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'''ハイリー・センシティブ・パーソン'''(Highly Sensitive Person、'''HSP''')とは、'''[[環境感受性]]'''([[:en:Environmental_sensitivity|'''Environmental Sensitivity''']])あるいはその気質・性格的マーカーである'''感覚処理感受性'''('''[[:en:Sensory_processing_sensitivity|Sensory Processing Sensitivity]]''')が極めて高い人たちを表す言葉である<ref name=":1">{{Cite journal|last=Aron|first=Elaine N.|last2=Aron|first2=Arthur|last3=Jagiellowicz|first3=Jadzia|date=2012-08-01|title=Sensory Processing Sensitivity: A Review in the Light of the Evolution of Biological Responsivity|url=https://doi.org/10.1177/1088868311434213|journal=Personality and Social Psychology Review|volume=16|issue=3|pages=262–282|language=en|doi=10.1177/1088868311434213|issn=1088-8683}}</ref><ref name=":2">{{Cite web|title=APA PsycNet|url=https://doi.apa.org/doiLanding?doi=10.1037/0022-3514.73.2.345|website=doi.apa.org|accessdate=2021-04-20|doi=10.1037/0022-3514.73.2.345}}</ref>。環境感受性とは、ポジティブおよびネガティブな環境刺激に対する処理や登録の個人差を表す特性的概念である<ref name=":3">{{Cite journal|date=2019-03-01|title=Sensory Processing Sensitivity in the context of Environmental Sensitivity: A critical review and development of research agenda|url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0149763418306250|journal=Neuroscience & Biobehavioral Reviews|volume=98|pages=287–305|language=en|doi=10.1016/j.neubiorev.2019.01.009|issn=0149-7634}}</ref><ref name=":4">{{Cite journal|last=Pluess|first=Michael|date=2015|title=Individual Differences in Environmental Sensitivity|url=https://srcd.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/cdep.12120|journal=Child Development Perspectives|volume=9|issue=3|pages=138–143|language=en|doi=10.1111/cdep.12120|issn=1750-8606}}</ref>。したがって、環境感受性が高い個人であるHSPは、環境感受性が低い人と比べて、ポジティブな環境から良い影響を受けやすく、ネガティブな環境から悪い影響を受け |
'''ハイリー・センシティブ・パーソン'''(Highly Sensitive Person、'''HSP''')とは、'''[[環境感受性]]'''([[:en:Environmental_sensitivity|'''Environmental Sensitivity''']])あるいはその気質・性格的マーカーである'''感覚処理感受性'''('''[[:en:Sensory_processing_sensitivity|Sensory Processing Sensitivity]]''')が極めて高い人たちを表す言葉である<ref name=":1">{{Cite journal|last=Aron|first=Elaine N.|last2=Aron|first2=Arthur|last3=Jagiellowicz|first3=Jadzia|date=2012-08-01|title=Sensory Processing Sensitivity: A Review in the Light of the Evolution of Biological Responsivity|url=https://doi.org/10.1177/1088868311434213|journal=Personality and Social Psychology Review|volume=16|issue=3|pages=262–282|language=en|doi=10.1177/1088868311434213|issn=1088-8683}}</ref><ref name=":2">{{Cite web|title=APA PsycNet|url=https://doi.apa.org/doiLanding?doi=10.1037/0022-3514.73.2.345|website=doi.apa.org|accessdate=2021-04-20|doi=10.1037/0022-3514.73.2.345}}</ref>。環境感受性とは、ポジティブおよびネガティブな環境刺激に対する処理や登録の個人差を表す特性的概念である<ref name=":3">{{Cite journal|date=2019-03-01|title=Sensory Processing Sensitivity in the context of Environmental Sensitivity: A critical review and development of research agenda|url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0149763418306250|journal=Neuroscience & Biobehavioral Reviews|volume=98|pages=287–305|language=en|doi=10.1016/j.neubiorev.2019.01.009|issn=0149-7634}}</ref><ref name=":4">{{Cite journal|last=Pluess|first=Michael|date=2015|title=Individual Differences in Environmental Sensitivity|url=https://srcd.