「2の補数」の版間の差分
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2の補数表現は[[コンピュータ]]の分野において、[[整数型#固定長|固定長]]の[[符号 (数学)|符号]]付きの[[整数型]]や[[固定小数点数]]の表現に利用されている。 |
2の補数表現は[[コンピュータ]]の分野において、[[整数型#固定長|固定長]]の[[符号 (数学)|符号]]付きの[[整数型]]や[[固定小数点数]]の表現に利用されている。 |
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== 計算例 == |
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== IT技術者向けの説明 == |
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「[[基数]]の補数」という概念があるが、それの2進法版である。 |
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=== 補数であることの確認 === |
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例えば、8桁の2進数「10010110」に対する2の補数は「1101010」である<ref name="e-words" />。それらを足し合わせると(次のように)ちょうど9桁の「100000000」となるからである<ref name="e-words" />。 |
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例えば、4桁の[[二進数]] {{math2|1=0010{{sub|2}} (= 2)}} に対する2の補数は {{math|1110{{sub|2}}}} である。実際、これらを[[加法|足し算]]は以下のようになる: |
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:<math display="block"> |
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\begin{array}{lrrrrr} |
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& & 0 & 0 & 1 & 0 \\ |
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{}+{} & & 1 & 1 & 1 & 0 \\ |
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\hline |
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& \cancel{1} & 0 & 0 & 0 & 0 |
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\end{array} |
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</math> |
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結果は {{math2|1=10000{{sub|2}} = 2{{sup|4}} = 16}} になっており、{{math|1110{{sub|2}}}} が {{math|0010{{sub|2}}}} の {{math2|1=10000{{sub|2}}}} に対する補数になっていることが確かめられる。また5桁目以降を無視し下4桁だけ取り出せば、結果は {{math|0000{{sub|2}}}} となる。つまり、{{math|0010{{sub|2}}}} にその2の補数 {{math|1110{{sub|2}}}} を足すということは {{math|0010}} から {{math|0010}} 自身を引くということと同じ意味を持つ。言い換えれば、 {{math2|1110{{sub|2}}}} は負数 {{math|−2}} を表している。 |
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=== 引き算と補数の足し算の比較 === |
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10010110 |
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+) 1101010 |
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例えば、二進数 {{math2|1=0101{{sub|2}} (= 5)}} から二進数 {{math2|1=0011{{sub|2}} (= 3)}} を引く場合、以下のように計算できる: |
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:<math display="block"> |
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& & 0 & 1 & 0 & 1 \\ |
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{}-{} & & 0 & 0 & 1 & 1 \\ |
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& & 0 & 0 & 1 & 0 |
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\end{array} |
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一方、二進数 {{math|0011{{sub|2}}}} の2の補数 {{math|1101{{sub|2}}}} を足す計算は、以下のようになる: |
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:<math display="block"> |
