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'''YM2413''' (FM Operator Type-LL、OPLL)は[[1986年]][[6月]]<!-- 注:電波新聞の記事には(1986年)6月3日と記載されている。CQ出版社『インターフェース』誌1989年1月号(doi=10.11501/3275451)広企19ページに掲載されたヤマハの広告や、ヤマハの社史『ヤマハ100年史』に掲載された年表においては発表月である1986年6月をYM2413の起点として扱っている。 -->に発表され、1986年[[7月]]からサンプル出荷が開始された、[[ヤマハ|日本楽器製造(後のヤマハ)]]が開発した2オペレーターの[[FM音源]]LSIである<ref name="news_19860604_nikkeisangyo">{{Cite news|和書|title=日本楽器が音源用LSI|newspaper=[[日経産業新聞]]|page=9|date=1986-06-04}}<!-- 注:サンプル出荷日が(1986年)7月1日と記載。 --></ref><ref name="news_19860604_dempa">{{Cite news|和書|title=日本楽器が来月から販売|newspaper=[[電波新聞]]|edition=第7版|page=2|date=1986-06-04}}</ref><ref name="press_198606_yamaha">{{Cite press release|language=ja|title=本格通信用LSI「YM3405」など|publisher=日本楽器製造株式会社|date=1986-06|url=https://network.yamaha.com/value/nw20th/download/release_ym3405.pdf|accessdate=2023-10-17|archive-url=https://web.archive.org/web/20231008092157/https://network.yamaha.com/value/nw20th/download/release_ym3405.pdf|archive-date=2023-10-08}}</ref><ref>{{Cite Web|和書|title=サウンドジェネレータLSI|author=ヤマハ|url=http://www.yamaha.co.jp/product/lsi/prod/sgl/index.html|archiveurl=https://web.archive.org/web/20010512113739/http://www.yamaha.co.jp/product/lsi/prod/sgl/index.html|archivedate=2001-05-12|url-status=dead|url-status-date=2023-10-31|website=YAMAHA LSI|accessdate=2023-10-31}}</ref>。
'''YM2413''' (Operator Type-LL、OPLL) は[[1987年]]に[[ヤマハ]]が開発した[[モノフォニック]]2オペレーターの[[FM音源]]チップである。


[[文字多重放送|文字放送]]受信機・[[キャプテンシステム|キャプテン]]端末での用途を目的に開発された{{R|news_19860604_nikkeisangyo}}{{R|news_19860604_dempa}}{{R|press_198606_yamaha}}{{R|news_198608_ascii}}<!-- 注:BitsaversにアーカイブされたYM2413のデータシートには1986年4月発行のものが存在している{{Cite Web|和書|title=YM2413 FM OPERATOR TYPE-LL (OPLL)|author=日本楽器製造|url=http://bitsavers.org/components/yamaha/YM2413_198604.pdf|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210927002825/http://bitsavers.org/components/yamaha/YM2413_198604.pdf|archivedate=2021-09-17|website=Bitsavers|accessdate=2024-03-04}}。 -->。発売当時のサンプル出荷価格は、1個3000円{{R|news_19860604_nikkeisangyo}}{{R|news_19860604_dempa}}<ref name="news_198608_ascii">{{Cite journal|和書|doi=10.11501/3250703|journal=[[月刊アスキー]]|title=メロディ15音色,リズム5音色を内蔵したFM音源LSI|publisher=[[メディアリーヴス|アスキー]]|issue=1986年8月号|page=105}}</ref>。
FM音源9チャンネル同時発音モードとノイズジェネレータを併用しリズム音を生成するFM音源6チャンネル+リズム音源5チャンネル同時発音モードが用意されている。


== 概要 ==
== 概要 ==
日本の文字多重放送および、日本の[[ビデオテックス]]「キャプテン」のハイブリッド方式{{efn2|文字情報を符号化して送信されたものを受信機側で解釈して表示する「コード方式」と、文字や図形を細かいパターンに分解して送信する「パターン方式」の両方の性質を併せ持つ情報の伝送方式のこと<ref name="nikkei_19831022">{{Cite news|和書|title=郵政省と電電 新キャプテン完成──ハイブリッド方式で本番向き|newspaper=[[日本経済新聞]]|edition=朝刊|page=7|date=1983-10-22}}</ref><ref name="asahi_19851210">{{Cite news|和書|title=第2世代の文字多重放送 効率良い方式を実用化|newspaper=[[朝日新聞]]|edition=夕刊|page=4|date=1985-12-10}}</ref>。符号に含まれている文字情報は送信速度の速いコード方式で送信し、符号に含まれていない文字情報はパターン方式で送信するのが特徴{{R|asahi_19851210}}。}}による規格([[:en:JTES|JTES]]、CAPTAIN PLPS)には符号化された楽譜データを再生する機能が盛り込まれており、共通する音符符号化方式<!-- 注:「音声符号化」の打ち間違えではない。「音符符号化」は楽譜情報の符号化を指している{{R|journal_198506_ascii}}。 -->{{efn2|[[日本テレビ放送網|日本テレビ]]・[[京王技研工業]]・[[沖電気工業]]・[[日本電信電話公社|電電公社]]が開発した音符符号化方式「MUSCOT('''MUS'''ic note '''CO'''ding and '''T'''ransmisson technology)」<ref name="mainichi_19840207">{{Cite news|和書|title=音楽つき文字多重放送放送開発 日本テレビ、世界初の快挙|newspaper=[[毎日新聞]]|page=5|edition=夕刊|date=1984-02-07}}</ref><ref name="journal_198506_ascii">{{Cite journal|和書|doi=10.11501/3250689|journal=月刊アスキー|author=花木森房|title=ニューメディア実践シリーズ MUSCOT&MUSICAL 第1回|publisher=アスキー|issue=1985年6月号|pages=185-188}}</ref><ref name="journal_198509_ascii">{{Cite journal|和書|doi=10.11501/3250692|journal=月刊アスキー|author=花木森房|title=ニューメディア実践シリーズ MUSCOT&MUSICAL 第4回|publisher=アスキー|issue=1985年9月号|pages=214-217}}</ref><ref name="journal_198511_korg">{{Cite journal|和書|ndid=AN10170875|author=広野千春|title=文字多重放送/ビデオテックスにおける付加音情報|journal=音楽音響研究会資料|volume=4|issue=5|publisher=日本音響学会|date=1985-11-16|pages=15-21}}</ref>。}}を採用していた{{R|journal_198509_ascii}}{{R|journal_198511_korg}}<ref name="journal_198709_newmediaandmusic">{{Cite journal|和書|author=岡兼太郎|title=ニューメディアと音楽|editor=音楽情報研究会|journal=コンピュータと音楽(コンピュータ・サイエンス誌 bit別冊)|publisher=共立出版|date=1987-09|doi=10.11501/3299536|ncid=BN03936860|pages=75-83}}</ref>{{efn2|実験段階のキャプテンでは伝送方式にパターン方式を採用しており{{R|nikkei_19831022}}、文字放送もハイブリッド方式による本放送を前に[[1983年]]10月からNHKがパターン方式による文字多重放送を実施していた<ref>{{Cite news|和書|title=[ワイドトピックス] 耳の不自由な人に福音 文字多重放送 NHK 3日から|newspaper=読売新聞|edition=夕刊|page=8|date=1983-9-24}}</ref>。音符符号化方式による音楽再生機能は、それぞれ伝送方式にハイブリッド方式を採用する規格から盛り込まれたものである<ref>{{Cite news|和書|title=[新技術ノート] 色鮮やか、音楽も奏で 文字表示速度は8〜10倍に|newspaper=読売新聞|edition=朝刊|page=6|date=1983-11-29}}</ref><ref>{{Cite news|和書|title=文字多重放送、ハイブリッドに基準──電波審議会、キャプテンと整合性。|newspaper=日本経済新聞|edition=朝刊|page=4|date=1985-03-30}}</ref>。}}。YM2413には、文字放送とキャプテンで使われる音色を全て含んだ、15種類のメロディ楽器と5種類のリズム楽器の音色が、LSI内の音色ROMと音色回路に搭載されている{{R|news_19860604_nikkeisangyo}}{{R|news_19860604_dempa}}{{R|news_198608_ascii}}<ref name="man_ym2413">{{Cite book|和書|title=YM2413 FM OPERATOR TYPE-LL(OPLL) アプリケーションマニュアル|publisher=日本楽器製造}}</ref>。
系譜としては、[[YM3812]](OPL2)のサブセットにあたる。OPL2で追加された波形選択は、2種類に減少したものの可能である。


