーの第50回ゲント国際映画祭でワールド・プレミア上映され<ref>{{Cite interview|language=ja|subject=濱口竜介|subject2=石橋英子|subjectlink2=石橋英子|date=2023-11-10|interviewer=佐藤久理子|title=濱口竜介×石橋英子が語る、映像と音楽の幸福な関係。『GIFT』『悪は存在しない』プロジェクト|url=https://www.cinra.net/article/202311-gift_iwmkr|work=[[CINRA]]|publisher=CINRA, Inc.|access-date=2023-12-22}}</ref><ref>{{Cite web|和書 |url=https://www.be.emb-japan.go.jp/itpr_ja/news_231020.html |title=【大使】第50回ゲント国際映画祭における『GIFT』ワールドプレミア上映およびトークショー |website=在ベルギー日本国大使館 |date=2023-10-30 |accessdate=2023-12-22}}</ref>、11月23日には第24回[[東京フィルメックス]]にて国内初上映されている<ref>{{Cite web|和書 |url=https://filmex.jp/program/ss/ss7.html |title=GIFT / 特別招待作品 |website=第24回 [[東京フィルメックス]] |date=2023 |accessdate=2023-12-22}}</ref>。


== 評価 ==
== 評価 ==
[[ファイル:八ヶ岳~野辺山高原より_-_panoramio.jpg|サムネイル|370x370ピクセル|<small>野辺山高原からのぞむ八ヶ岳(2010年)。映画は主に八ヶ岳周辺など長野県の諏訪地域で撮影された</small><ref>{{Cite web |title=諏訪地域で撮影された映画『悪は存在しない』の第80回ベネチア国際映画祭「銀獅子賞」受賞を祝し、阿部知事からお祝いのメッセージをお贈りしました/長野県 |url=https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoshin/happyou/filmpress0915.html |website=www.pref.nagano.lg.jp |access-date=2023-10-15}}</ref><small>。</small>]]
[[ファイル:八ヶ岳~野辺山高原より_-_panoramio.jpg|サムネイル|370x370ピクセル|<small>野辺山高原からのぞむ八ヶ岳(2010年)。映画は主に八ヶ岳周辺など長野県の諏訪地域で撮影された</small><ref>{{Cite web |title=諏訪地域で撮影された映画『悪は存在しない』の第80回ベネチア国際映画祭「銀獅子賞」受賞を祝し、阿部知事からお祝いのメッセージをお贈りしました/長野県 |url=https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoshin/happyou/filmpress0915.html |website=www.pref.nagano.lg.jp |access-date=2023-10-15}}</ref><small>。</small>]]
この作品はヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞したのち、多くの映画祭に招聘され
この作品はヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞したのち、多くの映画祭に招聘され


とくに2021年に『[[ドライブ・マイ・カー (映画)|ドライブ・マイ・カー]]』がアメリカで高評価をよぶきっかけとなった[[ニューヨーク映画祭]]は、『悪は存在しない』を「予測のつかない映画的体験をもたらす」と評して、ふたたび主要紹介作品のひとつに選び出した<ref>{{Cite web |title=Evil Does Not Exist |url=https://www.filmlinc.org/films/evil-does-not-exist/ |website=Film at Lincoln Center |access-date=2023-10-12 |language=en}}</ref>。
とくに2021年に『ドライブ・マイ・カー』がアメリカで高評価をよぶきっかけとなった[[ニューヨーク映画祭]]は、『悪は存在しない』を「予測のつかない映画的体験をもたらす」と評して、ふたたび主要紹介作品のひとつに選び出した<ref>{{Cite web |title=Evil Does Not Exist |url=https://www.filmlinc.org/films/evil-does-not-exist/ |website=Film at Lincoln Center |access-date=2023-10-12 |language=en}}</ref>。