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/cdep.12120|journal=Child Development Perspectives|volume=9|issue=3|pages=138–143|language=en|doi=10.1111/cdep.12120|issn=1750-8606}}</ref>。したがって、環境感受性が高い個人であるHSPは、環境感受性が低い人と比べて、ポジティブな環境から良い影響を受けやすく、ネガティブな環境から悪い影響を受けやすい。環境感受性は誰もがもつ普遍的な特性であり、その程度は[[正規分布]]することが示唆されている<ref name=":7">{{Cite journal|last=Weyn|first=Sofie|last2=Van Leeuwen|first2=Karla|last3=Pluess|first3=Michael|last4=Lionetti|first4=Francesca|last5=Goossens|first5=Luc|last6=Bosmans|first6=Guy|last7=Van Den Noortgate|first7=Wim|last8=Debeer|first8=Dries|last9=Bröhl|first9=Anne Sophie|date=2021-01-10|title=Improving the Measurement of Environmental Sensitivity in Children and Adolescents: The Highly Sensitive Child Scale–21 Item Version|url=https://doi.org/10.1177/1073191120983894|journal=Assessment|pages=1073191120983894|language=en|doi=10.1177/1073191120983894|issn=1073-1911}}</ref>。 |
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HSPは[[精神障害の診断と統計マニュアル|DSM]]に指定はされてはおらず |
HSPは[[精神障害の診断と統計マニュアル|DSM]]に指定はされてはおらず、心理学上の概念であり精神医学上の概念ではない<ref name=":02">{{Cite web|title=Understanding the Highly Sensitive Person|url=https://elemental.medium.com/understanding-the-highly-sensitive-person-1e627b920160|website=Medium|date=2019-05-06|accessdate=2019-09-01|language=en|first=Kelsey|last=Lawrence}}</ref>。HSPという概念は、最初に査読プロセスを経る前に『The Highly Sensitive Person』という一般書籍を通じて広まったため、HSPは単なる[[自己啓発]]であり、[[通俗心理学]]のアイディアであると考えている人もいた<ref name=":02" />。現在、HSPが既存の[[ビッグファイブ (心理学)|ビッグファイブ]]における性格特性の要素([[外向性と内向性|外向性]]や神経症傾向など)から独立した概念ではないとして疑問視し、HSPが独自の概念であると立証するためには更なる研究が必要とする考えもある<ref name=":02" />。また、2018年に発表された研究によると、HSPの感度には低・中・高の3種類の分類があることがわかり、[[ビッグファイブ (心理学)|ビッグファイブ]]の[[外向性と内向性|外向性]]や神経症傾向、そして感情反応性の違いによって、その人の感受性レベルが決定されることが示された<ref>{{Cite journal|last=Pluess|first=Michael|last2=Jagiellowicz|first2=Jadzia|last3=G. Leonard Burns|last4=Aron|first4=Elaine N.|last5=Aron|first5=Arthur|last6=Lionetti|first6=Francesca|date=2018-01-22|title=Dandelions, tulips and orchids: evidence for the existence of low-sensitive, medium-sensitive and high-sensitive individuals|url=https://www.nature.com/articles/s41398-017-0090-6|journal=Translational Psychiatry|volume=8|issue=1|pages=1–11|language=en|doi=10.1038/s41398-017-0090-6|issn=2158-3188|pmid=29353876|pmc=PMC5802697}}</ref>。 |
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== 環境感受性とその規定因子 == |
== 環境感受性とその規定因子 == |
2022年3月11日 (金) 08:56時点における版
ハイリー・センシティブ・パーソン(Highly Sensitive Person、HSP)とは、環境感受性(Environmental Sensitivity)あるいはその気質・性格的マーカーである感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity)が極めて高い人たちを表す言葉である[1][2]。環境感受性とは、ポジティブおよびネガティブな環境刺激に対する処理や登録の個人差を表す特性的概念である[3][4]。したがって、環境感受性が高い個人であるHSPは、環境感受性が低い人と比べて、ポジティブな環境から良い影響を受けやすく、ネガティブな環境から悪い影響を受けやすい。環境感受性は誰もがもつ普遍的な特性であり、その程度は正規分布することが示唆されている[5]。
HSPはDSMに指定はされてはおらず、心理学上の概念であり精神医学上の概念ではない[6]。HSPという概念は、最初に査読プロセスを経る前に『The Highly Sensitive Person』という一般書籍を通じて広まったため、HSPは単なる自己啓発であり、通俗心理学のアイディアであると考えている人もいた[6]。現在、HSPが既存のビッグファイブにおける性格特性の要素(外向性や神経症傾向など)から独立した概念ではないとして疑問視し、HSPが独自の概念であると立証するためには更なる研究が必要とする考えもある[6]。また、2018年に発表された研究によると、HSPの感度には低・中・高の3種類の分類があることがわかり、ビッグファイブの外向性や神経症傾向、そして感情反応性の違いによって、その人の感受性レベルが決定されることが示された[7]。
環境感受性とその規定因子
これまで環境に対する被影響性の個人差を説明する枠組みが複数提唱されてきた。例えば、Jay Belskyによって提唱された差次感受性理論(Differential Susceptibility Theory)[8][9]、Thomas BoyceとBruce Ellisによって提唱された生物感受性理論(Biological Sensitivity to Context Theory)[10]、そしてElaine AronとArthur Aronによって提唱された概念である感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity)[1][2]が挙げられる。それらの理論や概念は、自然選択の原理により、ポジティブおよびネガティブな環境刺激に対する感受性には個人差があることを説明している[9][10][2]。