また、YM2413はLSI内に[[ビブラート]]発振器と[[振幅変調]]発振器を内蔵することで発音制御の簡略化が図られている{{R|news_19860604_nikkeisangyo}}{{R|news_19860604_dempa}}{{R|news_198608_ascii}}。また、9ビット[[D/Aコンバーター]]・[[発振回路|水晶発振回路]]を内蔵することで音楽システムを少ないコストで実現できるように設計されていた{{R|news_19860604_nikkeisangyo}}{{R|news_19860604_dempa}}{{R|man_ym2413}}{{Efn2|YM2413と同様の目的で開発されたFM音源LSI、YM3526およびYM3812の場合はアナログ出力に専用のD/AコンバーターLSI、YM3014を別途必要としていた<ref>{{Cite book|title=YM3526 FM OPERATOR TYPE-L (OPL)|publisher=日本楽器製造}}</ref><ref name="man_ym3812">{{Cite book|title=YM3812 FM OPERATOR TYPE-L(OPLII) APPLICATON MANUAL|publisher=ヤマハ}}</ref>。}}。
反面、OPL2が持っていた音声合成モードや、それに伴うタイマなどの機能、一部のパラメータの分解能などが削減された。オペレータの接続は直列に限定されている<ref name = man /><ref>『マイコンBASIC Magazine DELUXE MSX/MSX2/MSX2+ ゲーム・ミュージック・プログラム大全集』 1989 電波新聞社 p.225</ref>。


日本楽器製造は文字放送・キャプテン向けの2オペレーターFM音源LSI「[[YM3526]](OPL)」を[[1984年]]10月に発表、[[1985年]]春から外販を開始しており<ref name="news_19841031_nikkeisangyo">{{Cite news|和書|title=パソコンも楽器に|newspaper=日経産業新聞|page=8|date=1984-10-31}}</ref><ref name="news_19841031_dempa">{{Cite news|和書|title=FM音源LSI開発|newspaper=電波新聞|edition=第7版|pages=2|date=1984-10-31}}</ref>、YM2413はそのコスト削減版にあたるものである<ref name="man_20221121_portafm">{{Cite web|language=en|url=https://chipsynth.s3.amazonaws.com/PortaFM_manual.pdf|archiveurl=https://web.archive.org/web/20231017133846/https://chipsynth.s3.amazonaws.com/PortaFM_manual.pdf|archivedate=2023-10-17|title=PortaFM User's Guide v1.105|publisher=Plogue|accessdate=2023-10-17|date=2022-11-21}}</ref><!-- 杉谷成一『MSX2+ パワフル活用法』(アスキー、1989年1月)122頁には、YM2413の説明として「OPL(Y8950)からADPCM機能などを取り除き機能をFM音源部のみに絞り込んだもの」(要約)と記載されているが、『Y8950 Application Manual(MSX-AUDIO)』(ヤマハ)にはY8950のFM音源部はYM3526と同等と記載しており、また、OPL(YM3526)を指すとしてもYM3526はFM音源機能のみでADPCM機能は搭載されていない(『YM3526 FM OPERATOR TYPE-L』データシート、「パソコンも楽器に」日経産業新聞 1984年10月31日8面)。『MSX2+ パワフル活用法』のその部分の記述はYM2413の説明としては不適当な記述とみられる。-->。また、YM2413は、YM3526と後方互換性を持つFM音源LSI「[[YM3812]](OPL2)」と同様に各オペレータの波形を[[サイン波]]以外から選択できる機能を有している{{R|man_ym2413}}{{R|man_20221121_portafm}}{{R|man_ym3812}}{{efn2|選択できる波形の数はYM2413は2種類{{R|man_ym2413}}{{R|man_20221121_portafm}}、YM3812は4種類{{R|man_20221121_portafm}}{{R|man_ym3812}}。}}。
音色のパラメータ保持するレジスタは一組のみになった。削減された音色レジスタの代替として、15種類の音色がプリセットとして用意されている。このチップ内蔵の15音色と、ユーザー定義音色を組み合わせて使用することになる<ref name = man>『YM2413 FM Operator Type-LL (OPLL) Application Manual』</ref>。


YM2413は、本来の目的であるキャプテン端末・文字放送受信機のほかにも、[[1987年]]に発売された家庭用ゲーム機「[[セガ・マークIII]]」用の周辺機器「FMサウンドユニット」とその一体型機種である日本版の「[[セガ・マスターシステム]]」{{R|man_20221121_portafm}}{{R|news_198711_beep}}{{R|interview_20141218_gamewatch}}、[[1988年]]に発表された[[MSX]]規格、[[MSX2+]]のFM音源規格「[[MSX-MUSIC]]」{{R|journal_198811_ascii}}{{R|journal_198812_msxmagazine}}とその周辺機器「[[FM-PAC|FM Pana Amusement Cartridge(FM-PAC)]]」{{R|man_20221121_portafm}}{{R|news_198807_bamaga}}、パチスロ機『[[ニューパルサー]]』{{R|web_yamasa_pulser}}に採用・搭載されるなど、その低コストかつ組み込みが容易な性質から様々な目的において使用された{{R|man_20221121_portafm}}。
パッケージは18ピンDIPまたは24ピンSOP。9bit[[D/Aコンバータ]]を備える。動作周波数3.579545MHz([[発振回路]]内蔵)、駆動電圧は+5V。内蔵音色は[[キャプテンシステム]]、[[文字多重放送]]に対応している。これらの内蔵機能は音色の内蔵なども含め、ローコストな音源のシステムを実現できるように配慮されている。


== 機能 ==
ヤマハの4オペレータFM音源では、[[ADSR]]はアタックレート、ディケイレート、サスティンレート、サスティンレベル、リリースレートの5つのパラメータが用意されているのが一般的である。YM2413はそのうち、サスティンレートが存在せず、リリースレートの値がサスティンレートとリリースレートを兼ねる設計である<ref name = man />。どちらを指し示すかは切り替え式であり、サスティンレートを設定すればリリースレートが固定となり、リリースレートを設定すればサスティンレートが固定となり出力が全く減衰しない<ref name = man />。これは演奏中に任意に設定可能である<ref name = man />。
YM2413の発音モードは2種類が搭載されている。メロディ音9音を同時発音できるモードと、メロディ音6音とリズム音5音(バスドラム・スネアドラム・タムタム・トップシンバル・ハイハットシンバル)を同時発音できるモードである{{R|news_198608_ascii}}{{R|man_ym2413}}。この発音モードはYM3526とYM3812と共通する機能であり{{R|man_20221121_portafm}}、メロディ6音・リズム5音同時発音モードは文字放送とキャプテンに対応した発音モードである{{R|man_ym3812}}{{R|news_19841031_nikkeisangyo}}{{efn2|name=muscot|ハイブリッド方式による文字放送の付加音機能には基本機能と追加機能が存在し、基本機能はメロディ音9音色・6音同時出力、リズム音5音色・5音同時出力、音の強さの指定が8段階{{Efn2|分解能は3dB、0dBから-21dBの範囲{{R|journal_198709_newmediaandmusic}}。}}、追加機能はメロディ音32音色・16音同時出力、リズム音16音色・8音同時出力、音の強さの指定が16段階{{Efn2|分解能は3dB、0dBから-45dBの範囲、加えて音強修飾符号を用いて1db単位で調節できる{{R|journal_198709_newmediaandmusic}}。}}と定義されていた{{R|journal_198709_newmediaandmusic}}<ref>{{Cite journal|和書|doi=10.11485/tvtr.11.9_7|author=荒木洋哉|author2=花房秀治|title=文字放送におけるレベルB音楽実験|journal=テレビジョン学会技術報告|volume=11|issue=9|publisher=映像情報メディア学会|date=1987-06-25|pages=7-12}}</ref><ref name="jp_teletext_handbook">{{Cite book|和書|isbn=4874620108|doi=10.11501/12601093|editor=放送技術開発協議会|title=文字放送技術ハンドブック|publisher=兼六館出版|date=1986-08}}</ref><ref name="jp_teletext_law">{{Cite web|和書|language=ja|url=https://www.tele.soumu.go.jp/horei/reiki_honbun/72999265001.html|title=標準テレビジョン文字多重放送に関する送信の標準方式第十一条第三号及び第十八条の規定に基づく標準テレビジョン文字多重放送の放送番組のデータの送出等|date=2000-02-23|website=総務省電波利用ホームページ|accessdate=2023-10-17|archive-url=https://web.archive.org/web/20231017110933/https://www.tele.soumu.go.jp/horei/reiki_honbun/72999265001.html|archive-date=2023-10-17}}</ref>。また、キャプテンのメロディ機能{{efn2|name="captain"}}は文字放送の付加音機能の基本機能と同一で、拡張機能にあたる規定はなかった{{R|journal_198509_ascii}}{{R|journal_198709_newmediaandmusic}}<!-- 注:『文字放送技術ハンドブック』(1986年8月)の240頁には、文字放送の追加機能とキャプテン端末ランク5(最高ランク)の機能の比較においてメロディ音の仕様は文字放送の付加音機能の基本機能と同一でリズム音のみ音色15音色・同時発音数8音と記載されているが、花木森房「ニューメディア実践シリーズ MUSCOT&MUSICAL 第4回」(『月刊アスキー』1985年9月号 214-217頁)および岡兼太郎「ニューメディアと音楽」(音楽情報研究会編『コンピュータと音楽(コンピュータ・サイエンス誌 bit別冊)』1987年9月、75-83頁)には文字放送と異なりキャプテンのメロディ機能には(それぞれの執筆時点において)拡張機能が規定されていないと記されており、『文字放送技術ハンドブック』のその部分の記述は誤記であるとみられる。-->。また、1987年にサービスが開始された[[ISDN|デジタル回線]]を利用するキャプテンの上位規格「ハイキャプテン」<ref>{{Cite journal|和書|doi=10.11501/2305169|journal=NTT施設|editor=日本電信電話株式会社研究開発技術本部技術情報センター|title=昭和62年度における技術開発の状況|publisher=電気通信協会|issue=1988年8月号|pages=4-15|date=1988-08}}</ref>には[[ADPCM]]方式による音声出力機能が搭載されたが、メロディ機能については従来のキャプテンと同一仕様であった<ref name="journal_198810_business_communication">{{Cite journal|和書|doi=10.11501/3286870|journal=ビジネスコミュニケーション|title=キャプテンシステムの概要|author=NTT画像・電信事業部 画像サービス部 キャプテン担当|publisher=ビジネスコミュニケーション社|volume=25|issue=10|pages=28-39|date=1988-10}}</ref><ref>{{Cite journal|和書|doi=10.11501/3286886|journal=Business communication|title=ハイキャプテン|publisher=ビジネスコミュニケーション社|volume=23|issue=6|pages=42-47|date=1990-02}}</ref>。}}。


