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'''YM3526'''(FM Operator type - L、OPL)は[[ヤマハ|日本楽器製造(現・ヤマハ)]]が開発し、[[1984年]][[10月]]に発表され、[[1985年]][[2月]]から外販が開始された[[FM音源]]チップである。[[パーソナルコンピューター]]、[[キャプテンシステム]]・[[文字多重放送]]での使用を目的に製造された<ref name="news_19841031_nikkeisangyo>{{Cite news|和書|title=パソコンも楽器に|newspaper=[[日経産業新聞]]|page=8|date=1984-10-31}}</ref><ref name="news_19841031_dempa>{{Cite news|和書|title=FM音源LSI開発|newspaper=[[電波新聞]]|edition=第7版|pages=2|date=1984-10-31}}</ref>。
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本チップより派生した上位チップを含めて「OPLシリーズ」と呼称される。
本チップより派生した上位チップを含めて「OPLシリーズ」と呼称される。

2023年11月11日 (土) 01:20時点における版

Yamaha YM3526

YM3526(FM Operator type - L、OPL)は日本楽器製造(現・ヤマハ)が開発し、1984年10月に発表され、1985年2月から外販が開始されたFM音源チップである。パーソナルコンピューターキャプテンシステム文字多重放送での使用を目的に製造された[1][2]

本チップより派生した上位チップを含めて「OPLシリーズ」と呼称される。 非常に多くのバリエーションが派生し、以後のほとんどのローエンド向けFM音源の基礎となった。

国立科学博物館の2019年度重要科学技術史資料(未来技術遺産)に登録された[3][4]

概要

2オペレーター、同時発音数最大9音のFM音源に加え、プログラマブルタイマーを2系統内蔵する。 キャプテン端末および文字放送受信機向けとして開発され、キャプテン端末の音源に関する仕様「メロディ音6音・リズム音5音同時出力」を満たす発音モードを搭載している[1][2]

ADSRパラメータは同時期のYM2203(OPN)と比べて簡略化されており、持続音モードと減衰音モードを選択することで、前者ではサスティン・レイトがゼロに固定され、後者ではリリース・レイトが約7(マスタークロックに3.58MHzを印加した場合の相当値)に固定される。レジスタ上のリリース・レイトは、前者ではリリース・レイト、後者ではサスティン・レイトとして機能する。

エンベロープパラメータは発音中に任意に設定可能であるため、キーON時に減衰音モードとしてサスティン・レイトを指定し、キーOFF時に持続音モードに変更してリリース・レイトを指定することで、YM2151(OPM)やYM2203(OPN)と同じようなエンベロープの生成が可能である。

動作モード

OPLシリーズの特徴として、キャプテンシステム端末仕様・文字多重放送受信端末仕様に適合するためのリズム音モードを有することが挙げられる。

これは、一部のチャンネルを1オペレータごとに分割、さらに内蔵のノイズジェネレータを合成することで、バスドラム、スネアドラム、タムタム、ハイハット、トップシンバルの5種類のリズム音を発生させる物である。

リズム音として使用されるチャンネルについても、リズム音に適した音色データをユーザーが設定する必要がある。また、発音する音程(周波数)も楽音と全く同様に指定するが、スネアドラムとハイハット、タムタムとトップシンバルは周波数レジスタを共有しているため、一つの周波数値(F-Number)でそれぞれの音色に最適な音程となるように倍率設定値(Multiple Level)を設定する。

バスドラムについては、音色設定も周波数設定も楽音用チャンネルと全く同様で、単にノートON/OFFを設定するフラグの位置が変わるだけなので、楽音用の音色と周波数値を設定することで楽音として使用する事もできる。[注 1]

このような使い方をする場合、当然バスドラム用チャンネルはバスドラムとしては使用できなくなるため、バスドラムを使用しない、またはタムタム用チャンネルの音色と周波数の設定によってバスドラムの代用とするなどの運用が要求される。