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\begin{array}{lrrrrr} |
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& & 0 & 1 & 0 & 1 \\ |
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{}+{} & & 1 & 1 & 0 & 1 \\ |
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\hline |
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& \cancel{1} & 0 & 0 & 1 & 0 |
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\end{array} |
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</math> |
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5桁目以降を無視し、下4桁を取り出せばこちらも結果は {{math2|1=0010{{sub|2}} (= 2)}} になり、引き算の場合と一致する。また、{{math|1101{{sub|2}}}} は負数 {{math|−3}} を表していることが分かる。 |
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2の補数は[[CPU]]内部で負の整数を表現するためや、その[[加算器]]で減算をするために使われる<ref name="e-words">IT用語辞典e-words【2の補数】[https://e-words.jp/w/2の補数.html]</ref>。 |
2の補数は[[CPU]]内部で負の整数を表現するためや、その[[加算器]]で減算をするために使われる<ref name="e-words">IT用語辞典e-words【2の補数】[https://e-words.jp/w/2の補数.html]</ref>。 |
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== 負の数の表現 == |
== 負の数の表現 == |
2023年5月13日 (土) 08:15時点における版
数 x とその2の補数 xc を二進法で表せば、2の補数 xc は x との和が n + 1 桁に繰り上がる最小の数といえる(例:24 = 100002 = (1111 + 1)2 について[注 2]、510 = 01012 に対応する2の補数は 1110 = 10112 = (1111 − 0101 + 1)2)。
2の補数を得る手順は、基数の補数および減基数の補数の定義から、1の補数に 1 を足す操作となる。1の補数は二進表示された数の各位の値(ビット)を 0 から 1、また 1 から 0 に置き換える操作(ビット反転)によって得られるため(例:0101 → 1010)、2の補数はしばしば元の数にビット反転して1を足したものとして定義される。
ある数の2の補数を反数と見なせば、二進法において決まった桁数を持った数をそれぞれ非負の数と負の数に対応づけられる(#負の数の表現)。 特に n 桁の二進数について 0 から 2n−1 − 1(例:n = 8 なら 0 から 127)の範囲で符号なし表現と一致させたものは
2の補数表現はコンピュータの分野において、固定長の符号付きの整数型や固定小数点数の表現に利用されている。
計算例
補数であることの確認
例えば、4桁の二進数 00102 (= 2) に対する2の補数は 11102 である。実際、これらを足し算は以下のようになる:
結果は 100002 = 24 = 16 になっており、11102 が 00102 の 100002 に対する補数になっていることが確かめられる。また5桁目以降を無視し下4桁だけ取り出せば、結果は 00002 となる。つまり、00102 にその2の補数 11102 を足すということは 0010 から 0010 自身を引くということと同じ意味を持つ。言い換えれば、 11102 は負数 −2 を表している。
引き算と補数の足し算の比較
例えば、二進数 01012 (= 5) から二進数 00112 (= 3) を引く場合、以下のように計算できる:
一方、二進数 00112 の2の補数 11012 を足す計算は、以下のようになる:
5桁目以降を無視し、下4桁を取り出せばこちらも結果は 00102 (= 2) になり、引き算の場合と一致する。また、11012 は負数 −3 を表していることが分かる。
負の数の表現
2の補数を用いて、二進法で表された数(二進数)を負の整数に対応づけられる。2の補数の定義より、n 桁[注 3]の二進数 x とその補数 xc は以下の関係を満たす[7]:
冪 2n の倍数を 0 と同一視すれば、上記の補数の関係は 2n を法とする合同式に置き換えられる[8]:
これは x の補数 xc を x の反数 −x と見なすことを意味する。すなわち、数 y から x を引く操作は、数 y と補数 xc のたし算に置き換えられる[9][10]:
同様に反数 −x のかけ算は補数の積に置き換えられる[10]:
2の補数表現
#負の数の表現節の方法で負の数の計算を行えるが、具体的な数値計算を行うには、どの二進数がどの負の数を表すかという対応関係を定義しなければならない。0 から 2n−1 − 1 までの非負整数をそのまま通常の位取り記数法における二進表示、
に対応づければ、これらの数の補数として負の整数に対する2の補数表現が得られる:
具体例として、n = 4 桁[注 3]の二進数における対応表を示す:
対応する整数 | 二進数 | 対応する整数 | 二進数 |
---|---|---|---|
0 | 00002 | - | - |
1 | 00012 | −1 | 11112 |
2 | 00102 | −2 | 11102 |
3 | 00112 | −3 | 11012 |
4 | 01002 | −4 | 11002 |
5 | 01012 | −5 | 10112 |
6 | 01102 | −6 | 10102 |
