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石井直一（いしいなおいち、1926年 - 1987年9月4日^[1]）は、日本の大蔵官僚。

概要

1926年、東京府の農家の次男に出生。1946年11月、旧制中学卒で大蔵省入省。理由は「ソロバンが好きだったので、数字を扱う仕事につきたい」ためであったという。入省後に明治大学専門部商科（現・明治大学商学部）の夜間学部に入り、1949年卒業^[2]。入省から一貫して本省主計局に勤務する。主計局勤務の頃は、本省に泊まりづめで勤務し、折り畳み式の簡易ベッドを持ち込んでいた。夫人とも3日に1度、替えの下着を届けに来た時に顔を合わす程度で、後輩のノンキャリアからは「大蔵省でいちばん働いた人」と評された^[3]。1979年、東北財務局長として初めて本省を離れる。

1981年6月、印刷局長に抜擢される^[4]。一般職員のノンキャリアが出世して課長補佐どまりである中で、史上初めて私大出身者、ノンキャリア組から、本省局長ではなく現業機関である外局の長とはいえ、局長が誕生した^[5]。当時の渡辺美智雄大蔵大臣、山口光秀官房長らによる大抜擢人事として話題になった。この背景には、昇進・昇給や福利厚生の面での省内差別にノンキャリアの一般職員から不満の声が高まり、職員組合から官房長に対して超過勤務の改善を要求するなど、突き上げが頻発していたことが挙げられる^[6]。石井の栄進はこの突き上げに対する応急処置であるとノンキャリアには見られており、若手の間では「石井さんほどの人でやっと局長なのなら、のんびり仕事をしたほうが楽だ」という思いが大きかったという^[7]。当の石井は、取材に対して「嬉しいというより大変」「落ち着かない」と語っていた^[8]。

1982年の退官後は、放送大学学園理事や日本カードシステム社長などを務めた。

職歴

1946年　入省（主計局配属）
1956年　主計局総務課
1957年　主計局専売・電信電話係長
1959年　主計局公共事業第二係長
1961年　主計局公共事業第一係長
1964年　主計局主計官補佐（文部第一・二係担当）
1965年　主計局総務課長補佐
1969年　主計局主計官補佐（公共事業第三係主査）
1972年　主計局主計監査官
1975年　主計局主計官（総務課（予算総括担当））
1977年　主計局司計課長
1979年　東北財務局長
1981年　印刷局長
1982年　退官

^[9]

脚注

^ 『朝日新聞』（東京本社発行）1987年9月5日夕刊、11面の訃報より。
^ 『大蔵省研究』官庁ニュース社、1979年、301頁
^ 神, pp. 156–157.
^ 神, p. 145.
^ 神, p. 146.
^ 神, pp. 153–154.
^ 神, p. 156.
^ 神, pp. 145–146.
^ 神, p. 150.

参考文献

神一行『大蔵官僚超エリート集団の人脈と野望』講談社文庫、1986年10月15日。ISBN 4-06-183861-X。
『エコノミスト　第 64 巻、第 47～55 号』（1986　毎日新聞社）

[1] 『朝日新聞』（東京本社発行）1987年9月5日夕刊、11面の訃報より。

[2] 『大蔵省研究』官庁ニュース社、1979年、301頁

[FOOTNOTE神156–157-3] 神, pp. 156–157.

[FOOTNOTE神145-4] 神, p. 145.

[FOOTNOTE神146-5] 神, p. 146.

[FOOTNOTE神153–154-6] 神, pp. 153–154.

[FOOTNOTE神156-7] 神, p. 156.

[FOOTNOTE神145–146-8] 神, pp. 145–146.

[FOOTNOTE神150-9] 神, p. 150.

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[9]

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 年、[[東京府]]の農家の次男に出生。1946年11月、[[旧制中学校|旧制中学]]卒で[[大蔵省]]入省。理由は「ソロバンが好きだったので、数字を扱う仕事につきたい」ためであったという。入省後に[[明治大学]][[大学専門部 (旧制)|専門部]]商科（現・[[明治大学商学部]]）の[[夜間学部]]に入り、1949年 卒業<ref>『大蔵省研究』官庁ニュース社、1979年、301頁</ref>。入省から一貫して本省[[主計局]]に勤務する。主計局勤務の頃は、本省に泊まりづめで勤務し、折り畳み式の簡易ベッドを持ち込んでいた。夫人とも3日に1度、替えの下着を届けに来た時に顔を合わす程度で、後輩のノンキャリアからは「大蔵省でいちばん働いた人」と評された{{Sfn|神|pp=156-157}}。1979年、[[東北財務局]]長として初めて本省を離れる。
-年6月、[[国立印刷局#歴代局長・理事長等|印刷局長]]に抜擢される{{Sfn|神|p=145}}。一般職員のノンキャリアが出世して[[課長|課長補佐]]どまりである中で、史上初めて私大出身者、ノンキャリア組から、本省局長ではなく[[現業]]機関である外局の長とはいえ、局長が誕生した{{Sfn|神|p=146}}。当時の[[渡辺美智雄]][[日本の大蔵大臣・財務大臣一覧|大蔵大臣]]、[[山口光秀]][[財務省大臣官房#官房長|官房長]]らによる大抜擢人事として話題になった。この背景には、昇進・昇給や福利厚生の面での省内差別にノンキャリアの一般職員から不満の声が高まり、職員組合から官房長に対して超過勤務の改善を要求するなど、突き上げが頻発していたことが挙げられる{{Sfn|神|pp=153-154}}。石井の栄進はこの突き上げに対する応急処置であるとノンキャリアには見られており、若手の間では「石井さんほどの人でやっと局長なのなら、のんびり仕事をしたほうが楽だ」という思いが大きかったという{{Sfn|神|p=156}}。当の石井は、取材に対して「嬉しいというより大変」「落ち着かない」と語っていた{{Sfn|神|pp=145-146}}。
+年6月、[[国立印刷局#歴代局長・理事長等|印刷局長]]に抜擢される{{Sfn|神|p=145}}。一般職員のノンキャリアが出世して[[課長|課長補佐]]どまりである中で、史上初めて私大出身者、ノンキャリア組から、本省局長ではなく[[現業]]機関である外局の長とはいえ、局長が誕生した{{Sfn|神|p=146}}。当時の[[渡辺美智雄]][[財務大臣 (日本)|大蔵大臣]]、[[山口光秀]][[財務省大臣官房#官房長|官房長]]らによる大抜擢人事として話題になった。この背景には、昇進・昇給や福利厚生の面での省内差別にノンキャリアの一般職員から不満の声が高まり、職員組合から官房長に対して超過勤務の改善を要求するなど、突き上げが頻発していたことが挙げられる{{Sfn|神|pp=153-154}}。石井の栄進はこの突き上げに対する応急処置であるとノンキャリアには見られており、若手の間では「石井さんほどの人でやっと局長なのなら、のんびり仕事をしたほうが楽だ」という思いが大きかったという{{Sfn|神|p=156}}。当の石井は、取材に対して「嬉しいというより大変」「落ち着かない」と語っていた{{Sfn|神|pp=145-146}}。
 年の退官後は、[[放送大学学園]]理事や日本カードシステム社長などを務めた。

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