したがって、実運用上は以下の3つの動作モードを持っていると言える。

  • リズム音モード有効:メロディ6音+リズム5音
  • リズム音モード有効:メロディ7音+リズム4音
  • リズム音モード無効:メロディ9音

この特性は、後続のOPLシリーズにも引き継がれているが、同様の仕組みのリズム音モードを持つOPLL系では、リズム音モード用の音色をユーザーが設定できないため、大幅に使い勝手が異なる。

採用例

派生品

  • Y8950 (MSX-AUDIO) MSX2規格で使われることを目的に開発されたFM音源チップ。FM音源部はYM3526と同一仕様でADPCM機能を追加したもの[8]
  • YM2413 (OPLL) YM3526と同様にキャプテン・文字放送向けに作られたFM音源チップで、それに対応した発音モードを持つ[9][10][11]。キャプテン・文字放送で使われる音色を含むメロディ15種類・リズム5音色の内蔵音色とD/Aコンバーターを内蔵した[11]コスト削減版で、その性質からキャプテン端末・文字放送受信機以外に幅広い用途において使われた[5]。定義できる音色は1音色分のみ[11][12]
  • YM3812 (OPL2) YM3526と後方互換性を持つFM音源チップで、変調の原波形を4種類から選べるようになった[13]
  • YMF262 (OPL3) OPL2を2つ分内蔵し、さらに2チャンネルを束ねて4オペレータとして使用するモードが追加された。主にPC向けに使われ、多くのバリエーションを生んだ。1994年時点でIBMパソコンIBMパソコン互換機用のサウンドボードの約9割に採用されており、1993年には約600万個を売り上げた[14]

脚注

注釈

  1. ^ 東亜プラン「TATSUJIN」において、リズム音モードのバスドラムのチャンネルを使用してベースパートを鳴らしている例がある。

出典

  1. ^ a b 「パソコンも楽器に」『日経産業新聞』1984年10月31日、8面。
  2. ^ a b 「FM音源LSI開発」『電波新聞』1984年10月31日、第7版、2面。
  3. ^ 国立科学博物館が登録する重要科学技術史資料 未来技術遺産に、電子オルガン、シンセサイザー、FM音源LSIの3件が登録』(プレスリリース)ヤマハ株式会社、2019年9月3日。オリジナルの2019年9月5日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20190905052038/https://www.yamaha.com/ja/news_release/2019/19090301/2023年10月26日閲覧 
  4. ^ マルチメディアや携帯電話に高音質なメロディー音をもたらしたFM音源チップ』(プレスリリース)産業技術史資料情報センター、2019年。オリジナルの2019年9月4日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20190904015328/http://sts.kahaku.go.jp/material/2019pdf/no285.pdf2023年10月26日閲覧 
  5. ^ a b PortaFM User's Guide v1.105” (英語). Plogue (2022年11月21日). 2023年10月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月17日閲覧。
  6. ^ なるお (2018年10月24日). “ニチブツ・ゲームミュージック変遷記 後編”. ゲーム文化保存研究所. 2019年5月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月25日閲覧。
  7. ^ ででお (2020年11月19日). “『バブルボブル 4 フレンズ すかるもんすたの逆襲』サウンドインタビュー。「いわゆるチップチューンサウンドにはしたくなかった」”. ファミ通.com. 2020年11月19日時点のオリジナルよりアーカイブ2023年10月25日閲覧。
  8. ^ Y8950 APPLICATON MANUAL (MSX-AUDIO). ヤマハ 
  9. ^ 「日本楽器が音源用LSI」『日経産業新聞』1986年6月4日、9面。
  10. ^ 「日本楽器が来月から販売」『電波新聞』1986年6月4日、第7版、2面。
  11. ^ a b c 「メロディ15音色,リズム5音色を内蔵したFM音源LSI」『月刊アスキー』1986年8月号、アスキー、105頁、doi:10.11501/3250703 
  12. ^ 『YM2413 FM OPERATOR TYPE-LL(OPLL) アプリケーションマニュアル』日本楽器製造。 
  13. ^ YM3812 FM OPERATOR TYPE-L(OPLII) APPLICATON MANUAL. ヤマハ 
  14. ^ 「ヤマハ、省エネ型開発──ノートパソコンIC、大きさ2分の1以下。」『日経産業新聞』1994年6月22日、5面。