イギリスの『ガーディアン』紙や、アメリカの 『IndieWire』誌は、都会と自然の対立という昔ながらの問題に安易な解決をゆるさない脚本と、濱口独特の不気味な物語技法があいまってつよい印象を残す、などと評した<ref>{{Cite news |title=Evil Does Not Exist review – Ryu Hamaguchi’s enigmatic eco-parable eschews easy explanation |url=https://www.theguardian.com/film/2023/sep/04/evil-does-not-exist-review-ryu-hamaguchis-enigmatic-eco-parable-eschews-easy-explanation |work=The Guardian |date=2023-09-04 |access-date=2023-10-12 |issn=0261-3077 |language=en-GB |first=Peter |last=Bradshaw}}</ref><ref>{{Cite web |title=‘Evil Does Not Exist’ Review: Ryûsuke Hamaguchi Retreats Post-‘Drive My Car’ Oscars Marathon Into an Eerie Eco-Poem |url=https://www.indiewire.com/criticism/movies/evil-does-not-exist-review-ryusuke-hamaguchi-1234902318/ |website=IndieWire |date=2023-09-05 |access-date=2023-10-12 |language=en-US |first=Ryan |last=Lattanzio}}</ref>。
イギリスの『ガーディアン』紙や、アメリカの 『IndieWire』誌は、都会と自然の対立という昔ながらの問題に安易な解決をゆるさない脚本と、濱口独特の不気味な物語技法があいまってつよい印象を残す、などと評した<ref>{{Cite news |title=Evil Does Not Exist review – Ryu Hamaguchi’s enigmatic eco-parable eschews easy explanation |url=https://www.theguardian.com/film/2023/sep/04/evil-does-not-exist-review-ryu-hamaguchis-enigmatic-eco-parable-eschews-easy-explanation |work=The Guardian |date=2023-09-04 |access-date=2023-10-12 |issn=0261-3077 |language=en-GB |first=Peter |last=Bradshaw}}</ref><ref>{{Cite web |title=‘Evil Does Not Exist’ Review: Ryûsuke Hamaguchi Retreats Post-‘Drive My Car’ Oscars Marathon Into an Eerie Eco-Poem |url=https://www.indiewire.com/criticism/movies/evil-does-not-exist-review-ryusuke-hamaguchi-1234902318/ |website=IndieWire |date=2023-09-05 |access-date=2023-10-12 |language=en-US |first=Ryan |last=Lattanzio}}</ref>。
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* 第28回ケララ国際映画祭{{small|([[:en:International Film Festival of Kerala|IFFK]])}}(2023年) - ゴールデン・クロウ・フェザント賞(最高賞)<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.imdb.com/event/ev0000868/2023/1|title=Kerala International Film Festival - 2023 Awards|website=[[IMDb]]|date=2023|accessdate=2023-12-23}}</ref>
* 第28回ケララ国際映画祭{{small|([[:en:International Film Festival of Kerala|IFFK]])}}(2023年) - ゴールデン・クロウ・フェザント賞(最高賞)<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.imdb.com/event/ev0000868/2023/1|title=Kerala International Film Festival - 2023 Awards|website=[[IMDb]]|date=2023|accessdate=2023-12-23}}</ref>
* 第17回[[アジア・フィルム・アワード]](2024年)- 作品賞、音楽賞<ref>{{Cite web |title=Asia Film Awards: Ryusuke Hamaguchi’s ‘Evil Does Not Exist’ Wins Best Film |url=https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/asia-film-awards-2024-winners-1235846437/ |website=The Hollywood Reporter |date=2024-03-10 |access-date=2024-03-10 |language=en-US |first=Patrick |last=Brzeski}}</ref>
* 第17回[[アジア・フィルム・アワード]](2024年)- 作品賞、音楽賞<ref>{{Cite web |title=Asia Film Awards: Ryusuke Hamaguchi’s ‘Evil Does Not Exist’ Wins Best Film |url=https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/asia-film-awards-2024-winners-1235846437/ |website=The Hollywood Reporter |date=2024-03-10 |access-date=2024-03-10 |language=en-US |first=Patrick |last=Brzeski}}</ref>

