「正則性公理」の版間の差分
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<math>\forall A(A\neq\varnothing\Rightarrow\exists x\in A\forall t\in A(t\notin x))</math> |
<math>\forall A(A\neq\varnothing\Rightarrow\exists x\in A\forall t\in A(t\notin x))</math> |
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以下の |
以下の3つの[[主張]]はいずれも[[ツェルメロ・フレンケルの公理系|ZF公理系]]の他の公理の元で[[同値]]であり、どれを'''正則性公理'''として[[採用]]しても差し支えない<ref>{{Harvnb|Kunen|1980|loc=Ⅲ, §4.1|p=101}}</ref>。 |
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*[[任意]]の空でない集合{{mvar|x}}に対して、<math> \exists{y}{\in}x,x{\cap}y=0</math> |
*[[任意]]の空でない集合{{mvar|x}}に対して、<math> \exists{y}{\in}x,x{\cap}y=0</math> |
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*<math>\forall x</math>について、{{math|∈}}が{{mvar|x}}上[[整礎関係]] |
*<math>\forall x</math>について、{{math|∈}}が{{mvar|x}}上[[整礎関係]] |
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*<math>\forall x</math>について、[[無限降下法|無限下降列]]である <math>x{\ni }x_1{\ni }x_2{\ni }\cdots</math> は存在しない。 |
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*{{Math|{{Mvar|V}}{{=}}{{Mvar|WF}}}} |
*{{Math|{{Mvar|V}}{{=}}{{Mvar|WF}}}} |
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ここで、{{mvar|V}}は[[集合論]]の[[宇宙 (数学)|宇宙]]を指し、{{mvar|WF}}は[[整礎的集合]]全体の[[クラス (集合論)|クラス]]([[フォン・ノイマン宇宙]])を指す。 |
ここで、{{mvar|V}}は[[集合論]]の[[宇宙 (数学)|宇宙]]を指し、{{mvar|WF}}は[[整礎的集合]]全体の[[クラス (集合論)|クラス]]([[フォン・ノイマン宇宙]])を指す。 |
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[[ツェルメロ・フレンケルの公理系 |
[[ツェルメロ・フレンケルの公理系|ZF公理系]]内に限って話を進める。各[[順序数]]<math>\alpha</math>に対して<math>R(\alpha)</math>を次のように[[定義]]する。 |
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# <math>R(0)=0</math> |
# <math>R(0)=0</math> |
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[[ZF公理系]]の他の[[公理系]]から得られる種々の[[集合の代数学|集合演算]]([[順序集合|対集合]]、[[和集合]]、[[冪集合]]) の結果としての集合は常に{{Mvar|WF}}内に含まれるため、{{mvar|V{{=}}WF}}の[[仮定]]は全ての集合を{{math|0}}に通常の[[集合演算]]を施すことによって得られるものだけに[[制限]]することを[[主張]]している。したがって、例えば{{math|{{mvar|x}}{{=}} {{{mvar|x}}}}}のような集合や{{math|{{mvar|x}}∈{{mvar|y}}}}かつ{{math|{{mvar|y}}∈{{mvar|x}}}}なる集合は[[正面性|正則性]]の公理の下では集合にはなり得ない。 |
[[ZF公理系]]の他の[[公理系]]から得られる種々の[[集合の代数学|集合演算]]([[順序集合|対集合]]、[[和集合]]、[[冪集合]]) の結果としての集合は常に{{Mvar|WF}}内に含まれるため、{{mvar|V{{=}}WF}}の[[仮定]]は全ての集合を{{math|0}}に通常の[[集合演算]]を施すことによって得られるものだけに[[制限]]することを[[主張]]している。したがって、例えば{{math|{{mvar|x}}{{=}} {{{mvar|x}}}}}のような集合や{{math|{{mvar|x}}∈{{mvar|y}}}}かつ{{math|{{mvar|y}}∈{{mvar|x}}}}なる集合は[[正面性|正則性]]の公理の下では集合にはなり得ない。 |
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{{mvar|WF}}は通常の[[演算|集合演算]]に関して閉じているため、{{mvar|WF}}公理系から得られる全ての真なる命題が[[ZF公理系|{{Mvar|ZF}}公理系]]においても[[真]]となることが分かる。このため、{{mvar|WF}}公理系内で通常の数学を[[展開]]できることが知られている。実際、{{math|{{mvar|x}}{{=}}<nowiki>{</nowiki>{{mvar|x}}<nowiki>}</nowiki>}}のような集合が存在するか否かは[[ZF公理系|{{Mvar|ZF}}公理系]]の中では導けない独立な[[命題]]だが、通常の数学を展開する場合にはこのような集合が現れることはない。その一方で、正則性の公理は必ずしも{{Mvar|ZF}}公理系を[[拡張]]するために必要なものではないが、ある命題が{{Mvar|ZF}}公理系と[[独立]]であることを[[証明 (数学)|証明]]する際にその[[効果]]を発揮することがある。 |
{{mvar|WF}}は通常の[[演算|集合演算]]に関して閉じているため、{{mvar|WF}}公理系から得られる全ての真なる命題が[[ZF公理系|{{Mvar|ZF}}公理系]]においても[[真]]となることが分かる。このため、{{mvar|WF}}公理系内で通常の数学を[[展開]]できることが知られている。実際、{{math|{{mvar|x}}{{=}}<nowiki>{</nowiki>{{mvar|x}}<nowiki>}</nowiki>}}のような集合が存在するか否かは[[ZF公理系|{{Mvar|ZF}}公理系]]の中では導けない独立な[[命題]]だが、通常の数学を展開する場合にはこのような集合が現れることはない。その一方で、正則性の公理は必ずしも{{Mvar|ZF}}公理系を[[拡張]]するために必要なものではないが、ある命題が{{Mvar|ZF}}公理系と[[独立]]であることを[[証明 (数学)|証明]]する際にその[[効果]]を発揮することがある。 |