YM2413は、2オペレーターのFM音源と[[ホワイトノイズ]]生成器・数種の周波数を合成するノイズ発振器を搭載している。メロディ音はFM音源部を用いて音が生成され、リズム音は各リズム楽器によってFM音源部、あるいはホワイトノイズとノイズ発振器の波形を合成して生成される{{R|man_ym2413}}。
テストレジスタ、マルチプルレベル、F-Numberレジスタの制御を利用して8bit相当のPCM再生を行うソフトウェアが存在<ref>[https://github.com/digital-sound-antiques/emu2413/wiki/DAC-in-test-mode DAC in test mode]</ref><ref>[http://www.grauw.nl/projects/fmpcm/ FM PCM Player]</ref>する他、テストレジスタを用いずにチップの仕様を利用したPCM再生の手法も公開<ref>[https://github.com/digital-sound-antiques/emu2413/wiki/Use-FM-channel-as-DAC Use FM channel as DAC]</ref>されている。
FM音源のアルゴリズムは、各オペレータを搬送波・変調波として用いる[[FM変調]]モード(直列接続)のみが搭載されている{{R|man_ym2413}}<ref name="book_1989_msx2plus_powerful">{{Cite journal|和書|isbn=978-4871483452|journal=MSX2+パワフル活用法|author=杉谷成一|title=MSX-MUSICとFM音源|publisher=アスキー|pages=121-130}}</ref>。
== チップ内蔵音色 ==
チップに内蔵された以下の音色は、YM2413に1組しかない音色保持用のレジスタを占有せず、制限なく利用可能である。音色名はアプリケーションマニュアルに従った。


YM2413に搭載されたメロディ音15種類・リズム音5種類の内蔵音色の他に、効果音や独自の音色を発音する目的でオリジナル音色レジスタが1音色分用意されており、FM音源部を利用した独自のメロディ楽器の定義が可能である{{R|news_198608_ascii}}{{R|man_ym2413}}{{R|book_1989_msx2plus_powerful}}。
* 00 レジスタの保持している音色

* 01 [[ヴァイオリン|Violin]]
オリジナル音色の定義においては搬送波・変調波それぞれに対して、波形選択(サイン波・[[半波整流]])、周波数倍率の変更、[[ADSR|エンベロープ]]の変更、持続音モード・減衰音モードの切り替え、音程によってエンベロープ速度を変化させるキースケールレートの変更、音程によって音の大きさを変化させるキースケールレベルの変更、ビブラート・振幅変調のON/OFFが可能である{{R|man_ym2413}}{{R|man_20221121_portafm}}。また、変調波については、トータルレベルの変更およびフィードバックレベルの変更が可能である{{R|man_ym2413}}{{R|man_20221121_portafm}}。
* 02 [[ギター|Guitar]]

* 03 [[ピアノ|Piano]]
YM2413のエンベロープジェネレータは、アタックレート・ディケイレート・リリースレートとサスティンレベル、トータルレベル等の要素によって音色の変化を制御する{{R|man_ym2413}}。また、YM2413のエンベロープジェネレーターにはDP機能があり、キーオン直後の音の立ち上がり時間の前に作動する{{R|man_ym2413}}。音色のエンベロープ定義では音の立ち上がり時間を示すアタックレート、アタックモード終了後の減衰時間を示すディケイレート、ディケイからの変化点を示すサスティンレベル、リリースレートの4つの値を設定できる。また、持続音モードと減衰音モードによって設定されたリリースレートの用途が変化する{{R|man_ym2413}}{{R|book_1989_msx2plus_powerful}}{{efn2|持続音モードの場合はディケイモードの減衰後にサスティンレベルに達した後はキーオン中は音が減衰されず、リリースレートはキーオフ後の音の減衰時間を示す。減衰音モードの場合はリリースレートはディケイモードからサスティンレベルに達した後の音の減衰時間を示し、キーオフ後の音の減衰時間は一定となる{{R|man_ym2413}}{{R|book_1989_msx2plus_powerful}}。}}。
* 04 [[フルート|Flute]]

* 05 [[クラリネット|Clarinet]]
メロディ音で使用する音色は各チャンネルごとにROMに搭載された15種類のメロディ楽器と1種類のオリジナル音色、合計16種類の音色の中から選択できる{{R|man_ym2413}}<ref>{{Cite Web|language=en|title=YAMAHA - Audio ICs|author=Yamaha Systems Technology, Inc.|url=http://www.yamahayst.com/audio.htm|archiveurl=https://web.archive.org/web/19971211164403/http://www.yamahayst.com/audio.htm|archivedate=1997-12-21|url-status-date=2023-10-31|website=Yamaha Systems Technology, Inc.|accessdate=2023-10-31|url-status=unfit}}</ref>。各リズム楽器の音色はROMに搭載された音色データで固定され、変更できない{{R|man_ym2413}}{{R|man_20221121_portafm}}。また、YM2413には選択された音色のキーオフ後の減衰時間を一定値に変更するサスティン機能が搭載されており、各チャンネルごとにON/OFFできる{{R|man_ym2413}}。
* 06 [[オーボエ|Oboe]]

* 07 [[トランペット|Trumpet]]
メロディ音の音程は各チャンネルごとに設定できる。音程を決める周波数情報(F-Number)は9ビット(512段階)の解像度を持ち、8段階設定できるオクターブ情報(Block)と音色に設定された周波数倍率(Multiple)と組み合わされて、発音される周波数が決定される{{R|man_ym2413}}。リズム音はFM音源を使って生成されるバスドラムはメロディ音と同様の手法で音程を設定する。それ以外のリズム楽器はホワイトノイズ生成器と8チャンネルと9チャンネルの周波数情報を利用するノイズ発振器を利用して、それぞれのリズム楽器に適した音が生成される{{R|man_ym2413}}{{efn2|name="2413-drumkit"|タムタムはサイン波、スネアドラムは[[矩形波]]とホワイトノイズの合成、ハイハットシンバルはホワイトノイズとノイズ発振器、トップシンバルはノイズ発振器を利用して音が生成される{{R|man_ym2413}}{{R|man_20221121_portafm}}。}}。メロディ音の各チャンネルと各リズム楽器の音量設定は16段階(分解能は3dB、0dBから-45dBの範囲)設定できる{{R|man_ym2413}}。
* 08 [[オルガン|Organ]]