== キャスト ==
* 巧:大美賀均
* 西川玲花:[[西川玲]]
* 高橋:小坂竜士
* 黛:渋谷采郁
* 梅村:菊池葉月

== スタッフ ==
* プロデューサー:高田聡
* 脚本:濱口竜介
* 撮影:北川喜雄
* 編集:濱口竜介・山崎梓
* 録音:松野泉
* 音楽:[[石橋英子]]


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2024年3月22日 (金) 11:09時点における版

悪は存在しない』(あくはそんざいしない)は、濱口竜介監督による2023年製作の日本映画。同年のヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞(審査員賞)を受賞した作品で[1]、この受賞によって濱口監督は、アメリカのアカデミー賞世界三大映画祭のすべてで主要賞の受賞を果たした黒澤明以来2人目の日本人監督となった[2]。106分。

あらすじ

山奥の小さな集落「水挽町」で暮らす寡黙な男・巧と、その一人娘・玲花。集落の人々は美しい森と澄んだ雪解け水に支えられて静かな暮らしを守ってきた。ある日、そこへキャンプ場建設の話がもちこまれる。キャンプ場は東京から多くの観光客を呼び込むかもしれないが、そこに置かれる浄化槽は、集落が誇りとする自然水を汚染するだろう。そしてこれはコロナ助成金目当てのずさんな計画らしい。ざわめきはじめる集落の人々。

住民説明会へやってきた事業側の男女に、集落の人々は理を尽くして反論する。この集落はもともと都会からの移住者ばかりだし、ここへ新たに加わりたいときちんと考えた計画なら反対する理由はなにもない。しかしその前に、この土地の人にとって自然水がどんな意味をもつのか、そこで暮らすことがどんな責任を負うことなのか、どうか一度よく考えてほしい。集落の人々のおだやかな姿勢に、事業側の男女は「地元の人は決して愚かではない」と態度を改め、計画のいいかげんさに気づくようになる。

しかし親会社は、コロナ助成金の申請期限が迫っているし、ガス抜きの説明会が済んだ以上、予定どおりキャンプ場設置をすすめればよいと方針を曲げない。説明会に出た男女は板ばさみとなって困惑し、集落から信頼を得ているらしい巧に協力をあおぐことを思いつく。そしてふたたび集落を訪ねるうち、森と山の自然が人間にとって善でも悪でもなく、ただ人間の世界とは別にそこに並立している存在だとかすかに気づき始める。そんな中、巧の娘・玲花の様子がしだいに変わりはじめる。

キャスト

  • 巧:大美賀均
  • 西川玲花:西川玲
  • 高橋:小坂竜士
  • 黛:渋谷采郁
  • 梅村:菊池葉月

製作の背景

この作品の製作は、濱口の前作『ドライブ・マイ・カー』で作曲をつとめた石橋英子の依頼から始まっている。石橋は『GIFT』と題する自身のライブ・パフォーマンスのための映像制作を濱口に依頼[3][1]。しかし濱口はそうした制作の経験がなく、石橋との協議をかさねるうち、抽象的なイメージ映像のようなものではなく、明確な物語映像を希望していることがわかり、しだいに物語が膨らみ始めたという[4]

濱口は石橋の仕事場に近い八ヶ岳をたびたび訪れ、この映画の撮影も多くはそこで行われた。また濱口は集落の人々から森や動物たちについての実践的な知識を数多く習得し、それは劇中に盛り込まれている[4]。また映画に登場する開発計画も、一部は実際に八ヶ岳周辺で説明会が行われた計画からアイデアをとっている[4]