7 | 01112 | −7 | 10012 |
- | - | −8 | 10002 |
結局、n 桁の二進数の k + 1 桁目の値を bk ∈ {0, 1} とすれば、2の補数表現は以下のように表せる[11]:
また、上記の数の補数は以下のように表せる:
等比数列の和 を用いれば、上記の補数は以下のようにも表せる[11]:
これは結局、元の数に負符号を付けた形となっている(ただし元の数が −2n−1 の場合は算術オーバーフローが発生する。オーバーフローをチェックせずラップアラウンドする場合、−2n−1 自身へ写る[注 4])。
2の補数表現の性質
2の補数で表される数は、対応する二進数表示の最上位の値 bn−1 が 0 なら非負の値を取り、1 なら負の値を取る。すなわち、負値か非負値かの判定は二進数の最上位の桁を見るだけでできる。
2の補数表現において、−1 は常にすべての位の値が 1 の二進数 111...112 に対応づけられる。従って、数をビット列とみなせば、ビット列 x とそのビットを反転[注 5]させた fx は常に以下を満たす:
上記より、x の2の補数は xc = fx + 1 と表せる。従って減法は、
と書き換えられる。
x の n 桁の二進数表示の下位 m 桁がすべて 0 だった場合、桁上りによって下位 m 桁が反転するため、その2の補数 fx + 1 の下位 m 桁も 0 となり、m + 1 桁目まで一致する。また2の補数の上位 n − (m + 1) 桁は、桁上りが生じないため、ビット反転 fx の上位 n − (m + 1) に一致する。例えば x = 01002 のビット反転は fx = 10112 であり、2の補数は fx + 1 = 11002 となる。同様に、10002 および 00002 のビット反転はそれぞれ 01112, 11112 であり、2の補数はそれぞれ 10002, 00002 となる。
脚注
注釈
- ^ 三進法における減基数の補数(基数マイナス1の補数)も「2の補数」と呼ばれるが(補数#呼称を参照)、本項では扱わない。
- ^ 下付きの添字は位取り記数法の基数を表す。
- ^ a b ここでは n 桁目の値が 0 となるものも n 桁の数と呼んでいる。例えば 0001 は 4 桁の数である。
- ^ 実際、Javaの
java.lang.Math.abs(int)
などは符号付き整数型の最小値に対して引数の値をそのまま結果として与える[12]。また、組み込みの整数演算は算術オーバーフローを検出しない[13]。一方でC言語やC++において、2の補数表現による符号付き整数の最小値(例:INT_MIN
)に単項マイナス演算子を作用させる(例:-INT_MIN
)と、汎整数拡張により結果の型がオペランドの型より大きくなる場合を除き、算術オーバーフローが発生する。符号付き整数の算術オーバーフローは未定義動作を引き起こす。算術オーバーフローの例に関しては例えば INT32-C を参照。 - ^ ここでビット反転とは各ビットに対する否定演算を指す。すなわち入力が 0 なら 1 を出力し、入力が 1 なら 0 を出力する。
出典
- ^ JIS X 0005:2002 2002, 05.08.04 2の補数.
- ^ ISO/IEC 2382:2015 2015, 2. Terms and definition. 2121100. twos complement.
- ^ JIS X 0005:2002 2002, 05.08.02 基数の補数.
- ^ ISO/IEC 2382:2015 2015, 2. Terms and definition. 2121098. radix complement.
- ^ JIS X 0005:2002 2002, 05.08.01 補数.
- ^ ISO/IEC 2382:2015 2015, 2. Terms and definition. 2121097. complement.
- ^ 水谷『数の補数表現』, pp. 2–3, 2.2 符号ビットと 2 の補数.
- ^ 西村『論理(スイッチング)回路と計算』, p. 14, 2の補数表現でなぜうまく行くのか?.
- ^ 水谷『数の補数表現』, p. 2, 2.1 補数.
- ^ a b 中野『代数入門』, p. 18, 5.1 合同式, 命題5.2.
- ^ a b 水谷『数の補数表現』, p. 3, 2.2 符号ビットと 2 の補数.
- ^ Java SE & JDK API Specification, java.lang.Math#abs(int).
- ^ Java Language Specification, 4.2.2. Integer Operations.
参考文献
- 日本規格協会、情報処理学会 編『JIS X 0005:2002 情報処理用語(データの表現)』日本規格協会、2002年8月31日。
- ISO; IEC, eds (2015-05). ISO/IEC 2382:2015 Information technology — Vocabulary. ISO/IEC
- 水谷, 正大. "数の補数表現 ― コンピュータは数値をどのように保持しているのか?" (PDF). www.edu.tuis.ac.jp/~mackin. 2023年5月11日閲覧。
- 西村, 進. "基礎情報処理 ― 論理(スイッチング)回路と計算" (PDF). www.math.kyoto-u.ac.jp/~susumu. 2023年5月11日閲覧。
- 中野, 伸 (1 April 2022). "代数入門" (PDF). pc1.math.gakushuin.ac.jp/~shin. 2023年5月11日閲覧。
- Seacord, Robert. "INT32-C. Ensure that operations on signed integers do not result in overflow". wiki.sei.cmu.edu. 2023年5月13日閲覧。
- "Chapter 4. Types, Values, and Variables ― Java Language Specification". docs.oracle.com/javase/specs/jls/. Oracle. 3 March 2023. 2023年5月13日閲覧。
- "Class Math ― Java SE 20 & JDK 20". docs.oracle.com/en/java/javase/20/docs/api/. Oracle. 2023年5月13日閲覧。