2015年、Michael Pluessは、これらの感受性理論を統合した新たな枠組みとして、環境感受性理論を提案した[3][4]。上述のとおり、環境感受性は、ポジティブおよびネガティブな環境や経験に対する処理や登録の個人差を表す心理学的な構成概念である[3][4]。神経感受性仮説によれば、環境感受性は、感受性にかかわる遺伝子と早期の環境の交互作用によって形成された中枢神経系の敏感さを反映するとされる[3][4]。環境感受性に関する研究では、客観的に観察することが可能な3つのマーカーをもとに、環境感受性の個人差を測定している。3つのマーカーとは、1)感受性遺伝子[11]、2)神経生理的反応性[12]、3)気質・性格[13]、である。
感覚処理感受性(気質・性格的側面の環境感受性)
感覚処理感受性の定義
感覚処理感受性は、心理社会的・物理的な環境刺激に対する中枢神経系の感受性の高まりにかかわる気質もしくは性格を表す構成概念である。感覚処理感受性の高さは、次のように特徴づけられる。第1に「認知的処理の深さ」(grater depth of information processing)、第2に「刺激に対する圧倒されやすさ」(greater ease of overstimulation)、第3に「情動的な反応性や共感性の高まりやすさ」(increased emotional reactivity and empathy)、第4に「ささいな刺激に対する気づきやすさ」(greater awareness of environmental subtleties)である[3]。これらの特徴は頭文字をとってDOES(ダズ)と呼ばれることがある。HSPは、DOESで特徴づけられる感覚処理感受性(つまり、環境感受性の気質・性格的マーカー)が極めて高い人たちのことを表す。
感覚処理感受性の測定
感覚処理感受性は、ビッグファイブのような他のパーソナリティ特性のように、質問紙法(心理尺度)を用いて測定される。英語版には、1996年に作成された27項目版のHighly Sensitive Person Scaleがある[2]。 このHSP尺度は、もともと1因子で構成される尺度として作成されたが、のちの研究で3因子構造が抽出され[14]、現在ではこの構造が主流となっている。3因子とは、易興奮性(ease of excitation)、低感覚閾(low sensory threshold)、美的感受性(aesthetic sensitivity)のことである。易興奮性は、外的あるいは内的な刺激に対する圧倒されやすさ、低感覚閾は、ささいな外的刺激に対する感受性の高さ、美的感受性は、音楽や芸術などの美的な刺激に対する影響の受けやすさを表す。とくに易興奮性と低感覚閾は、ネガティブな環境刺激に対する感受性を表し、美的感受性は、ポジティブな環境刺激に対する感受性を表す[15]。より最近の研究では、この3因子構造に加えて、すべての項目に関与する一般感受性因子を想定したBifactor構造が支持されている[15][16]。
感覚処理感受性を測定するための心理尺度
これまでに感覚処理感受性を測定するための心理尺度がいくつか作成されている。一つは、上述の27項目版のHSP尺度である[2]。その日本語版には、19項目版[17]と10項目版[18]があり、大学生年代以降を対象にしている。子どもを対象にする場合には12項目版[19]と21項目版[5]のHighly Sensitive Child(HSC)尺度が用いられる。その日本語版には11項目の青年期前期用[20]と12項目の児童期用[21]がある。以下に、日本語10項目版の尺度項目の一例を示す。カッコ内は、項目と対応する下位尺度を表す。回答方法は、まったくあてはまらない(1点)、ほとんどあてはまらない(2点)、あまりあてはまらない(3点)、どちらともいえない(4点)、ややあてはまる(5点)、かなりあてはまる(6点)、非常にあてはまる(7点)の7段階で自己評定する。
- 強い刺激に圧倒されやすいですか?(易興奮性)
- 大きな音や雑然とした光景のような強い刺激がわずらわしいですか?(低感覚閾)
- 微細で繊細な香り・味・音・芸術作品などを好みますか?(美的感受性)
HSPを題材として書かれた主な著書
- 『The Highly Sensitive Person』、『The Highly Sensitive Child』、『The Highly Sensitive Person in Love』、『The Highly Sensitive Person's Workbook』(以上4冊はエレイン・アーロンの著作)
- 『The Highly Sensitive Person's Survival Guide』、『The Highly Sensitive Person's Companion』、『The Strong, Sensitive Boy』(以上3冊はテッド・ゼフ博士の著作)
- 『Making Work Work for the Highly Sensitive Person』(バリー・ジェーガーの著作)
脚注
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- ^ 岐部智恵子、平野真理「日本語版児童期用敏感性尺度(HSCS-C)の作成」『パーソナリティ研究』第29巻第1号、日本パーソナリティ心理学会、2020年、8-10頁、doi:10.2132/personality.29.1.3、ISSN 1348-8406、NAID 130007833731。
参考文献
- 学術論文
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- 単行本
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- Aron, Elaine. 2000. The Highly Sensitive Person in Love. ISBN 0-7679-0336-6.
- Aron, Elaine. 2002. The Highly Sensitive Child. ISBN 0-7679-0872-4.
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- Cain, Susan. 2012. Quiet: The Power of Introverts in a World That Can't Stop Talking. ISBN 0-307-35214-5.
- Mesich, Kyra. 2000. The Sensitive Person's Survival Guide. ISBN 0-595-09800-2.
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- ed. Wachs, T., and King, B. Behavioral Research in the Brave New World of Neuroscience and Temperament. ISBN 1-55798-222-8.
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