* 09 [[ホルン|Horn]]
YM2413はクロック周波数が2MHzから4MHzの範囲内で動作するが、エンベロープジェネレータの速度と振幅変調発振器・ビブラート発振器は3.6MHz(3.579545MHz)を基準に設計されている{{R|man_ym2413}}。駆動電圧は+5V{{R|man_ym2413}}。
* 10 [[シンセサイザ|Synthesizer]]

* 11 [[ハープシコード|Harpsichord]]
== 内蔵音色一覧 ==
* 12 [[ビブラフォン|Vibraphone]]
YM2413の内蔵音色は、文字放送の付加音機能の基本機能とキャプテンのメロディ機能{{efn2|name=muscot}}で使用される音色(メロディ音9音色、リズム音5音色{{efn2|文字放送・キャプテンで使用された音符符号化方式における音色指定については、シンセサイザーの音色パラメータを指定して伝送する方法も検討されたが、ハードウェアごとの互換性の問題や今後の拡張性も考慮され、楽器名<!-- 正確にはそれぞれの楽器に対して番号が割り当てられている。 -->を指定してデコーダー側で解釈する仕組みとなっている<ref name="hosogijyutsu_198402">{{Cite journal|和書|doi=10.11501/3243360|author=木俣省英|author2=荒木洋哉|author3=佐藤勝美|title=文字放送における音符符号化方式による音楽伝送|journal=放送技術|volume=37|issue=2|publisher=兼六館出版|date=1984-02|pages=94-99}}</ref>。規格の策定にあたっては、弦楽器・管楽器・リード楽器・打弦楽器の中から9種類のメロディ楽器が、および5種類のリズム楽器が、最も多く使われている代表的な楽器として選定された{{R|hosogijyutsu_198402}}。}})を全て含んでいる{{R|news_198608_ascii}}{{R|man_ym2413}}。
* 13 [[シンセベース|Synthesizer Bass]]

* 14 [[ウッドベース|Acoustic Bass]]
音色名は『YM2413 FM OPERATOR TYPE-LL(OPLL) アプリケーションマニュアル』(日本語版/英語版){{R|man_ym2413}}<ref name="man_ym2413_en">{{Cite book|title=YM2413 FM OPERATOR TYPE-LL(OPLL) APPLICATON MANUAL|publisher=ヤマハ}}</ref>に従い、文字放送とキャプテンに対応した音色は{{dagger}}で示した{{R|news_198608_ascii}}。
* 15 [[エレキベース|Electric Guitar]]

=== メロディ楽器 ===
* 00 オリジナル / Original(オリジナル音色レジスタで定義された音色)
* 01 [[ヴァイオリン|バイオリン / Violin]] {{dagger}}
* 02 [[ギター|ギター / Guitar]] {{dagger}}
* 03 [[ピアノ|ピアノ / Piano]] {{dagger}}
* 04 [[フルート|フルート / Flute]] {{dagger}}
* 05 [[クラリネット|クラリネット / Clarinet]] {{dagger}}
* 06 [[オーボエ|オーボエ / Oboe]] {{dagger}}
* 07 [[トランペット|トランペット / Trumpet]] {{dagger}}
* 08 [[オルガン|オルガン / Organ]] {{dagger}}
* 09 [[ホルン|ホルン / Horn]]
* 10 [[シンセサイザ|シンセ / Synthesizer]]
* 11 [[ハープシコード|ハープシコード / Harpsichord]]
* 12 [[ビブラフォン|ビブラフォン / Vibraphone]] {{dagger}}
* 13 [[シンセベース|シンセベース / Synthesizer Bass]]
* 14 [[ウッドベース|ウッドベース / Acoustic Bass]]
* 15 [[エレキベース|エレキベース / Electric Guitar]]

=== リズム楽器 ===
<!-- リズム楽器の並びは「YM2413 FM OPERATOR TYPE-LL(OPLL) アプリケーションマニュアル」に記載されている順番に従っている。 -->
* 0 [[バスドラム|バスドラム / Bass Drum]] {{dagger}}
* 1 [[スネアドラム|スネアドラム / Snare Drum]] {{dagger}}
* 2 [[トムトム|タムタム / Tom-tom]] {{dagger}}
* 3 [[ライドシンバル|トップシンバル / Top Cymbal]] {{dagger}}
* 4 [[ハイハットシンバル|ハイハットシンバル / High hat]] {{dagger}}