スタッフ

  • プロデューサー:高田聡
  • 脚本:濱口竜介
  • 撮影:北川喜雄
  • 編集:濱口竜介・山崎梓
  • 録音:松野泉
  • 音楽:石橋英子

封切り

本作は2023年夏のヴェネツィア国際映画祭を皮切りに各国の主要映画祭で上映されたのち、日本国内では同年11月に広島国際映画祭で初上映され、翌2024年4月から劇場公開[5][6]。石橋のライブ・パフォーマンス版『GIFT』は、2023年10月18日にベルギーの第50回ゲント国際映画祭でワールド・プレミア上映され[7][8]、11月23日には第24回東京フィルメックスにて国内初上映されている[9]

評価

野辺山高原からのぞむ八ヶ岳(2010年)。映画は主に八ヶ岳周辺など長野県の諏訪地域で撮影された[10]

この作品はヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞したのち、多くの映画祭に招聘された。

とくに2021年に『ドライブ・マイ・カー』がアメリカで高評価をよぶきっかけとなったニューヨーク映画祭は、『悪は存在しない』を「予測のつかない映画的体験をもたらす」と評して、ふたたび主要紹介作品のひとつに選び出した[11]

イギリスの『ガーディアン』紙や、アメリカの 『IndieWire』誌は、都会と自然の対立という昔ながらの問題に安易な解決をゆるさない脚本と、濱口独特の不気味な物語技法があいまってつよい印象を残す、などと評した[12][13]

また英国映画協会は、『ドライブ・マイ・カー』につづく本作で濱口は現代のもっとも偉大な演出者のひとりであることをふたたび証明したと指摘[14]。『ハリウッド・レポーター』誌や『バラエティ』誌も本作に描かれた自然と人間の関係に注目し、それをきわめて繊細・優雅に表現したところに濱口の独自性とすぐれた手腕が示されていると評した[15][16]

2023年10月に行われた第67回BFI ロンドン映画祭のコンペティション部門において、審査員の全員一致で作品賞 (Best Film) を受賞した。審査団は声明で「(この作品は)繊細かつ映画的で、力のこもった演技によって支えられている。 (…) 家族とそのコミュニティに関する美しい肖像であると同時に、自然の再開発をめぐる倫理的課題の複雑さについての考察にもなっている」と述べている[17][18]

受賞

関連項目

脚注

  1. ^ a b Biennale Cinema 2023 | Aku wa sonzai shinai (Evil Does Not Exist)” (英語). La Biennale di Venezia (2023年7月6日). 2023年10月12日閲覧。
  2. ^ “濱口竜介監督「背中を押された」と喜びの声 最新作『悪は存在しない』でヴェネチア銀獅子賞”. シネマカフェ (イード). (2023年9月12日). https://www.cinemacafe.net/article/2023/09/12/87430.html 2023年11月1日閲覧。 
  3. ^ Gift, new film by 'Drive My Car' director Ryûsuke Hamaguchi, to world premiere at FFG with Eiko Ishibashi performing a…” (英語). World Soundtrack Awards. 2023年10月12日閲覧。
  4. ^ a b c (日本語) Ryûsuke Hamaguchi on Evil Does Not Exist | NYFF61, https://www.youtube.com/watch?v=VCXMbhC794I 2023年10月12日閲覧。 
  5. ^ “濱口竜介監督『悪は存在しない』2024年4月26日公開決定!広島国際映画祭にてジャパンプレミア開催!”. Fan's Voice. (2023年11月26日). https://fansvoice.jp/2023/11/26/evil-does-not-exist-date/ 2023年12月22日閲覧。 
  6. ^ 『悪は存在しない』ジャパンプレミア 上映後には濱口竜介監督やキャストらのトークショーも”. 広島国際映画祭 (2023年11月26日). 2023年12月23日閲覧。
  7. ^ 濱口竜介; 石橋英子(インタビュアー:佐藤久理子)「濱口竜介×石橋英子が語る、映像と音楽の幸福な関係。『GIFT』『悪は存在しない』プロジェクト」『CINRA』、CINRA, Inc.、2023年11月10日https://www.cinra.net/article/202311-gift_iwmkr2023年12月22日閲覧 
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外部リンク