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== 性質 == |
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<math>x\in y</math> ならば <math>x \in R(\alpha) = \{x \in WF : \mathrm{rank}(x)< \alpha\}</math>だから<math>\mathrm{rank}(x)< \alpha.</math> |
<math>x\in y</math> ならば <math>x \in R(\alpha) = \{x \in WF : \mathrm{rank}(x)< \alpha\}</math>だから<math>\mathrm{rank}(x)< \alpha.</math> |
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== 参考文献 == |
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*正則性の公理 http://www7.plala.or.jp/isaragi/set/pdf/3.pdf#search='%E6%AD%A3%E5%89%87%E6%80%A7%E5%85%AC%E7%90%86' |
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*{{Citation|last=Halmos|first=Paul R.|author-link=:en:Paul Halmos|date=2015-04-22|title=Naive Set Theory|publisher=Benediction Classics|edition=paperback|isbn=978-1-78139-466-3}} |
*{{Citation|last=Halmos|first=Paul R.|author-link=:en:Paul Halmos|date=2015-04-22|title=Naive Set Theory|publisher=Benediction Classics|edition=paperback|isbn=978-1-78139-466-3}} |
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*{{Cite book|和書|author=ポール・ハルモス|others=[[富川滋]] 訳|date=1975|title=[[素朴集合論]]|publisher=[[ミネルヴァ書房]]|isbn=4-623-00986-6|ref={{Harvid|ハルモス|1975}}}} |
*{{Cite book|和書|author=ポール・ハルモス|others=[[富川滋]] 訳|date=1975|title=[[素朴集合論]]|publisher=[[ミネルヴァ書房]]|isbn=4-623-00986-6|ref={{Harvid|ハルモス|1975}}}} |
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*{{Cite book|title=Set Theory: An Introduction to Independence Proofs|year=1983|publisher=Elsevier|ref=harv|last=Kunen|first=Kenneth|month=12|day=1|isbn=9780444868398}} |
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==関連項目== |
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*[[整礎的集合]] |
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2022年9月8日 (木) 09:25時点における版
正則性公理(せいそくせいこうり、英: axiom of regularity)は、別名「基礎の公理」(きそのこうり、英: axiom of foundation) とも呼ばれ、ZF公理系を構成する公理の一つで、1925年にジョン・フォン・ノイマンによって導入された。選択公理と同様、様々な同値な命題が存在する。
定義
以下の3つの主張はいずれもZF公理系の他の公理の元で同値であり、どれを正則性公理として採用しても差し支えない[1]。
ここで、Vは集合論の宇宙を指し、WFは整礎的集合全体のクラス(フォン・ノイマン宇宙)を指す。
ZF公理系内に限って話を進める。各順序数に対してを次のように定義する。
- が極限順序数のとき
クラスWFはこれらを全て集めたものとして定義される。
ZF公理系の他の公理系から得られる種々の集合演算(対集合、和集合、冪集合) の結果としての集合は常にWF内に含まれるため、V=WFの仮定は全ての集合を0に通常の集合演算を施すことによって得られるものだけに制限することを主張している。したがって、例えばx= {x}のような集合やx∈yかつy∈xなる集合は正則性の公理の下では集合にはなり得ない。
性質
- 任意の α∈ON に対して、
- は推移的
証明
超限帰納法による。 のときは明らかである。 に対して成り立っていると仮定する。 のとき、仮定より は推移的であり、 も推移的になる。また、。 が極限順序数のとき、仮定よりに対しては推移的であり推移的集合の和集合が推移的になることにより
も推移的になる。さらに
も同様。
WFの定義より、x∈WFのときを満たす最小の順序数は後続順序数になる。実際、を極限順序数として及びが成り立っているとすると、
となって矛盾する。
そこで、集合xのランクを次のように定義する。
x∈WFのとき、を満たす最小のを集合xのランクといい、で表す。
よって、 ならば
が成り立ち、かつとなる。また、このランクの概念を用いては次のように特徴付けられる。
及び、
のとき、
かつ
とすると
ならば だから
脚注
- ^ Kunen 1980, p. 101, Ⅲ, §4.1
参考文献
- Halmos, Paul R. (2015-04-22), Naive Set Theory (paperback ed.), Benediction Classics, ISBN 978-1-78139-466-3
- ポール・ハルモス『素朴集合論』富川滋 訳、ミネルヴァ書房、1975年。ISBN 4-623-00986-6。
- Kunen, Kenneth (1983-12). Set Theory: An Introduction to Independence Proofs. Elsevier. ISBN 9780444868398
関連項目
外部リンク
- 西村敏男『集合論』 - コトバンク
- Weisstein, Eric W. "Axiom of Foundation". mathworld.wolfram.com (英語).