== 採用例 ==
== 採用例 ==
* [[キャプテンシステム#情報利用者端末機器|キャプテン端末]]の一部機種{{efn2|name="captain"|キャプテンのメロディ機能は、ランク1から5に分類される利用者端末種別の機能とは別にオプション機能として定められていた{{R|journal_198709_newmediaandmusic}}{{R|journal_198810_business_communication}}<ref name="journal_198504_NEC">{{Cite journal|和書|id={{JGLOBAL ID2|200902098344485552|J-GLOBAL ID 200902098344485552}}|doi=10.11501/3259657|journal=NEC技報|title=高密度キャプテン端末NTX-3000,NTX-5000|author=石渡直樹|author2=内海良成|author3=田岸孝一|author4=山本昌克|publisher=NECマネジメントパートナー社|volume=38|issue=5|date=1985-04|pages=86-92}}</ref>。そのため、メロディ機能の利用にキャプテン端末とは別売のメロディ機能用のデコーダーを必要とする場合も多く、1987年時点においてはメロディ機能が利用可能な端末はごく僅かだったとされる{{R|journal_198709_newmediaandmusic}}<ref>{{Cite journal|和書|doi=10.11501/2853273|journal=経済ライフ|title=「育」ちの苦しみを味わうニューメディア|author=柳原雅美|publisher=国連経済社|issue=1987年3月号(2・3月合併号)|pages=28-31|date=1987-03}}</ref>。}}{{efn2|アナログ電話回線を利用したキャプテンの商用サービス開始は1984年[[11月30日]]であり、YM2413の発売よりも前である{{R|journal_198506_ascii}}{{R|journal_198504_NEC}}<ref>{{Cite news|和書|title=キャプテン、きょうスタート──大阪府など京阪神の自治体も積極的対応|newspaper=日本経済新聞|edition=近畿B|date=1984-11-30}}</ref>。}}(採用例:[[NTT]]のランク3キャプテン端末「キャプメイトV15E」([[NEC]]製)<ref>{{Cite journal|和書|id={{JGLOBAL ID2|200902072495732927|J-GLOBAL ID 200902072495732927}}|doi=10.11501/3259709|author1=石渡直樹|author2=佐藤良文|author3=山本昌克|author4=村田亨|author5=黒田敦|author6=松下友義|author7=大場範雄|author8=内海良成|author9=藤原司郎|title=高密度キャプテン端末(ランク3)|journal=NEC技報|volume=42|issue=5|publisher=NECマネジメントパートナー|date=1989-04|pages=112-119}}</ref>)
* アミューズメント向け[[プライズゲーム]]([[SNK (2001年設立の企業)|SNK]]製「ネオミニ」等)
* ハイブリッド方式の[[文字多重放送|文字放送]]受信機/デコーダーの一部機種{{efn2|付加音機能を含むハイブリッド方式の文字多重放送の本放送開始は1985年[[11月29日]]であり、YM2413の発売よりも前である<ref>{{Cite journal|和書|doi=10.11501/4433182|author=吉川章三郎|title=「見るテレビ」から「読むテレビ」へ〜文字放送始まる〜|journal=映画テレビ技術|issue=1986年1月号|publisher=日本映画テレビ技術協会|date=1986-01|pages=44-48}}</ref><ref>{{Cite news|和書|title=文字多重放送スタート、速報性アピール──国電マヒで情報次々更新|newspaper=日経産業新聞|date=1985-11-30|page=4}}</ref>。また、1986年7月のYM2413発売以降においても文字放送とキャプテンに対応した音源が開発されており、1988年にはヤマハ・[[富士通ゼネラル]]・[[NHK放送技術研究所]]が文字放送受信機内蔵テレビや文字放送・キャプテン併用端末に搭載する目的で、文字放送用の2種類のLSI、文字放送信号取り込み用の「DRT(YM6030)」と画面表示および付加音処理用の「IDT(YM6404)」を共同開発していた<ref name="news_19880101_nikkeisangyo">{{Cite news|和書|title=ヤマハなど、LSI2個で受信──「文字多重」専用を開発|newspaper=日経産業新聞|page=1|date=1988-01-01}}</ref><ref>{{Cite journal|和書|doi=10.11501/3279771|title=文字多重放送用アダプタコストを低減するLSI2機種を発表|journal=電子技術|volume=1988年4月号|publisher=日刊工業新聞社|date=1988-04|page=90-91}}</ref><ref name="ncrtv24">{{Cite journal|和書|doi=10.11485/ncrtv.24.0_389|author=金子 誠|author2=南 裕治|author3=黒田 徹|author4=山田 宰|title=文字多重放送受信用LSIの開発|journal=テレビジョン学会全国大会講演予稿集|volume=24|publisher=映像情報メディア学会|date=1988-07}}</ref>。IDT側にはFM音源と[[差分パルス符号変調|DPCM]]音源が内蔵されている{{R|news_19880101_nikkeisangyo}}{{R|ncrtv24}}。}}{{efn2|メロディ機能がオプション扱いであったキャプテンとは異なり、文字放送においては付加音機能は標準機能であった{{R|journal_198709_newmediaandmusic}}。}}(採用例:[[松下電器]]の文字放送チューナー「TU-TX100」<ref>{{Cite journal|和書|id={{JGLOBAL ID2|200902151716460983|J-GLOBAL ID 200902151716460983}}|doi=10.11501/2358381|author=逸見英身|author2=山田直一|author3=角田浩樹|title=文字放送チューナ|journal=National technical report|volume=41|issue=4|publisher=松下電器産業技術総務センター技術情報部|date=1995-08}}</ref>)
* アミューズメント向けキディーライド([[トーゴ_(エレメカ・コースターメーカー)|トーゴ]]製「とべとべアンパンマン」等)
* 1987年に発売された「[[セガ・マークIII]]」用周辺機器の「FMサウンドユニット」および、一体型機種である日本版「[[セガ・マスターシステム]]」{{R|man_20221121_portafm}}<ref name="news_198711_beep">{{Cite journal|和書|journal=[[ゲーマガ|Beep]]|title=衝撃デビュー!マスターシステム|publisher=[[日本ソフトバンク]]|issue=1987年11月号|pages=45-46}}</ref><ref name="interview_20141218_gamewatch">{{Cite journal|和書|language=ja|author=佐伯憲司|author2=奥成洋輔|author3=堀井直樹|author4=[[並木学]]|url=https://game.watch.impress.co.jp/docs/interview/680874.html|title=「セガ3D復刻アーカイブス」インタビュー第3弾!|page=4|date=2014-12-18|journal=[[Impress Watch|Game Watch]]|publisher=[[インプレス|Impress]]|accessdate=2023-10-18|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210306153113/https://game.watch.impress.co.jp/docs/interview/680874.html|archivedate=2021-03-06}}</ref>{{efn2|name="mastersystem"|日本版「セガ・マスターシステム」の筐体の元となった、「セガマーク3」の海外版「SEGA Master System/Power Base」(1986年発売)にはFMサウンドユニットにあたる機能は内蔵されていない{{R|man_20221121_portafm}}<ref>奥成洋輔「第3章 マスターシステム」『セガハード戦記』(Kindle版)、[[白夜書房]]、2023年7月、80-105頁、{{ASIN|B0C9T9RBDN}}。</ref>。}}。
* [[FM-PAC#MSX-MUSIC|MSX-MUSIC]] - 拡張機器としての実装である「FM Pana Amusement Cartridge(FM-PAC)」も含む。
* 1988年に発表された[[MSX2+]]のFM音源規格「[[FM-PAC#MSX-MUSIC|MSX-MUSIC]]」<ref name="journal_198811_ascii">{{Cite journal|和書|doi=10.11501/3250730|journal=月刊アスキー|author=編集部|title=スペシャルレポート・MSX2+ プラスの中身|publisher=アスキー|issue=1988年11月号|pages=301-304}}</ref><ref name="journal_198812_msxmagazine">{{Cite journal|和書|journal=[[MSXマガジン]]|title=特集 MSX2+なんでも情報|publisher=アスキー|issue=1988年12月号|pages=134-155}}</ref>{{efn2|name=MSXturboR|MSX2+においてはオプション機能扱い{{R|journal_198811_ascii}}{{R|journal_198812_msxmagazine}}。MSX2+の後継規格「[[MSXturboR]]」で標準機能となった<ref>{{Cite journal|和書|ISBN=978-4756106216|journal=MSXturboRテクニカル・ハンドブック|author=石川直太|title=1.1 MSXturboRのハードウェア|publisher=アスキー|pages=16|date=1991-07-01}}</ref>。}}と、その周辺機器「[[FM-PAC|FM Pana Amusement Cartridge(FM-PAC)]]」{{R|man_20221121_portafm}}<ref name="news_198807_bamaga">{{Cite journal|和書|journal=[[マイコンBASICマガジン|マイコン BASIC Magazine]]|title=FM音源付,パナアミューズメントカートリッジが新登場|publisher=[[電波新聞社]]|issue=1988年7月号|page=330}}</ref>{{efn2|name=FMPAC|FM-PACの発売自体はMSX2+規格の発表より前である{{R|journal_198811_ascii}}{{R|journal_198812_msxmagazine}}。また、FM-PACは[[MSX (初代規格)|MSX1]]、[[MSX2]]にも対応している<ref>{{Cite journal|和書|journal=[[MSX・FAN]]|title=FAN CHOICE FMパック|publisher=[[徳間書店インターメディア]]|issue=1988年08月号|pages=94-95}}</ref>。}}。
* セガマーク3用周辺機器のFMサウンドユニット、日本国内版のセガ[[マスターシステム]]
* [[パチスロ]]機の一部機種([[山佐]]が発売した『[[ニューパルサー]]』<ref name="web_yamasa_pulser">{{Cite web|和書|language=ja|url=http://www1.yamasa.co.jp/40th_remnp/interview/int01.html|title=REMEMBER OF THE NEW PULSAR おもいでのニューパルサー|publisher=山佐|accessdate=2023-10-17|archiveurl=https://web.archive.org/web/20130715200610/http://www1.yamasa.co.jp/40th_remnp/interview/int01.html|archivedate=2013-07-15}}</ref>、[[ユニバーサルエンターテインメント|ユニバーサル]]が発売した『[[ハナビ|HANABI]]』・{{要出典範囲|[[北電子]]が発売した『[[ジャグラー (パチスロ)|ジャグラー]]』|date=2023-10}}など)で使用。
* カプコンの業務用ゲーム基板の一部(麻雀学園、クイズカプコンワールド、ポンピングワールドなど)
* 1986年に発売された日本楽器製造(ヤマハ)製キーボード「ポータサウンド」の一部機種(「PortaSound PSS-170」、「PortaSound PSS-270」など){{R|man_20221121_portafm}}<ref>{{Cite book|title=PortaSound PSS-170 SERVICE MANUAL|publisher=日本楽器製造}}</ref><ref>{{Cite book|title=PortaSound PSS-270 SERVICE MANUAL|publisher=日本楽器製造}}</ref><ref>{{Cite web|和書|language=ja|title=電子ピアノ・電子キーボード 対応電源アダプター・スタンド検索|url=https://jp.yamaha.com/sp/keyboards/p_adapter_stands/?page=2&series=10|website=ヤマハ|accessdate=2023-10-26|page=2|archiveurl=https://web.archive.org/web/20231026112304/https://jp.yamaha.com/sp/keyboards/p_adapter_stands/?page=2&series=10|archivedate=2023-10-08}}</ref>。
* 一部の[[パチスロ]]機([[ニューパルサー]]・[[HANABI]]・[[ジャグラー]]等)<ref>[http://www1.yamasa.co.jp/40th_remnp/interview/int01.html 山佐ホームページ おもいでのニューパルサー 軍艦マーチの終止符を打った男](2010年6月閲覧)</ref>で使用。
* カプコンの業務用ゲームの一部基板(『[[麻雀学園 卒業編]]』、『クイズ三国志』など)<ref>{{Cite journal|和書|asin=B09L3VXCZP|journal=[[ゲームラボ]]|title=カプコン基板小史|author=nosuke|publisher=[[三才ブックス]]|issue=年末年始2022|page=45|date=2021-12}}</ref>。
* PSS-170、PSS-270等一部の[[ポータサウンド]]
* [[テクノトップ|中日本プロジェクト]]、[[エーディーケイ|アルファ電子]]、[[ミッチェル (ゲーム会社)|ミッチェル]]のアーケードのゲーム
* [[キャプテンシステム#情報利用者端末機器|キャプテンシステム端末]] 本来の用途。このうちキャプテンマルチターミナルはMSX規格であるが、YM2413を内蔵しているもののMSX-MUSICには対応していない。
* アミューズメント向け[[プライズゲーム]]([[SNK (2001年設立の企業)|SNK]]製『ネオミニ』など)
*[[テクノトップ|中日本プロジェクト]]、[[エーディーケイ|アルファ電子]]、[[ミッチェル (ゲーム会社)|ミッチェル]]のアーケードのゲーム
* アミューズメント向けキディーライド([[トーゴ_(エレメカ・コースターメーカー)|トーゴ]]製『とべとべアンパンマン』など)


== 型番 ==
== 型番 ==
* YM2413 - 18ピン プラスチックDIP{{R|man_ym2413}}
*YM2413 - 元祖YM2413
*YM2413-F - 24ピン プラスチックSOP
* YM2413-F - 24ピン プラスチックSOP{{R|man_ym2413}}
* YM2413B - 18ピン プラスチックDIP<ref name="ds_ym2413B">{{Cite web|language=en|title=YM2413B OPLL FM OPERATOR TYPE-LL(データシート)|author=ヤマハ|url=http://www.yamaha.com/lsi/products/pdf/212413B20.PDF|archiveurl=https://web.archive.org/web/20010622074424/http://www.yamaha.com/lsi/products/pdf/212413B20.PDF|archivedate=2001-06-22|date=1999-05|url-status=dead|url-status-date=2023-10-31|website=YAMAHA LSI|accessdate=2023-10-31}}</ref>
*YM2413B - 18ピン プラスチックDIP
*YM2413B-F - 24ピン プラスチックSOP
* YM2413B-F - 24ピン プラスチックSOP{{R|ds_ym2413B}}
*YM2413B-FZ
* YM2413B-FZ
*YM2413B-FZE2
* YM2413B-FZE2


== 亜種 ==
== 亜種 ==
* '''YM2420'''(OPLL2) - 1987年に発売されたヤマハ製[[ショルダーキーボード]]「SHS-10」<ref>{{Cite book|title=PortaSound SHS-10 SERVICE MANUAL|publisher=ヤマハ}}</ref><ref>{{Cite web|和書|language=ja|title=電子ピアノ・電子キーボード 対応電源アダプター・スタンド検索|url=https://jp.yamaha.com/sp/keyboards/p_adapter_stands/?series=12|website=ヤマハ|accessdate=2023-10-27|archiveurl=https://web.archive.org/web/20231027111225/https://jp.yamaha.com/sp/keyboards/p_adapter_stands/?series=12|archivedate=2023-10-27}}</ref>、1988年に発売されたヤマハ製キーボード「PortaSound PSS-140」<ref>{{Cite book|title=PortaSound PSS-140 SERVICE MANUAL|publisher=ヤマハ}}</ref><ref>{{Cite web|和書|language=ja|title=電子ピアノ・電子キーボード 対応電源アダプター・スタンド検索|url=https://jp.yamaha.com/sp/keyboards/p_adapter_stands/?page=1&series=10|website=ヤマハ|accessdate=2023-10-26|page=1|archiveurl=https://web.archive.org/web/20230615162528/https://jp.yamaha.com/sp/keyboards/p_adapter_stands/?page=1&series=10|archivedate=2023-06-15}}</ref>などに使用{{R|man_20221121_portafm}}。YM2413と機能面は基本的に同じだが、レジスタ配置が異なっている{{R|man_20221121_portafm}}。
{{出典の明記|section=1|date=2014-8}}
* '''YVM156B'''(ADT) - 文字放送用のデコードLSIで、音源部にYM2413相当のFM音源を内蔵している<ref>{{Cite Web|和書|language=ja|title=画像LSI|author=ヤマハ|url=http://www.yamaha.co.jp/product/lsi/grphics/index.html|archiveurl=https://web.archive.org/web/20010306001201/http://www.yamaha.co.jp/product/lsi/grphics/index.html|archivedate=2001-03-06|url-status=dead|url-status-date=2023-11-08|website=YAMAHA LSI|accessdate=2023-11-08}}</ref><ref>{{Cite Web|和書|language=ja|title=YVM156B ADT Advanced Decoder for Teletext(データシート)|author=ヤマハ|url=http://www.yamaha.co.jp/product/lsi/pdf/graphic/3VM156B20.pdf|archiveurl=https://web.archive.org/web/20040503025147/http://www.yamaha.co.jp/product/lsi/pdf/graphic/3VM156B20.pdf|archivedate=2004-05-03|date=1996-07|url-status=dead|url-status-date=2023-11-08|website=YAMAHA LSI|accessdate=2023-11-08}}</ref>。
* YM2420 - YAMAHA製キーボードSHS-10、PSS-140等に使用。制御手順が一部異なる。性能についてほぼ同等である。
* YM2423 - 内蔵音色を差し替えたもの。[[Atari ST]]用FM音源カートリッジ「FM Melody Maker」、[[フィリップス]]製ポータブルシーケンサー「PMC100」で採用。
* '''MS1823'''(2423B-X) - YM2413の内蔵音色を差し替えたLSI{{R|man_20221121_portafm}}。[[Atari ST]]用FM音源カートリッジ「FM Melody Maker」{{R|man_20221121_portafm}}や、[[フィリップス]]製ポータブルシーケンサー「PMC100」<ref>{{Cite book|title=PMC100 SERVICE MANUAL|publisher=Philips}}</ref>で採用された
* YMF281 - 内蔵音色を差し替えたもの。主にパチスロ(4号機)で多く使用された。[[パイオニア_(パチスロ)|パイオニア]]製オアシス、[[サミー]]製ジャパン」等で採用。
* '''YMF281'''(OPLLP) - YM2413の内蔵音色を差し替えたLSIで、パチンコ機・パチスロ機に適したメロディ楽器が内蔵音色に搭載されている{{R|man_20221121_portafm}}<ref>{{Cite Web|和書|language=ja|title=YMF281B OPLLP FM OPERATOR TYPE-LL(データシート)|author=ヤマハ|url=http://www.yamaha.co.jp/product/lsi/pdf/sgl/3MF281B20.pdf|archiveurl=https://web.archive.org/web/20071016132034/http://www.yamaha.co.jp/product/lsi/pdf/sgl/3MF281B20.pdf|archivedate=2007-10-16|date=1999-05|url-status=dead|url-status-date=2023-10-28|website=YAMAHA LSI|accessdate=2023-10-28}}</ref>{{要出典範囲|主にパチスロ(4号機)で多く使用された。[[パイオニア_(パチスロ)|パイオニア]]製『[[オアシス (パチスロ)|オアシス]]』、[[サミー]]製ジャパン<!-- 『ジャパン2』? -->』などで採用。|date=2023-11}}
* '''[[VRC VI#VRC VII|VRC VII]]'''(VRC7) - ゲームソフト『[[ラグランジュポイント_(ゲーム)|ラグランジュポイント]]』に搭載された[[コナミ]]の[[ファミリーコンピュータ]]用拡張LSIで、YM2413と類似したFM音源が内蔵されている。内蔵音色が差し替えられており、メロディ音の発音数が6音のみでリズム音源が削減されているなど、機能も一部異なる{{R|man_20221121_portafm}}<ref>{{Cite web|language=en|url=https://www.nesdev.org/wiki/VRC7_audio|title=VRC7 audio - NESdev Wiki|publisher=NESdev|accessdate=2023-10-23|archiveurl=https://web.archive.org/web/20230826064407/https://www.nesdev.org/wiki/VRC7_audio|archivedate=2023-08-26}}</ref><ref>{{Cite tweet|language=ja|user=KONAMI573ch|number=857106749857431554|title=2017年4月26日のツイート|date=2017-04-26|accessdate=2023-11-08|archiveurl=https://web.archive.org/web/20230107054423/https://twitter.com/KONAMI573ch/status/857106749857431554|archivedate=2023-01-07|url-status=live}}</ref>。
* U3567/UM3567 - YM2413 の互換チップ。台湾の UMC(United Semiconductor Corp.) がマザーボードメーカー向けに限定販売している製品。互換と言っても電気特性、信号タイミング、内蔵音色がオリジナルと違っており、単純にリプレースすることはできない。<!--台湾でなら電気街で入手可能。-->
* '''U3567/UM3567''' - {{要出典範囲|YM2413の互換LSI。台湾の[[UMC]](United Microelectronics Corporation)がマザーボードメーカー向けに限定販売している製品。互換と言っても電気特性、信号タイミング、内蔵音色がオリジナルと違っており、単純に置き換えることはできない。<!--台湾でなら電気街で入手可能。-->|date=2023-10}}
* VRC VII - [[コナミ]]の[[ファミリーコンピュータ]]用拡張チップ。音色が異なり、メロディー6音のみのサブセット部分が、音源部に含まれる。一般に市販されたのは「ラグランジュポイント」のみ。
* この他、YM2413のデッドコピー品・偽造品も市場に出回っている<ref>{{Citation|title=YM2413のバリエーション|url=https://ameblo.jp/framgate/entry-12460600190.html|accessdate=2023-11-09}}</ref>{{信頼性要検証|date=2023-11}}<!-- 情報源が個人ブログ -->。<!-- {{独自研究範囲|その出所はYahoo!オークションとAliExpressである。|date=2023年12月}} -->

== 参考文献 ==
* 『YM2413 FM Operator Type-LL (OPLL) Application Manual』 ヤマハ
* 『YM2413B OPLL FM OPERATOR TYPE-LL』(データシート) ヤマハ
* 『YM3812 FM Operator Type-LL (OPLL) Application Manual』 ヤマハ
* 『Y8950 APPLICATION MANUAL (MSX-AUDIO)』ヤマハ


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}


== 参考文献 ==
=== 注釈 ===
{{Notelist2}}
* 『Y8950 APPLICATION MANUAL(MSX-AUDIO)』YAMAHA

* 『YM2413 FM Operator Type-LL (OPLL) Application Manual』 ヤマハ
=== 出典 ===
* 『YM2413B FM Operator Type-LL (OPLL) CATALOG CATALOG No.:LSI-212413B2 1999.5』 ヤマハ
{{Reflist|2}}
* 『マイコンBASIC Magazine DELUXE MSX/MSX2/MSX2+ ゲーム・ミュージック・プログラム大全集』 1989年、[[電波新聞社]] MSX-BASIC上でのMSX-MUSICプログラミングの実例が多数紹介されている。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[FM音源]]
* [[FM音源]]
* [[内蔵音源]]
* [[内蔵音源]]
* [[文字多重放送]]
* [[キャプテンシステム]]


{{Computer-stub}}
{{ヤマハ製音源チップ}}
{{ヤマハ製音源チップ}}
[[Category:ヤマハの製品]]
[[Category:ヤマハの製品]]
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[[Category:シンセサイザー]]
[[Category:シンセサイザー]]
[[Category:コンピュータミュージック]]
[[Category:コンピュータミュージック]]
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2024年7月18日 (木) 04:22時点における最新版

YM2413

YM2413 (FM Operator Type-LL、OPLL)は1986年6月に発表され、1986年7月からサンプル出荷が開始された、日本楽器製造(後のヤマハ)が開発した2オペレーターのFM音源LSIである[1][2][3][4]

文字放送受信機・キャプテン端末での用途を目的に開発された[1][2][3][5]。発売当時のサンプル出荷価格は、1個3000円[1][2][5]

概要

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日本の文字多重放送および、日本のビデオテックス「キャプテン」のハイブリッド方式[注 1]による規格(JTES、CAPTAIN PLPS)には符号化された楽譜データを再生する機能が盛り込まれており、共通する音符符号化方式[注 2]を採用していた[10][11][12][注 3]。YM2413には、文字放送とキャプテンで使われる音色を全て含んだ、15種類のメロディ楽器と5種類のリズム楽器の音色が、LSI内の音色ROMと音色回路に搭載されている[1][2][5][16]

また、YM2413はLSI内にビブラート発振器と振幅変調発振器を内蔵することで発音制御の簡略化が図られている[1][2][5]。また、9ビットD/Aコンバーター水晶発振回路を内蔵することで音楽システムを少ないコストで実現できるように設計されていた[1][2][16][注 4]

日本楽器製造は文字放送・キャプテン向けの2オペレーターFM音源LSI「YM3526(OPL)」を1984年10月に発表、1985年春から外販を開始しており[19][20]、YM2413はそのコスト削減版にあたるものである[21]。また、YM2413は、YM3526と後方互換性を持つFM音源LSI「YM3812(OPL2)」と同様に各オペレータの波形をサイン波以外から選択できる機能を有している[16][21][18][注 5]

YM2413は、本来の目的であるキャプテン端末・文字放送受信機のほかにも、1987年に発売された家庭用ゲーム機「セガ・マークIII」用の周辺機器「FMサウンドユニット」とその一体型機種である日本版の「セガ・マスターシステム[21][22][23]1988年に発表されたMSX規格、MSX2+のFM音源規格「MSX-MUSIC[24][25]とその周辺機器「FM Pana Amusement Cartridge(FM-PAC)[21][26]、パチスロ機『ニューパルサー[27]に採用・搭載されるなど、その低コストかつ組み込みが容易な性質から様々な目的において使用された[21]

機能

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YM2413の発音モードは2種類が搭載されている。メロディ音9音を同時発音できるモードと、メロディ音6音とリズム音5音(バスドラム・スネアドラム・タムタム・トップシンバル・ハイハットシンバル)を同時発音できるモードである[5][16]。この発音モードはYM3526とYM3812と共通する機能であり[21]、メロディ6音・リズム5音同時発音モードは文字放送とキャプテンに対応した発音モードである[18][19][注 9]

YM2413は、2オペレーターのFM音源とホワイトノイズ生成器・数種の周波数を合成するノイズ発振器を搭載している。メロディ音はFM音源部を用いて音が生成され、リズム音は各リズム楽器によってFM音源部、あるいはホワイトノイズとノイズ発振器の波形を合成して生成される[16]。 FM音源のアルゴリズムは、各オペレータを搬送波・変調波として用いるFM変調モード(直列接続)のみが搭載されている[16][34]

YM2413に搭載されたメロディ音15種類・リズム音5種類の内蔵音色の他に、効果音や独自の音色を発音する目的でオリジナル音色レジスタが1音色分用意されており、FM音源部を利用した独自のメロディ楽器の定義が可能である[5][16][34]

オリジナル音色の定義においては搬送波・変調波それぞれに対して、波形選択(サイン波・半波整流)、周波数倍率の変更、エンベロープの変更、持続音モード・減衰音モードの切り替え、音程によってエンベロープ速度を変化させるキースケールレートの変更、音程によって音の大きさを変化させるキースケールレベルの変更、ビブラート・振幅変調のON/OFFが可能である[16][21]。また、変調波については、トータルレベルの変更およびフィードバックレベルの変更が可能である[16][21]

YM2413のエンベロープジェネレータは、アタックレート・ディケイレート・リリースレートとサスティンレベル、トータルレベル等の要素によって音色の変化を制御する[16]。また、YM2413のエンベロープジェネレーターにはDP機能があり、キーオン直後の音の立ち上がり時間の前に作動する[16]。音色のエンベロープ定義では音の立ち上がり時間を示すアタックレート、アタックモード終了後の減衰時間を示すディケイレート、ディケイからの変化点を示すサスティンレベル、リリースレートの4つの値を設定できる。また、持続音モードと減衰音モードによって設定されたリリースレートの用途が変化する[16][34][注 10]

メロディ音で使用する音色は各チャンネルごとにROMに搭載された15種類のメロディ楽器と1種類のオリジナル音色、合計16種類の音色の中から選択できる[16][35]。各リズム楽器の音色はROMに搭載された音色データで固定され、変更できない[16][21]。また、YM2413には選択された音色のキーオフ後の減衰時間を一定値に変更するサスティン機能が搭載されており、各チャンネルごとにON/OFFできる[16]

メロディ音の音程は各チャンネルごとに設定できる。音程を決める周波数情報(F-Number)は9ビット(512段階)の解像度を持ち、8段階設定できるオクターブ情報(Block)と音色に設定された周波数倍率(Multiple)と組み合わされて、発音される周波数が決定される[16]。リズム音はFM音源を使って生成されるバスドラムはメロディ音と同様の手法で音程を設定する。それ以外のリズム楽器はホワイトノイズ生成器と8チャンネルと9チャンネルの周波数情報を利用するノイズ発振器を利用して、それぞれのリズム楽器に適した音が生成される[16][注 11]。メロディ音の各チャンネルと各リズム楽器の音量設定は16段階(分解能は3dB、0dBから-45dBの範囲)設定できる[16]

YM2413はクロック周波数が2MHzから4MHzの範囲内で動作するが、エンベロープジェネレータの速度と振幅変調発振器・ビブラート発振器は3.6MHz(3.579545MHz)を基準に設計されている[16]。駆動電圧は+5V[16]

内蔵音色一覧

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YM2413の内蔵音色は、文字放送の付加音機能の基本機能とキャプテンのメロディ機能[注 9]で使用される音色(メロディ音9音色、リズム音5音色[注 12])を全て含んでいる[5][16]

音色名は『YM2413 FM OPERATOR TYPE-LL(OPLL) アプリケーションマニュアル』(日本語版/英語版)[16][37]に従い、文字放送とキャプテンに対応した音色はdaggerで示した[5]

メロディ楽器

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リズム楽器

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採用例

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型番

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  • YM2413 - 18ピン プラスチックDIP[16]
  • YM2413-F - 24ピン プラスチックSOP[16]
  • YM2413B - 18ピン プラスチックDIP[55]
  • YM2413B-F - 24ピン プラスチックSOP[55]
  • YM2413B-FZ
  • YM2413B-FZE2

亜種

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  • YM2420(OPLL2) - 1987年に発売されたヤマハ製ショルダーキーボード「SHS-10」[56][57]、1988年に発売されたヤマハ製キーボード「PortaSound PSS-140」[58][59]などに使用[21]。YM2413と機能面は基本的に同じだが、レジスタ配置が異なっている[21]
  • YVM156B(ADT) - 文字放送用のデコードLSIで、音源部にYM2413相当のFM音源を内蔵している[60][61]
  • MS1823(2423B-X) - YM2413の内蔵音色を差し替えたLSI[21]Atari ST用FM音源カートリッジ「FM Melody Maker」[21]や、フィリップス製ポータブルシーケンサー「PMC100」[62]で採用された。
  • YMF281(OPLLP) - YM2413の内蔵音色を差し替えたLSIで、パチンコ機・パチスロ機に適したメロディ楽器が内蔵音色に搭載されている[21][63]主にパチスロ(4号機)で多く使用された。パイオニア製『オアシス』、サミー製『ジャパン』などで採用。[要出典]
  • VRC VII(VRC7) - ゲームソフト『ラグランジュポイント』に搭載されたコナミファミリーコンピュータ用拡張LSIで、YM2413と類似したFM音源が内蔵されている。内蔵音色が差し替えられており、メロディ音の発音数が6音のみでリズム音源が削減されているなど、機能も一部異なる[21][64][65]
  • U3567/UM3567 - YM2413の互換LSI。台湾のUMC(United Microelectronics Corporation)がマザーボードメーカー向けに限定販売している製品。互換と言っても電気特性、信号タイミング、内蔵音色がオリジナルと違っており、単純に置き換えることはできない。[要出典]
  • この他、YM2413のデッドコピー品・偽造品も市場に出回っている[66][信頼性要検証]

参考文献

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  • 『YM2413 FM Operator Type-LL (OPLL) Application Manual』 ヤマハ
  • 『YM2413B OPLL FM OPERATOR TYPE-LL』(データシート) ヤマハ
  • 『YM3812 FM Operator Type-LL (OPLL) Application Manual』 ヤマハ
  • 『Y8950 APPLICATION MANUAL (MSX-AUDIO)』ヤマハ

脚注

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注釈

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  1. ^ 文字情報を符号化して送信されたものを受信機側で解釈して表示する「コード方式」と、文字や図形を細かいパターンに分解して送信する「パターン方式」の両方の性質を併せ持つ情報の伝送方式のこと[6][7]。符号に含まれている文字情報は送信速度の速いコード方式で送信し、符号に含まれていない文字情報はパターン方式で送信するのが特徴[7]
  2. ^ 日本テレビ京王技研工業沖電気工業電電公社が開発した音符符号化方式「MUSCOT(MUSic note COding and Transmisson technology)」[8][9][10][11]
  3. ^ 実験段階のキャプテンでは伝送方式にパターン方式を採用しており[6]、文字放送もハイブリッド方式による本放送を前に1983年10月からNHKがパターン方式による文字多重放送を実施していた[13]。音符符号化方式による音楽再生機能は、それぞれ伝送方式にハイブリッド方式を採用する規格から盛り込まれたものである[14][15]
  4. ^ YM2413と同様の目的で開発されたFM音源LSI、YM3526およびYM3812の場合はアナログ出力に専用のD/AコンバーターLSI、YM3014を別途必要としていた[17][18]
  5. ^ 選択できる波形の数はYM2413は2種類[16][21]、YM3812は4種類[21][18]
  6. ^ 分解能は3dB、0dBから-21dBの範囲[12]
  7. ^ 分解能は3dB、0dBから-45dBの範囲、加えて音強修飾符号を用いて1db単位で調節できる[12]
  8. ^ a b キャプテンのメロディ機能は、ランク1から5に分類される利用者端末種別の機能とは別にオプション機能として定められていた[12][32][38]。そのため、メロディ機能の利用にキャプテン端末とは別売のメロディ機能用のデコーダーを必要とする場合も多く、1987年時点においてはメロディ機能が利用可能な端末はごく僅かだったとされる[12][39]
  9. ^ a b ハイブリッド方式による文字放送の付加音機能には基本機能と追加機能が存在し、基本機能はメロディ音9音色・6音同時出力、リズム音5音色・5音同時出力、音の強さの指定が8段階[注 6]、追加機能はメロディ音32音色・16音同時出力、リズム音16音色・8音同時出力、音の強さの指定が16段階[注 7]と定義されていた[12][28][29][30]。また、キャプテンのメロディ機能[注 8]は文字放送の付加音機能の基本機能と同一で、拡張機能にあたる規定はなかった[10][12]。また、1987年にサービスが開始されたデジタル回線を利用するキャプテンの上位規格「ハイキャプテン」[31]にはADPCM方式による音声出力機能が搭載されたが、メロディ機能については従来のキャプテンと同一仕様であった[32][33]
  10. ^ 持続音モードの場合はディケイモードの減衰後にサスティンレベルに達した後はキーオン中は音が減衰されず、リリースレートはキーオフ後の音の減衰時間を示す。減衰音モードの場合はリリースレートはディケイモードからサスティンレベルに達した後の音の減衰時間を示し、キーオフ後の音の減衰時間は一定となる[16][34]
  11. ^ タムタムはサイン波、スネアドラムは矩形波とホワイトノイズの合成、ハイハットシンバルはホワイトノイズとノイズ発振器、トップシンバルはノイズ発振器を利用して音が生成される[16][21]
  12. ^ 文字放送・キャプテンで使用された音符符号化方式における音色指定については、シンセサイザーの音色パラメータを指定して伝送する方法も検討されたが、ハードウェアごとの互換性の問題や今後の拡張性も考慮され、楽器名を指定してデコーダー側で解釈する仕組みとなっている[36]。規格の策定にあたっては、弦楽器・管楽器・リード楽器・打弦楽器の中から9種類のメロディ楽器が、および5種類のリズム楽器が、最も多く使われている代表的な楽器として選定された[36]
  13. ^ アナログ電話回線を利用したキャプテンの商用サービス開始は1984年11月30日であり、YM2413の発売よりも前である[9][38][40]
  14. ^ 付加音機能を含むハイブリッド方式の文字多重放送の本放送開始は1985年11月29日であり、YM2413の発売よりも前である[42][43]。また、1986年7月のYM2413発売以降においても文字放送とキャプテンに対応した音源が開発されており、1988年にはヤマハ・富士通ゼネラルNHK放送技術研究所が文字放送受信機内蔵テレビや文字放送・キャプテン併用端末に搭載する目的で、文字放送用の2種類のLSI、文字放送信号取り込み用の「DRT(YM6030)」と画面表示および付加音処理用の「IDT(YM6404)」を共同開発していた[44][45][46]。IDT側にはFM音源とDPCM音源が内蔵されている[44][46]
  15. ^ メロディ機能がオプション扱いであったキャプテンとは異なり、文字放送においては付加音機能は標準機能であった[12]
  16. ^ 日本版「セガ・マスターシステム」の筐体の元となった、「セガマーク3」の海外版「SEGA Master System/Power Base」(1986年発売)にはFMサウンドユニットにあたる機能は内蔵されていない[21][48]
  17. ^ MSX2+においてはオプション機能扱い[24][25]。MSX2+の後継規格「MSXturboR」で標準機能となった[49]
  18. ^ FM-PACの発売自体はMSX2+規格の発表より前である[24][25]。また、FM-PACはMSX1MSX2にも対応している[50]

出典

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関連項目

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